弐
君は僕の夢の中の登場人物でしかない。
僕が作り出した妄想でしかない。
手紙も偽物で、香りだとかも思い込みで、何もかもが僕の手の込んだ自作自演なのだとしたら。
それはいっそ楽だとも言えるし、また辛いことでもあった。
夢なら夢で、現実にまで痕跡を残していかなければ良いものを。
君の夢の中にも僕は出て来ているのだろうか。
お互いにお互いの夢の中の登場人物になれているのなら、それは幸せで、夢の中でだけ繋がり合える切なく最高の夢物語なのであった。
愛おしくて、夢から醒めたくなくて、けれど醒めてしまうから美しく思う気持ちもあった。
夢幻の如くなり。
あぁ、そうではなくて、夢幻そのものなのに違いない。
夢の中の恋なのだから、それが現実へとやって来ることはない。
実際に会ったのは現実でのことだっととしても、今や夢の中でしか会えない仲なのだから、現実で結ばれることはありえないことだ。
しかし、恋占いというのには、少しばかり期待をしてしまう。
「結ばれることはないでしょう」
はっきりと結果が出てしまって、驚くほどに大きく不可を示していて、やり直したいがやり直すわけにもいかない。
これが神様の下したご決断なのだから、真実であるのだ。
結ばれることなど、ないのだ!
あまりに辛かったものだから、強く言ってやはりまたも辛くなる。
結ばれることなどないでしょう。
わかりきった答えを受け取っただけなのだから、それ以外に何があるわけでもなく、何が悲しいでもない。
何が悲しいわけでもなくても、哀しみの涙が溢れるのだから、人の体というのは不思議な仕組みになっているものだ。
そんなものの理由など考えたこともなかったけれど、物事を考えるということを、そもそも今まではして来なかったけれど、今ばかりは頭にいろいろなものが浮かんで来た。
はたけをたがやすだけのぼくではなくなっていたのだろうか。
あたまがへんになるみたいだった。