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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第1章
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第七十七話 決勝戦 まっすぐ行ってぶっ飛ばす

投稿日が1日ズレてしまい申し訳ありません。あと、前回の次回予告と内容が異なってます。次回予告の奴は次回やる予定ではあります。

───斧神───

斧神とは斧を装備している時に使用できるスキルである。神級スキルとはユニークスキルの詰め合わせであるが、斧神は攻撃力ら防御力を上げるスキルが中心である。元来、このスキルを付与された人物はクレバーな人物が多いため、スキルの内容とも相まって強力な戦士になることが多い。──────Maoupediaより抜粋




☆  ☆  ☆  ☆ 





 闘技大会最終日、わしらは4人並んで決勝戦を待っていた。対戦カードはというとパイナ対ロットとなっておる。

 わしの隣に座っておるロワが腕を組んで緊張した面持ちになる。



「……いよいよですね。緊張します」

「そうだな。あいつに全てを任せるのは不本意だが、今はあいつを信じよう」

「そこまでは言ってないんですが?」

「他の人に全てを託して見ているだけというのは心配じゃろう。自分に全て掛かっているというのもキツイがのう……ふあぁぁぁぁ」



 わしはホットコーヒーを啜り、眠気を取り除こうと試みる。ホウリの奴め、人使いが荒いのではないか?この後もやるべき事があるしのう。



「ふう……」

「フランさん眠そうですね?」

「夜中にホウリに連れられてのう。色々あって帰りが夜明け頃になってしまったのじゃ」

「何があったんだ?」

「言えぬ」

「いつものか」



 ミエルはそれ聞いてはこず、ため息をついて戦場へと視線を向ける。

 申し訳ないという気持ちもあるが、これもノエルを守るためじゃ。心苦しいが我慢してもらおう。

 それにしても今日は観客のざわめきが大きいのう?



(ねえねえ、今日の試合どっちが勝つと思う?)

(そりゃあロットでしょ。負ける姿想像できないし)

(でもパイナってあっと驚く手段使うかもしれないし、私はパイナを推すかな。あなたは?)

(ロット×パイナ……、いけるわね)



 今大会のダークホースと優勝候補の対決。話題性も高い筈じゃ。そういえば、解説席はどうなっておるんじゃろうか?魔道具で確かめるとするか。



『……なあ、いい加減機嫌治してくれないか?』

『そんな事言われましても……、はあ、ロワ大丈夫かしら?』

『昨日ヒーラーが治していたから心配いらねえよ。お前も見てただろ?』

『……はあ、あの雌豚と一緒で大丈夫かしら?』

『そっちの心配?ロワの怪我の心配じゃなくて?』

『ロワがあの程度で死ぬわけないじゃないの?ふざけてますの?』

『ロワの試合の後に取り乱していた奴の発言とは思えないな』



 こいつらはロワの話しかせんのか?今更じゃけど、解説を変えた方が良いのではないか?

 


「父さんも姉さんも公共の場で何言ってるの……」

「愛されておる証拠じゃろ。むしろ羨ましいと思うぞ」

「じゃあ代わりますか?」

「それは遠慮しておこう」

「それよりも、私がロワのお姉さんの恨みを買っているのが心配だ。皆は何か心当たりはないか?」

「僕は分からないですね」

「わしにも分からん」

「会っていきなり雌豚呼ばわりされるのは相当な事のはずなんだがな。一体なにがあったんだ?」



 腕を組んで真剣に考えるミエル。そういえば、ミエルはチフールにあったことが無かったのか。ということは、チフールの本性も知らぬ筈か。下手なことを言って話がこじれても困るし、ここは知らぬ存ぜぬで通そう。



