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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
259/459

第二百十八話 別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?

連続投稿最終日です。

書きたい話が無かったので、フラン討伐の準備を進める事にしました。

※この話は旧二十七話です。この話を既に見た方は1話前をご覧ください。

 俺はリビングで手紙に目を通していた。



「かなり都合がいいな」



 読み終わった手紙を封筒の中に仕舞う。これは最優先事項だな。



「ホウリさん?何を読んでるんですか?」



 封筒を仕舞おうとすると、コーヒーを持ったロワがリビングに入ってきた。



「俺宛てに手紙で依頼が来てな」

「どんな依頼なんですか?」

「ダメ息子の鼻を叩き折って欲しい、だとよ」

「へぇ?」



 あまりピンと来ていないのか、首をかしげるロワ。そんなロワに手紙の内容を詳しく説明する。



「その人の息子がかなり強いんだが、そのせいで天狗になっていてな。その息子を俺にボコボコにして欲しいらしい」

「そんなに強いんですか?」

「ロワは勝てないだろうな」

「トリシューラを使ってもですか?」

「ああ」



 俺の言葉にロワが笑いながら手を振る。



「いやいや、フランさんとかノエルちゃんなら分かりますけど、他の人がトリシューラ耐えられます?」

「お前が知ってる奴だとロット当たりなら耐えられるだろうな」

「あの方は神級スキルを持ってるじゃないですか。別格ですよ」

「神級スキルはお前も持ってるだろうが」



 だが、ロワの言う事も最もだ。山を消し飛ばせるトリシューラで倒せないなんて信じられないだろう。



「じゃあ見に来るか?」

「良いんですか?」

「ああ。同行者が一人増えるくらいなら問題ないだろう」

「わーい!機会があれば手合わせしてもらえますかね?」

「良いんじゃないか?」



 戦う気が失せなければだが、と付け加えようとしてやめる。あいつの戦いを見れば嫌でも思い知るだろうからな。

 ウキウキとコーヒーを飲むロワだったが、ふと何かに気が付いたように空を見つめる。



「あれ?今回の依頼はその息子さんを倒すことなんですよね?だったらフランさんに任せれば解決なんじゃないんですか?」

「お、良く気が付いたな?」

「そうですか?えへへ」



 照れたように笑うロワ。少しは考えるようになったって事だな。



「今回はフランに頼れない……いや、フランだけには頼れないんだ」

「どういう事ですか?」

「今回の相手は勇者だ」

「……へ?」



 ロワが口を大きく開き、その中からコーヒーが漏れ出る。



「口からコーヒーが出てるぞ」

「……はっ」



 ロワは口から出たコーヒーを袖で乱暴に拭くと、身を乗り出してきた。



「勇者ってアレですか!ホウリさんが欲しいって言ってた、勇者の魂ですか!」

「よく覚えてたな」



 勇者の魂はフランが持つ魔王の魂の対となる魂だ。これを持っている状態でフランを倒すことで、両方の魂が具現化する。



「確か勇者を倒すと、倒した人に勇者の魂が移るんですよね?」

「そうだ。だから、俺が倒す必要があるんだ」

「これは魔王(フランさん)には頼めませんね」

「世界の半分を消滅させるわけにはいかないからな」



 魔王と勇者が戦い決着をつけた時、それぞれの魂は混ざり合ってその力を放出する。(ゴミクズ)曰く、力が放出されたら世界の半分が消し飛ぶらしい。そうなれば、この世界は実質的に破滅するだろう。これがフランに頼めない理由だ。

