第二百二話 よからぬことを始めようじゃないか
今回は前半フラン、後半ロワ視点です。
釣りの結果はわしが5匹、ヌカレが0匹じゃった。合計数の勝負でもわしの勝ちじゃな。
内臓を取り除き、串に刺して網に乗せる。鮎のように小ぶりな魚じゃし、バーベキューには最適な魚じゃな。
「お主ご所望の魚じゃ。わしが用意してやったぞ。お主に変わってわしがな!」
「うるせえよ。さっさと焼け」
「ほいほい」
わしが魔法で火をつけ、いよいよバーベキューが始まる。
「好きな物を好きなだけ焼くが良い。ただし、ハイ・ミノタウロスの肉だけは後じゃ」
「なんでだ?」
「メインディッシュは後と決まっておるじゃろ?」
「そういうものか」
ヌカレが鹿肉串と魚串を網の上にどんどん乗せる。一方で野菜やキノコに串には手を付けようとしない。
「好きにとは言ったが、肉と魚ばかりじゃな。野菜とかキノコは食わんのか?」
「気が向いたらな」
「そう言った奴で気が向いた奴はおらんがな。少しは食わんと無理やり口にねじ込むからな?」
わしの言葉を聞いたヌカレは鹿肉串に手を伸ばした手を、横の野菜串に移動させる。言う事を聞かんかったら本気でやるつもりじゃった。素直なのは良い事じゃな。
わしもキノコ串を網の上に乗せる。
「お前はあいつに本当によく似てるよ」
「同じような事を元カノに言われたのか?」
「ああ。いつもちゃんと野菜は食えだの、酒は飲み過ぎるなだのうるさかったよ」
「それはお主に非があるじゃろ。不摂生は早死の元じゃぞ?」
「ほっとけよ」
「大事な者に長生きしてほしいと思うのは自然じゃろ。人の忠告は聞いておくものじゃ」
とはいえ、わしも忠告を聞かない事があるからのう。自分でも気を付けておくとしよう。人の振り見て我が振り直せという奴じゃな。
他愛のない話をしている間に焼けた食材を抜かれに差し出す。
「ほれ、焼けたぞ」
「ありがとう」
「お礼は素直に言えるんじゃな」
「うるせえよ」
ソッポを向いて肉を頬張るヌカレ。わしも鹿肉を皿に盛り食してみる。油が少なく肉の味がダイレクトに伝わってくる。好みは分かれるじゃろうが、肉を食っている感じが強くてわしは好きじゃ。
わしは肉を咀嚼しつつ、ふと思ったことを口に出す。
「そういえば、キャンプの目的はわしと普通に接する事じゃったよな?今は出来そうか?」
「昨日よりはマシだが、まだ無理そうだな」
「そうか」
完全に無意味ではないようじゃが、まだ足りんか。どうしたものかのう。
「もうわしにはどうすれば良いか分からん。どうすればいい?」
「俺に聞かれてもな。お前とあいつが似ている以上、俺にはどうしようも無い」
「お主が原因のくせに偉そうじゃな。む?待てよ?」
わしとそいつが似ておるのであれば、逆に似ていない点を上げればいいのではないか?
そういえば、ヌカレの話は聞いておったが、わしの話はあまりしてなかった。それが問題だった可能性があるのではないか?
「どうした?考え込むなんてらしくないぞ?」
「昨日会ったばかりのお主に何が分かる」
「それもそうだな」
「思い出してみれば、お主の事を聞いてばかりで、わしの事はあまり教えてなかったじゃろ?何かわしに聞きたい事は無いか?」
「無い」
「少しは考えんかい」
わしの言葉にヌカレがため息を吐く。そして、食べ終わった串を皿に並べると、仕方ないなと言った表情で口を開いた。
「じゃあ……趣味はなんだ?」
「演劇鑑賞」
「それ以外に決まってるだろ。年がら年中、演劇を見てるだけじゃないだろ?」
「…………」
「まさか、本当に演劇鑑賞しか趣味が無いのか?」
「悪いか?」
「いや、その……」
「なんじゃ?言いたい事があるなら聞いてやるぞ?」
バツが悪そうに顔を背けるヌカレ。そんなヌカレを追い詰めるように、視線の先に回り込む。
ヌカレが顔を背け、わしが回り込むと言った事を数度繰り返す。その行為はわしが肉が焦げる事に気付く事で終わったのじゃった。
しかし、わしの趣味が少ないのは事実じゃ。何か人に言えるような趣味を見つけんとな。
「他にわしに聞きたいことはないか?」
「あるぞ」
「お、なんじゃ?」
「なんでそんなに強いんだ?」
「もっともな質問じゃな」
ハイ・ミノタウロスを一撃で仕留めるなど、普通の戦闘力ではないからな。あんなの間近に見て不思議に思うのは無理もないじゃろう。
しかし、この質問にはなんと答えれば良いのじゃろうか?素直に答えると頭の可笑しい奴じゃと思われてしまうじゃろうし、嘘を吐こうにも説得力がある嘘は思いつかん。
「どうした?」
「……悪いがノーコメントじゃ」
「言いにくいって事か。ま、普通な手段で手に入れた力じゃなさそうだし、知らない方がいいかもな」
「すまぬな。他に聞きたい事はないか?」
「じゃあ……演劇以外で好きな物はないか?」
「あるぞ。わしは妹のノエルが大好きじゃ」
「昨日も言っていたな」
「そうじゃな」
わしは誇らしげにノエルが写った写真の束を取り出す。
「見ろ!こんなに可愛い子と一緒に暮らしておるのじゃぞ?羨ましいじゃろ?」
「確かに可愛らしい子だな。義理の妹って言っていたが両親はどうした?」
