決意だってよ
王は、一人一人の
ステータスを見て回っていた。
一人一人に対し、いちいち驚愕している。
疲れないの?それ。と、一純は思う。
その後方では王女と思わしき女性が
持ってこさせた椅子によっこらしょと
腰を下ろしていた。かなり疲れたのだろう。
おばあちゃんみたいに行動が遅い。
一純は、辺りを見渡す。
何人かはまだ寝ている。
結愛は起きているが、誠也と篠はまだ
寝ている。
王が一純の目の前にやって来た。
「ソナタのステータスを見せて
いただきたいのだが、よろしいかな?」
「いいですけどさ...失望するよ?」
「ご謙遜を、是非。」
「いいですけど...」
天野 一純
LV.1
HP 100
MP 300
攻 3600
防 410
速 2100
運 1000
SP 10
スキル 合成魔法
隠しスキル SP振り分け SP強奪
「ぬぅ、ステータスは高い。
達人以上だ。だがスキルが合成魔法だけ...
合成魔法はものとものを合成させるだけの
非戦闘系スキル。(小声で)失敗作か...」
なにか聞こえた気がしたけど気のせいでしょ!
と、一純は聞こえなかったふりというか、
現実から軽く顔を背けた。
ものとものを合成させるだけの魔法。
場合によっちゃすごいがきっとモブ職業だろう。
隠しスキルは隠されているのだろう。
隠しスキルの二つは見えないようでいる。
だが、使えないと断言されたSPに関わるスキル。
はっきり言って無駄なのである。
一純は思う。
俺はここにいてはいけない。
いれば皆に迷惑がかかる。
こんなひ弱な俺を、優しい皆は
見捨てないだろう。
そんな心が実戦で、訓練で、生活で、みんなに
悪影響を与えることになる。
だとしたら、それは皆が許しても、俺は
許せない。自分がいやになる。
迷惑もかけたくない。
ならばできることはひとつ。
ここから出ていく。
「王様、俺こんなんですし、
ここにいてもきっと皆に迷惑を
かけるだけなので、
出ていかせてもらいませんか?」
「いや、しかし、こちらにもこちらの都合で
勝手に呼び出したけじめがある。
ここを出るのは流石に...」
「お願いします。皆に迷惑を
かけたくないです。」
「う、むぅ、ならば分かった。行くがよい。だが
慰謝料としてせめてこれを受け取ってくれ。」
そういって王は、
表にに男性の顔、裏にこの国のマークが
掘られた金貨を三枚渡してきた。
この国のマークはたぶんだ。
王の服の胸部に刺繍されている。
「それは金貨というもの。
これがあれば一ヶ月は宿に泊まれる。
受け取ってくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
皆は俺のことに気づいていない。
ただ一人を除いて...
「お兄様!行ってはダメです!もし行くのなら、
私もお供します。おいていかないで下さい。
お願いします。お願いです!」
結愛だ。
だが、それは絶対に許されない。
なぜなら結愛は、結愛こそが真の勇者
なのだから。先程王が結愛の前に
たどり着いたとき、他の人よりも大きく
反応していた。現状で考えられることは1つ、
俺みたいな落ちこぼれか、それとも他より
ずば抜けて高いかだ。だが、それは
王の態度が示した。王はそれを見たとたん
結愛を褒めに褒めちぎった。
つまり、そういうことだ。
俺は結愛にゆっくりとした足取りで
近づく。不安にさせないように
薄く、微笑みながら。
結愛は満面の笑みを浮かべる。
だが俺はそれに裏切った。結愛の未来を
潰さぬよう、涙をこらえながら。
天野流対人術 ≪気落≫
「う...ぁ..おにぃ..さま....?」
「ごめんよ結愛。ごめんよ。ごめんよ。
お前の未来を潰したくない。俺について行っても
後悔するだけだ。勇者になって、強くなって、
明るい未来を築き上げるんだ。
そこに俺は、不要だから...」
「おに...様の..いな..未ら...な...て...」
「だから、俺のことは忘れて、幸せになれよ」
そういって俺はそこから駆け出した。
みんなもこれで気づいたが、
俺に追い付けるやつなんて一人もいなかった。
目を風で乾かす。使えないならいいでしょ!
と、王を合わせて40人分のSPを奪ってきた。
結局はちょいワル目でいたい一純が
一純である故、
さらっとそういうことはしちゃうのである。
まぁ、実際のところ減っているSPに気づいて
あいつめ!wとか思わせたいだけの
寂しがり屋である。
さて、これで俺もぼっちと化した。
仲間はほしいけど慌てずいこう。
生きてやるさ、第一印象最悪なこの世界で。