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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第1章
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第二十話 俺は止まらねぇからよ……

眠い中で書き上げました。少し変かもしれません。少しどころではないかもしれませんが。

─────神級スキル────


神級スキルとは数あるユニークスキルの中でも最上級のスキルで、色々な役立ちスキルが手に入るスキルである。神級スキルには『剣神』『弓神』『騎士神』など色々種類がある。一部の神級スキルには手に入るための試練として『神の試練』があるものもある。














☆   ☆   ☆   ☆

















 とりあえず、弓を教えるにあたって少し工夫がいるな。とりあえずは……

 考えを整理して俺は口を開く。



「まずは、弓を射る姿勢からみてみましょう。いつもみたいに弓を射ってみてください」

「はい」



 ロワはさっきと同じように弓を構え、的に向かって放つ。すると、矢はさっきと同じように的の下に向かって飛んでいく。俺は矢が刺さった位置を確認する。なるほどなるほど。



「フラン、分度器とメジャーと筆記用具とノートを出してくれるか?」

「そんなのなんてあったか?」

「確かプレゼントの中に入っていたはずだ」




 フランはアイテムボックスをまさぐり、中から分度器とメジャーと筆記用具とノートを取り出す。オダリムの教師の人から色々と文房具を貰っていたからそれが役に立つな。ちなみに、分度器は透明のプラスチックみたいな素材で出来ている。昔の人たちの努力が見えるな。



「では、さっきと同じように構えて3度上を狙ってください」

「3度?わかった、やってみるよ」



 そう言ってさっきと同じように弓を構えた後、分かるか分からないか位あげて的に向かって放つ。矢はさっきより上に飛んでいき、的の遥か上を通り過ぎる。


「では、次は最初の構えから2.9度上を狙ってください」

「2.9度?ずいぶん中途半端ですね?」

「俺に考えがあります。俺に任せてもらえませんか?」

「さっき任せると言いましたし任せますが……」

「考えは後で話します。とりあえず今は特訓しましょう」

「わかりました」





─────三時間後────






「じゃあ次は0.1度上を狙ってください」

「そ、そろそろ休憩しませんか?」

「疲れましたか?では、休憩しましょう」

「わ、わかりました……」



 その言葉を聞いたロワは後ろに大の字に倒れこむ。

 俺はヤカンと茶葉を取り出してロワに尋ねる。



「今からお茶を淹れますがロワさんもどうですか?」

「ありがとうございます、いただきます」

「フラン、折りたたみの椅子とテーブルを出してくれるか?」

「うむ」



 フランが椅子とテーブルを出し、俺はお茶を淹れる。淹れたお茶を四つのカップに入れテーブルの上に配膳する。そして、買ってきた饅頭をテーブルに置く。



「疲れた時には甘いものが良いですよ。遠慮なくどうぞ」

「いっただっきまーす!」

「い、いただきます」



 ノエルが両手に饅頭を持ち口いっぱいに頬張る。

 それを見たロワは恐る恐る饅頭に手を伸ばす。一口齧るとロワは目をカッと目を見開いた。



「この饅頭すごくおいしいですね?僕は甘いものがあまり好きではないので甘さ控えめなのが嬉しいです」

「それはよかったです。好きなだけ食べてくださいね」



 パクパクと饅頭を食べるロワを見ながら俺も饅頭に手を伸ばす。

 皆で楽しくティータイムをすごしながら、俺は色々とロワに聞いていく。



「ロワさんはいつから弓使いを?」

「5歳ぐらいからかな?初めは父に教えてもらっていました。でも、僕の腕が悪すぎて愛想をつかせて出て行っちゃいました」

「ロワさんのお父さんがそう言っていたんですか?」

「直接は言われてないんですがきっとそうです」



 うーん、自分の腕が悪すぎてネガティブになっているみたいだな。すこし元気付けてやるか。

 


