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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第1章
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第二十七話 きた!メイン盾きた!

今回から暫くはタイトルがブロント語になる事は確定的に明らか。

───王都───

王都とは人国の中心都市みたいなものである。国にとって重要な機関は全てここにある。なので、王都でしか出来ない手続きなどもある為、王都には多くの人が集まる。また、有名な店なども多くあるという点も人が集まる要因の1つである。────Maoupediaより抜粋





☆   ☆   ☆   ☆





 早朝、まだ日が高く登っていない森の中で涼しい風が俺の頬を撫でる。俺の目線の先には真剣な顔をしながら弓を構えているロワがいる。



「ではいきます!」



 ロワは立て続けに2本の矢を放つ。だが、その矢は俺の左右の地面にそれぞれ差刺さった。

 不思議に思いながら俺はロワに訪ねようと口を開くと、自分の体に違和感を覚える。



「なん……グアッ!」



 その違和感に気が付くと同時に俺の体に凄まじい重さが襲いかかる。

 なんだこれ!?立っているのがやっとだぞ!?

 俺の様子を見ていたロワは少し驚いた様子で俺に話しかけてくる。



「え?かなり重くなっている筈ですが、なんで立っていられるんですか?」

「…………体制で誤魔化しているが……かなりきつい……突かれただけでも……倒れる…………」

「へー、そうなんですか」

「押すなよ……絶対に押すなよ………」

「えいっ」

「あっ!バカ!」



 ロワに押された俺は大の字に倒れ込む。その後、体の重さが消え、なんとか立てるようになった。



「押すなって言っただろ」

「フランさんが『押すなと言われたら押せ』と」

「またあいつか」



 今度、寝起きのあいつの目にレモの実の汁を垂らしてやる。

 倒れていた俺が起き上がるのを確認したロワは喜々として話し始める。



「今のエンチャントはですね、なんと───」

「『ヘビーウェイト』だな。効果は矢と矢の間にある物質の質量を5倍にするだったか」

「僕が解説しようと思っていたのに」



 ロワは残念そうに口を尖らせる。



「そりゃ悪かったな。で、新しいエンチャントはこれだけか?」

「もう一つありますよ。今のホウリさんにピッタリですよ」



 そう言うと、ロワは新しい矢を取り出して引き絞り放つ。放たれた矢は俺目掛けて飛んでくると、緑の光の粒となり俺の胸に吸い込まれた。

 


「体の調子はどうですか?」

「体の痛みが消えた。『ヒールシュート』か」

「そうです。狙った対象のHPを100位回復させます」

「そいつは使い勝手がいいな。エンチャントしたときの消費MPはどれくらいだった?」

「『ヘビーウェイト』が30で『ヒールシュート』が5ですね」



 大体、普通にエンチャントするときの1パーセントか。かなり破格ではあるな。



「エンチャント完了までの時間はどのくらいだ?」

「『ヘビーウェイト』が約5分で『ヒールシュート』は約30秒くらいですね」

「なら、交戦中の時に作るのは厳しいな。事前にある程度は作っておいたほうがいい」

「了解です!」



 ロワがビシッと敬礼した所で、森の奥からフランの声が上がった。



「朝食できたぞー!」

「今行くー!」



 朝の特訓を切り上げて、俺達はフラン達が待つ広場へと向かった。

 


「おかえりー、ご飯できてるよー」

「おう」


 広場に付くと、ノエルがサンドイッチが乗った皿を持ってきた。全員にサンドイッチが行き渡ると円を作るような形で座る。



「それじゃ、いただきます」

「「「いただきまーす」」」



 皆が食べ始めたのを見て俺は話し始める。



「で、そろそろ目的の村に着くわけだが、その村でやることを先に話しておこうと思う」

「目的ですか?」

「そうだ。端的に言えば仲間集めるなんだが、ここでロワに質問だ。俺達に足りない役職はなんだ?」

「えーっと、前衛ですか?」

「そうだ。俺以外は全員後衛だが、俺には敵を押さえつける程の力が無い。だから優秀な前衛がほしい」



 やろうと思えばフランに任せる事も出来るが、杖を持った女の子が敵の攻撃を一身に受けさせるのは絵面的にマズい。だから、フランには呪師として働いて貰っている。

 俺の言葉を聞いたフランがサンドイッチを齧りながら不思議そうに話す。



「しかし、今から向かう村に優秀な前衛がおるなど聞いたことがないぞ?」

「それがいるらしい」



 今から向かう村、『ライドン』には余り特筆すべき所は無い。村の周りには協力な魔物も出ない平和な村だ。特産はグリの実やサガイモなどの農作物で、優秀な前衛がいるとは思われないだろう。



