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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
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第三百六十七話 OTL

今回でオダリム編は終わります。

「私達は条件を飲み、オダリムに奉仕することを誓います」



 その言葉にリコットが満足そうに頷く。



「その言葉を待っていましたよ」

「それで、私たちは何をすればいいのでしょうか」

「年に一度、指定した日にオダリムに来ていただければ問題ありません。集まるまでは何をしていても自由です」

「お目付け役ってのは決まっているのか?」

「まさか、この3人っすか?」



 光が俺とロット、ジルを今後に見て来る。



「ジルとロットはそうだが、俺はお目付け役じゃないぞ。スターダストの奴らのお目付け役だからな」

「そういえばそうっすね」

「だったら残りの1人は誰だ?」

「私ですよ」



 名乗りを上げたのは満面の笑みのリコットだった。その言葉に光が顔を引きつらせる。



「ま、まさかっすけど、おいらのお目付け役だったり?」

「その通りですよ?」

「いやだああああ!年頃の乙女のお目付け役が小太りのおじさんだなんていやだああああ!」

「領主様に向かってえらい言い草だな?」

「命知らずね」



 リコットの言葉を聞いた光が半泣きで俺に縋りついてくる。



「お願いっす木村鳳梨!いや、鳳梨様!おいらのお目付け役は鳳梨様がやってほしいっす!」

「無理だって言ったろ」

「鳳梨様に不可能はない筈っす!なんせこの街の英雄っすから!」

「諦めろ。何を言われても俺はお目付け役にはならん」



 これ以上、面倒を見る奴を増やしたらフランを倒すのがいつになるか分かったものじゃない。



「そんなぁ……」

「光」



 膝を付いて落ち込む光の肩に信也が手を置く。光は力なく信也の方を向く。



「なんすか?」

「お前って女だったんだな?」

「それ今言うことっすか!?」

「安心しろ、このおっさんは良くも悪くも商売にしか興味が無い。お前が危惧してる展開にはならん」

「そ、そうっすか?なら、まあ……」

「ただし、商売方面にはこき使われるから覚悟しておけ。最悪、死ぬかもしれん」

「不安が増したんすけど!?」



 涙目で縋りついてくる光を無視して、言いたい放題にされているリコットを見る。



「ふふふ、あの力があれば情報戦を格段に進めやすくなる。これで更に儲けることが……」



 どうやら光の言葉は聞こえていないみたいだ。だが、やはり不審なことを呟いているな。



「光さんの事は分かりました。私達はどうなるのですか?」

「美香はロットがお目付け役の予定だ。美香を倒した張本人だしな」

「そうですか。分かりました」

「……他の奴が良いなら言え。俺はどっちでも構わん」

「いえ、私はロット様が良いです」



 そう言うと美香は無表情ロットの腕にしがみついた。ん?もしかしてこいつ?



「不束者ではございますが、よろしくお願いいたします」

「……ああ」

「ではご両親へ挨拶はいつにするか決めましょうか」

「……何のことだ?」

「一緒に住むのですから、挨拶は必要ではないですか?」

「……一緒に住むとは言っていない」

「私はこの世界について知りません。ロット様がいないと戦闘力も低いです。そんな女性を身一つで放り出されるのですか?」

「…………」

「ロット様はそんなに薄情なのですか?」



 美香がロットを上目遣いで見つめる。そんな視線を受けてロットは天を見上げてため息を吐く。



「……そんなに嫌なら他の奴にお目付け役を頼んでくれ」

「私はロット様が良いのですよ?」

「……何故だ?面倒見てくれる奴なら他にもいるだろう?」

「私が貴方を愛しているからです」

「……は?」



 突然の告白にロットの目が点になる。

 やっぱりか。表情からは読みにくかったが、美香はロットに惚れている。



「……意味が分からない」

「意味なんてありません。ロット様と戦っている時、力強く斧を振るう貴方が魅力的に映りました。それだけです」

「……それでも、お前の気持ちには答えられない」



 ロットはおもむろに手斧を取り出す。ロットがいつも使っている業物の手斧だ。



「……俺はこれから修業の旅に出る。危険な旅になるだろうから、1人で行くと決めている」



 ロットが手斧を握りしめる。まるで自分の弱さに苛立っているようだ。

 


