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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
289/460

第二百四十五話 お湯掛けるのが快感だぜ

連続投稿2日目です。

今回はフラン視点です。ホウリ視点でもあります。

 聴取を終えて、わしはナモンを見下す。先ほどはヌカレへの愛をまくし立てていたが、今はわしから顔を背け、黙りこくっている。

 こやつに動機は聞いた。あとは、個人的にl聞きたい事じゃな。



「なあ、一つ良いか?」

「…………」

「つま先から輪切りにしていくか」

「なんでもどうぞ!」



 扱いやすくて助かるわい。



「さっきお主だけ意識を奪わなかった理由を言ったじゃろ?」

「動機を聞くため、でしょ?」

「それが大半なんじゃが、実はわしの我儘も入っておってのう」

「我儘?」



 わしの言葉にナモンが首を傾げる。



「お主って演技の腕はかなりの物であろう?」

「ヌカレ様と演技するために、稽古したもの。当然よ」

「そのお主から見て、わしの演技はどうじゃった?」

「は?」

「聞こえておらぬのか?わしの演技はどうじゃった?」



 ナモンが目をパチパチと瞬きさせる。



「どうした?答えるのがそんなに難しいか?」

「そうじゃないわ。どれだけ重要な質問がくるのかと思っていたから、拍子抜けしたのよ」

「なんじゃ、そんなことか」



 脅し過ぎたのかと思ったわい。



「もうお主に聞くべきことは無い。じゃから、この質問に強制力はないし、答えんでも痛めつけることは無い。答えたくなければ答えんでも良いぞ」

「…………」



 わしの言葉に、再びナモンが黙りこくる。それもそうか。ナモンにとってわしは一番憎いヌカレの相手役じゃ。簡単に答えてはくれんか。

 そう思っていると、ナモンは顔を背けたまま話し始めた。



「……始めの時は、集中出来てないのが丸わかりだったわ」

「む?」



 小さいながらも、確かにナモンは答えた。驚いていると、ナモンはわしへの評価を続ける。



「暗記した物をそのままやっているのがバレバレよ。他の観客には悟らせていなかったけど、私の目は誤魔化せられないわ」

「むぅ、言い返せんわい」



 初めの頃はナモンたちを探すために、客席に気を配っていた。演技に身が入っていなかったのは事実じゃ。



「例え気になることがあっても、怪我をしていても、演技の質を落とす言い訳にはならないわ」

「そうじゃな」



 もしも稽古にもっと時間が掛けられていたら、もっと前から演技を始めていれば。そうすれば、今回の劇も、もっとマシだったじゃろう。

 今回の劇の出来が低い場合、それはわしの未熟さのせいじゃ。



「なかなか上手くいかないものじゃな」

「……けど、後半は良かったわ」

「へ?」



 ナモンの言葉に、わしは思わず聞き返す。



「屋敷での一戦から、あんたの体から固さが消えたわ。その時のあんたは、完全に役と一体化していたわ」

「…………」



 今度はわしがナモンから顔を背ける。今、ナモンの方を向けば、にやけ顔が見られてしまう。それでは、わしが積み上げて来た威厳が地に落ちてしまう。それだけは阻止せねばならん。