「なぜか元王宮騎士団のエースがライドンにいるらしい。裏もとれている」

「なぜその様な人がライドンに?」

「村についたらそこから探る。これは俺の勘だがその村にいる理由が勧誘のカギになる筈だ」



 俺はパンくずのついた手を払いながら答える。



「だが、村に行く前に1つ問題があってな」

「問題?なんですか?」



 俺は不思議そうな顔をしているロワを指差す。



「お前だよ」

「僕?」

「ああ、お前がイケメンすぎるのが問題だ」

「イケメンなのが問題なのか?」

「簡単に言うと悪目立ちしちまう」

「そうか、確かにロワの影響でお主は射殺される所じゃったのう」

「ははは…………」



 ロワが乾いた声で笑う。この道中でロワに自身がイケメンだという事を分かりやすく丁寧に伝えた。自覚がないのはあまりにも危険すぎる。理解したロワは複雑そうな顔をしていたっけか。



「ま、そんな訳でロワを変装させて極力目立たなくしたい。皆でアイデアを出し合うぞ」

「「おー」」

「嫌な予感しかしないのですが……」



 フランとノエルが仲良く拳を上に突き出す。その様子をロワは顔を引きつらせながら見ている。

 そんな中、フランが勢いよく手を上げる。



「はいっ!」

「よしフラン」

「メガネをかけるのはどうじゃろうか」

「いいな、早速やってみようぜ。ロワ、かけてみろよ」

「なんですんなりとメガネが出てくるんですか……」



 俺がメガネを差し出すとロワはため息を吐きながらメガネを受け取る。そして、恥ずかしそうにメガネをかけると俺たちに見せてくる。



「ど、どうでしょう?」

「……これは、なんというか」

「……色々とすごいな」

「お兄ちゃんカッコイー!」



 メガネをかけることで知的な印象になり、爽やかな雰囲気が滲み出ている。正直、悪化しているな。



「とりあえずメガネは無しだ。他に何か意見はあるか?」

「はいっ!」

「よしノエル」

「メガネが駄目だったら鼻メガネ!」

「「それだ!」」

「『それだ!』じゃないですよ!目的は目立たない事でしょ!?鼻メガネかけている人間なんてかなり目立ちますよね!?」

「まあまあ、とりあえずこれをかけてみるのじゃ」

「メガネは分かるんですが、なんで鼻メガネも持っているんですか……」



 フランが鼻メガネを差し出すと、ロワは諦めたように受け取りかけてみる。



「どうですか?」

「ブフっ、すごく……良いと思うぜ……」

「ククッ、似合っておるぞ……」

「アハハハ、お兄ちゃんの顔おもしろーい」

「やっぱり遊んでますよね!?」



 ロワが顔を真っ赤にして、かけていた鼻メガネを叩きつける。

 あー、面白い。カッコいい奴が鼻メガネをかけるだけでこんなに面白くなるとはな。



「皆さん真面目に考える気はあるんですか!?」

「勿論だ。次は顔を白塗りに……」

「本当に真面目にやってますか!?」

「冗談冗談。本命はこっちだ」



 俺は一枚の白い布を取り出してロワに渡す。ロワは布を受け取ると不思議そうに首を傾げた。



