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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
221/460

第百八十五話 あなたには分からないでしょうね!

前回の続きです。

「ダメだー!」



 ノエルは机に突っ伏して叫ぶ。

 マカダ君を勧誘した後、ノエルたちは手当たり次第にお友達に声をかけた。でも、皆は他のクラブ活動に入っているみたいでオカルト研究会に入ってくれなかった。



「まさかアルフォちゃんにも断られるとは思ってなかったね」

「もう料理研究会に入っているなんて知らなかったよ~」



 アルフォちゃんに声を掛けたら困ったような顔で断られちゃった。もう少し声をかけるのが早ければと思うと悔しい。

 ノエルが机に顔を乗せながらどうしようか考えていると、サルミちゃんが渋い顔をしている事に気が付く。



「どうしたのサルミちゃん?」

「どうしたの?じゃないわよ。フロランを誘うなんて何考えてるのよ」

「だって、仲の良い子っていえばフロランちゃんは外せないでしょ?」

「あれを仲が良いって言えるなんて、あんたの認識はどうなってるのよ」

「私もノエルちゃんがフロランさんに話しかけに言った時はビックリしちゃったよ」

「そうかな?」



 戦ったことがあるんだし仲良しなんじゃないかな?ちゃんと決着がつかなかったから、一緒に遊べてはいないけどね。



『何話してるかはあんまり分からなかったが、俺でも迷惑そうなのは分かったぞ』

『そう?ノエルは楽しくお喋り出来たと思ったけど?』

『あれだけ睨まれていて仲が良いって思うのか?考え改めた方がいいぞ?』

『そうかな?』



 皆にここまで言われてるんだったらそうかも。ホウリお兄ちゃんも「思い込みは認識を曇らせる」って言ってたし、ノエルが仲良くしたいって気持ちが強いのかも。

 ノエルがちょっと悲しくなっていると、サルミちゃんが空気を変えるように手を打ち鳴らす。



「そんな事より、あと1人をどうするかよ。誰か当てはないの?」

「うーん、一年生の大半には声を掛けちゃったもんね」

『上級生には声を掛けにくいしな』

「……これは諦めるしかないかしらね?」



 皆の間に諦めの雰囲気が流れていく。

 どんなに有利な状況でもチームの雰囲気次第で失敗するってホウリお兄ちゃんが言ってた。この雰囲気は非常に不味い。強引でも何かアイディアを言わないと……

 えーっと、何か無いかな……そうだ!



「良いこと思いついた!」

「なによ、言ってみなさい」

「前にこのクラスに登校してない子がいるって言ってたでしょ?その子に登校して貰って、部員になって貰えばいいんだよ!」

「それってかなり難しいんじゃないかな?」

「大人たちでも登校させられないのよ?私たちがどうにか出来るとは思えないわ」

『けどよ、今はそれしかアイディアが無いんだろ?だったら考えるよりも動いた方が良いんじゃないか?』

『流石マカダ君!良いこと言うね!』



 このまま考えてるだけじゃ始まらない。とりあえず動いた方がいいだろう。



「そういう事なら私も頑張る。私が言い始めたことだもんね」

「コアコちゃんもノリがいいね」



 コアコちゃんがズレた眼鏡を直して、胸の前で拳を握る。やる気満々みたいだ。



「あとは……」



 ノエルたち3人でサルミちゃんをジーッと見つめる。



「な、なによ……」

(((ジーーーー)))

「ああもう、分かったわよ!その子に会えばいいんでしょ!」

「よし、満場一致だね」

「同調圧力かけといてよく言うわ」

「そうと決まれば早速レッツゴー!」



 ノエルは椅子から立ち上がって教室の扉に手をかける。そこでノエルはとある事に思い至って振り返る。



「その子ってどこにいるの?」

「あんたね……」



☆   ☆   ☆   ☆



 結局、ナマク先生に不登校の子の住所とお名前を教えてもらった。ナマク先生はノエル達に「私の力が及ばなくてすみません」って言ってたし、相当気にしているみたい。

 ナマク先生の為にも何とかその子を学校に登校させないとね。



「もうすっかり夕方だね」



 コアコちゃんの言う通り、お日様が街の向こうに沈もうとしている。もうすぐご飯の時間だという事もあって、買い物袋を持ったお母さんっぽい人たちや、仕事から帰っているお父さんっぽい人が行きかっている。