「前の街である人に会いました」

「ある人?」

「なんでも、息子の弓が中らないから改善方法が何かないか調べているらしいです」

「!?、その人の名前は!?」

「その人は名乗りませんでした。ですので名前は知りません」

「そう……ですか……」



 ロワは少し沈んだ様子だったがすぐに目に光が宿る。



「ホウリさん、今すぐ練習を再開しましょう!父さんの期待に答えないと!」



 ロワが急に立ち上がりテーブルに勢いよく手を叩きつける。その大きな音にノエルがびっくりして手に持っていた饅頭を落とす。

 俺はお茶を飲みながら口を開く。



「『弓使いに必要なのは冷静さ』でしょう?気合いが入るのは分かりますが冷静になってください。」

「それは父さんの言葉!?……僕は大事なことを忘れていたようですね」

「あと、30分で練習を再開します。それまでは休んでください」

「……はい」



 ロワは力が抜けたように椅子に座り込む。俺は、それを見て饅頭を齧る。

 そんな俺に一つの視線が注がれていた。視線の先を見てみるとフランが俺を凝視していた。俺がそれに気付くと頭の中にフランの声が響いてきた。



『ホウリ、聞こえておるか?念じるとわしに声が届くようになっておる。聞こえておるなら返事せい』

『聞こえてるよ。なんだこれ?念話か?』

『まあ、そんなもんじゃ。そんなことより、父親の話は本当か?』

『んなもん嘘に決まってるだろ。あのままだと練習に身が入らない様子だったから少し元気付けただけだ』

『ほめられた事ではないのう』

『嘘も方便だ』



 フランのジト目を受け流し饅頭をむしゃむしゃ食べる。



『そういえば、なんでロワの父親の言葉を知っておったんじゃ?偶然か?』 

『ああ、それはこいつを見たからだ』



ロワに見えないように配慮しながら、あるものをフランに見えるようにアイテムボックスから取り出す。



『なんじゃそれ?《最強の弓使いが教える!弓の極意!──入門編──》じゃと?』

『その本の筆者見てみろ』

『《筆者 トレット・タタン》?まさか!』

『おそらくロワの父親だろうな。一応たしかめるか』



 天を仰いでいるロワに父親について尋ねてみる。



「ロワさんのお父さんってどういう人なんですか?」

「凄腕の弓使いでした。1km離れたゴマだって打ち抜いとこともありました。ただ、少し調子に乗ることがあってそれがなければ最高の弓使いだってよく言われてました」

「ちなみに、名前はなんと言うんですか?」

「『トレット・タタン』です」



 ビンゴだな。というか、息子ほっておいて本を出版するとかどんな父親だよ。



『いや、お主の父親も相当じゃぞ?』

『あの親父を基準に考えるな』



 親父は人間かどうかも怪しい。妖怪か何かなんじゃないか?



「ちなみに、ロワは冒険者なのか?」



 フランの質問に曖昧にロワがほほ笑む。



「一応登録だけはしてあるのですが、弓の腕がこんな感じですからクエストが受けられないんですよ」

「そう言えば、ここらの魔物は弓ではないと厳しかったのう。それでよくLv15まで上げられたものじゃ」

「親切な人たちが弓で弱らせてくれたんです。そこを僕が剣でとどめを刺して何とかLv15まであげたんですよ」

「ちなみに、協力者は全員女性じゃなかったですか?」

「その通りですが、よくわかりましたね?」   

「誰でも想像出来ると思いますよ」



 あの受付の人は『様』付けだったし、ロワの女性人気はものすごいものだろうな。なによりイケメンだし。



「色々と物を頂いたり、Lv上げの手伝いをしてくれたりこの街の女性は皆さん親切ですよ」

「それロワさんだけだと思いますよ」



 受付の女性にロワの事を聞いた時の敵意は小熊を守ろうとする親熊に匹敵していた。というか殺意すら感じた。



「率直に聞きますけど、ロワさんモテますよね?」

「いえいえ、全くモテませんよ。弓が下手すぎて皆さん同情してくれますけど告白なんかは一度もないです」

「……そうですか」



 こいつはラノベの主人公並みに鈍いのか?



