♯4 預言と歴史
「それにしても、まだ能力が発現していないとは。ミザレストに来て1週間だろ?少し遅いな…」
不思議がるコン。
「ま、まぁそのうち発現するでしょうし、気長に待ちましょう!ね、生護さん!」
若干がっかりしていた様子の俺を慰めてくれたミコトに嬉しさを覚える。
「そういえば、この前預言士が視たという預言、アレと動物達のモンスター化、関係あるのかしら?」
「あぁ…シャドウの動きも活発化していると聞く。少々気になるな…」
なにやら真剣な表情を見せるふたり。
「あの、預言ってなんの事ですか?」
生護は尋ねる。
「王都エスブレイルの預言士が未来を視たんだ。その者が視た未来は必ず的中する。その力によって救われた人も多い。そして一ヶ月ほど前、その預言士はフルブライト王にこう告げた。」
「ミザレストにあらゆるモノを模倣する者、模倣者が現れし時、2000年前の悪夢が再び世界を闇に包むだろう…と。」
生護「2000年前の悪夢?」
さっきまで和やかだった空気が張り詰め、緊張がはしる。そして、ミコトの口から2000年前の歴史が語られる。
「王都の図書館にある歴史書によると、今からちょうど2000年前の創歴943年、ミザレストの原住民と異界からの来訪者との間で戦争が起き、その影響で世界が滅亡寸前にまで追い込まれるほどの出来事があったらしいんです。」
「その戦争の裏で糸を引いていたのが零と名乗る者で、あらゆるモノを模倣し、人ならざる者を使役し、人類を皆殺しにして理想郷を作ることが目的だったと。」
「そして、その零に対抗すべくミザレスト人とレスシオンが同盟を組み、零と同盟軍との戦いは熾烈を極め、人類側に多大な犠牲を出して零の封印という形で決着がついた、と記されています。」
「ですから、近ごろ動物たちがモンスター化しているのは、もしかしたら零が復活したのではないかと、もっぱらの噂なんです。」
生護「零の復活…か。もしそうだとしたら、世界は再び滅亡の危機に?」
「ハイ…ですから、模倣者が現れたら問答無用で処刑するようにと、世界中にお布令が出たんです。」
「そうなんだ…」
そう言った時、グーッと生護のお腹が鳴る。
「あ、もうこんな時間ですね。今から食事の用意しますんで、良かったら召し上がって行って下さい!」
「ハハハ!生護くん。ちょうどとっておきの肉があるんだ。腹いっぱい食ってくれよ!」
生護は顔を赤くして恥ずかしそうにうつむいていた。