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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
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第三百六十二話 デトロ!開けろイト市警だ!

今回は裏ボス戦です。

 3人がベッドに寝たりきりになった次の日の朝、スターダストはディーヌの宿で朝食を摂っていた。



「いやー、昨日は色んな人が来ましたねぇ」

「ラビ、ジル、ラッカ、ミント夫妻、コレト、銀の閃光etc……人が来すぎて部屋が窮屈だったな」



 ロワとミエルがパンを口に運びながらしみじみを言う。

 ミエルの言うとおり、わしが帰った時には見舞いに来た者ですし詰めじゃった。わしが買い物の時に会った者以外にも来ておったのう。



「窮屈ではあったが退屈はせんかったな」

「皆とお話できて楽しかったねー」

「これもお前らの人望のおかげだろうよ」

「そうか?お主からお見舞いにくるように言われたと聞いたが?」

「俺は3人が一歩も動けないとしか言ってない。お見舞いに来ると判断したのはあいつらだ」

「そう思うと、なんだか嬉しいですね」

「オダリムを守った功労者だからな。なんなら、カスケットとの戦いを一般にも公開してやろうか?」

「やめんかい」

「冗談だよ」



 カスケットとの戦いはトリシューラやノエルの存在など、世間に公開できんことが多い。じゃから、わしらがカスケットを倒したのは内緒じゃ。

 え?食堂でそういう話をするのは良いのかじゃと?わしのスキルで周りには聞こえておらんから問題無い。



「そういえば、カスケットはどうしたんですか?」

「確かキックした時にホウリお兄ちゃんが救出してたよね?」

「スキルを消した後は入院している。まだ意識は戻っていない」

「処遇は決まっているのか?」

「大体決まっているが、正式に決まったら皆にも伝える」

「そうか」



 意識が戻っても邪神については聞けそうにないじゃろうが、一応取り調べはするんじゃろうか。

 その後は死刑じゃろうな。死人が出ておらんとはいえ、人国へ明確に侵攻したわけじゃし。とはいえ、今話すことはなかろう。話題を変えるか。



「お主らの体調はどうじゃ?」

「万全ですよ」

「私も問題無い」

「ノエルも戦えるよ」

「回復が早いのう」



 気絶するまで戦ったら数日は動けんと思ったがのう。



「こいつらには体力をつけるのと同時に、体力の回復を早める訓練もしている。1日で回復して貰わないと困る」

「訓練のたまものか。色んなことをしておるんじゃのう」



 どんな訓練なのかは知らんかったが、強くなるだけでは無かったんじゃな。



「それじゃ、オダリム攻防戦の最後の戦いに行くか」



 全員の皿が空になったのを確認し、ホウリが立ち上がる。皆の間にピリッとした緊張感が走り、ホウリに続いて立ち上がる。



「油断するなよ?相手はカスケットと同等かそれ以上の実力者だと思え」

「分かってますよ」



 昨日の内にこれから戦いに行く者の説明は皆にしてある。しかし、相手が洗脳の使い手であること意外は細かいことは分からん。時間をかけると逃げられる可能性もある以上、調べる時間も無いようじゃし情報が無い中で戦いに行くしかない。



