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☆第20話☆ 創造神的 下位補助術式 前編

他のパーティーでは、実戦に勝る修行は無い! と言わんばかりの内容が目立っていた。


拙い魔法と重力操作を組み合わせた戦法で模擬戦を行い、軽くなった武器の感覚に慣らしている様だ。

そんな様子を眺めながら、不満と不信を募らせるメンバー達はエリアスに詰め寄る。

ただでさえハードな訓練に、体幹トレーニングまで追加されたのだ。

たまったものではない。


「エリアス、我々は何時まで尻尾(トーチ)と筋トレを続けるんだ?」

「ん? 卒業までかな? 時間がある時は行うつもりだけど?」


代表してスカーレットが質問したのだが、返って来た答えに愕然とする。


「そ、そうか。

しかし、我々は今行っている訓練が何の為なのかを、イマイチ理解出来ていないのだ。

理解を深めて、結果をイメージした方が効果が大きくなる気がするのだが」

「それはそうだな。他のパーティーは重力操作で軽くした武器を振り回しているが、それを振るう腕は緩やかだ。

魔力の無駄だと思わないか?

あれなら、重力操作を使わずに葉っぱを振っていればいい」


そう言うと、エリアスは模擬迷宮攻略までにマスターするつもりの術式を披露した。


貸し出し用の大剣を手に取るエリアス。

凡そ15kgは有るだろう大剣は、一般的な太刀の10倍程の重量であり、使い手を選ぶ武器の典型である。


大剣を下段に構えたエリアスは、数回の斬撃を披露したのだが、その様子にメンバー達は息を呑んだ。

美しく弧を描く横薙ぎの一閃。

切先はブレる事無く空間を水平に切り裂き……

真上から振り降ろされる斬撃は、一瞬にして地面スレスレまで降ろされ、慣性の法則を完全に無視した様に直前で制止している。

残像が残る程の速度から、一気に停止世界へ。



呆然と立ち尽くすメンバーに、術式が発動していても”地に足が着いている感覚がある” この状態が大切だとエリアスは言う。


「難しいかも知れないが、”破壊力”…… 素手や武器を使った物理的な”殺傷力” は部分的な動作ではない。

身体の各部位の連動によって最大化されるって事だ」

「……?」

「重力操作によって、”殆ど” 無重力状態に在る剣を振ると、振った方向へ初速から全開の等速運動が始まる訳だが、その全開は術者にとっての全開だ。

更に言えば、それを止めようと思えば正反対の方向へ同等以上の力が必要になる。

単純に剣を止めたいだけなら、特に考える必要など無いのだが、実戦での使用を前提で考えた時、恐らく、ただ剣を止めるだけの状況など有り得ない」

「……?」

「仕留めきれない時や対多数戦なら、次の動作を意識せざるを得ないって事だ。

その反応速度は勿論、斬撃の速度も慣性の法則や重力に支配されている自分の身体能力で決まるだろ? 俺は、その時の身体的負荷を更に軽減させたい訳だ」

「!?」

「武器が軽かろうが、思い通りに身体を動かす為の筋力は必須だ。

そして、ここからが本題。

一定火力の尻尾(トーチ)を魔力が尽きるまで繰り返す事で、コントロールとスタミナは大幅に向上する筈だ。

今の訓練で得た余力を使って、自分自身にも重力操作で影響を与える」

「デイジー先生は、コントロールが難しいから止めておけと言っていたが…… 大丈夫だろうか」

「大丈夫。コントロールと言っても、補助術式に割く魔力を最適化する程度だからな」


エリアスは、不安そうなスカーレットを落ち着かせメンバーに術式の説明を行った。


今回、メンバーにマスターさせたい術式は


身体制御補助術式(キベルネテス)


これは術者の意識とリンクし、攻撃、防御、回避といった動作を行う際に使う部位や関節をオートでサポートする術式である。

例えば、右の打突を放ったとすると、肩から先には重力操作による重量の消滅が起り、使う関節周辺には、その回転力を上昇させる効果が発生するのだ。

何故、身体の一部だけに重力操作が発動するのかと言うと……

緊張して舞い上がってしまった時、自分の体重を感じる事が出来ずにフワフワした状態になった経験は無いだろうか。

その状態では思い通りの動きは出来ず、力を込めているはずなのに重量感に乏しい錯覚を引き起こす。

全身に重力操作の影響を及ぼすという事は、陸戦主体で飛ぶ必要の無い人族にとってはマイナスでしかない。

コントロールし感覚を理解するまでは、ポテンシャルを発揮するなど不可能なのである。


「重さを感じ、しっかり力めている感覚を感じながらも身体を楽に操る事が可能な術式がコレなんだ」

「なぁエリアス。とんでもない術式なのは分かったが、誰に教えてもらったんだ?」

「え!?…… おばあちゃんだよ。ハハハ」

「「…………」」


自重してもらいたいものである。

かなり怪しむメンバーだが、この人もエリアスが気になって仕方無い。

勿論、院長である。

(おやおや。デイジー先生は面白い術式を教えてあげたようだね//)


気配を断ち、こっそり様子を伺っていた院長は大急ぎでデイジーの元へ。


「デイジー先生// エリアス君達の成長を見込んで面白い術式を教えてあげた様だね//」

「はて? 私は学生用の粗末な術式しか教えてませんが?」

「ん? 身体制御何たらかんたらって言う術式は?」

「え? 何ですかソレ?」


院長は、発動した術式の詳細をデイジーに話すのだが……


「何ですって!!? そんなの軍用身体強化術式並じゃないですか!!!」

「私も知らない術式だったので、デイジー先生グッジョブ! と思っていたのだが……

まさかオリジナルとは!//」


またしても、車椅子の肘置きが変形するほど握り締めている院長。

その表情には期待と嫉妬、そして剥き出しの闘争心が入り交じっていた。


”お前は一体何者なんだい…… なぁ、エリアス君”

疑問が尽きない院長は、またしてもエリアスを家に連れ込もうとする。

前回の件で懲りているので断るかと思われたが、どうやらエリアスにとって好都合なお誘いだった様だ。


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