『ああ、こんな話をしていたら心配になってきましたわ。今すぐロワの元へと急がないと』

『解説の仕事を放っておくつもりか?』

『ロワに比べたらこんな仕事どうでもいいですわ!』

『そのセリフは一番言っちゃいけない奴だからな?』

『ですが!』

『それにロワもこれを聞いてる。姉が仕事を放りだして自分の元に来たとしても嬉しくないだろう。むしろ軽蔑するかもな』

『さあ、解説行きますわよ』

『それでいい』



 ここにチフールが乱入してくる事は防げたか。トレットのファインプレーじゃな。



『闘技大会最終試合はロット選手対パイナ選手か。お前はどちらが勝つと思う?』

『ロット選手は一撃が大きく飛び道具もありますわ。それに比べてパイナ選手は取れる手段が多いのが強みですわね。正直な所、どちらが勝っても不思議ではないですわね。強いて言うなら、斧神を持っているロット選手が有利だと思うますわ』

『俺はパイナ選手に勝って欲しいな。あっと驚く試合展開を期待してる』

『意見が割れましたわね』

『どっちが勝ってもおかしくないからな。ここで皆からのお便りを読んでおこう』



 お便りってなんじゃ。なぜラジオ番組みたいな企画をしておる。



『1通目はこちら、PN(ペンネーム).天の道を行くもの さんからいただきました』

『ありがとうですわ』



 やはりラジオ番組に寄せておらぬか?



『「私はロット選手を応援してます。あの巨大な斧での一撃、しびれます」だそうだ』

『ロット選手の最大の強みですからね。そこに惹かれるのは分かりますわ』

『続きましてPNペンネーム.ホッピングホッパー さんからいただきました』

『ありがとうですわ』

『「僕はパイナ選手が勝つと思います。2回戦までは搦手を使う最低な選手だと思ってましたが、準決勝で熱い試合をしたので決勝戦も期待してます」だとさ』

『確かに最初の2戦は試合と呼んでいいか分からない物でしたが、準決勝はかなり良い試合をしたと聞きます。この調子でいい試合をしてほしいですわね』

『次のお便りは────』



 トレットが次のお便りを読もうとするとした瞬間、闘技場に選手入場のサイレンが鳴り響いた。



『もう入場の時間か』

『お便りはお預けですわね』

『解説をお聞きの皆さん、いったん音声を切りますがチャンネルはそのままで』

『私達以外のチャンネルなんてありませんわよ』



 魔道具からブツッという音と共に2人の声が聞こえなくなる。それと同時にスピーカーからトレットの声が闘技場に響き渡る。



『皆さん、お待たせしました!決勝戦、選手入場です!』

(わあああああ!)



 トレットのアナウンスで会場のボルテージが最高潮になる。流石は決勝戦と言ったところか。



『決勝進出者1人目はこいつだ!俺の斧に砕けぬものはない!大会に新たな歴史を刻み込む!ロット・シャルン!』

(わああああああ!)



 身の丈ほどもある斧を担ぎながらロットが入場してくる。その表情は昨日よりも真剣なものになっておる。



『2人目はこいつだ!正体不明ながらも実力は折り紙付き!誰が相手でも華麗に勝利を掴む!パイナ!』

(うわああああああ!)



 フードを目深に被り鉄仮面を付けたパイナが入場してくる。昨日はブーイングを発していた観客も今日は歓声を上げている。

 二人は視線も合わせずに指定の位置に付く。それを見たロワが不思議そうに首を傾げる。



「あれ?」

「どうしたんじゃ?」

「僕の気のせいかもしれませんが、お二人の間に緊張感が感じられなくて」

「言われてみれば確かにそうだな」

「どういうこと?」


 

 小首をかしげるノエルにロワが説明する。



「なんというか、これから優勝者を決めるのにどちらも勝とうという気概が感じられないというか」

「戦意そのものが薄い気がするのだ」

「うーん、わかんないや」


 

 ノエルはわからんみたいじゃが、2人は違和感に気が付いたみたいじゃ。中々鋭いのう。

 皆が首を傾げている間に、2人が所定の位置へと着いた。



『それでは、試合開始ぃぃぃぃ!』

(わああああああ!)