「これをどうするんですか?」

「その布で口元を覆ってみろ。ラガルトが付けていた奴って言えば分かりやすいか?」

「ああ、なるほど。早速付けてみます」



 ロワが受け取った布を恐る恐る付けてみる。



「どうでしょう?」

「うん、良いんじゃないか?」

「なんとか普通までにはなったようじゃな」



 口元を覆い隠す事でなんとか格好よさを緩和出来た。これでとりあえずは大丈夫だろう。



「問題も解決したところで、村での行動の最終確認だ」

「今回は全員で騎士さんの情報を集めてくるんでしたっけ?」

「そうだ。俺、ロワ、フランとノエルの3チームで行動する」

「今分かっている情報は?」

「そいつの名前が『ミエル・クラン』ってこと以外は分からない」

「なるほど、了解です」

「午後6時になったら宿で情報共有だ」

「分かりました」

「おっけー」

「…………」



 フランが顎に手を当て、険しい表情をしている。



「どうした?」

「ホウリ、わしもついて行ってよいか?」

「うん?いきなりなんだ?」

「お主が情報を集めている様子を見たことないと思ってのう。一度でよいから見てみたい」

「うーん、そうだな……」

「ダメか?」

「正直、あまり時間が無いからな」

「そこまで急ぐ用事がありましたっけ?」



 俺以外の3人が首を傾げる。



「ノエルの件だがな、早ければ1年で方が付きそうだ」

「1年!?あれだけ難しいと言っておったものが1年で解決できるのか!?」

「ノエルちゃんの件ってなんですか?」



 フランとロワがそれぞれ別々の反応を示す。だが、それを説明する時間も今は惜しい。



「詳しい事は『ミエル・クラン』が仲間になってから話す。今言っても二度手間だしな」

「もう仲間になる事は確定なんじゃな」

「というより、仲間になってくれないと予定が大幅に崩れる」



 1年というのはあくまでも全てが上手く行った場合の話だ。少しでもミスったら大幅に解決が遅れる。



「とりあえず、今は『ミエル・クラン』の事だ。フランが俺と行動を共にすると時間が無くなる」

「むー、ダメなのか?」

「……途中までならいい。その後に別行動にする。それで良いか?」

「うむ!それで良い!」

「じゃあ、最終確認だ。俺とフラン、ロワとノエルの2チームで行動。俺とフランは途中で別行動。午後6時に宿に全員集合だ」

「「「了解!」」」





☆   ☆   ☆   ☆




 村に着いた俺達は宿をとり、それから二手に分かれた。

 俺はフランと共に村の様子を確認しながら歩き回る。



「それで、最初はどうするんじゃ?」

「そうだな……」



 俺の村に対する印象は『落ち着いている』だ。木で出来た小さな建物がチラホラとあり、その間に畑がある。村の規模は東京ドーム2個分位の広さで、施設は小さな食堂や武器屋を何件か見かける程度。人通りはまばらにあり、主婦は買い物をしていて、畑は男達が耕している。

