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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
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第二百六十五話 蛇に睨まれたノエル

今回のタイトルは一番のお気に入りです。ノエルの部分は蛙のイントネーションで読んでください。

(ピーピー)「……来たか」



 ホウリお兄ちゃんの腕にあるハンドベルトが音を立てる。それを聞いたホウリお兄ちゃんが立ちあがって白剣を抜く。



「もしかして、幹部が来たの?」

「ああ、行くぞ」



 さっきの音って幹部が来たって音かな?便利な道具だ。



「くっ……聖剣無しで幹部と戦わないといけないのか」

「頑張ろうね」



 ノエルとキュアお兄ちゃんも白剣を抜いて戦闘態勢を取る。



「おい待て、キュアはここに残れ」

「は?なんでだ?」



 ホウリお兄ちゃんの言葉にキュアお兄ちゃんが不満気になる。



「聖剣が無いと勝てないんだぞ?お前が説得しないでどうする?」

「それは……そうか」

「納得したなら聖剣様を説得して、さっさと加勢しにこい。それまでは俺達が抑えておく」

「ああ。頼んだ」



 キュアお兄ちゃんが再びレオニグル君に向き直る。



「あの、幹部も来ているので力を貸していただけないでしょうか?」

『ノエルになら力を貸そう』



 相変わらず話しになってない。まだまだ時間が掛かりそうだ。



「さっさと行くぞ。時間はそこまで無い」

「はーい」



 ちょっと気が引けるけど、ノエル達は入口まで戻ることにした。

 ホウリお兄ちゃんとお話もせず、黙々と進む。



「……そろそろ構えろ」

「うん」



 白剣をいつでも振れるように心の準備をして進む。すると、前から何かが這うような音が聞こえて来た。



「いいか?今回の目的は時間稼ぎだ。倒そうと思うなよ?」



 ホウリお兄ちゃんの言葉にノエルは神妙に頷く。

 緊張から思わず白剣を握りしめると、とうとう幹部が現れた。



≪シャー!≫



 それは洞窟の向こうに続くほどに、長い胴体の大蛇だった。

 大蛇は2本の腕が生えていて、杖を持っていて赤い上着を着ている。そして、何よりも放たれているプレッシャーが凄まじい。

 ホウリお兄ちゃんとかフランお姉ちゃんと特訓していなかったら、怖くて戦うことも出来なかったと思う。

 幹部がノエル達を一瞥すると、細い舌を出し入れしながら杖を突きだす。



≪貴様らが騎士団か?≫

「そんなところだ」

「代理だけどね!」

「余計なことは言うな」

≪ならば敬意を表して、私も名乗るとしよう≫



 幹部が杖を回して上に掲げる。



≪私は幹部にして最強の魔術師、ジャスネーク。貴様らを地獄に送る者だ。冥途の土産に覚えておくといい≫

「死ぬつもりは無いよ!」

「右に同じだ。お前を倒して生きて帰るさ」

≪意気込みは十分と見た。行くぞ!≫



 ジャスネークさんが眼を光らせ突進してくる。それを見たホウリお兄ちゃんは手を突き出した。

 何事かと止まったジャスネークさんにホウリお兄ちゃんが話す。



「なあ、1つ聞いて良いか?」

≪なんだ?≫

「なんで部下を連れていないんだ?」



 ホウリお兄ちゃんの言葉にジャスネークさんが固まる。ホウリお兄ちゃんは気にせずに言葉を続ける。



「幹部は部下を連れている筈だ。聖剣の争奪戦をするんだったら猶更な。だが、見たところ部下はいない。なんでだ?」

≪そ、それは……お前らなんて私ひとり十分だからだ!≫

「30年前に、幹部ひとりが聖剣持ちにやられたのを忘れたか?それ以降はどんな相手でも多人数で戦いを挑んできてただろ?」

≪あの……その……≫



 ジャスネークさんがバツが悪そうに顔を背ける。何か事情があるのかな?