「先にも話したが、今回の戦いは俺とロワとミエルの負担がデカい。最悪死ぬかもしれない。覚悟は良いな?」

「今更何を言っている」

「僕たちが戦わないと他の人に被害が出るかもしれないんですよね?だったら戦いますよ」

「頼もしい限りだ」



 そう言ってホウリはニヤリと笑った。



「じゃあ行くか」



☆   ☆   ☆   ☆



 宿から出発して数十分、わしらは王都の道を歩いていた。なんと、最後の敵は王都に潜んでいるらしい。

 中央から離れた郊外をわしらは進む。王都の中央よりも活気は少ないが、王都だけあって人の通りはそれなりじゃ。

 大通りから路地裏に入り、入り組んだ道を進む。そして、1つのあばら家の前でホウリが立ち止まった。



「……ここだ」



 わしらは無言で武器を取り出して構える。ホウリも新月を右手に持って大きく構える。



「……行くぞ!」



 ホウリが新月で扉をぶち破って、そのままの勢いであばら家の中に突入する。



「動くな!大人しく手を上げろ!」



 ホウリが新月を構えながら叫ぶ。わしらもホウリの後に続いて突撃する。

 あばら家の中はベッドだけの質素な部屋じゃった。そして、そのベッドの上には男が座っており、横には女が立っておる。そして、男と女はどちらも動揺している様子は無い。

 ホウリは男に新月を向けたまま、油断なく口を開く。



「お前が邪神の使いだな?」

「だとしたら?」

「他の奴は捕まえた。お前も投降しろ」

「へぇ?断ったら?」

「力ずくで捕まえるだけだ」

「やってみなよ。出来るならね」


 

 そう言って、男はアイテムボックスから長方形の何かを取り出した。ホウリは先手必勝と言わんばかりに男に切りかかる。だが、傍にいた女がホウリに立ちはだかった。



「くっ……」



 ホウリは女に当たる寸前で新月を止める。



「この子は僕のお世話をしてくれる子でね。こうやって危険から守ってもくれる」

「人質を盾にするか」

「卑怯とは言わないでよ?」

「言わねえよ。ただ……」



 ホウリが女の後ろに回って羽交い絞めにする。



「1人で俺達を抑えられると思うなよ!」



 ホウリが抑えた隙に、わしらも男へ武器を向ける。じゃが、男はそれでも余裕そうな表情じゃ。



「その様子を見るに、僕の能力は大まかに理解しているみたいだね?」

「ああ。洗脳だろ?見たところ、1人だけしか操れないな?」

「あー、バレちゃったかぁ」



 楽しそうに男が笑いながら言う。依然として余裕そうじゃ。まだ何かあるのか?



「分かったら降伏しろ」

「それは僕を追い詰めてから言うべきじゃないかな?」

「減らず口を叩き……」



 女を取り抑えているホウリが急に黙りこくった。



「ホウリさん?」

「どうしたんだ?」



 わしらの言葉に答えず、ホウリは女の拘束を解いた。



「ホウリ?」



 目に光が灯っていない視線せホウリはわしらを見つめて来る。



「まさか、君たちは操られないと思ったかい?」

「ホウリを操ったのか!」

「くっ……こうなったら先にお前を倒す!」

「ちなみに、僕へのダメージは操っている人にも入るよ。だから、僕を殺したらキムラ・ホウリも死ぬからね。ホウリを攻撃しても僕にダメージは入らないけどね」



 一方通行のダメージか。ならば、死なない程度に痛めつけて気絶さた方が……



「僕が気絶すると、操っている人は自爆するからね」

「くぅ……厄介な……」



 ホウリはわしらに新月を向けて来る。対して女は我に返ったように辺りを見渡した。



「あれ?ここは?」

「そこのお主。ここは危険じゃ、早く逃げよ」

「え?」

「良いからい言う通りにせい!」

「は、はい!」



 わしの迫力におされて、女はわしらの背後にある扉から逃げていった。



「これで人質は逃がしたが、今度はホウリが人質になってしまったな」

「その通り」



 男は手に持っていた長方形の装置を操作すると、ホウリが新月を振りかぶる。



「君たちのリーダーと戦えるかな?さあ、そっちが降参する番だね?」



 くっ……ホウリが敵になっただと?そんなの……



「くたばれぇ!」

「ぐべらっ!」



 わしはホウリの足を思いっきり蹴りぬく。



「皆の者!チャンスじゃぞ!日頃の恨みを晴らすのじゃ!」

「よーし!」

「腕が鳴りますね!」

「え?ちょ!?」



 うずくまったホウリを皆で素手で思いっきりボコボコにする。



「わしに過酷な食生活をさせている恨みじゃ!」

「もっと私に料理をさせろ!」

「もっと弓を買わせてください!」

「おつかいを減らしてよ!」

「リーダーなんだよね!?なんで躊躇いなく攻撃できるの!?」

「リー……ダー?」

「なんなのこの人達!?」



 こうして、わしらはホウリを動けなくなるまでボコボコにしたのじゃった。

人を操る、シンプルで強力なスキルですね。


次回は今回の続きです。

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