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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
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第二百八十六話 こ~ん~に~ち~は~!

連続投稿1日目です。可笑しい、この前、連続投稿を終えた筈では?

 ホウリお兄ちゃん達がオダリムへ行った日の放課後。ノエルは荷物をまとめてコアコちゃんの家の前に来ていた。



「こ~ん~に~ち~は~!」



 ノエルが大きな声で挨拶をすると、玄関が開いてコアコちゃんが顔を出した。



「ノエルちゃん!いらっしゃい!」

「コアコちゃん!お邪魔します!」



 お辞儀して顔を上げると、コアコちゃんのお母さんもやって来た。



「あなたがノエルちゃんね?これからよろしくね」

「よろしくお願いします!」



 もう一回お辞儀をすると、コアコさんのお母さんが玄関を開けてくれた。



「お邪魔しまーす」



 開けてくれた玄関からコアコちゃんの家の中に入る。コアコちゃんの家はお庭がない二階建ての家だった。

 なんだか年季が入っているように見える。けど、手入れがキッチリされていて、とっても大切にされているのが分かる。

 中に入ると、玄関にコアコちゃんと、コアコちゃんのお父さんとお母さんが一緒に写っている写真が飾ってあった。仲が良さそうで、見てるだけで笑顔になってくる。



「荷物多いね?私の部屋に置いておく?」

「いいの?」

「勿論だよ」



 コアコちゃんが笑顔で頷くと、後ろにいたコアコちゃんのお母さんが申し訳なさそうに話す。



「ごめんなさいね、お泊りできるようなお部屋がないの。コアコと一緒の部屋で良いかしら?」

「大丈夫!コアコちゃん、一緒に寝ようね」

「うん!じゃあ、お部屋に行こうか」



 コアコちゃんに連れられて2階まで上がる。すると、階段のすぐ隣に『コアコ』って書いてあるプレートが掛かっている扉があった。



「ここがコアコちゃんのお部屋?」

「うん。どーぞ」



 コアコちゃんが扉を開けてノエルを招き入れてくれる。きっと、壁はピンク色でテディベアとかがある可愛らしいお部屋なんだろうなぁ。

 そう思いながらノエルはお部屋に入る。



「おじゃましま……す?」



 お部屋の中を見てノエルは一瞬言葉を失った。

 壁は真っ黒で真っ赤な魔法陣のポスターが貼ってある。照明も薄暗くて、頭蓋骨の置物とか水晶玉なんかも置いてあるし、全体的に雰囲気が暗い。

 なんだか、思っていたのと違う。



「どうしたの?入らないの?」

「あ、えっと、ちょっとビックリしちゃって」



 お部屋に入って、バッグを置けそうな場所を物色する。けど、お部屋には色々な小物はおおくて、置けそうなところはない。



「えーっと?どこに置けばいいかな?」

「ベッドの上に置いて良いよ」

「ありがと」



 紫色の毛布が掛かっているベッドの上に、背負っていたバッグを置く。



「何持って来たの?」

「お勉強の道具と洋服」

「普通だね?学校を探検した時は銃とか持ってなかったっけ?」

「銃とか爆薬はアイテムボックスにあるよ?」

「やっぱり持ってきてるんだね」



 コアコちゃんが困惑したように笑う。

 バッグに入れているのはアイテムボックスに入りきらなかった着替えとか教科書。銃とかナイフとか肌身離さず持っていたいものはアイテムボックスに入れてある。けど、いつもこんなに準備万端って訳じゃない。



『俺達がオダリムに行っている間、何かあった時はノエル自身が対処しなくちゃいけない。準備だけはいつでも整えておけ』



 ホウリお兄ちゃんにそう言われたからこそだ。何かあった時、ノエルが皆を守るんだ。



「それにしても、凄い部屋だね?」



 バッグを置いて、ノエルは改めて部屋の中を見てみる。



「ここにある物って全部オカルト関係の物?」

「全部じゃないけど、そうだよ。やっぱり、変……だよね?」

「そんなこと無いよ!」



 ノエルは興奮してコアコちゃんの手を握る。



「見たこと無い物がいっぱい!ワクワクするよ!」

「ほ、ほんと?」

「ほんと!」



 目を丸くするコアコちゃんから手を離して、机の上にある水晶玉を手に取る。



「これはどんな物なの?」

「これはね、『古代の水晶玉』っていうもので神秘の力が宿っているの!」

「神秘の力?」

「未来を見通せる力だよ!」

「未来を!?」



 ホウリお兄ちゃんですら、未来を見るのは難しいって言ってた。なのにこの水晶玉にはその力がある。



「凄いお宝だね!」

「でしょ?私が持っている中で一番の宝物なんだ」

「ねえねえ、これってノエルの未来も見えるの?」

「見えるよ」

「見てみてよ!」

「良いよ」



 コアコちゃんが水晶玉をノエルに向ける。そして、水晶玉越しに必死にノエルを睨みつけた。



「むむむむ……」



 水晶玉越しとはいえ、こんなに見つめられるのは初めてだ。なんだか照れる。

 


「むむむ?見えて来たよ……きゃっ!?」



 コアコちゃんが急に水晶玉を取り落とした。



「おっと」



 ノエルは落ちていく水晶玉を間一髪で受け止める。



「大丈夫?」

「うん、ちょっと目が眩んだだけだよ」



 コアコちゃんがしきりに目を擦る。目が眩む?眩しいものは無かった気がするけどなぁ?