「やっぱりか」

「……その様子を見るに、ホウリにはお見通しだったか」

「あの五龍断(ごりゅうのたち)は扱いが難しいからな。フランからロットの修行の具合を聞いていた時からこうなるって思ってたさ」

「……そうだ。俺は五龍断(ごりゅうのたち)を使いこなせていない。だから、もっと強くなるために旅に出る」

「フレズはどうするんだ?」

「……オダリムに残る。あいつは俺が切った木に細工していたからな。オダリムになら仕事に困らないだろう」

「そうか」



 そこまで話が進んでいるのなら決意が相当固いんだろう。説得は無理だな。する気も無いが。



「……そういう訳だ。あんたを連れていく訳には行かない」

「なるほど。私が危険だから連れて行きたくないと?」

「……ああ」

「なら話は簡単です。私を連れて行ってください」

「……話を聞いていたか?俺はこれから」

「危険な旅に行くんですよね」



 ロットのセリフを美香が奪い去る。



「置いて行かれても、私はロット様を追いかけます。場所が分からないなら、危険な場所をしらみつぶしに探します。自分が死ぬ危険があったとしてもです」

「……なぜそんな事をする?」

「貴方が好きだからです」



 真っすぐと美香の目がロットを射抜く。だが、ロットはまだ迷っているのか、美香から目を反らす。ここは少しだけ背中を押してやるか。



「旅はある程度の人数がいた方がいいぞ。美香なら戦力的にも問題無いだろうしな」

「その通りです。私を連れていく方が効率的です」

「……はぁ」



 俺達の言葉を聞いて、ロットは観念したように手を上げた。



「……分かった好きにしてくれ」

「ありがとうございます。では、子供は何人欲しいかを話し合いましょうか」

「……結婚するとは言って無い」



 美香が甘えるようにロットに頭を擦りつける。ロットはひどく疲れた表情で、またため息を吐いた。



「美香も光もお目付け役が決まった。つまり、俺のお目付け役は……」

「俺様って訳だ!」



 ジルが親指で自身を勢いよく指さす。



「そうか。よろしくな」

「おう!よろしく!」



 ジルと信也は固く握手を交わす。他の2人とは違ってスムーズに話が進んだな。



「それで、あんたは俺に何をして欲しいんだ?」

「そうだな……俺は良く分からないからグランガンに戻って親父に相談してみるか」

「親父?お前の父親は領主なのか?」

「ああ。俺は領主候補って奴だ。お前はグランガン出身の俺が手柄を立てたっていう証だ」

「手柄?」



 信也が説明を求めるように俺に視線を向けてくる。



「防衛戦で魔物討伐が一番多かったのはロット。2番目がジルなんだよ」

「なるほど。討伐数が2位のトロフィーとして俺が贈られた訳か」

「言い方にトゲが有る気がするが、そういう事だ」



 信也の目が鋭くなったが、ジルは気にする様子が無い。確かに自分を物のように言われたら良い気はしないか。

 だが、問題はその事にジルが気付いていないことだ。あんな感じで話が続くと信也の不満が溜まっていく。スキルの発動条件は反逆は起きにくいようにしたが完全じゃない。

 道連れ覚悟で信也がジルを攻撃することは可能だからな。そうならない様に信頼関係を築いて欲しいがジルだしな。

 こいつは10年以上もロワに誤解されるような行動をとっていた。ロワは許してくれたが、全員が許してくれるとは限らない。

 心配ないように見えて、こっちの方が一番相性悪いかもしれないかもな。



「話は終わったな。じゃあ、スキルを戻す日は後で知らせるから今日は解散だ」

「ホウリはこの後どうするんだ?」

「襲撃の細かい後始末が残っているから、それを片付ける」



 王都に帰れるのは明日の朝だろうな。

 そんな訳で、長いようで短かったオダリム襲撃は終わった。

という訳で、オダリム編はおしまい!長かった!


次回は外伝になると思います。魔王と勇者の二人旅を書きたい気分です。その前に茶番します。

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