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第7話 俺だけ”無能者” だったんだが……

自己紹介が始まり、遂にエリアスの番が回って来る。

表示された残念な称号に、皆は動揺を隠せない。

まるで、組事務所の様な空気に包まれてしまった教室に、一瞬だけ萎えてしまった生徒達だったが、気を取り直して自己紹介を始める事に。


「神より称号を授かった者は、是非みんなに教えてあげてね」


デイジーの言う”称号”とは、人族、魔族共に”一定の条件”を満たすと授かる2つ名の様なものである。

有史以来、何だかんだで1000年以上の年月が流れているので、ある程度の種類や獲得条件などは判明している。


「じゃあ、後ろの席から自己紹介しましょうか」


デイジーの天邪鬼な性格が垣間見えた瞬間だったが、生徒達は気にも留めない。


「ミッテ村から来ました、クルトです。

称号は”耕す者”を授かりました。

お察しの通り、親の手伝いをしていたお陰で、畑を耕すのは得意です!」

「100000平方メートルを、鍬のみで耕した者に与えられる称号ね。素晴らしいわ。

腹が減っては戦は出来ない。

秋野菜を育てて収穫する実習も有るから、みんなの模範になりそうね」


この様に、何かに集中して取り組む事で、戦闘以外でも称号の獲得条件を満たす場合があるのだ。

その後も自己紹介は恙無く進み、称号を授かった者と、まだ授かっていない者、その割合は半々ぐらいだろうか。


「では、次」


いよいよメアリの番である。


「フュルトから来ました、メアリです。

回復魔法が少しだけ使えます//!

あと……料理が得意です//

称号は”闇に包む者”です//」


緊張しているのだろうか?

竜頭蛇尾を体現した様な、徐々に声が小さくなる自己紹介に、デイジーが食いつく。


「メアリさん、あなた可愛らしいわ。

照れているのかしら? 」

「少し緊張しました//」

「後で職員室へ来なさい//」

「!!?」


呼び出しをくらい、不安になるエレノアを余所に男子諸君は、唯ひたすらに羨ましがった。

因みに、称号は”……包む者”と聞こえた様で、皆、メアリは包装するのが得意なのだと思ったのだ。


自己紹介も終盤。

スカーレットの番が来た。


「私はスカーレット。

グリンカムビから来た。

特技は剣術と槍術。

称号は”気高き者”だ。よろしく頼む」


スカーレットをジッと見つめるデイジーは、何故か微妙な表情だ。


「今日は、パパが食事に行くみたいだけど、あなたはどうするの?同席するのかしら?」

「いや、私は友人と食事に行く約束をしている」

「……そう。分かったわ、また後日呼び出すわよ」

「はい?」


2名の移送が確定し、次はセシルの番だ。


「僕はセシル。フィアラルは地元だ。

正直、友達は少ない。この学院生活で、みんなと絆を深めたいと思っている。

称号は”砕く盾”だ。

よろしく」

「「よろしくー!」」


少し嬉しそうなセシル。

そんなセシルを、デイジーは上から目線で眺めているが、とてもにこやかだ。

若干ドヤ顔にも見える。


そして、遂にエリアスの番がやって来た。

メアリ達も興味津々の様だ。


「俺はエリアス、フュルト出身だ。

特技は格闘術。今は剣術を勉強している。

それ以外で何か挙げるとすれば、食料の確保だ。小さい頃から、山の中を走り回っていたお陰で、狩りや食べられるキノコを見付けるのが結構得意だったりする。

称号は……ん? ん”!!?」


ステータスバーを開いたエリアスは、驚愕する。

このステータスバー、基本的に他人には見えない。

本人が許可した場合は閲覧可能だが、自分の能力が数値化されて表示されるので、余程親しい者にしか見せない様だ。


硬直してしまったエリアスに、デイジーは助け舟を出す。


「称号は内緒でも良いのよ? 他人の職業には簡単にアクセス出来るけど、称号その他を閲覧出来ないのは、それが原因で組織に利用されたり命を狙われたりする事が無い様に、神が配慮してくれたのだから。

それに、男も女も、秘密の1つや2つ身に付けておいた方がミステリアスでいいものよ?」

(まぁ、男の秘密は碌でもない場合が多いが…… )


即座にメモを取る生徒達。

もう、エリアスの称号については、その有無さえも忘れ去られているだろう。

そう思ったデイジーは、エリアスの横に座る獣人に自己紹介を始めるよう指示を出そうとしていた。


「いや……構わない。

内緒にしたい訳ではないんだ」


エリアスが口を開いた。


「俺の称号は…… ”無能者”だ」


カーテンが風に靡く音さえも騒々しく思える程の静寂が、青春の香り漂う初々しい教室を包み込んだ。


デイジーさえも、初めて耳にする”無能者” という称号。

”称号”と言うより”烙印”と言った方が適切ではなかろうか……。

堪らずセシルとスカーレットが声を挙げる。


「そんな馬鹿な話があるか!50対2で無傷だぞ!?

そんな戦闘力を秘めた”無能者” なんて存在する筈が無い!!」

「私も同感だ。魔物の群れからエレノアを助け出す猛者が、凡人以下の無能者など有り得ない」


しかし、デイジーは困惑していた。

確かに、2人の言う通り、エリアスの戦力で無能者など馬鹿げている。


「もしかしたら、特定の分野に限った事かも知れない。

院長に聞いてみるから、何か分かったら報告するわ」

「お願いします」


エリアスは、相当ショックを受けただろう…… と、心配するデイジー。

しかし、一瞬硬直したものの、セシルと無駄話をしたりと特に気にしていない様子のエリアス。

それもその筈、称号を与えるシステムを創った張本人なのだから、どの様な条件を満たした結果、”無能者”という称号が与えられるか知っているのは当然の話である。

ただ、創造神である自分のステータスバーに”無能者”と表示されていた事に、少し驚いただけであった。


「じゃあ、次」

「は、はい!

私は、クルミ。パステト族です。

セイリオスから来ました!

エリアス君と同じく、狩りが得意です!

称号は”焼き払う者”です」


攻撃的な称号故だろうか、教室の空気は微妙だ。

しかし、そんな事など気にしないエリアスは、クルミに話し掛ける。


「今度、一緒にひと狩り行こうぜ!」

「うん!//」


エリアスは、最初に転生した異世界でも魔界でも、獣人達にはとてもお世話になったのである。

性格も良く、とても器用な獣人が自分の創った世界にも生まれているのだ。仲良くなりたくて仕方無い。


「じゃあ、次」


こうして自己紹介も終わり、生徒達は適性検査を受ける為、別室へ移動する。

デイジーは適性検査をユビツメ先生に任し、称号の件を院長へ報告しに行ったのだ。

院長に報告するデイジーは、無能者という謎の称号のだ獲得条件を聞くのだが……

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