 疑問は置いておいて、こっそりとコアコちゃんをセイントヒールで治療する。すると、コアコちゃんは目を開けて、ノエルに視線を合わせて来た。



「うーん、見えるようになってきた」

「眩しいって言ってたけど、何があったの?」

「この水晶玉じゃ、未来を明るいか暗いかでしか分からないの」

「へぇ?じゃあ、さっき眩しいって言ってたのは」

「うん。ノエルちゃんの未来が眩しすぎたの」

「ノエルの未来が眩しい?」

「太陽かと思っちゃった」

「それって良いの?」

「勿論!ノエルちゃんの未来は明るいよ!」



 コアコちゃんが満面の笑みで頷く。そっか、ノエルの未来は明るいんだ。



「えへへ、なんだか嬉しいや」

「良かった」

「コアコー、ノエルちゃーん、そろそろおやつの時間よー!」



 コアコちゃんと笑いあっていると、1階からコアコちゃんのお母さんの声がした。



「おやつ!」

「早く行こう!」



 2人で1階まで勢いよく下っていく。そして、リビングに飛び込むとテーブルの上にチョコチップクッキーが乗っているお皿とミルクが入ったコップが置いてあった。



「クッキー!」

「こら!食べる前に手を洗いなさい!」



 クッキーの伸ばした手をコアコちゃんのお母さんに叩かれる。



「ちぇー」

「はーい」



 ノエル達は仕方なく脱衣場に行って手を洗ってくる。



「手洗ってきたよ」

「よろしい。じゃあ、食べていいわよ」

「わーい!」



 椅子に座ってクッキーを手に取る。まだ暖かいクッキーを口に入れて嚙みしめる。



「うーん、美味しー」

「本当だ。いつもより美味しい」

「そんなこと無いわよ。いつもと一緒よ」



 コアコちゃんもノエルも次々とクッキーを口に入れていく。



「そんなに気に行ったの?」

「うん!とっても美味しい!」

「それは良かったわ。明日も作ってあげるからね」

「ありがと!」



 物の数分でクッキーを平らげると、コアコちゃんのお母さんは笑顔でお皿をキッチンに持っていった。



「ふぅ、美味しかった」

「私も。いつもと同じクッキーの筈なのに美味しかったよ。なんでだろ?」

「きっとお友達を食べたからじゃない?」

「あ、そっか」



 ノエルの答えがしっくり来たのか、コアコちゃんがポンと手を打つ。



「ノエルちゃんと一緒だから美味しかったんだ」

「これなら夜ご飯も美味しいかもね」

「そっか!楽しみ!」



 口の中に残ったクッキーを欠片を流し込むように、ミルクを飲む。



「この後どうする?」

「私はお勉強するつもりだけど、ノエルちゃんは?」

「じゃあ、ノエルもお勉強しようかな」

「そういえば、ノエルちゃんってどんなお勉強してるの?」

「あれ?皆の前でお勉強したことなかったっけ?」



 ノエルの質問にコアコちゃんが頷く。

 思い返してみると、皆に教えてばかりでノエルがお勉強してるところは見せてなかったかも?



