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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
211/460

第百七十五話 八木に電流走る

今回はノエル回です。

(キーンコーンカーンコーン)



 チャイムが鳴ってナマク先生が教科書を閉じる。



「以上で人語の授業は終わります。次の体育は運動場ですので遅れないようにしてください」



 ナマク先生は無表情で教室を出ていく。学校が始まって1週間経つけど、今まで先生が笑ったり怒ったりしたとこ、見たこと無いや。

 そんな事を考えつつ、ノエルは教科書を机の中に仕舞う。



「ねーねーコアコちゃん、次の体育って何にするんだっけ?」

「次は戦闘訓練だよ。色んな武器を使おうって授業みたい」

「コアコちゃんって戦闘経験はあるの?」

「ないよ、戦うのは怖いから闘技大会も見られないんだ」

「そうなんだ」



 魔物がいるこの世界は、最低戦いに慣れておく必要がある。だから、小学校の頃から戦闘の授業がある。ってホウリお兄ちゃんが言ってた。どうやら、ホウリお兄ちゃんの世界には戦闘の授業は無いみたい。



「ノエルちゃんは戦った事あるの?」

「毎日お兄ちゃんと戦闘訓練してるよ?」

「そうなの!戦いに慣れてるって凄いね!」

「えへへ」



 コアコちゃんとお話ししながら体操服を持って教室を出る。すると、何人かの子達と廊下を歩いているフロランちゃんの姿があった。

 入学式の時に一緒に遊ぼうと思ってたけど、他の子達と話していたから遠慮してたんだよね。



「今日こそはフロランちゃんに話しかけるぞ!」

「止めておいた方が良いんじゃないかな?」

「いや、今日こそはやる!コアコちゃんには迷惑かけないから大丈夫だよ!」

「あはは、ノエルちゃんは怖いもの無しだね」

「そんなこと無いよ?怒ったホウリお兄ちゃんはとっても怖いし」



 魔国でホウリお兄ちゃんに追いかけられた事が蘇ってきて、思わず身震いする。あんな思いはもうしたくないかな。

 コアコちゃんとお喋りしながら着替えて運動場に向かった。



☆   ☆   ☆   ☆



 運動上に皆が集まった頃、チャイムが鳴ってジャージ姿のナマク先生がやってきた。ナマク先生は付いた大きな箱を押している。

 ナマク先生は箱を置くと、その前に立って出席簿を開いた。



「皆さん居ますね。では、ただいまより戦闘訓練を開始します。今回は武器に慣れる事を主とします」



 ナマク先生は箱を開いて中身を取り出す。先生が取り出したのは木製の剣や盾だった。



「今回は戦うのではなく、武器を軽く振ってみましょう。武器は剣を用意しています。それでは武器を取ってください」



 ナマク先生はそう言って箱を皆に開放する。すると、皆が我先にと箱に殺到する。

 皆、楽しそうに自分が使う武器を選んでいく。コアコちゃんはというと、どうしていいか分からずにオロオロとしている。



「コアコちゃん、どうしたの?行かないの?」

「皆がいなくなってからの方が良いかなって」

「じゃあ、ノエルもコアコちゃんと選ぶ」

「いいの?」

「勿論!」



 ノエルは家で本物を使わされるし、今使わなくても大丈夫。

 皆が武器を取り終わって、ノエル達も箱の中を覗き込み剣を2本取る。

 ノエルは木の剣をコアコちゃんに渡す。コアコちゃんは恐る恐る受け取ると、木の剣を眺め始めた。



「これが武器なんだ」

「木だけど危ないから振り回しちゃダメだからね?」



 ノエルの言葉にコアコちゃんは神妙に頷く。武器を取ったノエル達は並び直すと、ナマク先生は説明を始めた。



「では、これから剣の振り方を教えます。皆さん、3m程間隔を空けてください」



 ナマク先生がそう言うと、前の子が手を挙げた。誰だろうと思って背伸びをしてみると、手を挙げているのはフロランちゃんだった。

 高々と手を挙げるフロランちゃんに対して、ナマク先生が目つきを鋭くして口を開いた。



「フロランさん、なんでしょうか?」

「ただ武器の振り方を教えるよりも、一度戦いを見せた方が良いのではないのしょうか?」

「戦闘?」

「私と先生で戦うんです。勿論、本気でやりましょう」



 フロランちゃんの言葉に周りの皆がざわつき始める。

 隣にいたコアコちゃんも困惑した様子で話しかけて来た。



