第二百三十二話 なんだァ?てめェ……
今回も短いです。キリが良い所が中々なくてですね。
白銀の弓(?)を受け取った僕は会場の前で立っていた。ホウリさんに終わったらここで待っているように言われたけどまだかな?
弓を抱えながら待っていると、ホウリさんとノエルちゃんが会場の中からやって来た。
「よお。ちゃんと優勝できたみたいだな」
「あまり嬉しくないですけどね。お二人は会場にもいなかったですけど、何処にいたんですか?」
「ちょっとお偉いさんに会っててな」
「お偉いさん?」
「ロワにも紹介しよう。付いてきてくれ」
ホウリさんとフランちゃんは再び会場の中に入っていく。お偉いさんって誰なんだろ?
会場に入りすぐ横にある、『関係者以外立入禁止』の扉の中に入る。部屋の中には弓当ての司会をしていた人がソファーに座っていた。顔はさっきよりも青くなっている。
「この人って的当ての司会者ですよね?そんなに偉い人なんですか?」
「名前はシュウ。この展示会の最高責任者だ」
「え?そうだったんですか?」
シュウさんに視線を向けると、油汗をハンカチで拭いていた。自身無さそうで、そんなに偉い人には見えない。
「とりあえず座れよ。ロワの疑問に答えてやる」
「ロワお兄ちゃんはノエルの隣ね」
ノエルちゃんがシュウさんの前のソファーに座って、隣をペシぺシと叩く。僕はノエルちゃんに促されるまま、ソファーに座る。ホウリさんはシュウさんの隣に座った。
「ロワが知りたいのは今回の弓当てが異様だった理由だろ?」
「そうです。急に参加費を取ったり、優勝賞品が偽物だったり、そもそも弓当てにやる気を感じられませんでした」
「その理由はそいつにある」
ホウリさんが僕が抱えている白銀の弓(偽物)を指さしてくる。
「これですか?」
「これって偽物なんでしょ?どう関係あるの?」
「偽物はどうでもいい。関係があるのは本物の方だ」
「そういえば本物の白銀の弓はどこにあるんですか?」
「良い質問だな」
ホウリさんが僕を勢いよく指さす。
「本物の白銀の弓の在りかがポイントだ」
「シュンおじさんに聞けば分かるんじゃない?」
確かに最高責任者であるシュンさんであれば、白銀の弓が何処にあるかは分かるはず。
そう思ってシュンさんの方へ向くと、僕らから目を逸らした。これは何かやましいことがあるに違いない。
「どうしたんですか?もしかして、白銀の弓を独り占めしたんですか?」
「そ、そんなことは!」
「じゃあ何処にあるんですか?」
「それは……」
シュンさんは油汗を拭きながら顔を歪める。さらに追及しようとしたのをホウリさんが手で制した。
「俺が代わりに答えてやる。白銀の弓は行方不明だ」
「え!?どういうことですか!?」
「詳しくは本人に聞いた方がいいだろう。シュンさん、話せますか?」
ホウリさんが優しくシュンさんに話す。その言葉に安心したのか、シュンさんは少しずつ話し始めた。
「1週間前に白銀の弓の状態をチェックするために金庫から取り出しました。ですが、机に置いてしばらく目を離すと、白銀の弓が無くなってしまったのです」
「な!?」
衝撃の発言に思わず机を叩いて立ち上がる。
「白銀のが無くなった!?一体どういうことですか!?」
「わ、私にも分かりません。ただ、窓が開いていたので誰かが盗んでいったのではと……」
「他人事ですか!?白銀の弓は職人の方が長い時間をかけて大切に作ったものですよ!?盗まれた、で済むわけないでしょ!?」
「その……」
「落ち着け」
ホウリさんの静かだけど迫力のある声が響く。
「まだ説明の途中だ。大人しく聞け」
「……分かりました」
僕はソファーに座りなおす。正直、まだ怒っているけど、まだ話の途中だ。どうするかは話を全部きいてから決めよう。
「でもさ、なんで白銀の弓が無いからって、弓当てのルールとかを変えたの?」
「無くしたことを知られたくないからだな。職人に知られたら、次からは白銀の弓が提供されななくなってしまう」
「白銀の弓が無くなったなんて、一大事ですからね。僕が職人だったら、そんな杜撰な管理をしているところには自分の作品は提供したくないです」
「……耳が痛いです」
シュンさんの呟きに僕は睨みつける事で答えます。
「で、皆に知られたくないから大会へ参加しにくくした訳ですね。参加者は運営側で用意した人で揃えて、賞品は偽物で誤魔化すつもりだったと?」
「………………」
「黙ってたら分かりませんよ?」
「その通りです……」
「そうですか。説明は以上ですか?」
「ロワへの説明は終わりだな」
「なら遠慮はいらないですね」
ホウリさんの言葉を聞いた僕は改めて机を思い切り叩く。
「ふざけないでください!自分がしたことを誤魔化すためにルールを捻じ曲げるなんて、やって良い訳ないでしょう!」
「ひい……」
僕の叫びにシュンさんが身を竦める。だが、僕の怒りは収まる事を知らない。
