天地創造
創造神となった元魔王は、妻達と共に自らが創り出した世界に転生した。
その世界で、妻達と再開し魔王を倒すのが目標なのだ。
対人族に始まり……
対悪魔。
対巨神族。
対勇者。
対邪神。
対魔女
そして……まさかの”2度目の終末戦争”
その尽くを叩き潰し、何とか生き延びたが魔王は色々と疲れていた。
ある日、魔界を次世代に託すと自分達だけの世界を創り、そして姿を晦ませてしまったのだ。
自ら創り出した世界で、創造神として君臨する元魔王。
共に暮らすのは、天空の女神、大悪魔、竜王。
静かに暮らしていた4名は、何時しか”暇”を持て余していた。
”宇宙を創ってみてはどうか”
元魔王は有余る魔力を使い、パラメーターの違う7つの宇宙を創った。
箱庭が創りたい訳ではなかった。
見ているだけではつまらないからだ。
環境その他を、自らアップデート出来る事。
内部に観測者が居る事。
即ち、知的生命体が存在する事。
そして、その世界に行ける事。
この3つを完成の条件として、成り行きを見守ったのだ。
そして遂に、7つの宇宙の1つに生命が宿った。
多様な生命が誕生し、繰り返される淘汰と進化。
その中で、進化を続けたのは四足歩行の猿の様な生命体と、魔物の様な異形の生命体。
やがて、両者は人間の姿に近いものへと進化した。
元魔王は微笑むと、残りの宇宙を消滅させ、エネルギーへと変換し、それを生命の宿った宇宙に注ぎ込んだ。
「人類には”天職”と”称号”を授けよう。
それ以外の知的生命体には”称号”のみを授けよう」
手を加える元魔王と共に、その星の様子を見守っていた女神は、ある提案をした。
「賭けをしないか?」
その星に誕生する予定の、真っ新な器に仮初めの魂を入れ、その星での人生を全うする。
そして、その人生の中で、愛する者達が巡り逢えるかを試そうと言うのだ。
「面白い。何を賭けるのだ?」
竜王も大悪魔も興味津々である。
賭けるものも決まり、最後に話し合ったのは
「で?ステータスと記憶はどうする?」
「記憶は邪魔だろう。無垢の状態でなくては意味がない。
職業も適当でいい」
元魔王の問い掛けに、そう答えた3名。
「俺は”天職”を設定する。ステータスは”あちらの法則”通りだ」
元魔王は、記憶を継承させ天職を設定した。
「互いの事は感知出来ないよう細工をしてある。出逢えたかどうかは、生涯を終え、目覚める時まで分からないからな?」
「フフフッ、違う女と結婚したら唯では済まさんぞ?」
「おいおい、怖い事言うなよ……」
こうして、神々のお遊びが始まったのだ。
……………………………………………………
魔族の支配地域に睨みを利かす最前線の街。
要塞都市 ノルトライン。
「おい、城に停まってるイカつい魔導装輪兵器見たかよ?あんだけの装備を搭載するなんて、どんな魔力量の持ち主よ?」
「あれ勇者様のらしいぜ」
魔導装輪兵器とは、魔力で駆動するバイクの様な魔導兵器。人類の英智だ。
戦士以上の職業で国防に従事すれば支給され、乗る事が許される。聖騎士以上の職業からは、国から支給されるだけでなく、自分好みにカスタムしてもらい納車してもらう事が可能だ。
魔力で各種兵装を起動させる事が出来るが、乗る者の魔力が原動力なので制約は掛かる。
勿論、魔力のパターンを登録するので持ち主以外が操る事は出来ない。
「マジかよ!?じゃあ今回の作戦は勇者様も参戦するのか!?」
「あ〜あ、俺も天職が勇者だったらな〜。
今頃は、サナアを奪還して、更に100km先まで土地を取り返してるぜ」
「あ?お前が100km先までだったら、俺は1000km先まで奪還してるぜ!ヒャハハハ!!」
「たられば話はやめなよ!こっちはブラずれを直す気力も無いんだからさ!」
「おいおい、ミランダ。どうしたんだ?やけに不機嫌じゃねぇか」
「今回の偵察だけで3人も死んでるっ!