 ちなみに、(アホ)の監視のもとで決着をつけて、魂が混ざり合う前に回収すれば問題ない。



「ホウリさんが勇者になる必要があるから、他の人に頼むことも出来ないって訳ですか」

「そういう事だ」

「こう言っては何ですが、勝てるんですか?」



 ロワの懸念は当然と言える。俺はずば抜けた戦闘力がある訳じゃない。だからこそ俺は自信満々に頷く。



「相手の情報は調べつくした。絶対に勝てる」

「ホウリさんがそういうなら大丈夫なんでしょうね。そういえば、とある人の息子さんって聞いたんですけど、誰の息子さんなんですか?僕も分かる人ですか?」



 俺は答える代わりに封筒をロワに差し出す。

 ロワは封筒を受け取って書かれている紋章を見る。瞬間、顔が死人のように青くなった。

 そこには何か月か前にも見た王家の紋章が書かれていた。



☆   ☆   ☆   ☆



「ホウリさーん、本当に行くんですか」

「当たり前だろうが。というか、無理に付いてこなくて良いんだぞ?」

「つ、強い人を見ることは、自分が強くなることにつながります。こ、怖いですが頑張ります」



 王城の前でロワが心配そうに袖を引っ張ってくる。ガッツは認めるが、かなり怯えているな。



「王城に来るなんて2回目だろ?少しは慣れたんじゃないか?」

「こんなのいつまでも慣れませんよ!少しでも無礼な真似をしたら書されると思うと……」

「前みたいな正式な招待じゃないから多少の無礼は問題ない。分かったら行くぞ」



 ビビっているロワを連れて、門の前にいる衛兵に手紙を渡す。



「キムラ・ホウリだ。王の勅命により参上した」

「門を開けます。少しお待ちください」



 衛兵が糸電話のような装置で通話すると、門が重々しい音を立てて開いた。



「今から案内の者が参ります」

「王からいただいた地図で城の内部は把握しているから必要ない」

「かしこまりました」



 恭しく礼をする衛兵を後ろに俺たちは城の中へと歩む。



「ほ、ホウリさん、どこに行くんですか?」

「この城にある戦闘場だ。さっさと行くぞ」

「は、はい……」



 元気のないロワを連れて複雑な城の中を進む。ロワは一言も喋ることも無く、黙ってついてきた。

 城に入って5分、俺は重厚な鉄の扉の前で立ち止まった。



「ここがお城の戦闘場ですか?」

「ああ。この時間なら王様の息子、王子がいる筈だ」



 俺は鉄の扉に手を掛けて思いっきり力を籠める。

 すると、扉は軋むような音を立てて重々しく開いた。瞬間、



「うわああ!」



 中から叫び声と共に人が飛んできた。俺はしゃがんで飛んできた人を回避して、中の様子をうかがう。



「やってるな」



 そこには華奢な男が大勢の剣士から襲われてる光景があった。



「はっはっは!そんな攻撃じゃ、俺様に傷ひとつ付けれらないぜ?」

「う、うわああ!」



 剣士の一人が情けない声を上げながら切りかかる。しかし、男はニヤリと笑ったまま手を広げて剣を迎える。

 剣は男の首筋に命中したが、薄皮一枚すら切れずに止まった。



「こんなものか」



 つまらなさそうに男が呟くと、剣士に向かって人差し指を向ける。



「BANG!」



 そう言うと、男の人差し指から光の線が発射され、剣士の肩に命中し貫通した。剣士はたまらず剣を取り落とす。



「BANG!BANG!BANG!」



 他の剣士たちにも光の線を放ち、同じように戦闘不能にしていく。



「あ、ああああ!」



 剣士たちは剣を拾う事もせずに、一直線に俺たちがいる出口に走ってくる。

 俺は走り去る剣士たちの邪魔にならないように端による。そして、全員が走り去ったのを確認して戦闘場に入る。

 そんな俺を不審に思ったのか、男が訝しげに視線を向けて来る。



「あ?誰だお前?」

「第一王子のゴオリだな?」

「そうだ」



 王と良く似た力強い目元で俺を目いっぱい睨みつけて来るゴオリ。

 ゴオリは金色の短い髪に健康的に焼けた肌をしているが、立派と言えない体格をしていた。だが、この見た目からは想像もつかない戦闘力を誇っている。



「俺は王の勅命で戦う事になったホウリだ」

「お父様が?粋な事をするな」

「あのー、その方が王子様ですか?」



 後ろから、恐る恐るといった様子でロワが聞いてくる。



「お前は?」

「僕はホウリさんのお供みたいなものです。今回の戦いを観戦しに来ました」

「ふーん、強いのか?」

「ああ強いぞ。ただし、ゴオリには勝てないけどな」

「そうか。ま、俺様に勝てる存在なんていないけどな」



 得意げに笑うゴオリ。その様子をロワが興味深々に観察する。



「さっきの戦い凄かったですね。いったい何が起きたんですか?」

「お?気になるか?」

「はい」

「なら教えてやる。俺様は……」

「ステータスを1000倍にするスキルで近距離で無双し、遠距離は光を束ねた光線で攻撃。どの距離に居ても攻防ともに隙が無い」

「……俺様が説明しようと思ってたのに」



 ゴオリが拗ねたように口をとがらせる。が、その拗ねた表情はすぐに笑顔に変わった。



