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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第1章
98/460

戦え!スターダスト!

なんとかエイプリルフールには間に合いました。今年はヒーローです。最後の茶番は無いのでご了承ください。

 科学が発展した現代。平和な日本で人々は幾度となく怪人による危機にさらされていた。人々も怪人に対抗すべく、各地に『ヒーロー』という集団を置き人々を守っていた。

 そして、今まさに1つの街で怪人とヒーローの戦いが始まろうとしていた。




☆   ☆   ☆   ☆




『ゲーハッハッハ!この街を破壊しつくしてやるぜ!』

(きゃああああ!)



 ヘビの姿をした怪人が杖の先から光線を出して街を破壊する。街の人達が逃げ惑う中、ヘビ怪人は高らかに笑いながら街を破壊していく。



『ゲーハッハッハ!この街は俺がいただいた!』

「そこまでだ!」

『誰だ!』



 ヘビ怪人が声のした方へ視線を向ける。すると、5人の人間が並んでいた。



「お前達の野望は俺達が止める!」

『忌々しいヒーロー共め。今日こそは滅ぼしてやる』

「そんな事はさせない!みんな行くぞ!」



 忌々しげなヘビ怪人を前にスターダストがスマートフォンを取り出して前に突き出す。



「「「「「変身!」」」」」



 掛け声と共にスマートフォンが光だし5人の姿を包み込む。光が収まるとそれぞれの衣装が変化しておりポーズをとって名乗り始める。




「俺はヒーローブラック、ホウリ!」

「わしはヒーローレッド、フラン!」

「僕はヒーローグリーン、ロワ!」

「私はヒーローゴールド、ミエル!」

「ノエルはヒーローホワイト、ノエル!」

「5人揃って!」

「「「「「スターダスト!」」」」

『ちょっと待てぇぇぇぇ!』



 ヘビ怪人の叫びに水を差されたホウリは機嫌が悪そうに口を開いた。



「なんだ?文句でもあるのか?」

『あるに決まっているであろう!』

「何にだ?」

『貴様らの格好にだ!』

「格好?」



 ヘビ怪人の言葉にスターダストの面々が自分の格好を確認する。



「どこが可笑しい?」

『そこの赤髪の女』

「わしか?」

『貴様は良い。真っ赤なスーツでいかにもヒーローという感じがする。問題は他の奴らだ』

「僕らの何が気に入らないんですか?」

『何がじゃない!なんでヒーローがジャージなんだ!』



 フランを除いた4人は戦いには相応しくないカラフルなジャージを着ていた。



『貴様ら!やる気あるのか!なめてるのか!』

「は?格好だけで決めつける気か?お前こそなめているのか?」

『むう……。つまりは見た目以上の機能があると?』

「その通りだ。このスーツは普通のジャージとは違って……」



 ホウリは着ているジャージを摘まんでにやりと笑う。



「着心地が抜群なんだ」

『やはりただのジャージではないか!』

「ただのとはなんだ。一人ひとりの体形や体質をデータ化したものを元に特注した衣装だ。1着につき数億は下らない」

『そんなのどうでも……数億!?着心地のために数億かけるのか!?』

「僕的には体温の調整機能も欲しかったですけどね」

『これ以上に求めるのか!?』



 ヘビ怪人は頭痛がする頭を抱える。だが、すぐに杖を構えなおしてスターダストへと向ける。



『もういい、貴様らと話していると頭が痛くなってくる。ここでくたばれ!』

「みんな、行くぞ!武器を取り出すんだ!」

「うむ!」

「はい!」

「ああ!」

「うん!」



 それぞれがスマートフォンを取り出して操作をする。すると、スマートフォンから光の粒があふれ出し持ち主の手に形を作っていく。



「ロワ、ミエル、ノエル、合体だ!」



 ホウリの号令で4人は一斉にスマートフォンを操作する。すると、4つの武器が1つにまとまり一つの大きな物体になる。



「さあ、行くぞ!」

『行けるかぁ!』



 ヘビ怪人が持っている杖を振り回しながら叫ぶ。そんなヘビ怪人に呆れた様子でフランは訪ねる。



「なんじゃ?今度はなにが不満なんじゃ?」

『まず赤髪の貴様。貴様が手に持っている武器はなんだ?』

「剣じゃな。腰には銃もある」

『かなりスタンダードだ。正にヒーローの武器といえるだろう。問題は他の連中だ』