 パイナは新月を取り出してロットへと迫る。ロットはというと、斧を地面に突き刺して2本の手斧を取り出した。



「はあ!」



 ロットは手斧をパイナに向けて投げつける。風を切る音と共に手斧がパイナへと迫る。

 パイナは持っていた新月で軌道を変えるように手斧を受ける。じゃが、威力が凄まじかったのか持っていた新月が吹き飛んでいってしまい、大きくのけ反ってしまう。



「……くっ!」

「はあ!」



 これをチャンスと見たロットは地面から斧を引き抜いてパイナへと迫っていく。一撃受ければ決着がつく以上、なんとかしなければ終わってしまうじゃろう。じゃが、パイナへ斧が振り下ろされようとした瞬間、新月がロットの顔面に直撃し斧の挙動が大きく外れる。



「ぐあ!」



 今度はロットが隙を晒す形になり、その隙を逃さずパイナが新月で切り付ける。

 新月は首筋を捕えるものの、あまりダメージを与えられている様子はない。



『な、なにが起こりましたの?パイナ選手の武器がひとりでに動きましたわよ?』

『パイナ選手の腕をよく見てみろ』

『腕?』


 

 よく見てみると、パイナの腕からはキラリと光る何かが新月まで伸びているのが分かる。



『あれは糸?』

『その通り、糸を武器に結び付けて手から離れても操作できるようにしていんだろう』

『なるほど、ユミリンピックのロワもやってましたわね』



 チフールの納得した声が魔道具から聞こえる。

 解説席の解説も良い線いっておるが少し違う。パイナの糸はロワの糸とは異なり、糸の挙動が操れる。また、糸の長さを調整できる分、汎用性も高い。糸の扱いに関してはパイナが上じゃろう。

 一発殴ったパイナはすぐさま距離を取り新月を構える。



「あれ?なんで追撃しないんですか?」

「見ていれば分かる」



 パイナは油断なくロットのを見据えながらしゃがみこむ。すると、パイナの頭を掠めるように手斧が通り過ぎていった。あのまま追撃しておったら手斧が背中に命中したじゃろう。

 体勢を立て直したロットが手斧を受け取ろうと手を伸ばす。瞬間、パイナが懐からビー玉くらいの大きさの玉を取り出して、ロットに向かって弾く。玉はロットの顔に命中すると煙がロットの顔を中心に広がっていく。



『煙幕ですか。手斧を取りづらくなりますし良い手ですわね』

『だが、ロットに通用するかな?』



 確かにロットであれば視界が制限されておっても手斧を受け取るくらい訳ないじゃろうな。

 ロットはそのまま手斧を受け止めようと手を伸ばす。それを見たパイナはロットへと突撃していく。

 煙は徐々に広がっていき、ついに2人の姿が煙に包まれる。



「ど、どうなったんですか?」

「パイナは大丈夫なのか?」



 全観客が固唾をのんで見守っている。そして、その時は唐突に訪れた。



「はああ!」



 ロットが大斧を片手で振り回し煙が吹き飛ばされる。

 煙から現れたロットは服の肩の部分が破れており片手には手斧を握っている。足元には手斧の1つが落ちていて肩に直撃したのが分かる。



「えっと……何が起こったんですか?」

「簡単に説明すると煙幕の中で手斧を受け止めたいロットとそれを阻止するパイナの攻防の結果じゃな。最終的にロットが受け止めた手斧は1つだけで、もう1つは肩に命中したみたいじゃな」

「一つ間違えれば自分に手斧が当たりかねない状況だぞ?パイナはよく煙の中に飛び込めたな」

「というか、手斧が当たって無傷っておかしくないですか?」

「それほど強敵ってことじゃ」



 じゃが、あの斧神の使い手を相手にパイナは戦えておる。このままいけば勝てるかもしれぬのう。

 肩で息をしているロットは大斧をアイテムボックスに仕舞う。そして、落ちている手斧を拾って両手持ちの構えになる。



『ほう?なるほどな』

『「なるほどな」じゃありません。さっさと解説しなさい』

『パイナ選手が速度や機動力を生かした戦い方だから、大振りの攻撃が当たらないと判断したんだろう。だから、機動性が高い手斧での戦闘に切り替えたんだろう』

『なるほどですわ』

『お前も言ってんじゃねえか』



 斧の二刀流か。一番得意であろう大斧ではなく手斧での戦闘に切り替えられる。スキルだけでなく使い手自身も優秀じゃな。

 皆が次の展開を見守る中、2人は少しも動かない。達人特有の間というものじゃろうか?という呑気な事を考えながら動向を見守っておると、ありえない光景が目の中に飛び込んできた。

