表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
299/460

第二百五十二話 動いてないのに暑いよ~

ノエルの旅行記の開始です。そう長くならない(予定)です。

 ノエルが街の中を見渡していると、ホウリお兄ちゃんがワイヤーを仕舞って結界も解除した。



「なんとか着地出来たな」

「ねぇねぇ、もしかしてここって……」

「ああ。ノエルの世界とは別の世界だ」



 やっぱりね。それにしても高い建物が多くて、不思議な光景だ。建物どうしの距離も近くて、隙間も少ない。あと、こっちの世界は夏なのか、かなり暑い。ミンミンっていう何かの音もうるさいくらいに鳴り響いている。

 感じるもの全てが始めてで、ノエルはワクワクが止まらない。



「探検してみたいなぁ」

「悪いが急いでやる事がある。もう一度、疾風迅雷を頼む」

「え?」

「説明は移動しながらする。だから、早くしてくれ」



 ホウリお兄ちゃんが珍しく焦っている。それを見てノエルは大人しくホウリお兄ちゃんにおんぶされる。



「行くぞ」



 再び、ホウリお兄ちゃんが雷装を使って、建物の屋根まで跳ぶ。

 ホウリお兄ちゃんは屋根を跳び移りながら、説明を始める。



「まず、この世界は俺がいた世界だ」

「ホウリお兄ちゃんの世界?」

「ああ。俺はこの世界で倫太郎と一緒に学生をしている」

「そうなんだ!」



 だからこんなに迷いなく移動してるんだ。



「今は何処に向かっているの?」

「俺の家だ。あそこから(アホ)に通信する」

「いつもの魔法陣をあの空き地で使っちゃダメなの?」

「あの魔法陣は、いつもの世界でだけでしか使えない。この世界だと別の方法で通信をする必要がある」

「別の方法?」

「天界に行った時に、俺の部屋に(バカ)と通信できる仕掛けを施しておいた。今回はそれを使う」

「準備良いね?」



 急に異世界に飛ばされることを想定していたんだろうか?流石はホウリお兄ちゃんだ。



「で、急いでいる理由なんだが」

「うん」

「この世界と元の世界は時間の流れが違うんだ」

「その話は前にも聞いたかも?」



 確か、元の世界の方が100倍速く時間が進んでいるんだとか?



「あれ?それって不味くない?」

「そうだ。こっちで1分を過ごしたら、あっちだと100分過ぎることになる。1日過ぎたら100日、3カ月以上も行方不明ってことになる」

「今ってどのくらい経ってたっけ?」

「3分だ。家まではあと2分はかかる」



 つまり、すぐに帰っても500分は経っているってことだ。8時間以上……皆は心配してるかな?



「なんとかならないの?」

「過ぎた時間だけはどうしようもない。今は1秒でも早く天界とコンタクトを取ることを考える」



 そう言って、ホウリお兄ちゃんは建物が一切無い空中に飛び出す。

 落ちる!そう思った瞬間に足元に結界が現れて、難なく着地し再び駆け出す。



「そろそろ着くぞ。着地の衝撃に備えろ」

「はーい」



 ノエルは魔装の出力を最大にする。すると、ホウリお兄ちゃんが2階建てのアパートの前に着地した。

 ホウリお兄ちゃんから降りて、アパートを見上げる。見た感じ壁とかはピカピカだし、新しい建物の気がする。



「ここがホウリお兄ちゃんの家?」

「201号だ。いくぞ」



 ホウリお兄ちゃんに連れられて、外にある銀色の階段を駆け上がる。

 ホウリお兄ちゃんは、一番手前にある扉のドアノブを捻ると一気に開けた。ノエルもホウリお兄ちゃんに続いて中に入る。



「お邪魔しまーす」



 中は廊下になっていて、左右の壁と中央に扉がある。

 ホウリお兄ちゃんは迷わず突き進んで、中央の扉を開ける。中はリビングだろうか、ソファーとかテーブルとかが置いてある。けど、台座がついて薄い板とか、糸みたいなものが繋がっている箱とか、壁に付いている白い箱とか、見なれない物も多い。