「私らの何が問題なんだ?」

『貴様らの武器が合体した結果、何が出来たかを言ってみろ』

「『こたつ~みかんとゲーム機を添えて~』だが?」

『くつろぐ気満々じゃないか!貴様らは戦う気があるのか!?』

「ない!」

『元気よく言うな!こたつに入るな!みかんを剥くな!コントローラー持つな!』



 のんびりするスターダストの面々に杖を向けながら叫ぶ。そんな中、唯一戦いへのやる気を見せているフランが口を開く。



「まあ、よいではないか。わしが戦うんじゃから問題ないじゃろ?」

『役立たずを連れてくるなど、貴様はそれでいいのか?』

「皆は役立たずではない。戦えばお主程度には勝てるじゃろう。ただ、わしが一人で怪人を殲滅するほうが早いだけじゃ」

『貴様どれだけ強いのだ!?』



 ヘビ怪人の叫びにコントローラーを操作するホウリが答える。



「フランは本気を出せば一撃で地球を半壊させることができるからな。下手に俺たちが手伝うよりもフラン一人に任せたほうが効率がいい」

『貴様らは必要なのか?』

「ヒーロー集団は国営だから色々と決まりがあってな。必ず5人で行動しないといけないんだ。フラン以外は数合わせみたいなものだ」

「全員なにかしらのエキスパートじゃがな」

『エキスパート?何のだ?』



 首をひねるヘビ怪人にそれぞれが説明を始める。



「僕は射撃手です。どれだけ離れている物でも視認できれば射抜けます」

「私はタンクだ。他の人や物へのダメージを自分に向ける事ができる」

「ノエルは回復師だよ。傷ついた人を癒せるよ」

「俺は指揮官だな。情報収集もお手の物だ。国家の機密からどこかのヘビ怪人の秘密までなんでもわかるぜ」

『最後の奴ちょっと待て。ヘビ怪人って俺しかいないんだが、どんな秘密を持っている?』

「昨日はヘビ美ちゃんとお楽しみでしたね?奥さんには出張って説明したんだって?」

『な、なぜそれを!?』



 ホウリの言葉にヘビ怪人を顔を青ざめさせる。



「とまあ、こういう奴らじゃ。わしに比べれば物足りないが4人だけでも怪人退治はできる」

『俺にとっては最後の奴が脅威のような気がするがな』

「今すぐ撤退しないとボコボコにした上で奥さんにさっきの事をバラすぞ?」

『あー、そういえばなんか体調が悪くなってきた。今日の所は撤退してやる。じゃあな!』



 そういうとヘビ怪人は明後日の方向へ走り去っていった。



「正義は勝つ!」

「いつも思うが、これでよいのかのう?」



───次の日───



『ゲーハッハッハ!この街を破壊しつくしてやるぜ!』

「そこまでだ!」



 街を破壊しようとしたヘビ怪人が嫌そうに声がした方へと視線を向ける。



『貴様らか』

「嫌そうな顔をするな。俺たちだって出動したくねえんだよ」



 ヘビ人間は嫌々ながら杖を構える。



『今日は昨日のように行かないぞ。上司に次に逃げ帰ったらクビだと言われているのでな』

「そりゃ気の毒だ。だが、俺たちは手加減しないぜ?」

「というか、怪人にもクビとかあるんですね」

「どんな境遇でも敵には違いない。同情してはダメだ」

「分かってます」



 そう言うとスターダストの面々がスマートフォンを構える。



「ロワ、ノエル、ミエル、行くぞ!」



 スマートフォンで『こたつ~みかんとゲーム機を添えて~』を出現させた4人は、いそいそとこたつに入ってコントローラーを持つ。



「さあ来い!」

『こたつに入りながら言うな!』

「あー、ホウリお兄ちゃん、そのカード使っちゃダメ!」

「くっ!全員で落とそうとしてもなぜ落ちぬ!」

「もう少しで全部の物件買われちゃいますよ!」

『貴様らはもう少し緊張感を持て!というか、唯一まともだった赤髪の女はどこだ?』



 ヘビ怪人があたりを見渡すがフランの姿は見えない。ヘビ怪人の疑問にホウリはコントローラーを操作しながら答える。



「フランは明日やるノエルの誕生日会の準備をしている」

『誕生日会!?俺が言うのもなんだが世界の危機だぞ!?』

「俺たちだけでなんとかなるからな。何なら俺たちのうち一人だけでも十分だ」

『ならば俺と戦え!』

「ちょっと待ってください。このターンだけやらせてください」

「1!1さえ出ればこのターンで!」

「残念ながら出ないんだな~」

「あー!6だー!」

「お前ら!いい加減にしろ!」



 豪を煮やしたヘビ怪人が魔法を4人に向けて放つ。瞬間、



(ギャァァァン)