 手斧を構えるロットを見ながらパイナがローブを脱ぎ捨て、おもむろに()()()()()()()



「な!?何をやっているのだあいつは!?」

「どういう事ですかフランさん!?」

「ええい!わしに分かるか!わしじゃって聞いておらん!」



 急な出来事に頭が付いていけん!なんじゃ!?何が起こっておる!?なぜホウリは姿を明かした!?

 素顔を明かしたパイナ──ホウリに会場中もざわめき始める。



(お、おい、あれって……)

(キムラ・ホウリだよな?髪の色が違うけど)

(なんでホウリがあんなところに?)



 会場のざわめきを聞きながら我関せずと言った様子で手甲をつけるホウリ。そんなホウリを怪訝そうな顔で見つめるロット。



「……なぜ仮面を取った?」

「この後に必要でな。後は会場の皆へのサプライズって所か」

「……それだけか?」

「あと一つあるとすれば」



 手甲を付け終えたホウリがロットに拳を突き付ける。



「ここからは小細工なしの殴り合いをするっていう意思表示だな」



 アイテムが付いているローブを捨てたのは真っ向勝負の意思表示か。ホウリらしいと言えばらしいか。

 ホウリとロットのやり取りを一応3人に伝える。



「な、殴りあい!?斧神もってるロットと!?」

「勝てるんですか!?」

「ホウリお兄ちゃん大丈夫なの!?」

「安心せい、ホウリは勝てぬ戦いはせぬ。奴にとってこの選択が一番勝率が高いと踏んだんじゃろう」



 とはいえ、斧神に素手で挑むのは心配というのは分かる。どういう戦いになるんじゃろうな。



『あら、パイナ選手はホウリでしたの?』

『知ってるのか?』

『私がロワを託したパーティーのリーダーですわ』

『ほう、ロワのパーティーのリーダーか。一度会ってみたいな』

『あの雌豚が入る事が分かっていれば全力でパーティー加入を阻止したのですがね』

『とりあえず、その殺意は隠しておけ』



 外野がギャーギャーと喚いている中、肝心のロットとホウリは構えを取って向かい合っている。



「……騒がしいな?」

「気にするな。今大切なのは俺とお前の間で決着を付ける事だけだ。それだけ考えておけ」

「……それもそうだ」

「………………」

「………………」



 2人はそれきり言葉を交わさず向かい合い続ける。瞬間、



「うおおおおおお!」

「はああああああ!」



 2人が互いに向かって走り始めた。



「ふん!」



 ホウリが間合いに入った瞬間にロットが手斧を振り下ろす。じゃが、手斧はホウリのわずか数㎜を通り過ぎた。ホウリが走る速度を手斧がギリギリで通りすぎるように調整したのじゃ。



「はあ!」

「むん!」



 ホウリがロットの腹に拳を叩きこむがロットは腹筋の力だけで跳ね返す。一応、ホウリは鎧通しを使っておるが、そもそもHPが高すぎて効いてるようには見えぬ。



「オラ!」

「喰らうか!」


 

 横なぎに来た手斧をバックステップによりギリギリで回避し、ホウリはがら空きの脇腹に蹴りを繰り出す。しかし、読んでいたのかロットは斧の反動を生かして、体を捻って回転蹴りを繰り出す。

 いち早くロットの蹴りを予測したホウリは蹴りかけた足を引き戻し、しゃがんで回避する。



「い、息が出来ない程激しいですね」

「ホウリは攻撃の動作を察知されないように攻撃しているが、攻撃が当たれば終わりであるから有利とはいえない。両者とも緊張感が凄いな」

「どっちが勝ってもおかしくないのう」

「ホウリお兄ちゃん……」


 