「この弓当てを楽しみにしていた人もいるんですよ!あなたのミスのせいでどれだけの人の思いを台無しにしたと思ってるんですか!」
「す、すみませんでした……」
「僕に謝っても仕方ないでしょ!大体、優勝賞品が偽物なんて詐欺ですからね!」
「それは……」
シュンさんが僕の言葉を受けて涙を流す。けど、僕はまだまだ言い足りない。
「大体ですね───」
「ノエル」
「りょうかーい。てりゃ!」
「ゲボァ!」
いきなり、わき腹に凄まじい衝撃が走って、壁まで吹き飛ばされる。
壁に叩きつけられた僕は血を吐きながら身を起こす。わき腹が死ぬほど痛い。絶対に肋骨の何本かは折れているだろう。
「ゲホッ、な、何が起こったんですか……」
「ノエルに死なない程度に殴って貰った」
「なんでですか!?」
「熱くなりすぎて声が届きそうになかったからな。少しだけ荒っぽい手段を使わせてもらった」
「荒っぽいってレベルじゃないですよ!?ゲホッゴホッ」
「大丈夫?」
ノエルちゃんがセイントヒールで癒してくれる。けど、ダメージの元はノエルちゃんなんだし、素直に感謝できない。
「僕ら仲間だよね?攻撃するのに躊躇が無さすぎない?」
「え?だって、攻撃しても治せるし、これが手っ取り早いんじゃないの?」
「それホウリさんに言われたの?」
「うん。あとフランお姉ちゃんにも、『誰かが暴走した時は殴って止めろ』って言われたよ」
お二人の思考のハイブリッドか。納得だ。
完全回復して立ち上がり、再びソファーに座る。
「落ち着いたか?」
「ええ。もう怒鳴り散らしたりしません」
「やけに物分かりが良いな?」
「怒鳴ると、またノエルちゃんの拳が飛んでくるんでしょ?」
「良く分かったな」
「ノエルちゃんが横でシャドーボクシングしていますからね」
やる気満々にパンチの練習をしているノエルちゃん。拳が空を切る音が鋭すぎる。流石にさっきと同じ痛みを味わいたくはないかな。
ホウリさんは背にもたれ掛かり足を組む。
「まあ、ロワの怒りも分かる。どういう事情があったにせよ、シュンさんがやった事は詐欺だ。憲兵に知らせれば逮捕されるだろうよ」
「そ、それだけはご勘弁を」
「罪を犯して『許して』は都合がいいと思いますけどね」
「まあそう言うな。俺が憲兵に密告せずに、ここで説明をしているのも良い方向に持っていくためだ」
「どういう事ですか?」
正直なところ、僕は今すぐにでもこの男を憲兵に突き出したい。けど、ホウリさんには別の考えがあるみたいだ。
「ここでシュンさんが捕まったとしたら、次から展示会は行えないだろう」
「確かにそれは困りますけど、ここで見逃すのは納得できないです」
「俺も同じ意見だ。だから、俺から条件を出し、それを飲む場合は見逃してもいいと思っている」
「条件?」
「1.半年以内に的当てを開催する。2.その際の費用は運営持ち。3.他の街から参加を希望する者には交通手段を準備する」
「また的当ての機会を作るって事ですか」
「運営側としてもかなりの痛手になるはずだし、罰としては十分だろ?」
僕が怒っているのは、他の人の的当ての機会が無くなってしまったことだ。埋め合わせさえ出来れば文句はない。
「ですが、白銀の弓はどうするんですか?」
「あれなら何処にあるかの目星は付いている」
「「本当ですか!?」」
衝撃の発言に僕とシュンさんの声がハモる。普段なら『声が被りましたね』って笑う所だけど、今はそれどころじゃない。
「だ、誰に盗まれたんですか!?」
「どうやってあの短時間で!?」
「シュンさんはペットにホワイトウルフを飼ってましたよね?」
「はい」
「ホワイトウルフには光る物を地面に埋めるという特性があるんです」
「え?」
ホワイトウルフが光る物を埋める?白銀の弓は煌めく美しい弓だ。つまりは?
「ホワイトウルフが白銀の弓を地面に埋めた?」
「その可能性が高いな」
「す、すぐに見てきます!」
ホウリさんの言葉を聞いたシュンさんが部屋を飛び出す。
「待ってください!まだ話は……」
「行かせてやれ。どうせ逃げられない。逃げたとしてもすぐに見つけ出す」
追おうとする僕をホウリさんが止める。確かにホウリさんの言う通りだ。
「ちなみに、白銀の弓が見つかったら優勝者のロワに所有権があるんだが、どうする?」
「いりませんよ。あんな大会で優勝しても名誉なんてありませんしね」
「じゃあ、次の的当ての商品にするか」
こうして、的当てに関する騒動は幕を閉じた。
この後、白銀の弓は見つかり、シュンさんはホウリさんの出した条件を飲んだ。半年後に的当ての開催は決定し、僕はシード選手として招待された。
半年後には今回のような変な大会じゃなくて、強豪たちと正々堂々とした戦いが出来る。今から楽しみだ。
知ってますか?弓当てはハイファイに来た目的ではありません。なんで3話も使ってるんですかね?
次回は本来の目的であるトリシューラです。
ブルアカ復帰しました。フェスガチャでシロコ引けました。