『な!?俺の魔法が弾かれた!?』



 『こたつ~みかんとゲーム機を添えて~』の周りを囲むようにバリアが表れて魔法を弾く。



「無駄だぜ。この『こたつ~みかんとゲーム機を添えて~』は周りにバリアを発生させる。核爆弾でも破れない」

『無駄に高性能だな!?』



 呆然と杖を下げるヘビ怪人だったが、何かに気づいた様子を見せると口角を上げてニヤリと笑う。



『ならばいい。貴様らが戦う気が無いのならば俺は街を破壊しつくすだけだ!』



 ヘビ怪人は標的を建物に変えて魔法を放つ。だが、



「無駄だって言っただろ?」

『な!?』



 魔法は方向を変えて『こたつ~みかんとゲーム機を添えて~』へと向かう。そして、魔法はバリアに弾かれて消え去った。



「言った筈だ。私の能力は攻撃の私に向ける事だとな」

「そういう事だ。街への攻撃も全部無効化するだけだ。何回魔法を放とうが無駄だ」

『くっ……』



 悔しそうな表情で魔法を繰り出すヘビ怪人。だが、魔法は全てバリアに弾かれる。



『くう……、何か方法はないのか?』

「あきらめろ。お前に打つ手はない」

『……俺はあきらめない!』



 ヘビ怪人の魔法が熾烈になっていく。だが、4人は気にしない様子でゲームを続ける。



『うおおおおおお!』

「流石にうるさいな。ロワ」

「了解です」



 ロワは『こたつ~みかんとゲーム機を添えて~』から弓矢を取り出してヘビ怪人に向かって放つ。ヘビ怪人は攻撃が来ると思ってなかったのか矢をまともに受けてしまう。



『ぐあっ!……なんともないな?何をした?』

「説明しなくても分かる」



 首をひねるヘビ怪人であったがすぐさま魔法での攻撃を再開しようと杖を向ける。しかし、



『な!?魔法が出ない!?』

「お前のデータをもとに作成した魔法を封印する矢だ。2~3日は魔法が使えないと思え」

『なんだと!?俺はどうやって街を破壊すればいいんだ!?』

「杖で叩けばいいんじゃない?」

「ノエル、実はあのヘビ怪人は魔法が使えないと子供よりも弱いんだ」

「え?じゃあ、ヘビ怪人さんは怪人できないの?」

「怪人するってなんだ」

「まあ、破壊活動はできないでしょうね。でもなんで2~3日なんですか?」

「明日暴れられるとノエルの誕生会を中止しないといけないだろ?」

「なるほど、フランが怒り狂う未来が見えるな」

「そう言うことだ」



 ゲーム画面を見ながら雑談をするように話をする4人。そんな4人を呆然とした様子で眺めるヘビ怪人。



『お、俺はどうすれば……』

「さあな。俺たちはそろそろ帰るから後は好きにすればいい。じゃあな」



 4人は『こたつ~みかんとゲーム機を添えて~』を仕舞ってやってきた方向へと帰っていく。ヘビ人間はそんな4人を呆然と見つめていた。




───2日後───




『……この街を破壊しつくしてやるぜ』

「よお。遅かったな」



 ヘビ怪人が街にたどり着くと、そこに人々の姿はなく『こたつ~みかんとトランプを添えて~』に入ったスターダストの面々がいた。



「ねえねえヘビ怪人さん、昨日のお誕生日会でぬいぐるみ貰ったんだ。かわいいでしょ」

「これこれ、危険はないとはいえ戦場じゃぞ?大切な物を持ち込むでない」



 フランはうさぎのぬいぐるみを持ってはしゃぐノエルをたしなめる。



「よっぽど嬉しかったんだろ、今日くらい良いじゃねえか」

「それもそうじゃな」

『けはははは、貴様らは相変わらずふざけた奴らだ』

「何かヘビ怪人の様子が違いません?誰かハートの8持ってるの誰です?」

