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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
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第三百四十三話 40秒で支度しな

今回は魔物の襲撃に対抗します。そろそろオダリム編は終わらせたいですね。

「うーん?」



 僕が目を覚ますと、宿の天井が目に入った。



「あれ?僕どうしたんだろ?」



 確か夜中まで街を防衛して、ヘロヘロになりながらも街に帰って、その後は……



「可笑しいな、その後の記憶が全くないや」



 僕が身を起き上がらせると、壁際の椅子にミエルさんが座って読書をしているのに気が付く。



「ミエルさん、おはようございます」

「起きたか。おはよう」



 ミエルさんは本を閉じて傍のテーブルに置く。



「僕はどのくらい寝てました?」

「……その質問に答えるのは難しいな」

「え?どういう事ですか?」



 僕はミエルさんから今までの出来事を聞く。



「……僕が敵に乗っ取られていた?」

「その通りだ。性格から身のこなしまで、ロワと全く同じだった。ホウリに聞くまでは気付かなかったぞ」

「だから記憶が無かったんですか」



 今まで乗っ取られていたんだったら、どのくらい寝ていたか答えにくいのも納得だ。



「調子はどうだ?」

「いつも通りですね」



 軽く体を動かしてみるけど、特に異常は見当たらない。昨日の疲れが少し残っているくらいだ。



「ならば出かけようか。ホウリから街の防壁まで来るように言われている」

「分かりました。すぐに準備しますね」



 ベッドの傍の棚に、僕が付けていた防具が置いてあった。これを付けてすぐに防壁まで向かおう。




☆   ☆   ☆   ☆



 僕たちは指定された防壁の前まで到着した。

 なんだか、壁の外から轟音が響いているけど、何が起こっているんだろうか。

 辺りを見渡すと、防壁の近くでホウリさんが十数人の人達と、資料を手に話していた。



「ホウリさーん!」

「お、来たか」



 ホウリさんは持っていた資料を傍の人に渡す。



「そういう感じで頼む。何かあれば連絡してくれ」

「分かりました」



 ホウリさんにそう指示されると、話していた人達はすぐに散っていった。



「目を覚ましたばかりで悪いな」



 開口一番、ホウリさんは僕に軽く頭を下げた。



「いえいえ、僕も迷惑をかけたみたいですし」

「謝罪は後でいいだろう。それよりも今は状況を教えてくれ」

「そうだな。登りながら説明しよう。着いてきてくれ」



 そう言うと、ホウリさんは壁の梯子を上り始めた。僕たちもホウリさんの後に続いて梯子を上る。



「現状、外に冒険者は配置していない。なにせ、草原を埋め尽くすほどの魔物だ。策だけじゃどうにもならない」

「そうなんですか」

「ならば、防衛は壁まかせということか?」

「ああ。だが、少しだけ工夫している」

「工夫?」

「見ればわかる」



 そう言うと同時にホウリさんが壁の頂上に上り切った。僕達も続いて壁の上に登り切った。



「あれ?もしかして戦闘中ですか?」



 壁の上ではバリスタを草原に放っている人達がいた。確かに魔物の数を減らさないと、防壁が破られちゃうか。



「バリスタや爆弾で数を減らしてはいるんだが、いかんせん数が多い。防ぎきれていないのが現状だ」

「そこでさっき言ってた工夫の出番って訳か?」

「その工夫って何なんですか?」

「草原を覗いてみろ」



 言われるがまま壁の上から草原を覗いてみる。すると、草原には所狭しと魔物が迫ってきていた。そんな魔物の群れをバリスタの矢や爆弾が蹴散らしていた。けど、魔物を倒す速度よりも迫ってくる速度の方が早い。現に壁に向かって何体もの魔物が攻撃をしている。



「これはかなりマズイのでは?」

「ああ。もっても3日くらいだろう」

「3日ももつのか?」

「壁を見てみろ」



 壁をよく見てみると、淡い橙色の光が覆っていた。あれ?昨日見たような?



