3.全てが終わったその後に3
「「・・・・・・・。」」
おっと警戒心を強めてしまったらしいな
山男はオレが何企んでんのか考えてるな
山女の方は、おっと山男の状態とオレの戦力比較しながら脱出出来るか検討してるとこかな。大分冷静でそれなりに場を読む能力をもってそうだ
「これは変な話じゃなくてただの交渉だ。狐の肉はめちゃめちゃ臭くて正直進んで食いたい物じゃないからさ、君たちの道具を借りる代わりにオレは肉を分けて助け合わない?ってね」
うん、興味を持ってくれたみたいだね
正直このクワの状態を見るに鍋があるか賭けの部類ではあるけど、少なくとも山女の方はどこからか調達しようと考える筈だ
「分かりました。鍋を持ってくるので私達と子供に肉を下さい」
「よし、交渉成立だ」
子供もいるのか!ならほぼ家族で決まりだな
「立てるか?」
「・・・・・・」
山男の方はまだ警戒中か
手を貸そうとしても訝しげな顔で取ろうとしない
やはり裏切られて集団から追い出されてるな、他者を簡単に信じれなくなってる
「ほれ、これ返すよ」
「・・・っ!?」
手を出すのを諦めてクワの柄を差し出すと奪う様に握られたのでそのまま立ち上がらせてやり、困惑した目にトドメの一撃だ!
「飯にしようぜ。早くしないと下処理だけで日が暮れちまう」
超、爽やかな笑顔と共にオレの素直な気持ちを言ってやれば悪意0%であると性格捻じ曲がってる奴以外は大抵分かってくれるのさ!
あ、これ実体験ね
あんのピエロ野郎はマトモに会話しようとすらしなかったもんなぁ
あんな奴でも暫く会ってないと懐かしく感じるものだな
多分気のせいだがな
下らん事を考えてはいるが、オレらのやりとりを確認してから移動を始める山女がやはり状況を読む能力が高いのが気になるなぁ
そんじゃレクチャー的な意味も込めて
「鍋はあっちに任せてオレらは狐の皮でも剥ごうか。オレが先導しちゃるから是非とも覚えてみてくれ!」
「あ、ああ」
そんじゃー、張り切ってやりますか!
ーーー。
そんで、上手に出来ました!
うんうん、我ながら上手く出来たんじゃない?
肉に味は付いとらんけど出汁の付いた汁で誤魔化しつつ火の魔術でカラッカラに乾燥させた香りの強い葉を砕いて入れればそれなりに食える鍋?になったぜ!
しかしながら山女が連れてきた子供もガリガリじゃないか
3人は貪る様に狐の肉を食い始めたものだから肉の大半を譲ってしまった訳だがそれでも足りないんじゃないか?
あらかた空になって落ち着いた様子だし、そろそろ聞きたい事聞くかな
「ちょっと聞きたいんだけどさ。子連れの家族がどうしたってここにいる訳?どこかの集落には行けないの?」
「・・・アンタには助けて貰った。でも理由は話したくない」
「そっか。なら無理して話す必要はないさ」
「・・・すまん」
「別にいいさ」
「・・・こっちからも聞いていいか?」
「どうぞ」
「アンタ随分戦い慣れてる気がしてな、傭兵か元兵士か?」
「まぁそんなとこさ、色々練り歩いてその分戦ってる気がするや」
「アンタぐらい腕に覚えがあるならなんでこんな所に?」
「・・・オレもそこの下りはあんま話たくないな」
「・・・そうか」
「それに現れたのが君じゃなくて、例えば魔物だとかりしたらなりふり構わず川にでも飛び込んで逃げ出してたよ」
「そんなに強くてもか?」
「戦う必要が無いのなら基本は戦闘は回避するに限るさ。君と会ったあの時だって一番最初に考えたのは降伏だしな」
「・・・・・・」
その微妙そうな表情は納得出来なかったのかな?
多分、山男は戦闘職種に憧れてるのか、少なくとも興味は持ってるな
「それでも戦ったのは?」
「後ろが川で相手が弱っていたから、だな」
「・・・ふーん」
うん、やはり焚き火はいいな
この薪が燃えてくのを眺めてる時間ってのは他に変えられない魅力がある気がするわ
「オレはこのまま休むけど君らはどうする?寝ぐらがあるなら帰るかい?」
「・・・いや、焚き火の近くがいい」
「そうかい」
なら、浅く眠りに付くかな
既に子供は船を漕いでおり山女に寄り添いボロの毛布を羽織っている
山男は薪を組み直しつつ火を見つめている
恐らく事を起こすなら寝静まった後だろうしな
荷物を枕に寝っ転がるオレの方と剥いだ狐の毛皮の位置に目線をやる山女を確認しつつ少しばかりの眠りに落ちていくーーー。