≪じ、実は部下に出撃の命令をしたのだが、誰も従わなかったのだ……≫

「は?なんで?」

≪私に分かるか!≫

「はぁ……俺が特定してやるから、普段の部下との接し方を教えろ」



 ホウリお兄ちゃんが白剣を鞘に納めて言う。その姿に戦う意思は全く感じられない。



≪別に普通であるぞ?仕事終わりには飲みにつれて言っているし、休日には慰安旅行を企画したりしている≫



 魔物にも休日とか飲み会とかあるんだ。

 ホウリお兄ちゃんが頭を抱えてため息を吐く。



「それが原因だな」

≪何故だ!?部下のことを一番に考えているのだぞ!?≫

「それって部下の意見を聞かないで一人で決めただろ?」

≪そうだが?≫

「多分だが、部下はそこまで乗り気じゃないと思うぞ?」

≪そうなのか!?≫



 ジャスネークさんが眼を見開く。心なしか舌を出す頻度が多くなったような?



「よくあるんだよ。上司が独りよがりな計画を立てて、部下が辟易するってこと」

≪そ、そんな……≫

「普段の不満が今になって爆発した。それが今回の結果だろう」

≪どうすれば良いんだ!?≫

「まずは部下の意見を聞くことだな」

≪普段から意見は聞くようにしているのだが?≫

「上司に真っ向から意見を言える奴なんかいるか」

≪ならばどうすれば?≫

「目安箱とかで匿名性を高めてだな───」



 ホウリお兄ちゃんが親切に分かりやすく相談に乗っていく。

 あれ?戦うって話じゃなかったっけ?なんで相談に乗っているんだっけ?ま、いっか。

 数分に渡って、ホウリお兄ちゃんはジャスネークさんの相談に乗っていく。



「───そんな感じだな」

≪なるほど、参考になるな≫

「次に部下の機嫌を取る方法だが───」

「ホウリィィィィ!」



 ホウリお兄ちゃんが更にアドバイスをしようとすると、洞窟の奥からキュアお兄ちゃんの叫び声が響いてきた。

 思わず奥へと視線を向けると、必死に走ってくるキュアお兄ちゃんの姿があった。



「とりゃああ!」



 キュアお兄ちゃんは白剣を抜いてジャスネークさんに切りかかる。



≪なんの!シールド!≫



 ジャスネークさんが杖を振るうと、結界みたいな半透明の壁が現れた。

 キュアお兄ちゃんの白剣は壁に防がれた。防がれた後は大きく後ろに跳んで白剣を構えなおす。



「助けに来たぞ!」

「待て、聖剣はどうした?」



 ホウリお兄ちゃんがキュアお兄ちゃんの姿を見て眉を顰める。確かにキュアお兄ちゃんは聖剣を持っているように見えない。

 キュアお兄ちゃんは苦虫を嚙み潰したよな表情で口を開いた。



「あの聖剣にいくら話しても分かってもらえなくてな。これ以上は無駄だと判断して、加勢に来た訳だ」

「バカか。聖剣が無いと勝てないって言っただろうが。折角の時間稼ぎが台無しだ」



 あ、そっか。今は戦う事が目的じゃなくて時間稼ぎが目的なんだっけ。あの相談も時間稼ぎのひとつだったんだ。



「ホウリなら何とかするだろう?」

「丸投げするんじゃねぇよ」



 ホウリお兄ちゃんがため息をついて、白剣を抜く。



「やるだけやるぞ!キュア!ノエル!」

「うん!」

「ああ!」



 ホウリお兄ちゃんがジャスネークさんに突進する。それを見たジャスネークさんは再び杖を振るう。



≪何度やっても無駄だ!シールド!≫



 再び半透明の壁が現れてホウリお兄ちゃんの行く手を阻む。それを見たホウリお兄ちゃんはニヤリと笑った。



「ノエル!」

「魔装!」



 ノエルは魔装を使って壁に向かってパンチする。すると、ガラスが割れるような音と共に壁が砕けた。



≪な!?≫