「ノエルちゃん、どういう事?」

「フロランちゃんがナマク先生と戦いたいのかな?」

「なんで?」

「さあ?」



 皆で首を傾げていると、フロランちゃんが自信満々に前に出て話しを続ける。



「どうしたんですか?私と戦うのが怖いんですか?」

「そういう訳ではありませんが……」



 ナマク先生の表情は変わらないけど、言葉はどこか歯切れが悪い。

 多分だけど、ナマク先生はあまり戦いの経験がないと思う。武器の持ち方が慣れてないし、足運びも普通の人だ。



「これってナマク先生困ってない?」

「困ってるみたいだね……」

「うーん……あ、そうだ」



 ノエルの頭脳に電流が走る。これならいける気がする!

 ノエルは勢いよく手を挙げて叫ぶ!



「はい!ノエルが戦います!」

「ノエルさんが?」



 突然の事にナマク先生が目を丸くする。先生が無表情を崩したの始めてみたかもしれない。

 さっきのフロランちゃんと同じように自信満々に前にでる。



「先生も生徒と戦うのは嫌でしょ?だったら、ノエルとフロランちゃんが戦えばいいんだよ!」

「しかし……」

「ふーん、あなたがね?」



 フロランちゃんはノエルを値踏みするように見てくる。



「あなた、実戦経験は?」

「1年よりは短いかな?」

「素人よりはマシかしら?いいわ、あなたと戦ってあげる」

「やったー!」

「……はぁ、分かりました。1試合だけですよ?」



 収拾がつかないと思ったのかナマク先生はそう言ってため息を吐いた。……あれ?もしかして、これってマズかった?

 そう思ったノエルは恐る恐る手を挙げる。



「あのー、もしかして勝手に戦っちゃいけないんですか?」

「いけないに決まっています。武器の振り方の授業中に模擬戦なんて前代未聞ですよ」

「ご、ごめんなさい!」

「いえ、今回は先生が認めたのでノエルさんは悪くないです。ただし、次からは事前にやって良いかを聞いてくださいね?」

「はい、ありがとうございます」



 相変わらず無表情だったけど、ナマク先生はやっぱり優しい。

 ノエルはナマク先生に頭を下げて、ノエルはフロランちゃんに向き直る。



「よし、どこからでもかかってこい!」

「じゃないでしょ!」



 剣を構えた瞬間、後頭部に衝撃が走った。



「痛たたた……誰?」



 ノエルが振り返ると、そこには仁王立ちしていたサルミちゃんがいた。



「サルミちゃん?どうしたの?」

「いいからこっち来なさい」

「え?ちょっと?」



 ノエルの首根っこを掴んでサルミちゃんが校庭の隅に向かう。

 誰にも声が届かない距離まで来ると、サルミちゃんがノエルから手を放した。



「何するの!」

「あんたこそ何してるのよ!誰に喧嘩売ってるのか分かってる!?」

「誰にってフロランちゃんでしょ?」

「その様子だと、あんた何も分かってないみたいね」



 ノエルの言葉にサルミちゃんが頭を抱える。そして、ノエルを睨みつけると指を突きつけて来た。



「良い?あのフロランって子は15歳以下の大会で優勝するくらいの剣の腕なのよ?1年くらいしか戦闘経験がないあんたに勝ち目はないわ」

「フロランちゃんってそんなに凄いの!?」



 確かフロランちゃんは8歳……いや、入学するまえだと7歳に優勝した可能性もある。倍くらい離れている人に勝っちゃうなんて凄い!



「フロランちゃんは凄いって思ってたけど思った以上だね!」

「分かったならさっさと謝って……」

「俄然燃えて来た!」

「ノエル?話聞いてた?」

「15歳以下の中で一番強いのがフロランちゃんでしょ?」

「分かってるなら止めときなさいよ。怪我するわよ?」

「心配してくれるの?」

「そ、そんな訳ないでしょ!あんたがボコボコにされたらコアコがショックを受けると思っただけよ!」

「えへへ、サルミちゃんありがと!」



 感謝の気持ちを伝える為にノエルはサルミちゃんに抱き着く。



「ちょっと!離れなさいよ!」

「いやー」

「嫌じゃないわよ!さっさと離れて!」



 たっぷり10秒間抱き着いて、ノエルはサルミちゃんから離れる。



「よし、サルミちゃんから元気も貰ったし頑張るぞー!」

「勝手に元気吸い取らないでよ!返しなさい!」

「えー?代わりに給食の野菜あげるからそれでいい?」

「それ嫌いな物押し付けてるだけでしょ!」



 冗談めかしたけど、元気を貰ったのは本当だ。これで全力で戦う!

