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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
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第二百二十五話 黙ってたら美人

ナマク先生視点になります。冷たい印象を受ける彼女の中身はどうなんですかね。

「ナマクって中身が残念だよね」



 そう言われて何年が経っただろうか。確かに私は自分でも抜けていることがあると思う。

 人よりも勉強も出来し運動神経も良い方だ。だが、テストで解答欄がズレてしまうのは日常茶飯事。歩いてもよくコケるし、忘れ物も珍しくない。

 見た目も悪くないらしいから、最初は人が寄ってくる。けど、私の内面を知ってガッカリされる。

 見かけくらいはなんとかしようと、無表情でクールを装っているが、それが中身とのギャップに拍車をかけているらしい。

 大人になってもそれは変わらず、仕事でも始めは期待されるけど1年も経たないうちにクビになる。幸いにも資格は沢山持ってるから、仕事は見つかるけど長続きしない。

 私に会う仕事はあるのだろうか。



☆   ☆   ☆   ☆



 私は職員室で小さく息を吐く。

 憲兵をクビになった私が次に選んだのは教師だった。教員免許は持っていたし、教えられるだけの知識はある。授業をするだけなら可能だろう。

 問題なのは自分のポンコツを上手く隠せるかだ。



「ナマク先生、大丈夫ですか?」

「校長先生」



 不安な気持ちが出ていたのか、校長先生から声を掛けられる。



「大丈夫です。問題ありません」



 私は表情を変えずに答える。もうクールに振舞う必要はないんだけど、表情に出さないのが癖になってしまっている。

 気分を害していないかドキドキしていると、校長先生がゆっくりと頷く。



「大丈夫であれば良いのです。ただ、教師だからと言って弱音を吐いてはいけない訳ではないのです。よ?何か相談したいことがあれば話してくださいね」

「……実は少し緊張しています」

「そうでしたか。不安な点があれば相談に乗りますよ?」

「では少しだけ」



 校長先生に不安なところを聞いて、少しだけ不安が消える。

 そうこうしている内に生徒たちを講堂前まで迎えに行く時間になった。

 私は席から立って校長先生に頭を下げる。



「ありがとうございました」

「頑張ってくださいね」

「はい」



 笑う事は出来なかったけど、最大の感謝を込める。校長先生には伝わったのか、微笑んで送ってくれた。

 背筋を伸ばして講堂前へ向かうと、収まっていたドキドキが再び強くなってきた。

 今までは失敗しても自分がクビになるだけで済んだ。けど、今回は生徒たちに迷惑をかけるかもしれない。絶対に失敗はできない。

 そう思いつつ、生徒たちが待機している講堂前に到着する。

 この学校の制服を着た生徒たちが二列で並んでいる。だが、名門とはいえまだ小学生。静かにしているのは退屈なのか、近くの子と会話をしている子が大半だ。

 これだけ密集しているのを見ると壮観だ。この光景も見なれるのだろうか。

 そう思いつつ、列の前に立って叫ぶ。


「はいはい!皆さん静かにしてください!」



 その言葉だけで皆は会話を止めて私に視線を向けて来た。これだけ多くの視線を集めるのは初めてだ。

 怯みそうになった心を押し殺して、話を続ける。



「今から講堂に入場します。くれぐれも列を崩さずに騒がずに入場してください」



 講堂の扉を開けて生徒たちを先導する。指定の席に皆を座らせて、私自身も端の教師用の椅子に腰かける。

 入学式が終わるまでは私がやる事はないでしょう。この間に少しでも緊張をほぐしておかないと。

 そう思っていると、ヒソヒソという話声が聞こえて来た。声のする方を見てみると、銀髪で長髪の子と茶髪でおさげの子が話していた。

 確か名前はノエルとコアコだったはずだ。そろそろ入学式が始まるから静かにして欲しい。注意するべきだろうか?

 だが、注意の仕方によっては怖がらせて萎縮させてしまう。かといって注意しない訳にも行かない。どうしたものか。

 注意の仕方で悩んでいると、2人は私の視線に気が付いたのか、話を止めて舞台の方を向いた。

 注意しに行く前に気が付いてくれて良かった。そう思い私も舞台へ向く。

 あれ?そういえば、ノエルって聞いたことあるような?