「どうやって通信するの?」

「俺の生体情報を使って通信する」



 そう言ってホウリお兄ちゃんは親指を噛みきる。そして、床に血を撒き散らした。



「え?」

「治療してくれ」

「う、うん」



 突然の事で頭が付いていけないけど、セイントヒールで親指の傷を癒す。



「ありがとな」

「うん。けど、これでどうやって……」



 通信の方法を聞こうとした瞬間、聞きなれた音が部屋に響いた。



『プルルルル……プルルルル……ガチャ、もしもーし、どなたですかー?』

「俺だ」

『あれ?ホウリ君?なんでその世界にいるの?』

「説明は後だ。まずは、あっちの世界の時間を止めろ」

『え?』

「良いからやれ」

『わ、分かったよ』



 カタカタという音が流れ始める。その間にホウリお兄ちゃんに気になった事を聞いてみた。



「ねえねえ、時間を止めるってどういうこと?」

「文字通りだ。(ボケ)は各世界の時を止めることが出来る。これで、こっちの世界でどれだけ過ごしても、あっちの世界の時間が進むことはない」

「便利だね?」

「多数の世界の時を止めると、管理が無茶苦茶になるから、難しいところだけどな」

「へぇー、大変なんだね」



 ホウリお兄ちゃんと話していると、カタカタという音が消え、神様が困惑したように話し始めた。



『これで良しと。それで、なんでそっちの世界にいるの?私は通した覚えはないんだけど?』

「お前から神の力の気配があるって、学校の調査を依頼されただろ?」

『さっき依頼したね。もしかして?』

「お察しの通り、その神の力は別の世界へと渡る力だったんだよ。恐らく、扉を使わずに行き来できる抜け穴があるんだろうよ」

『なるほどねぇ』



 学校の立ち入りを申請したのってホウリお兄ちゃんだったんだ。目的は神様の力の調査。その力でノエル達はこの世界に来ちゃった訳だ。



「そういう訳だ、俺達を元の世界に戻せ」

『すぐには無理かな』

「どのくらい掛かる?」

『扉を開けないといけないから……そっちの時間で5日はかかるかな』

「長いな」

『流石にこれ以上早くするのは勘弁してほしいかな。私だって暇じゃないんだよ?』

「分かってるよ。5日だな?それ以上は遅れるなよ?」

『オッケー。……あとさ』



 神様が言いにくそうに、声を小さくする。ホウリお兄ちゃんは何かを察したのか、眉をピクリと動かした。



「なんだ?」

『天界に来て、君たちが通った抜け道を探すのを手伝ってくれない?』

「分かった」

『あれ?やけにあっさりと引き受けてくれたね?』



 神様の不思議そうな声にホウリお兄ちゃんは表情を変えずに答える。



「今回の件はお前が悪い訳じゃないしな。それに、下手に断ったら帰るのが遅れる可能性もある」

『さっすがホウリ君。頼れるねぇ』

「腐っても神が、人間を当てにするなよ」

『使えるものは何でも使う。ホウリ君もそうでしょ?』

「お前と俺じゃ立場が違うだろうが」



 ホウリお兄ちゃんが頭を押さえてため息を吐く。神様とお話している時が一番大変そうだ。



「手伝いはするが、少し時間は貰うぞ。知らない世界にノエルを残していくのは怖い。いったん知り合いに引き取ってもらう」

『それくらいなら良いよ。準備できたら通信してね』

「了解。じゃあな」



 お話を終えて、ホウリお兄ちゃんは通信を切る。



「という訳だ。すまないが、5日間はこの世界で過ごしてもらう」

「ううん!ホウリお兄ちゃんの世界を見てみたかったし、全然大丈夫!」

「そう言ってくれると助かる。せっかくだし、聞きたい事があったら答えるぞ?」

「それじゃ……」



 ノエルは台座に乗っている薄い板に触る。



「これ、なーに?」

「それはテレビだ」

「テレビって、遠くの景色を映す魔道具だよね?」

「ああ。見てみるか?」

「うん!」



 ホウリお兄ちゃんが小さな魔道具をテレビに向けて、ボタンを押す。瞬間、テレビが光って人が現れた。しかも、現れただけじゃなくて、動いたり喋ったりしている。



「すっごーい!これってどうなってるの!?」

「簡単に言うと、絵を凄い速度で切り替えて動いているように見せかけているんだ。ノエルなら、集中すれば切り替えの瞬間が見られるんじゃないか?」

「ほんと?」



 ノエルは目に魔装をして、画面に集中してみる。すると、ホウリお兄ちゃんの言う通り、1枚の画像が連続で表示されているのが分かる。



「へぇー、こういう仕組みなんだ。あれ?でもなんで音は聞こえるの?」

「それはな……」



 こうして、ノエルはホウリお兄ちゃんを質問漬けにした。



☆   ☆   ☆   ☆



「へぇー!このゲーム機がノエル達の世界の元になったんだ!」

「正確には、それで出来るRPGゲームが元になっている」

「ゲームってこの世界の遊びなんでしょ?ノエルもやってみたいなぁ」

「別に良いが、そろそろ飯にしよう。本当だったら夕飯を食う時間だ」



 そう言えば、夜の探検をしてたんだった。こっちの世界は明るいから忘れてたや。



「ノエル、あっちの世界で食べられないような、珍しいものが食べたいなぁ」

「了解。あいつもそろそろ来る頃だ」

「あいつ?」



 誰か来る予定があるのかな?けど、ホウリお兄ちゃんって異世界にいた訳だし、誰かと約束はしてない筈。この世界に来てから誰とも会ってないし、いつ連絡したんだろ?