『こやつはラノベ主人公並みに鈍いのか?』



 フランも同じことを考えていたらしい。というか、今の言葉聞いたら全員同じ考えになるだろ。



「ちなみに、冒険者で稼いでいるんですか?」

「いえ、さすがにそれは厳しいのでパン屋でバイトを───あっ!」



 急に音を立てながら焦った様子でロワが立ち上がる。



「バイトがあるの忘れてました!今すぐ向かわないと!」



 ロワは弓矢を片付けながら急いで身支度を済ませる。そのロワに俺はテーブルや椅子を片付けながらロワに話しかける。



「明日また来ますが時間はどうしますか?」

「明日はバイトないので朝9時からお願いします!」

 


 そして、身支度を済ませたロワは飛び出すように玄関に向かう。



「では、また明日お願いします!」



 そう言ってロワが靴を履いて玄関から出ようとする。だが



「ロワくーん?まーだこんなボロい射撃場使ってんのー?」



 誰かがロワの行く手を阻んだ。その人物は一目で質の高い事が分かる服を着ており身分が高いことが伺える。



「ジル、僕は今急いでいるんだ。そこを退いてくれないかい?」

「あーん?誰にむかって口きいてんだ?そう言うのは一発でも的に中ててからいうんだな」



 なるほど、こいつが『ジル・クミンバ』か。聞いていた通りロワに敵意むき出しだな。



「とにかく、バイトまで時間がないんだ。そこを退いてくれないか?」

「ああ?店長の女をたぶらかして金をたんまり貰ってんだろ?」

「僕はそんなことしてないよ」



 いつもの事なのか適当にあしらっているロワ。そんなロワを見てジルは顔を真っ赤にし更にヒートアップする。



「だいたいな、いつもいつも女に囲まれやがって!お前は女がいねえと何もできないのか!ユミリンピックに出られない癖に生意気なんだよ!」

「ちょっと待ってください。ロワさんユミリンピックに出られないんですか?」

「あ?誰だおめぇ?」



 ジルがこっちを睨んでくる。俺は顔に笑顔を浮かべながらジルに挨拶をする。



「はじめまして、私はホウリと申します。今ですねユミリンピックに出る人たちに話を聞きにまわっているんですよ。優勝候補と言われているジルさんには後でお話を伺おうと思っていたんですよ」