 確か憲兵で働いていた時にクラン家の調査をした時だっけ?神の使いの名前がノエルだった気がする。まあ、ノエルなんて名前は他にもいるだろうし偶然だろう。

 そんな事を考えていると、入学式はつつがなく終わった。次は生徒たちを教室に案内しなくてはならない。これが最初の試練だ。

 ここで注意することは2つ。『案内中に転ばない』と『教室までの道を間違えない』だ。

 大丈夫。今日までの特訓の日を思い出すんだ。家の周りを毎日歩いて転ばない様に特訓し、講堂から教室まで100往復はした。

 学生時代に1日1回は転んで、転ばなかった日はクラス中からお祝いされる。行きつけの喫茶店に迷わずにたどり着けたことが無い。そんな私はもういないんだ!自信を持とう!

 生徒たちに見えない様に握りこぶしを握って気合を入れる。



「これから教室に案内します。大人しくついて来てください」



 生徒たちにそれだけ伝えて、私は練習通りに教室までの道まで進んでいく。

 第1コーナー、クリア。第2コーナー、クリア。ここの分かれ道は右に行く。

 慎重に、しかし迷いなく進む。そして最後の直線。ここで焦りすぎてはいけない。焦って転んでしまっては元も子もない。速さよりも正確性を重視だ。

 あと10m……5m……1m……ゴール!

 なんとか転ばず迷わず教室までたどり着く。心の中でガッツポーズをしながら、意気揚々と扉を開ける。



「壁に席順を貼ってあるので、それを見て席に座ってください。全員が座ったらホームルームを始めます」



そう言って私は教室の後ろに貼ってある席順の表に視線を向ける。あの表は私が頑張って手作りしたものだ。自分で言うのもなんだが、可愛らしく出来たと思う。生徒たちも喜んでくれるだろう。

 満足そうに眺めていると、生徒たちから怯えの視線が注がれているのに気が付く。

 あれ?なにか怖がられるような事をしたっけ?……そういえば、私って無表情だから子供に避けられてたっけ。親戚の子供も私の姿を見るなり、奥に引っ込んでいってた。

 考えてみれば私は教師に向いていないのでは?

 嫌な結論にたどり着いてしまったが、ここまできて後には引けない。ここからは親しみやすい雰囲気を作っていかないと。

 そう思って黒板に名前を書く。



「初めまして、今日から1年間皆さんの担任になります、『ナマク・シュー』といいます」



 可能な限り優しい声を作って、生徒たちに自己紹介をする。小粋なジョークでも挟もうと思ったが、失敗しては空気が凍るどころではないので、軽く頭を下げるだけで済ませる。



「今からホームルールを始めます。まずは自己紹介からしてもらいます。そこのあなたから、名前と何か一言をお願いします」

「はい。僕の名前はカール・サンミと言います。緊張していますが───」



 そこから生徒たちの自己紹介が始まる。今日はこの自己紹介だけで終わりだ。流石に平和に終わる───



「あー!サルミちゃん!」

≪あー!あなたは!≫

「ああー!あなたは!」



 ───ノエルさんが3回も自己紹介をさえぎった事以外は平和だ。

 とはいえ、ノエルさんはこのクラスに知り合いが多いみたいだ。ノエルさんが中心になれば良いクラスになるかもしれない。



「──以上でホームルームを終わります。明日から授業が始まりますので、くれぐれも遅刻しないようにしてください」



 こうして先生としての初日はなんとか終わったのだった。



☆   ☆   ☆   ☆



「ナマク先生、ちょっといいですか?」

「ノエルさん、どうしました?」



 教師の仕事にも慣れて来たころ、放課後に職員室にノエルさんがやって来た。ノエルさんはこんな私にも笑顔で挨拶してくれる優しい子だ。

 ノエルさんはいつもと変わらない笑顔で話を続ける。



「クラスに登校してない子がいるでしょ?その子がどこに住んでるか教えて」

「なぜですか?」

「だって、皆で学校でお勉強したほうが楽しいでしょ?」



 そう言って目をキラキラさせるノエルさん。まごう事なき本心なんだろう。

 だが、学校に来ない『パンプ・ジャック』さんの事情は複雑だ。子供だけでどうこう出来ないだろう。それどころか、変に刺激してしまって、絶対に学校に来なくなる可能性すらある。