 戸惑うジャスネークさんに向かって、ホウリお兄ちゃんは輝く白剣を振るう。

 白剣がジャスネークさんに命中して、10㎝くらい傷をつける。



≪くぅ……≫



 怯んだ隙にノエルも突きで追撃をする。



「やあ!」



 切っ先がジャスネークさんの胸に突き刺さって貫通する。



「まだまだ!」



 後ろでキュアお兄ちゃんが聖なる力を白剣に込める音が聞こえる。




「うらぁ!」



 光がジャスネークさんとノエル達を飲み込む。けど、苦しそうにしているのはジャスネークさんだけだった。



≪ぐああああ!≫



 聖なる力は人にはダメージが無いから、同士討ちを気にせずに使える。仲間を傷つけないなんて、かなり便利だ。

 というか、これって勝てそうじゃない?

 ノエルも聖なる力で追撃しようとした瞬間、ジャスネークさんが杖で薙ぎ払ってきた。

 ノエルとホウリお兄ちゃんは白剣で防御して後ろに下がる。



「普通の魔物なら5回は死んでる攻撃だぞ?なんで生きてる?」

「幹部なんてそんなものだ。というか、これからが本番だ。気を抜くなよ」

≪シャー!≫



 ジャスネークさんはノエル達を睨みつけて杖を突きつけてきた。ホウリお兄ちゃんの言う通りここからが本番みたい。



≪3人だからと侮っていた。ここからは容赦はしない≫

「来るぞ!」



 ジャスネークさんが杖を回すと、周りに真っ黒な剣が何本も現れた。



≪ダークネスソード!≫



 何本もの剣がノエル達に向かって飛んできた。



「くっ……!」



 ノエルは白剣でなんとか真っ黒な剣を捌く。けど、数が多すぎて中々前に進めない。

 横のホウリお兄ちゃんも同じように白剣で捌いている。後ろにいるキュアお兄ちゃんは分からないけど、無事だって信じるしかない。

 けど困った。これだと前に進むことが出来ない。魔装を使って無理やり前に行く?けど、他にも能力が使えるなら、一人で突撃するのは危ない気がする。

 ホウリお兄ちゃんに視線を向けると、攻撃を捌くだけで前に進もうとしていない。

 ホウリお兄ちゃんの指示が無い以上、ここは待機して様子を……



「ぐあっ!?」

「キュアお兄ちゃん!?」



 後ろからキュアお兄ちゃんのうめき声が聞こえて思わず振り向く。すると、腹部に剣が刺さっているキュアお兄ちゃんがいた。

 治療しようと反転して、キュアお兄ちゃんの元へと急ぐ。瞬間、ノエルの肩に物凄い衝撃が走った。

 肩を見ると剣が命中していた。魔装のおかげで刺さることは無いんだけど、それなりに痛い。



≪今だ!クラッシュ!≫



 ノエルが体勢を崩した隙にジャスネークさんが杖から衝撃波を発生させる。



「きゃあ!?」

「うおおおおお!?」



 ノエルは魔装で、ホウリお兄ちゃんは地面に白剣を突き刺すことで衝撃波に耐える。けど、お腹に剣が刺さっているキュアお兄ちゃんは耐えられずに、洞窟の奥まで飛ばされてしまった。



「キュアお兄ちゃん!」

≪追わせないぞ!シールド!≫



 奥に向かって走ろうとすると、半透明の壁が10枚くらい現れた。これじゃ、キュアお兄ちゃんの元にいけない!



≪シャーシャッシャ!これで人数が減った。あとは物量で押すだけだ!≫

「くぅ……」



 早く治療しないとキュアお兄ちゃんが死んじゃう。けど、向かおうにも剣を避けながら壁を壊すには時間が掛かりすぎる。

 不味い、完全にピンチだ。

これだけピンチなのは久し振りですかね?


次回、キュア死す。デュエルスタンバイ。


原神始めました。アクション下手には辛いです。

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