「そこまで俺様の事を知ってるのに挑んでくるって事は、腕に自信があるって事だろ?」

「いや?俺の戦闘力はそこのロワよりも数段低いぞ?」

「はぁ?じゃあなんでここにいるんだよ?」

「王の勅命だからだ。それに」



 俺はゴオリに人差し指を突き付けて宣言する。



「お前の事は調べつくした。俺はお前に負けない」

「そういう口だけの奴なら今までもいたぜ」

「なら実際に証明してやるよ」



 俺は新月を取り出し腰に差す。一撃でも貰ったら終わりだから防具は付けない。後はワイヤー発射装置とパチンコ玉と……。

 一通りの準備を終えて後ろのロワを見てみると、既に戦闘場の観客席に身を隠していた。行動が早い事は良いことだな。



「いつでも来いよ。ボコボコにしてやる」

「減らず口を!」



 ゴオリがかなり音速に近い速度で俺に迫ってくる。

 確かに早い。が、フランやノエル程じゃないな。俺はゴオリの拳を紙一重で躱す。



「少しはやるようだな。だが!」



 ゴオリの拳による連撃が俺を襲う。だが、俺は跳んだりしゃがんだりしてすべての拳を躱す。



「どうした!避けてばっかりじゃ勝てないぞ!」

「それはどうかな」



 俺の言葉にゴオリがにやりと笑う。



「はっ!どうせ時間切れを狙っているのだろう?」



 考えを読まれた俺は少しだけ目を細める。ゴオリは物凄い速度で拳を繰り出しながら笑う。



「確かに俺のステータスアップは10分使ったあと、0.1秒のクールタイムを必要とする弱点がある。その弱点を突こうとした奴もいた。だが、誰も勝ててない。何故だかわかるか?」



 ゴオリは笑いながら後ろに跳ぶ。そして、人差し指を俺に向けて来た。さっきの光の線を使う気だろう。



「ホウリさん!」



 ロワも気付いたのか、悲壮感を込めて叫んでくる。が、俺は特に慌てずに新月を構える。



「BANG!」



 その言葉と共に光の線が発射される。だが、



「な!?」



 光の線は新月に当たると、そのまま二つに割れて俺の傍を通っていった。



「くっ、BANG!BANG!BANG!」



 焦ったゴオリは何度も光の線を発射する。しかし、同様に新月で防ぐことにより、光の線はオレに届くことは無い。



「くそっ!なんで俺のパーフェクトビームがあんな棒切れなんかに……」



 あれってパーフェクトビームって言うのか。ネーミングセンスが絶望的だな。

 なぜ高威力のパーフェクトビームを新月なんかで防げるのか。パーフェクトビームは弾丸や矢のような運動エネルギーではなく、熱エネルギーによって威力を出しているからだ。弾丸のように重い攻撃であれば新月で受けた瞬間に新月を取り落とすだろう。だが、新月の壊れないという唯一の利点によりパーフェクトビームのようなエネルギー系の攻撃は確実に防ぐことが出来る。

 まあ、いつ発射されるかも分からない銃弾を刀で切るみたいな事だから、簡単に出来る事じゃないけど。



「くぅ……なら近くで殴るだけだ!」



 これ以上は無駄だと判断したのか、ゴオリが俺との距離を詰めて来る。



「オラァ!」



 相も変わらず拳の連打が俺を襲う。しかし、相も変わらず俺には1発も当たらない。



「なんでこれも当たらないんだ!」

「言っただろ?お前の事は調べつくしたって」



 俺は見てから避けてるんじゃない。拳の軌道を予想し、打ってくる前に避けている。

 打ってくると同時に避けたら確実に食らうからこうするしかない。もしも、初対面で対決なんてことになっていたら絶対に負けてたな。

 そんな事はつゆ知らず、ゴオリは必死に攻撃を続ける。拳の合間に蹴りも混ぜて来るが、俺はそれも読み切って回避する。



「早く当てないと時間切れだぞ?」

「だ、だが時間切れ前に距離を取って立て直せば、お前は手出しできない筈だ!」



 ここまでの戦闘で俺に遠距離攻撃が無いと思ったようで、10分経つ前にバックステップで距離を取る。が、



「甘いな」



 俺は逃げるゴオリの額にパチンコ玉くらいの大きさの玉を弾く。ゴオリは反応できずに額で玉を受け、赤い粉末が漂った。瞬間、



「ぎゃああああ!」



 戦闘場にゴオリの悲鳴が響きわたった。玉の中身は唐辛子とかの香辛料を詰め込んだ催涙ガスだ。少なくとも数十秒は目が開けれない筈だ。



「ぐうう……」



 必死に目を擦って視界を確保しようとするゴオリ。すると、今度は戦闘場の上で爆音が響いた。



「な、なんだ……」



 薄く目を開け天井を見上げるゴオリ。

 その視界には爆破の勢いに乗りながら飛び蹴りを放っている俺の姿があった。

 俺の蹴りはゴオリの胸に命中し、ゴオリは戦闘場を囲っている柵に叩きつけられた。そのまま柵から力なくズレ落ちたゴオリは、そのまま白目を剥いて気絶した。

次回に続きます。


次回は今回の続きです。もうひと悶着あります。


最近、塊魂のBGMに嵌ってます。いい曲が多いですよね。

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