 ならば、教えない方が良いだろう。

 ……それでいいのだろうか?私だってパンプさんを学校に来させるために孤児院に通った。しかし、話すどころか会う事すらできなかった。

 パンプさんは両親の莫大な遺産を受け継いでしまい、それを狙う大人たちのせいで他の人を信じられなくなったそうだ。

 私だとどれだけ時間をかけても信用すらされないかもしれない。だったら、同じ年齢の子に任せた方が良いのではないだろうか。



「ナマク先生?」



 私が何も答えないのを不思議に思ったのか、ノエルさんが顔を覗き込んでくる。



「どうしたの?お腹痛い?」

「いえ、大丈夫です。パンプさんの住所でしたね」



 紙にパンプさんの住所を書いてノエルさんに渡す。



「これが住所です」

「ありがとうございます!」



 紙を受け取ったノエルさんは満面の笑みで職員室を出ていく。



「ノエルさん」



 職員室の扉に手を掛けたノエルさんに私は話しかける。

 ノエルさんは不思議そうに首を傾げた。



「なんですか?」



 私はノエルさんに向かって頭を深く下げる。



「パンプさんをよろしくお願いします」



 顔を上げるとビックリしたように目を丸くしたノエルさんがいた。だが、すぐにいつもの笑顔に戻ると、サムズアップを返してくる。



「任せて!」



 そう言い残して、ノエルさんは職員室から出ていった。



「これで良かったのだろうか?」



 ノエルさんの姿が見えなくなり私は呟いた。



☆   ☆   ☆   ☆




 パンプさんが登校した日、放課後にノエルさんと友達の皆さんが職員室にやってきました。



「ナマク先生、ちょっといいですか?」

「ノエルさん、……と、今回は皆さんも一緒ですか。どうしました?」

「これを提出しにきましたー」



 そう言って、ノエルさんが1枚の紙を提出してくる。



「これは?」

「クラブの申請書です!これを出せばクラブが出来るんですよね?」

「内容次第です。確認しますね」



 そういえば、オカルトクラブを作ろうという話を聞いたことがある。パンプさんを部員にすることで部員の数が足りたのでしょう。

 ノエルさんには恩もありますし、多少粗があっても設立させてあげても良いでしょう。

 そう思って、申請書に目を通すと、顧問の項目が空欄なことに気が付いた。



「どうですか?」

「認められません」

「なんで!?」



 顧問欄が空欄である事を説明し、申請書をノエルさんに返す。



『顧問か。すっかり忘れてた』

「そうだったね」

「誰に頼もうか?」

「でも、私、顧問してくれる先生の心当たりないよ?」

「ナマク先生、誰か顧問やってくれそうな先生に心当たりは無いですか?」



 部員が揃って浮足立っていたみたいだ。

 他の先生は他のクラブの顧問になっている。だとしたら、顧問の先生を探しても見つからないだろう。だとしたら、



「あります」

「本当ですか!?」

「いったい誰!?」



 ノエルさんから申請書を受け取り、顧問の項目に私の名前を書いて返す。



「え?これって……」

「私がオカルト研究クラブの顧問になりましょう」



 私の言葉に、コアコさんが遠慮がちに手を上げる。



「あの、いいんですか?」

「ええ。問題ありません」

『なんで顧問をしてくれるんですか?』

「私なりの御礼ですね」

「御礼?」



 ノエルさんは心当たりがないのか腕を組んで考え始める。

 ノエルさんにとって、パンプさんを救う事は自分がやりたい事の一つであって、私に借りを作った気はないのでしょう。



「私だけではパンプさんを救う事は出来ませんでした。ノエルさんには感謝してもしたりません」

「ノエルはやりたい事をやっただけだよ?」

「それでもです。これでつり合いが取れるとは思ってませんが、皆さんが必要としているのであれば力になりましょう」



 私の言葉に皆さんは顔を見合わせ、一斉に頭をさげた。



「「「「『よろしくお願いします!』」」」」

「はい、受理しました。部室は後日に用意します。本格的な活動はそれからになります」

「はーい!」



 こうして、私はオカルト研究クラブの顧問となった。

 この後、オカルト研究クラブで様々な経験をするのだが、それは別のお話。

という訳でナマク先生はポンコツです。頑張ってボロを出してないだけです。なお、本当は部室が出来たところまで入れるつもりでしたが、色々あって他の話に回しました。


次回は未定です。フランの話だと思います。


スーパーで鬼滅の玩具が半額でワゴンに積まれてました。繁栄と衰退って感じがしてわびさびを感じました。

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