 ノエルが手を合わせてホウリの勝利を祈る。その祈りに応えるようにホウリは怒涛の攻めを見せる。



「はああああ!」



 ロットの腹や首といった急所に攻撃を繰り出す。じゃが、どれも決定打になっていない。

 その後も、振り下ろし、回避し、防ぎ、殴り、蹴り、切り裂きといった攻防が数時間にも渡って繰り広げられた。



────数時間後────



「はあ……はあ……」

「どうした?もう終わりか?」



 数時間にわたる攻防により、肩で息をしているロットとは対照的にホウリは汗1つ掻いていない。相手の動きを予測する為に体だけでなく頭を使う分、消耗がはげしいのじゃろう。



「そろそろ決着を付けるか」

「……臨むところだ」



 呼吸を整えたロットは斧を構えなおす。



「いくぞ!」

「来い!」



 ロットがホウリに向かって走って距離を詰める。



「はあ!」



 射程に入ったロットが全力で手斧を薙ぐ。しゃがんだり、後ろに下がったりする暇がない完璧な一撃、疲れている一撃とは到底思えん。流石と言ったところじゃな。



「完璧な一撃だ!だが甘い!」



 迫りくる手斧を前に、ホウリは前へと突っ込んでいった。



「なに!?」



 確かに斧は懐に潜り込まれれば威力が極端に低くなる。じゃが、ホウリの場合は極端に威力が低い懐に居たとしても危ない。最悪の場合は試合終了になりかねん。

 ロットも同じことを思っていたのか、対応が遅れて斧を振り切ってしまう。ホウリはというと、勢いがついたロットの腕を腹で受ける形になった。



「グフッ!」



 腹でロットの腕を受け止めたホウリは口から血を吐きながらニヤリと笑う。



「……この位置だ。この位置が欲しかったんだ」

「何を──」

「終わりだ!」



 ホウリは拳を引くと渾身のストレートを繰り出した。じゃが、その拳はロットの顎を掠める形で通り過ぎる。



「外した!?」

「落ち着け、あれでよいんじゃ」



 ホウリは腕から離れるとロットの正面へと立つ。瞬間、ロットの体が前へゆっくりと倒れていった。



「何が起こったんですか!?」

「脳を揺らして平衡感覚を奪ったのじゃ。結果、ロットは立っておられず前へ倒れこむしかないという訳じゃな」



 ホウリは倒れてくるロットに拳のラッシュを繰り出していく。



「はあああああああ!」



 胸や腹に可能な限り拳を叩きこむ。すると、その体は徐々に電撃を帯びていき、ラッシュの速度が速くなっていく。敏捷性を上げることが出来る『雷装』と『加速』の合わせ技じゃ。

 雷装や加速は強力じゃが、MPの消費が激しい。ホウリはここで決めるつもりなんじゃな。



「いっけええええええええええ!」

「はああああああああああああ!」



 ノエルの叫びに呼応するかのようにホウリのラッシュの速度が速まっていく。そして



「はあ!」

「ぐわっ!」


 最後は足に雷装をして回し蹴りを叩きこむ。回し蹴りを受けたロットは3m程吹き飛ばされて地面に倒れこむ。



「や、やったか?」

「うかつにフラグを立てるでない!」


 

 わしがロワを叱った瞬間、ロットが震えながら体を起こした。あれだけやられてまだ動けるのか。



「う、うう……」

「まだ続けるか?」



 ホウリの問いにロットは薄く笑った後、再び地面に倒れこんだ。



『ロット・シャルン選手戦闘不能により、勝者、パイナ選手!』

(わああああ!)

「よっしゃあああ!」



 歓声に応えるようにホウリは天高く腕を突き上げたのであった。

という訳で、珍しくホウリが真っ向勝負しました。いえ、実は真っ向勝負に見せかけた小細工してたりします。詳しくは次々回ですかね?


次回は前日の夜に何があったのかです。この話の前に決勝の話を書いておいた方が良いかなって後から思いました。


555全部見ました。全部、乾巧って奴の仕業でした(ネタバレ)

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