「これって特殊結界ですか?」

「その通りだ」



 特殊結界は魔道具の一つで、結界を発生させるものだ。人力以外で結界を発生させられるなんて、かなり画期的な魔道具だと思う。



「この特殊結界で防壁を覆っている。これで時間を稼ぎつつ、バリスタと爆弾で魔物の数を減らす」

「見たところ、この結界はかなりの耐久性みたいだな。だが、この結界を維持するのにはかなりのMPは必要ではないか?」

「MPに関しては問題無い」

「何か考えがあるということだな?」

「ああ」

「そうか」



 ミエルさんはそれだけ言うと、それ以上は聞こうとしなかった。多分、ノエルちゃんに魔石でMPを分けて貰っているんだろう。けど、外でする話でもないから、わざわざ口に出していなんだな。うんうん、僕も分かってきたじゃないか。



「そういう訳だ。お前らにやって欲しいことは分かったな?」

「え?なんですか?」

「ロワは弓、私はバリスタで敵を減らすのだな?」

「その通りだ」

「あ、そういう事ですか」



 僕は弓が使えるし、ミエルさんは他の人よりもMPが多い。壁の上から敵を倒すには適任だろう。



「そういう訳だから、今日からこの壁の上で敵の撃退をやってもらう」

「……あの、なんだか嫌な予感がするんですけど?」

「その予感はあっている」

「取り繕うこともしないんですね」



 深夜までの戦いを思い出してげんなりする。あの過酷な戦いが始まるのか……



「げんなりしている所悪いが、早速戦ってもらうぞ」

「はいはい。分かりましたよ。今回はどのくらい戦えばいいんですか」

「大体3日間だな」

「3日!?」

「ちなみに、休みがあるとは思うなよ?」

「休みなしで!?」

「仮眠は取って良いぞ。飯はエナジーバーな」

「流石に酷くないですか!?」

「襲撃を受けてんだぞ?休んで街が滅んだらどうする」

「それは……」



 ホウリさんの言っていることは分かる。けど、休まないと本来のパフォーマンスが発揮できない。



「み、ミエルさんは休みが無いのは嫌ですよね?」

「ロワ」

「なんでしょうか」

「甘えるな」

「ミエルさん!?」



 味方だと思っていたミエルさんにあっさりと裏切られた!?



「そ、そんな……」

「騎士団は遠征で何週間も移動や戦闘を行うことがある。街が危険なのに3日くらいで音を上げる訳にはいかない」



 ダメだ、ミエルさんの目が騎士団長の厳しい目になっている。これは同意を得るのは難しそうだ。



「……分かりました。僕も頑張ります」

「そう言ってくれて嬉しいぞ」



 言わされたんですけどね。



「それじゃ、早速取り掛かってくれ。何か必要なものがあれば用意するから連絡してくれ」

「分かりました」



 僕は矢筒を背負いながらため息を吐く。これは長い3日間になりそうだ。



☆   ☆   ☆   ☆



 2人を送り届けた後、俺は宿に向かった。



「戻ったぞ~」

「おかえりなさい。フランちゃん帰ってきてるよ」

「そうか。ありがとな」



 ディーヌに礼を言って、宿の中に入る。食堂は賑わっているがフランの姿は無い。つまり、部屋にいる訳か。

 俺は階段を上って、ロワとミエルの部屋に入る。マスターキーを借りといて正解だったな。



「帰って来たか」

「ああ」



 部屋の中には思ったと通りフランがいた。



「それでは、情報の交換会といくか」

「だな」



 俺は部屋に入って扉を閉める。すると、部屋の壁が淡く輝き始めた。

 フランが盗聴防止のスキルを使ったからだ。



「現状はどうじゃ?」

「正直厳しい。魔物の種類次第では城壁が破壊される可能性すらもある」

「そうか」

「魔国はどうだ?」

「魔国は戦闘力だけは高いからのう。魔物の襲撃もオダリムよりは少ないし、楽勝で捌けておるわい」

「それは良かった」



 本当だったら魔国からも戦力を借りたい所だ。だが、魔国へ貸しを作る事になるからと人王が渋っている。だからこそ、俺に何とかするように命令が来ている訳だが。



「問題は戦力の調達が間に合うかどうかだな」

「アテはあるのか?」

「あるが、間に合うか微妙なんだよなぁ」

「間に合わんかったらどうする?」

「ノエルに頼る」



 神の使いであるノエルは表で活躍させたくはない。だが、オダリムの陥落はさせる訳にはいかないから、もしもの時は頼るしかないだろう。



「ノエルか、強力な手段ではあるが、ノエルだけで何とかなるか?」

「手段はある。そもそも、ノエルがいればピンチにすらなっていない」

「そんな手段があるのか」

「使いたくはないけどな」



 そんな事を話しながら、俺とフランは情報交換を進めたのだった。

重ねて言いますが、オダリム編はそこまで長くなる予定じゃなかったんです。本当なんです信じてください。


次回は未定です。


久し振りに脱出ゲームに行きました。滅茶苦茶怖かったです。

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