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4.全てが終わったその後に4

川の水流の音と虫の鳴く音が混ざり合い心地良い音に時折火の爆ける音で意識が浮上しては沈む感覚を意識していると足音を忍ばそうとする音が混じり始める


・・・来たか


情に流されず損得で考えるならオレの荷物を奪うって選択肢は無視出来ないとは思う


ただ、オレをどうにか出来る事が条件ではあるがな


「なあ、今なら無かった事にしてやるけど」

「・・・」


相手の意思は変わらず、か

諦めて上体を起こし山男と向き合う

初めて会った時とは違い振り上げたクワの構えに力強さがある


「アンタには悪いと思ってる。けどもう限界なんだ。このままじゃ、そう遠からず3人とも死んでしまう。これが最後のチャンスなんだ。アンタの手持ちを奪ってでも生き残る」

「その生き残る、の中に彼女たちは居るのか?」

「・・・妻はあの災厄の子を捨てる事が出来ない。このまま共倒れなんてごめんだ」


そうか、限界とはこの生活と君の忍耐の事か


「君の選択にとやかく言うつもりは無い。オレは他人だしただの通りすがりだ。でも荷物を狙っているのならオレは自分の身を守る為に君を撃退しなければならない。それでも奪うと?」

「ああ、今なら体力もあるしアンタの体勢だって不利だ。本当にアンタには感謝してるけど自分の命が惜しい。諦めて荷物を渡してくれ」

「・・・・・・」


確かに、立とうとすれば問答無用で殴られると思ったから座っていたのもある

正直な所、山女と子供を捨てて自分だけ助かろうとする山男に憤りも感じるし彼には妻子を持っている責任を果たして欲しいと思う

同時に、自分の居場所を追われてあそこまで体力の限界になってオレが来なければそう遠からず餓死していたのも事実だ

ここで彼を説得し責任を果たせと言った所で今直ぐの心変わりはしないだろうし、それこそ時間がない。この僅かな付き合いでこの家族が限界である事は分かっていたが体力を回復させた山男の現状打破が妻と子の切り捨てだとは予想出来なかった。

オレが持ち直すまでサポートすると言ってもなんの保証も無いこの状況で人間不審に陥っている山男が信用するとは思えない


・・・やはりオレに打つ手は無さそうだ


ここで荷物を失っては殆ど無一文になってしまうのも事実だし気持ちを切り替える


さも荷物を渡すかの様に見せかけてから力の限り山男にぶん投げる


「!っ」


目的の物をはたき落とすのを躊躇い動きに迷いが出たのを見計らい転がる様に距離を取り立ち上がると同時にナイフを手にする


「・・・アンタ本当に何者なんだ」


山男はどう見ても農民だ。戦闘に慣れているわけでもないのならオレの動きは目に追えず気付けば構えを取られてる様に見えただろう


「聞いて驚きな!オレこそが、なんと、勇者なのだ!」

「・・・・・・」


おっとなぜか知らんけど不機嫌になってしまったご様子


「先に話したく無いって言ったのはコッチだが、いくらなんでも勇者を語るのは無理があるぞ」


ほう、自伝は本人が語るべきでは無いって言いたいのかな?


「勇者は魔王の率いる軍と四方を鉄壁の守りで囲う城を攻略して人の生存圏を勝ち取ったこの国の英雄だ!今は王族の一員として他国を纏めて魔王の残党を滅ぼす準備を進めていると聞く。アンタは良いとこ傭兵のたぐいだろ」


んー、なるほど

そのイメージなら確かにオレとは掛け離れた勇者像だ

実際は勇者なんてただの代表で象徴みたいなもんだったと思う

魔王に最後の一撃を入れたのはオレだったけど、そこまで魔王とその配下達を分断して限界まで弱らせたのは仲間達と王国の軍隊だ

わかりやすく人類の象徴がいて勝利を叫びながら前へ前へと進んだあの瞬間は時間が経つ程に恐怖が湧き上がってくるトラウマだ




間違いなく言える







あれは、常人の所業じゃなかった






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