 ノエルが不思議に思っていると、玄関のチャイムが鳴り響いた。



「時間ピッタリだな」



 玄関に向かうホウリお兄ちゃんの後を追う。カギを開けて扉を開けると、そこには麦わら帽子をかぶった汗だくのお姉さんがいた。

 茶色の長い髪に優しそうな目元。服装は白いワンピースで涼しそうな印象を受ける。手には小さなバッグを持っていて、それ以外の持ち物は見当たらない。胸元には星形のロケットペンダントが掛かっている。

 そしてなにより、とっても綺麗だ。ミエルお姉ちゃんと同じくらい綺麗かもしれない。

 お姉さんはニコリと微笑むと真っ赤な唇を開いた。



「こんにちは、鳳梨君」

「よお、凛。わざわざ来てくれてありがとな」

「別に良いわよ。どこかのバカが異世界に行っちゃって暇だったし」

「暑いだろ。中に入れよ」

「そうさせてもらうわ。もう汗だくよ」



 お姉さんをリビングに招き入れる。お姉さんはバッグを床に放り投げると、乱暴に座り込んだ。



「あー!エアコン最高!人類最高の発明はエアコンに間違いないわね」

「足を広げるな。中が見えそうだぞ」

「あー、鳳梨君のエッチ」

「バカなこと言ってないで、汗を拭け。風邪を引くぞ」



 ホウリお兄ちゃんはお姉さんにタオルと円柱状の金属の塊を渡した。

 お姉さんはタオルを受け取ると、汗を拭き始める。



「コーラで良かったか?」

「ええ。ありがとう」



 お姉さんは上に付いている取っ手みたいなものを引いて、金属に穴を開ける。中に入っているのは液体かな?

 お姉さんは中にあった液体を一気に飲み干す。



「んぐっんぐっ、ぷはー!染みるわー!」

「ねえねえ、あれってなーに?」

「あれは缶ジュースだ。缶詰の中身がジュースになったものと考えてくれ」

「へぇー、珍しいね?」

「あっちだと瓶詰が主流だからな」



 ノエルがマジマジと缶ジュースを眺めていると、お姉さんがノエルに視線を向けて来た。



「その子が別の世界から来たっていう子?」

「そうだ」

「見た感じは私達と変わらないわね」

「だろうな。なにせ、祖先はこの世界の日本人だ」

「ん?どういうこと?」

「説明は後のほうがいいだろう。まずは自己紹介からした方が良いんじゃないか?」

「それもそうね」



 お姉さんはノエルに向き直るとニコリと微笑んだ。



「初めまして。私の名前は『星野 凛』。鳳梨君の同級生よ」

「は、はじめまして!ノエルはノエル・カタラーナです!」



 ペコリとお辞儀をすると、リンお姉ちゃんはノエルに抱き着いてきた。



「お人形さんみたいで可愛い~、ねぇねぇ、この子貰っていい?」

「ダメに決まってるだろ」

「えー、けちんぼ」

「少しの間だけ面倒をみさせてやるから、それで我慢しろ」

「ちぇー」



 リンお姉ちゃんは不満そうにしながら、ノエルを解放してくれた。



「もしかして、ノエルを預けるっていう知り合いって……」

「凛のことだ。こいつなら一人暮らしだし、ノエルを預かるのに都合がいい。暇だろうしな」

「そういうこと。よろしくね」

「よろしくお願いします」



 ノエルは再びペコリとお辞儀をする。すると、またリンお姉ちゃんに抱き寄せられた。



「可愛い~。やっぱり、この子貰えない?」

「……こいつに頼んだのは間違いだったか?」



 ホウリお兄ちゃんが頭を押さえて呟く。

 こうして、ノエルの異世界旅行が始まったのだった。

凛は他の小説のヒロインです。別にクロスオーバーがしたい訳じゃなくて、使えそうなキャラがいたので、流用しただけです。


次回はご飯です。異世界はご飯の質が地球とそこまで変わらないので、珍しいものは少ないかも?


今週は胃腸の調子が最悪でした。疲れているんですかね?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