「確かに今までよりも目に光がないというか、力がないという感じだな。私は持ってないぞ」

「クビにされたんだよ。奥さんにも浮気がバレて出ていかれたみたいだし。ほい、あと3枚だ」

「あー、それは災難じゃったな。まさかお主の仕業か?……パス」

「そんな訳ないだろ。あいつは近いうちに、ああなる運命だったんだよ。後2枚だ」

「むー、ホウリお兄ちゃん強すぎ!」

『ゲハハハハハ、俺にはもう失う物は何もない。こうなればヤケだ!』



 力なく杖を構えて『こたつ~みかんとトランプを添えて~』に狙いを付けるヘビ怪人。そんなヘビ怪人を見てホウリがトランプを置く。



「仕方ねえ、戦うか」

「皆でか?」

「いいですね!やりましょう!」

「皆は私が守る!」

「ケガはノエルが治すよ!」



 スターダスト全員が『こたつ~みかんとトランプを添えて~』から出てきて構えをとる。



「みんな行くぞ!」

「うむ!」

「はい!」

「ああ!」

「うん!」

『来い!ヒーローども!』




───5分後───



『ううう、あいつらめ……』



 スターダストにボコボコにされたヘビ怪人が黄昏の川辺を歩いている。ボロボロの体を無理に動かしていたヘビ怪人だったが、ついには地面に倒れこんでしまう。



『ゲ、ゲハハハ。もう体も動かせないか……』



 力なく倒れ伏すヘビ怪人に何者かが近づいてくる。ヒーローが止めを刺しに来たかと思い顔を上げると、そこには元の部署にいた部下の怪人たちがいた。



『大丈夫ですか隊長!?』

『お、お前たち……なんでここに?』

『隊長がクビになるぐらいなら俺たちもお供します!』

『そうですよ!黙って出ていくなんて水臭いじゃないですか』

『みんなで1から頑張りましょう』

『ほら、肩貸しますよ』

『お、お前ら……ありがとう!』



 部下の肩に寄りかかりながら川辺を歩くヘビ怪人。その胸にはヒーローを倒すという決意が溢れていた。

 戦えヘビ怪人!負けるなヘビ怪人!悪の美学がそこにある!



☆   ☆   ☆   ☆



「そういえばホウリ、なぜヘビ怪人を逃がしたんじゃ?とどめを刺すことは簡単じゃったろ?」

「最近、怪人を狩り尽くしてきただろ?」

「そうですね。このまま怪人を駆逐できるかもしれないって言われてますね」

「怪人がいなくなると俺たちはどうなる?」

「お払い箱だな」

「こんな楽な仕事無くなるのは嫌だろ?弱い奴を残しておいて長く続けておくと思ってな」

「…………今まででドン引きしておるぞ」

「悪にかける情けは無い。後30年はそのままにしておくか」

「悪よりもあくどいな」

「流石に僕もどうかと思いますよ?」

「しかも、怪人って進化するんだよね?強くなったら困らない?」

「そこも心配ない。ヘビ怪人は最終進化だからあれ以上は強くなりにくい。頑張っても今の3倍だろう」

「ほっといても大丈夫という訳か」

「そういう事。怪しまれないように他の怪人は倒すから問題もない」

「……まあよいか」

「そうそう、気にするな。それよりも飯食いに行こうぜ。旨い焼き肉屋があるんだ。俺が全部おごるぜ?」

「それは良いのう!」

「さんせー!」

「確かに久しぶりに戦ってお腹空きました」

「私も異論はない」

「それじゃ、行くぞ!」

「「「「はーい!」」」」

この話から見始めた人へ、登場人物本編を元にしてますが、ここまで酷くないです。気になった人は本編をぜひご覧ください。

来年は何にしましょうかね?考えとしては怪盗やホームコメディ何かがあります。

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