「その子に会ってもあまり話せそうにないわね」

「皆でお泊りすれば一晩中話せるよ?」

「嫌に決まってるでしょ。なんであんた達とお泊りしないといけないのよ」

「ちぇー、コアコちゃんはどう?」

「私も今日はやめておこうかな。お泊り会は今度にしようよ」

『マカダ君は──』

「マカダを誘うつもりならやめなさい。男の子とお泊りなんてお母さんに怒られるわよ」

「はーい」

『……ちぇっ』



 ノエルとマカダ君がシュンとしていると、ナマク先生に教えてもらった建物が見えてきた。建物には「リューリュ孤児院」と書かれている。



「あそこが目的地だね」

「まさか孤児院に住んでいるとは思わなかったわ」

「じゃ、突撃ー!」

『走ると危ないぞー!』



 時間も無いし急いでその子に会わないとね。ノエルの後に続いて皆もついてくる。

 ノエルは孤児院に入ると、扉の前に立って大きな声を出す。



「すーみーまーせーん!だーれーかーいーまーすーかー!」

「ちょっと!うるさくしないでよ!」

「むぐっ!」



 サルミちゃんに後ろから口を押えられる。何とか離れようと藻掻いていると、扉が開いておばさんが出てきた。



「こんな時間に何か御用ですか?……あら?その制服は白竜学園の?」

「はい、私たちは白竜学園の生徒です。『パンプ・ジャック』さんはいますか?」



 サルミちゃんがノエルから手を離して、笑顔でお辞儀をする。さっきまでの怒っていた表情は引っ込んで、親しみやすそうな表情になっている。

 サルミちゃん曰く、こういう時は猫を被っておいた方が良いんだって。

 おばさんは口に手を当てると、少し驚いた表情になる。



「あらあら、パンプのクラスメイトなの?ごめんなさいね、まだ学校に行こうとしないのよ」

「なので、私たちが来たんです。パンプさんはいますか?」

「今の時間だったら庭のブランコにいると思うわ」

「ありがとうございます」



 微笑みながらお辞儀をするサルミちゃん。それを見たマカダ君がノエルに耳打ちをしてくる。



『誰だこいつ?』

『多分サルミちゃん……だと思うよ?』

「そこ、何話しているのかしら?」

『『ひっ!』』



 振り向くとさっきのように微笑んだサルミちゃんが立っていた。けど、目が笑ってなくてなんだか怖い。



「さ、さあ!パンプ君の所まで急ぐよ!」

「………………」



 無言で微笑んでいるサルミちゃんを背にノエルたちはブランコまで急ぐ。

 背後からのプレッシャーに追われながら庭まで走る。もう暗くなるからか、庭には人はいない。



「えーっとブランコは……」

「ノエルちゃん、あそこ見て」



 コアコちゃんが指をさす方向に視線を向けると、小さなブランコに誰かが座っていた。ブランコは木と竹で出来てる簡単なもので、古びれている。

 パンプ君はこっちには背中を向けているから顔は見られない。



「あれがパンプさんかな?」

「多分そうだね。行ってみよう」



 ノエルたちがブランコに近づいてパンプ君に声を掛けて見る。



「君がパンプ君?」

「………………」



 ノエルが声を掛けてもパンプ君は振り向いてくれない。でも、無視してるって訳でもなさそう?というか、この後ろ姿どこかで見たことあるような?