「……盗賊に殺されたらしい」
「あ、悪い。聞くべきじゃなかったか?」
「わし自身の事ではないし、別に良い。そんな事よりも可愛いノエルを見るんじゃ」
ノエルの写真をヌカレの目の前に突き出す。
「これは海に行った時の水着ノエル。海は初めてみたいでかなりはしゃいでおったのじゃ。あの時もバーベキューをして楽しかったのう。昼間もビーチバレーをしたり、ビーチフラッグをしたり、海の中にに潜ったり楽しかったのう。しかも、銀の閃光と一緒に宝探しをして面白かったのう」
わしから写真を受け取ったヌカレは写真に目を通していく。しかし、ある程度目を通したヌカレは首を傾げた。
「なあ、なんで写真に写ってるのはノエルって子だけなんだ?お前や他の奴は写ってないのか?」
「は?ノエルの可愛さを伝えるのに不純物は不要じゃろ?」
「自身でさえ不純物って言い切るのかよ」
呆れたように写真を次々とめくるヌカレ。当然のごとくノエルが写っておる写真しかない。
「ノエルって子以外に一緒に住んでいる奴はいないのか?」
「脚本家のホウリも一緒に住んでおるぞ。後は騎士団に所属しておるロワとミエルがおる」
「結構多いな?」
「同じ冒険者パーティーのスターダストに所属しておるからな」
「そいつらの写真は無いのか?」
「あるぞ」
わしは家を買った時に皆で撮った写真を渡す。
「ほれ」
「これがフランの仲間か。お前って冒険者だったんだな」
「訳あって、今はこの街でゆっくりしておるがのう。しばらくしたら出発するつもりじゃ」
「ずっと王都にはいないのか?」
「そうじゃな。劇への出演も今回で最後にするつもりじゃ」
「そうなのか。そういえば、この男はなんで口元を布で覆っているんだ?」
「それはのう……」
こうして、スターダストの写真を見ながらわしらはバーベキューを楽しむのじゃった。
☆ ☆ ☆ ☆
フランさんが同じ劇の人とバーべキューに行った日、僕はホウリさんと特訓していました。特訓自体は家の庭でいつもと同じです。違う所と言えば……
「うぐぅ……」
「何をしている。早く立て」
容赦の無さがいつもの数倍って所でしょう。
ホウリさんに促され、僕は痛みをこらえて何とか立ち上がります。
「痛てて……」
「立ったなら再開するぞ」
「ちょっと待ってください!まだポーションで回復してな───」
「敵が回復するまで待ってくれると思うなよ!」
ホウリさんが振るってくる木刀を、弓で何とか受け止めます。いつもなら少しだけ時間くれるんですけど、今日はそういう事は一切ないです。
「くう……」
「受け止めただけで安心してるのか?甘いぞ?」
そう言ってホウリさんは木刀から力を抜く。必然的に僕が木刀を押し返す形になり、体勢を崩してしまう。
「うおっ!?」
「まだ近距離戦が弱いな。この程度は対処出来て欲しい所だ」
そう言いつつ、ホウリさんは体勢を崩した僕の髪の毛を掴んできて、膝を叩き込んできます。僕はまともに食らって再び地面に倒れる。
「うぐ……」
「まだいけるだろ?立てよ」
「さ、流石に無理です……」
「そうか。なら少し休むか」
そう言ってホウリさんがポーションを頭にかけてきます。ポーションは傷を負った所にかけても効果がありますけど、なんだか雑な気がします。
起きられるようになるまで回復するまで待って、僕は体を起こします。
「あー、疲れました」
「何言ってんだ、まだまだ特訓はこれからだからな?」
「なんだか、今日はいつもよりも厳しいですね。何かあったんですか?」
「近いうちに遠征があるだろ?だから厳しくしてみようと思ってな」
「えー?本当ですか?」
今の理由もあるかもしれないけど、別の理由もありそうだ。ちょっと聞いてみようかな。
「もしかしてフランさんの事で苛立ってます?」
「それもある」
「あっさり認めますね!?」
思ったより素直に認めて驚く。やっぱりフランさんが原因みたいだ。
「確か、ヌカレっていう人と山に行ったんでしたっけ?」
「ちょっと面白くないって思ってたんだよ。楽しみにしていたスイーツが販売中止になった時と同じ気分だ」
「それだけ聞くと大したことなさそうですね」
実際はかなりの衝撃だという事は理解できますけどね。
「けど、それで僕に八つ当たりは止めてくれませんか?」
「さっきも言ったが、近いうちに遠征があるだろ?そうでなくてもお前らには強くなって貰わないと困る。だから、これは八つ当たりってだけじゃないんだよ。分かったらさっさと立て」
「分かりましたよ」
僕は意を決して立ち上がります。ホウリさんにもストレス発散する機会は必要でしょう。ここは付き合いましょう。
それにしても、ホウリさんって何でもないような顔をしてましたけど、フランさんの事が好きだったんですね。なんだか意外です。
ホウリさんにも人間らしい所があったんですね~。
「余計なこと考える暇があるんだな?だったらもっと厳しくしてやる」
「人の心を読まないでくれます!?」
という訳で、フランはいつも通りです。
次回は今回の続きです。どうなるかは決めてません。
スクフェスにて
UR1%→30連でゲット
SR10%→60連で天井
どうして……