「あの演技を見れば、あんたがどれだけ努力したのか、手に取る様に分かるわ。その努力だけは認めてあげる」

「……ありがとう」



 辛うじてお礼だけ口にする。どうしよう、嬉しすぎてニヤニヤが止まらん。

 すると、ナモンから鋭い視線を感じた。



「調子に乗らないで。細かい所はまだまだよ」

「そうじゃな。わしも精進せねばならぬのう」



 ナモンの言葉でわしの心は軽くなる。わしのやって来たことは全部無駄ではなかった。

 これからも立ち止まらずに精進を続けていれば、もっと良い劇になっていくじゃろう。

 そう思っていると、扉が開いて数人の憲兵が入って来た。



「こちらに爆破事件の犯人がいると通報を受けたんですが」

「この床に転がっている奴らがそうです」

「分かりました。ご協力、感謝いたします」



 全員の身柄を憲兵たちが連れて行ってしまう。



「後は憲兵の仕事じゃな」



 わしの聞きたい事も聞けたし、思い残すことは無い。

 憲兵に連れていかれる最中、ナモンが立ち止まってわしらの方へと振り向く。



「……私ってこれからどうなるのかしら?」

「さあな。あとは弁護士に相談しろ」

「それもそうね」

「さっさと歩け」



 憲兵に急かされるまま、ナモンは歩かされる。



「のう、少しだけ待ってくれんか?」

「なんですか?」



 わしは声を掛けてナモンと憲兵を止める。



「ナモンや、お主は確かに悪人じゃ。少なくとも十数年は檻の中にいるじゃろう」

「なに?皮肉を言いたかったわけ?それとも哀れんでるの?」

「しかし、お主の見る目は的確じゃ。それはお主の努力の結晶であり、演劇への情熱の現れじゃ」

「…………」

「檻から戻ってきたら、またここを訪ねるがよい。その情熱があれば、一からやり直せるじゃろう」

「…………」

「もう行くぞ」



 ナモンは無言のまま、連行されていった。わしの声が届いたのかは分からん。じゃが、あやつがどうなるのかは、あやつ次第じゃ。わしに出来ることはここまでじゃな。

 憲兵が全員出ていった後に、クランチ監督が息を吐く。



「ふぅー、やっと終わりましたね」

「クランチ監督もお疲れさまでした」

「今回の件、皆さんにはお伝えしますか?」

「明日の朝にでも伝えますか」

「そうですね。では、私はこれで」

「俺も帰る。色々ありすぎて、精神が疲弊しすぎた」

「お疲れさん。ゆっくり休め」

「そうする」



 クランチ監督とヌカレは疲弊した疲弊した顔で、物置部屋から出ていく。

 薄暗い部屋の中で、わしとホウリは2人きりになる。

 数分の沈黙の後、わしは口を開く。



「なあ、ナモンがどうなるのか、本当に分からぬのか?」

「想像は付くが確約はできない」

「それで良い。話せ」

「……恐らく、ナモンは死罪になる」

「どうにかならないのか?」

「良い弁護士がつけば、なんとかなるんじゃないか?」

「お主は───」

「俺はナモンを弁護しない。いくら金を積まれてもだ」



 ホウリは冷たい視線でわしを見て来る。意思は強そうじゃ。説得は無意味そうじゃな



「わしに出来る事は?」

「無いな」

「そうハッキリ言ってくれた方が逆に助かるわい」



 わしは長くて2年の命じゃし、もうナモンと会う事も無いじゃろう。



「……わしらも帰るか」



 ひどく物寂しい思いを抱えながら、わしは物置部屋の扉に手をかける。

 ……ダメじゃな。こんな気持ちでは周りの人間を不安にさせてしまう。



「よし、さっさと帰って皆と飯にするぞ!」



 気持ちを切り替えて、わしは笑顔でホウリの方へと向く。



「少し寄るところがある。悪いが先に帰っていてくれ」

「むぅ、今でないとダメか?」

「ダメだな」

「どのくらいで帰る?」

「1時間くらいだな」

「分かった。先に帰っておくとしよう」



 不満に思いながらも、わしは物置部屋から出る。

 こうして、わしの初公演は文字通り幕を閉じたのじゃった。



☆   ☆   ☆   ☆



「よお、遅かったな」

「これでも可能な限り飛ばして来たんですけどね?」

「検察官のラビ様は忙しそうだな」

「ホウリさんの指導のおかげで、検挙率も上がってきていますからね。毎日裁判ばかりで、一日に複数の案件をこなすことさえあります」

「ちゃんと休めてるか?」

「今日で10連勤目です。今もホウリさんに会うから時間が貰えただけです」

