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 時々、話が噛み合わないとは思っていた。

 何も知らない君のことを不思議に思っていたのだ。


「どうして地面に棒を突き刺しているの?」

「畑を耕しているだけだよ」


「お野菜って地球が生まれて来るのね」

「おらが育ててるんだぞ」


 育てるの意味さえ、彼女は知らないようなのであった。

 恐ろしいほどに何も知らない彼女に、普通であれば知っているはずである彼女に、違和感は覚えていたのだ。

 そうは思っていたのに、気付けなかった。


 僕の畑に天から舞い降りてきたのだろう。


 いつの間にか、消えてしまっていた。

「さようなら。もう帰るわ」

 寂しい顔で、寂しい言葉を残して。


 わからなかった。

 そうきっと、何もどれもわかっていなかったのだ。



 あまりに美しかったものだから、夢なのだろうと考えた。

 夢の中で、天女が僕にお言葉をくれたのだ。


 届けられた素敵な時間を楽しんだのだ。


 終わってしまったからこそ、傍で見ているときよりも、もっと冷静になっていて……夢だった、その言葉が大きく僕に浮かび上がる。

 夢だったそうに違いないのだ。

 夢だったそうに違いないのだ。



 それからしばらく。

 僕の家で見つかったのは、香しい手紙、君の香りのする手紙なのだった。


 文字は読めないけれど、君が存在していたことの証明とはなる。

 何を伝えようとしてくれていたのかはわからないけれど、この香りは君の香りであるのだ。


 初めて、文字が読めるようになりたいと思った。


 しかし彼女はやはり賢い人であって、僕とは生きている世界が違っているのだということも、痛いほどに思い知らされる。

 天ではなくて、都からやって来た人なのだろう。


 存在しているのに届かないだけに辛いのだ。

 存在していないよりも反対に辛いのだ。



 僕がもっとみやびになって彼女を迎えに行けたなら………………






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