 物資を補給するためにたまに冒険者が来ることがあるのか、最低限度の店しか無いな。となると……。

 俺は道を歩いているおばさんに話しかける。



「すみません、お姉さん」

「あら何かしら?」



 おばさんは突然声をかけられたのにビックリした様子でこちらを見てくる。



「『ミエル・クラン』さんはこの村に居ますでしょうか?届け物があるですが、この村に来ていたということしか分からなくて……」

「『ミエル・クラン』?聞いたことない名前だね?」

「そうですか……、ちなみに最近この村に移住していきた人はいますでしょうか?」

「あ!『ベリー』ちゃんのことかしら!」

「『ベリー』ちゃんですか?」

「3ヶ月くらい前にね、この村に移住してきた子だよ。この村って何も無いでしょ?ベリーちゃんが移住してきたときは村中の大ニュースになったものさ」

「なるほど」



 『ベリー』ちゃんか。少し気になるな。



「ちなみに、ベリーちゃんのお仕事は?」

「皆と同じ畑仕事だよ。毎日一生懸命に手に傷をつけながら畑をたがやして、本当に頑張り屋さんなんだよ」

「それは熱心なんですね」



 なるほどなるほど。



「ありがとうございます。『ミエル・クラン』さんを見かけたら『ルケー』が探していたと伝えて下さい」

「わかったよ」



 おばさんと別れて俺は情報を頭の中で整理する。すると、フランが横から話しかけてきた。



「なーにが届け物じゃ。都合の良い事言いおって」

「話を円滑に進める為に必要な事だ」

「口の上手いやつじゃ。じゃが、『ミエル・クラン』はこの村に居らんとな?どういう事じゃろうか?」

「いくつかの仮説はあるが、まだ情報が足りてない。次いくぞ」

「うむ」



 次に俺達が向かったのは小さな雑貨屋だった。扉を開けると、客が入ってきた事を告げる鈴が軽やかに鳴り、奥から頭が禿げた店主と思わしき人がやってきた。



「いらっしゃい」

「防具とか魔道具とかを見たいんだが、良いのはあるか?」

「防具でしたらこちらに。魔道具はそちらの棚に置いてあります」



 俺は魔道具が置いてある棚に向かう。うーん、品揃えは悪くは無いがここで買うべき物は特には──うん?

 俺は1つの小さめの絨毯程の大きさの布を手に取る。布の色は赤や青等の5色がある。



「親父、これはなんだ?」

「それは当店の目玉商品!魔法を完全に防御出来る『マジックシーツ』でございます!」

「それは凄いな。どんな魔法も完全に防げるのか?」

「あ、いや、魔法力100以下の低レベル魔法限定となりますが……」

「もしかして、色の属性魔法にしか対応していなくて、かつ使い切りじゃねぇだろうな?」

「ははは……」



 笑って誤魔化しているが、完全に図星だったらしい。



「値段は?」

「1枚1万Gとなります」


 

 使い切りで1万Gは高いな。だが、低威力の魔法だけとはいえ、完全に防げるのは良いな。

 俺は『マジックシーツ』を手に取りながら口を開く。



「まあ、少し考えるか。そういえば親父、ベリーって人を知っているか?」

「ベリーちゃんですか?この前引っ越してきた子ですから」

「そう、そいつだ。ぶっちゃけた話…………美人か?」

「……そりゃあ美人ですよ。モデルが出来るくらい美人でスタイル抜群ですよ」

「……胸は?」

「D……Eはありますかね」



 俗っぽい話で俺達が盛り上がっていると、フランの呟きが聞こえてきた。



「……アホどもめ」



 聞かなかったことにする



「ちなみに彼氏は?」

「今の所居ないみたいですぞ?多くの男達が玉砕してきましたからな」

「うーん、ちなみにベリーちゃんに変な趣味があるとか聞いたことないか?」

「変かどうかは分かりませんが、月の決まった日に、村の外に出掛けるんですよ。3日程で戻って来ますが」

「ふーん、何してるんだろうな。あ、これくれ」

「!?、ありがとうございます!」



 マジックシーツ各色5枚ずつ買うと、店主はかなり嬉しかったのか凄い勢いで頭を下げてくる。

 そうして、俺達は雑貨屋をあとにした。

 マジックシーツを仕舞っている俺にフランが話しかけてくる。



「……お主は胸の大きい女が好みなのか?」

「いや、俺は外見じゃなくて中身で決めるようにしているから胸大きさなんざどうでもいい」

「……そうか」



 フランな自分の胸に手を当て、小さく『クッ』という言葉を漏らす。俺はフランの言葉をスルーし話を続ける。



「段々と分かってきたな」

「主にベリーちゃんについてじゃがな」

「いや、ベリーちゃんは恐らく『ミエル・クラン』だ」

「まあ、わしにも想像はついておったがな。じゃが、『ミエル・クラン』がこの村にいる理由がサッパリ分からん」

「俺にはある程度分かった」

「本当か?」

「確証がないから今日の夜に話す。それよりも、まだまだいくぞ」

「わしは疲れた。少し位休んでいかんか?」

「悪いが、時間がない。休憩無しのぶっ通しでいくぞ」

「むー」



 この後、俺達は2時まで行動を共にしその後は別れて行動することになった。

ミエル編はそこまで長くはならない予定です。かかっても5話くらいだと思います。ロワ編も5話くらいの予定でしたけどね!



ぎりぎり年内に間に合いました。

皆様、良いお年を!

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