「そうかそうか、お前は見る目があるようだ。後で屋敷に招待してやろう」

「ありがとうございます」



 ロワの顔をチラリと見て、上機嫌になったジルにさっきの発言について聞いてみる。



「それで、ロワさんがユミリンピックに出られない理由をお聞きしてもいいいですか?」

「それなら簡単だ。ユミリンピックは予選を突破した弓使いしか出られないからだ。しかも、予選は3日後。これじゃあ結果は見えてるだろ?」

「なるほど、そういうことでしたか」



 それで、出られないという訳か。



「残り三日、せいぜい無駄な努力でもするんだな」



 気分を良くしたジルは捨て台詞を吐いて射撃場をあとにする。

 ジルがいなくなった後、ロワが俺に話しかけてきた。



「聞いた通りです。ユミリンピックの予選まで後3日しかありません。これ以上僕に付き合うのは時間の無駄だと思いますよ」

「一つ聞きます。ロワさん自身は諦めているんですか?」

「……はい。僕は諦めようと思います」

「嘘ですね」



 ロワの言葉を俺はバッサリと切り捨てる。俺の言葉が予想外だったのかロワは目を大きく見開いている。



「さっき使っていた弓はかなり年季が入っていましたね。ですが、きちんと手入れされていました。諦める人が使わない弓の手入れなんかします?」

「…………」

「しかも、ほぼ毎日旧射撃場に通っているらしいですね。諦めた人がなぜ射撃場に通っているんですか?」



 ばつが悪そうな顔をしながらロワは顔をそらせる。

 ちなみに、ロワが旧射撃場に通っているという話は鎌をかけるために、俺が今でっちあげた話だ。



「それに、さっきユミリンピックの話が出た時のロワさん、自分でどういう顔していたか分かりますか?」

「顔ですか?」

「あれは、すべてを諦めた負け犬ではありません。強い意志を持った戦う者の顔でしたよ」

「……そうです。僕はまだあきらめ切れてません」



 図星を突かれたのか、諦めたようにロワはポツリポツリと話し始める。



「僕は小さい時から父さんのような弓使いになるために特訓していました。父さんの教えを受けながら毎日射撃場に通っていました」

「だけど、なぜか的に一度も中らなかった」



 俺の言葉にロワは力なく頷く。



「僕はなぜか矢を中てることが一度も出来なかったんです。父さんは原因を探るために旅に出たみたいですが他の人たちは諦めろって言ってきたんです」



 ロワの手に力が入りブルブルと震えている。



「だけど、僕は諦める事が出来なかった。その他の全ては犠牲に出来ます。でも、弓だけは諦めることができなかったんです!」



 壁を殴りつけて憤りをあらわにするロワ。そんなロワに俺は言葉を投げかける。



「それで、ロワさんが諦めていないのに俺に諦めろっていうんですか?」

「でも、あと3日しか……」

「なに言ってるんですか?」



 俺はロワを真っ直ぐ見詰めて言葉を紡いでいく。



「3日も要りません。明日にはロワさんを的に中てられるようにします」

「明日!?明日には中るようになるんですか!?」

「はい。今日の様子を見る限り明日には中るようになりますよ」



 俺の言葉がかなりの衝撃だったのか何も言えずに口をパクパクさせるロワ。

 


「ロワさん、バイトの時間は良いんですか?」

「え?あ、忘れてた!それじゃあ僕はこれで!明日もよろしくおねがいします!」



 ロワは早口でまくし立てると飛び出すように射撃場を出て行った。

 ロワが出て行ったあと、フランが俺に話しかけてきた。

  


「ホウリ、明日には中るようになるとはどういうことじゃ?引きまくって『弓の試練』を『弓神』にするのか?」

「いや、『弓の試練』のままで中ててもらう」

「は?むりじゃろ?百万本近く引いて一本も中らんかったんじゃぞ?いくらお主でも無理じゃろ?」

「今まで中らなかったのは『弓の試練』の存在を誰も知らなかったからだ」

「じゃが、中らなくなるなんて嫌がらせみたいなスキルどうするんじゃ?」

「フラン、勘違いしているようだが『中らなくなるスキル』じゃなくて『弓の精度を99,99999%下げる』だ」

「どっちも変わらんじゃろ」

「大きく変わる。それと、嫌がらせじゃなくてあくまで試練だ」

「訳がわからんぞ」

「明日嫌でも分かる」



 そう言って俺は大きく伸びをすると、人の名前が載ったとあるリストを取り出す。 


「なんじゃそれ?」

「優秀な弓使いが載ったリスト。通称『アーチャーリスト』だ」

「もう少し名前は何とかならんかったのか?」

「分かりやすくていいだろ?」



 リストには30人ほど載っている。正直ロワだけにかまっている暇はない。



「今から、アーチャーリストに載っている30人に会いに行く。俺には休んでいる暇なんてねぇ」

「……お主はいつも忙しそうじゃな」

「時間あまりないからな。お前らは遊んでいていいぞ」

「それはいいんじゃが……」



 フランは辺りを見渡しながら歯切れが悪そうに話す。



「さっきからノエルの姿が見えん」

「……サジ?」

「……マジ」

「…………」

「…………」

「急いで探すぞ!」

「うむ!」

 


 10分後、ノエルは旧射撃場の近くで見つかった。この後、無茶苦茶説教した。

次回は戦闘回になります。

本当はもう少しサクサク進む筈だったんですが、長くなりました。本来は2話で終わる所を3話掛かっています。計画性が無いと言われたら反論出来ませんね。



仕事で「報告書が分かりづらい」と言われました。仕事の中で一番堪えました

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