「変わったことはやってないよ?」

「そうなんだ。じゃあ、一緒にできそうだね」

「どこでお勉強する?」

「ここが良いかな。明るくて字が見えやすいし」



 確かに、コアコちゃんの部屋は薄暗くて字を見るのには向いていない。リビングは明るいしお勉強しやすそうだ。



「私、お勉強の道具を取ってくるね。ノエルちゃんのも取ってくる?」

「うん」

「わかった」



 コアコちゃんがリビングから出て、2階に上がっていく。そして、自分のノートと教科書、筆箱、ノエルのバッグを持って来てくれた。



「はい、どうぞ」

「ありがと!」



 バッグを受け取ってお勉強道具を並べる。



「まずは百マス計算からだね」

「百マス計算?テストの範囲にあったっけ?」

「お勉強の前のウォーミングアップだね。これで脳をお勉強モードにするの」

「へぇ、私もやってみようかな?」

「もう1冊あるよ。やってみる?」

「うん」



 コアコちゃんに百マス計算のドリルを渡す。



「1ページ15分くらいで出来れば良いかな」

「百マス計算に15分も掛けるの?」

「うん。ホウリお兄ちゃんは10分で解ければ一人前って言ってたよ」

「それなら私にも出来そう」



 そう呟いてコアコちゃんがドリルを開ける。瞬間、コアコちゃんの表情が凍った。



「あの、ノエルちゃん?」

「なあに?」

「これって百マス計算なんだよね?」

「うん。100列×100列の普通の百マス計算だよ?」

「百マス計算って普通は10列×10列の計算なんだよ?」

「え?そうなの?」



 ホウリお兄ちゃんはこれが普通だって言ってたから信じちゃってた。これって百マス計算じゃないんだ。



「じゃあ、これは何て言うの?」

「一万マス計算じゃないかな?」

「そっか。ま、百も一万も変わらないよね」

「大きく違うと思うんだけど?」

「細かい事は置いといて、始めようか」

「細かいかな?」



 首を傾げているコアコちゃんを横に、ノエルは百マス計算改め、一万マス計算を始める。



「私はちょっとだけやろうかな」

「無理のない範囲でやるのが一番いいよね」



 タイマーを取り出して、スタートボタンを押す。



「始め!」



 ノエルマスの一番左上から順番に解いていく。マスの中から数字がはみ出ないように慎重に、でも手早くマスを埋めていく。

 ホウリお兄ちゃん曰く、判断力と器用さを鍛えるための訓練らしい。

 数分の間、無言でマスを埋めていく。丁寧に、素早く……



「……終わった!」



 最期のマスを埋めた瞬間にタイマーを止める。すると、タイマーには16分20秒の文字が刻まれていた。



「あー、16分だー」

「十分早いと思うよ?」

「そうかな?ホウリお兄ちゃんは10分以下で解けるよ?」

「ホウリさんを基準にしない方がいいと思うよ?」



 苦笑いするコアコちゃんのドリルを見てみると、3分の1が埋まっていた。



「コアコちゃんも結構解けてるね?」

「これ以上はむりかな。お勉強する前に疲れちゃう」

「そっか。だったら、疲れちゃう前にお勉強を始めよっか」

「そうだね」



 ノエルはドリルを仕舞って、紙の束を取り出す。



「ノエルちゃん何をお勉強するの?」

「『常温時の魔素の超行動と変異について』だね」

「えっと?それって小学校でやることだっけ?」

「んーん?大学の論文だから、小学校ではやらないんじゃない?」

「ノエルちゃんって大学の論文が分かるの?」

「半分くらいしか分からないよ?」

「半分は分かるんだ。じゃあ、今度のテスト範囲のお勉強は?」

「やらなくても何とかなるんじゃない?」

「流石ノエルちゃんだね。分からないところがあったら教えてくれる?」

「勿論!」



 それからノエルは論文を読んで、コアコちゃんは国語のお勉強を始めたのだった。



☆   ☆   ☆   ☆



「って感じで楽しいんだ!」



 次の日、ノエルはオカルト研究クラブの皆にコアコちゃん家の生活を報告する。



「それって本当に楽しいの?あんたの奇行しか伝わってこないんだけど?」

「楽しいよ!ご飯食べた後は一緒にお風呂にはいったし、寝るまでお喋りしたし。ね、コアコちゃん」

「うん。あんなにオカルトの事を語れたのは久しぶりだよ」

「いつも喋ってると思うけど?」

「あれって抑えめだよ?」

『あれで抑えてんのかよ』



 コアコちゃんとノエルで笑いあってハイタッチをする。この行動に特に意味はない。



「あ、それでさ良い事を思いついたんだけど」

「一応聞いてあげるわ」

『嫌な予感しかしないけどな』

「失礼な。ちゃんとした提案だよ」



 ノエルはホワイトボードの前に立って仁王立ちする。



「ホウリお兄ちゃん達が帰ってくるまで1カ月くらい。つまり4週間くらい」

「そうだね」

「つまり、皆の家に1週間ずつお邪魔すれば、丁度いい!」

「何が丁度良いのよ」

「わぶっ」



 サルミちゃんから額にチョップを貰う。



「あんたが皆の家に泊まりたいだけでしょ」

「そうだけど?」

『少しは取り繕え』

「僕の言えって孤児院だよ?良いの?」

「賑やかで楽しそう!」

「なら良いか。分かった、管理人の人に聞いてみるね」

「パンプ君ありがと!」

『俺も母さんに聞いてみる』

「マカダ君もありがと!」



 ノエルはパンプ君とマカダ君に抱き着いてお礼をする。

 そして、皆の視線がサルミちゃんに向く。



「な、なによ?」

(ジーーー)

「はぁ……」



 サルミちゃんが頭を抱えて呟く。



「パパに聞いてみるわ。けど、ダメだったら諦めなさいよ?」

「うん!サルミちゃんありがと!」

「あーもう!いちいち抱き着かないでよ!」



 後日、皆の家にお泊りする許可が取れて、無事に皆の家へのお泊りが決まったのだった。

お泊りはオダリム防衛の区切りが良いところで挟んでいきます。


次回は防衛戦2日目です。1日目よりはマシかも?


最近、くしゃみが多いです。風邪ですかね?

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