今回、勇者様と作戦行動をする事になったから、アンタらは呑気に馬鹿な話を続けられるんだ。
私達は、特別幸運なのさ!それを勘違いしてやがるから腹が立つんだよ!」
街の酒場が一瞬にして静まり返る。
「お通夜か?今日は士気を高める為に集まってるんだろ?」
「勇者様!?」
現れたのは、勇者エリアス。
転生した元魔王だ。
勇者とは、成人を迎えた者が神から賜る数多の職業の1つだ。
勇者と言えど、魔族の王を打倒した記録は未だ嘗て存在しない。
しかし、”天職 勇者”となった者は、例外無く人類最強の存在へと成長する。
その存在は、魔族の侵攻を阻む抑止力となるのだ。
「ミランダ、お前の同僚の仇は俺が討つ。
今回の作戦は、必ず全員で帰れるんだ。
だから、安心して”今”を楽しめ」
「勇者様……」
「機嫌もブラずれも直せよ?」
「ちょっ!!聞いてたんですか!?」
「バカ!勇者様は耳もいいんだよ!てか、お前ブラ要らなくね?ギャハハハ!!」
勇者と同僚の兵士に揶揄われ、顔を真っ赤にするミランダという女性兵士。
水を打った様に静まり返った酒場は、活気を取り戻したのだった。
翌朝、サナア奪還作戦が始まった。
要塞都市ノルトラインの領主から激励の言葉が贈られ、いよいよ作戦開始だ。
「いけ好かねぇ領主だ」
「あーね。後が無いからって嫌味っぽくネチネチ言いやがる」
「戻ったら、アイツをド田舎に飛ばしてくれって国王に直談判しようぜ!勿論、勇者様の威を借りてな!」
兵士達もやる気十分だ。
一行は、ノルトラインから50km程の距離にあるサナアを目指した。
魔族に占領され、最早見る影もないだろうが、嘗ては芸術の都と呼ばれていた人間の街だ。
隊列を組み、魔物を撃破しながら順調に進んでいた勇者達であったが、突如、魔導装輪兵器が警告を発した。
《魔力反応を探知。捕捉されました。
自動防御を発動。着弾まで3秒…2秒……》
「来るぞ!!」
先頭を走る勇者の魔導装輪兵器は、後続の兵士達さえも覆う大規模な反魔法障壁を瞬時に構築する。
《防御不可。救援信号を発信。
緊急回避プログラムを発動。
保護術式を追加発動、迎撃を開始します》
防御不可能と判断した魔導装輪兵器は、身体強化術式の発動と同時に、迫り来る魔法を相殺するべく蓄積された魔力を惜しみなく使用する。
《神槍術式”聖光槍”》
現れた2本の聖なる槍は、前方から迫り来る”赤黒い光”に向けて撃ち出された。
しかし、赤黒い光は聖なる槍を容易く打ち砕き、障壁と衝突したのだ。
「なっ!!?」
ぶつかり合う赤黒い光と障壁は、眩い光を放ち視界を白く染めた。
その中で、微かに見えた砕け散る障壁と、宙を舞う魔導装輪兵器の部品。
吹き飛ばされ、崖下を流れる冷たい川に落ちた勇者が見たのは、赤い髪の女魔族。
「私の1人の時間を邪魔するな。愚かな人族共よ」
そう呟いた様に見えた。
要塞都市 ノルトラインからも確認出来る程の爆発。
そして、途絶えた救援信号。
それは、勇者率いる実行部隊の壊滅を意味していた。
数時間後に派遣された救援部隊は、大破した魔導装輪兵器と兵士の遺体を回収した。
そこに勇者の遺体は無かったが、爆発の規模から察するに、最早生存は絶望的。
領主は、作戦の失敗と勇者の死亡を国王に報告したのだった。
シリーズ完結編です。
忙しいですが、週に2回は更新したいと思っておりますm(_ _)m
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