「お疲れさん。今日は奢ってやるから好きな物を頼め」

「ありがとうございます。では、このマロンパフェとコーヒーをお願いします」

「了解」

「お待たせしました。マロンパフェ10個とコーヒー2個です」

「……既に頼んでたんですか?」

「俺が食うために頼んだんだよ。1個食べて良いぞ」

「……ありがとうございます」

「で、俺に聞きたい事ってなんだ?」

「今朝、事故を装って建物が爆破された事件がありました」

「さっき犯人は引き渡したな」

「それは報告を受けてます。どうやら、劇場の方でも事件が起こったとか?」

「正しくは事件が起きる前に食い止めた、だけどな」

「それが出来れば理想的なんですけどね。まあ、聞きたい事は爆破事件の方なんですけど」

「何を聞きたいんだ?」

「あの爆破事件は確かにナモンが起こしたものです。憲兵での調査でもそう出ています」

「だろうな」

「ですが、この爆破事件は()()()()()()()()()()()()()()()()()

「具体的にどういう細工だ?」

「火薬の量が減らされていたんです」

「いったい誰が?」

「ホウリさんですよね?」

「へえ?なんでそう思った?」

「ホウリさんってこの事件が起こったから、劇場でも事件が起こると思ったんですよね?」

「ああ」

「事件が起こった時、ホウリさんって劇場にいましたよね?」

「……ああ」

「なんで事件の詳細が分かったんですか?」

「俺が色々と知っているのはいつもの事じゃねえか」

「ホウリさんが規格外ですが、あくまでも物理的に可能なことだけです。憲兵すら掴んでいなかった情報をどうやって知ったんですか?」

「企業秘密だ」

「じゃあ、私が説明しましょう。ホウリさんは爆薬を調整して、建物が崩壊しても死人が出ないようにした。だから、事前に事件の詳細を知っていた」

「筋は通っているっぽいな」

「事件を事前に把握してるのであれば、爆薬を取り除いた方が良いんじゃないんですか?」

「俺の仕業ってことで話を進めているみたいだが、決めつけるのは良くないぞ?」

「ホウリさん以外にそんな事をする人はいないと思いますけど?」

「俺を犯人にしたいんなら、証拠を持ってくるべきだな」

「……じゃあ、例えばの話で進めましょう」

「ほう、例え話か。良いだろう」

「ホウリさんが犯人だとして、なんで爆薬を完全に取り除かなかったんでしょうか?」

「俺があまり事件の解決に動きたくないのは知っているな?」

「ええ。サポートはするけど、あくまで当人に任せる。それがホウリさんのスタイルですよね」

「今回の事件は、劇団の行動が招いたことだ。俺が完全に解決しては、劇団のためにはならない」

「けど、ホウリさんも劇団の関係者ですよね?」

「そうだ。だからサポートはする。それ以上は劇団のためにならない」

「痛みを持って人は成長する、でしたっけ?」

「ああ。だから、フォガートの怪我をもって、劇団には学びを得てもらった」

「それって、劇団の皆さんには説明しましたか?」

「例え話を説明するのか?」

「ああ面倒ですね!仮にホウリさんが犯人だった場合、説明しますか!?」

「説明しないな。メリットが無い」

「ですが、フォガートさんが怪我したのはホウリさんの性でもありますよね?説明しないのは、筋が通らないんじゃないですか?」

「仮に俺が犯人なら証拠も残さない。だから、バレることもない。誰にも知られていないことに筋を通す必要があるのか?」

「……ホウリさんって偶に最低になりますよね」

「リアリストって言ってくれ。聞きたい事はこれだけか?」

「ええ。憲兵にはナモンが後から調整したのではと報告しておきます」

「それしかないだろうな」

「ホウリさんをブタ箱に叩き込めなくて残念です」

「俺って、ラビの師匠的な存在だよな?」

「弟子は師匠を超えるのが喜びなんですよ」

「なら、ラビは弟子の喜びを味わえそうにないな」

「いつか味わいますよ」

「楽しみにしておくよ。じゃあな。会計は済ませておくから、ゆっくりしておけ」

「ありがとうございます。では、また」

「またな」

という訳で決着です。演劇はフランが簡単にできないことの一つです。なので、フランに苦労させたいという理由で演劇をさせました。


次回は未定です。


ニコニコ動画で原石祭の動画を投稿しました。1年ぶりのゲームなので難しかったです。



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