「パンプ君?」

「………………」



 相変わらずノエルに返事をしてくれないパンプ君。ノエルは試しにパンプ君の肩を叩いてみる。

 すると、パンプ君が驚いたように振り向いた。そこで初めてパンプ君の顔が見られる。



「やっぱり、君がパンプ君だったんだ……」



 パンプ君はロワお兄ちゃんと大道芸をしたときにお金を盗った子だった。結局お金は川に落ちちゃったけど、焼肉弁当は美味しかったなあ。



「ノエルちゃん?どうしたの?」

「ノエル、この子知ってる」

「またなの?最初のホームルームでも同じような流れやったじゃない」

『で、どういう奴なんだ?』



 ノエルはこの前の出来事を皆に話す。



「つまり、パンプさんは泥棒って事?」

『そんな奴とクラブなんてしたくねえな』

「でも!パンプ君は耳が病気なんだよ!それに頼れる人もいないみたいだし、無理もないんじゃないかな?」

「それを差し引いても、彼をクラブに入れるのは反対よ」

「なんで……」

「パンプを見なさい」



 ノエルはパンプ君を見てみる。

 パンプ君はノエル達を睨みながら、ブランコの縄を握りしめている。その目には明らかな敵意が込められていて、これ以上近づこうものなら攻撃されそうだ。



「明らかに友好的じゃないわ。仮に話が通じたとしてクラブに入ってくれないわよ」

「それは……」

「ここは諦めて別の方法を探しましょう」



 「そんな事はない」って言いたい。けど、それはノエルが信じていたい事。ここは皆が言っていることが正しいんだろう。

 皆が諦めてパンプ君の元から離れる。



「やっぱり他の子を誘うしかないわね。最悪、来年まで待って新一年生を勧誘する事も考えましょう」

『今一年って言ったか?もしかして、来年まで待つのか?』

「あ、えっと、ノエルちゃん、パンプ君に通訳をして……ノエルちゃん?」



 ノエルはその場を動かない。確かにオカルト研究クラブを作るんだったら、別の方法を考えた方が良いと思う。

 けど、それだとパンプ君はどうなるんだろう?多分、耳が聞こえない中で誰も信じられずに生きていく事になる。それでいいの?



「ノエルー!帰るわよー!」



 遠くからサルミちゃんの声が聞こえる。ノエルは諦めきれずにパンプ君の方へ視線を向ける。

 パンプ君は相変わらずノエルをにらみつけている。その目は敵意が込められているが、その奥深くに悲しさが見えた。

 そっか、パンプ君は寂しいんだ。誰かに頼りたいけど、周りの人は信じられないし頼り方も分からない。だから、皆を追い払って一人で寂しさと戦ってるんだ。

 その姿が、森で彷徨っていた時のノエルに重なった。誰も頼れなくて、怖くて、寂しくて、でも何も出来なくて。

 それに気づいたノエルは思わずパンプ君の手を取っていた。

 パンプ君は突然の行動に目を見開く。



「大丈夫、ノエルがなんとかするからね。だから、耳が治ったらノエル達といっっっっぱい遊ぼうね」

「………………」



 パンプ君にノエルの声は聞こえていない。けど、気持ちは伝わったと思う。

 満足したノエルはパンプ君の手を離す。



「じゃあね、また来るから」



 パンプ君に手を振って、皆のもとに走りだす。皆はノエルの事を不思議そうな視線を向けてくる。



「どうしたのよ。何かあったの?」

「何もないよ?ただ、パンプ君の耳を治そうかなって思って」

「え?でも、パンプさんの耳って手術が必要なんでしょ?」

「しかも、とんでも無いお金が必要なんでしょ?どうするのよ?」

「ホウリお兄ちゃんに頼んでみようかな」



 タダでやってはくれないだろうけど、条件次第では何とかなるかも。



「という事は、パンプさんをクラブに誘うって事?」

「入るかは置いといて、パンプ君が学校に行きたいって思えるようにお手伝いしたいなって」

「はぁ?ここまで来たのはクラブの人数を揃えるためでしょ?」

「他の子にお願いするのは続けるよ?パンプ君の事はノエルがやりたいだけ。それよりもさ、暗くなっちゃうし早く帰ろ?」

『ノエルが行きたいって言ったんだろうが』

『マカダ君だって行きたいって言ったじゃん!』

『言ってませんー、考えるよりも動いた方がいいって言っただけですー』

『むー!ずるいよー!』

「何言ってるのか分からないけど楽しそうね」



 マカダ君と言い合いしながら真っ赤に照らされた道を歩く。

 ノエルの胸には夕日のように熱く輝いている決意が込められたのだった。

という訳で、パンプが出てきます。ホウリやノエル程じゃないですが、壮絶な人生を送ってます。


次回は今回の続きです。ホウリに相談だ。


美味しいケーキが食べたいです。ショートケーキが良いですね。

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