 やる気満々のノエルにサルミちゃんは再び溜息を吐く。



「いいわ、もう好きにしなさい」

「うん!サルミちゃんありがとう!」



 サルミちゃんにお礼を言って改めてフロランちゃんの元に向かう。

 フロランちゃんは変わらず自信満々と言った様子で剣を構えている。



「作戦会議は終わりかしら?」

「作成会議?ノエル達はサルミちゃんは凄いってお話してただけだよ?」

「ふふん、分かってるじゃないの。私の華麗なる剣技を見せて差し上げますわ」

「いいの?やったー!」

「ふふん」



 フロランちゃんが上機嫌になる。これならあのお願いも聞いてくれそう。

 ノエルは意を決して考えていたお願いを口にする。



「ねえフロランちゃん。一つ賭けをしない?」

「賭け?なによ?」

「ノエルさん、授業で賭け事はダメですよ?」

「えー、ノエルが勝ったらノエルと遊んで欲しいってだけだよ?それでもダメ?」

「可愛らしい賭けですが、相手が嫌がるのならばダメですよ?」

「私は別に良いわ。負けるなんてありあえないし」

「それならまあ……」

「やったー!」



 よし、これでノエルが勝てばフロランちゃんと遊ぶ約束ができる。

 フロランちゃんってどんな遊びがいいのかな?鬼ごっこ?かけっこ?街の探検も良いかも!



「それで?私が勝ったらあなたは何をするのかしら?」



 ノエルがフロランちゃんと遊ぶ計画を練っていると、突然フロランちゃんに聞かれた。

 あ、そっか。賭けなんだからノエルが負けた時の事も考えないといけないのか。



「あー、えー……」

「もしかして何も考えてなかったんですの?」

「……フロランちゃんが勝ったらフロランちゃんがノエルを遊びに誘う?」

「それあなたに徳しかないじゃないの」

「だってすぐに思いつかないもん!」

「ならいったん保留ですわね。勝ってから考えますわ」

「分かった!」

「ノエルさん、本当にそれでいいんですか?」

「?、別に良いよ?」

「ノエルさんがそう言うのであれば、先生からは何も言いません。2人とも構えてください」



 先生の合図と共に、ノエル達は剣を構える。先生は巻き込まれないようにノエル達から距離を取った。

 ノエルとフロランちゃんも8mくらい距離を開ける。



「ルールはスキル使用不可、あくまで模擬戦なので寸止めしてくださいね。分かりましたかノエルさん?」

「分かりました!」



 いつもと違って当てちゃいけないのか。これは気を付けないとね。

 あれ?スキル禁止って魔装は使っていいのかな?まあ、使わないでいっか。

 ノエルが考えていると、先生の手が挙がっているのに気が付く。危ない危ない、気を抜いているとやられちゃう。

 ノエル達が構えたのを見て、先生が手を振り下ろしながら叫ぶ。



「始め!」

「先手必勝!」



 先生の合図と共にノエルはフロランちゃんに向かって走る。



「突撃すればどうにかなると思ってるなんて素人ね」



 フロランちゃんが余裕の表情で剣を構える。ノエルを迎え撃つつもりなんだろう。



「いっくよー!」



 ノエルは速度が乗り切ると思いっきり力を込めて……



「おりゃー!」



 ()()()()()()()()()()()()



「きゃあ!」



 フロランちゃんはノエルが投げた剣を咄嗟に上に弾く。だけど、この瞬間だけは剣でノエルが視界から消えている筈。チャンス!

 ノエルはフロランちゃんの懐に滑り込むように移動する。



「何なのよいったい……」

「隙あり!」



 隙だらけのフロランちゃんのお腹に拳をめり込ませる……寸前でちゃんと止める。寸止めってこれで良いのかな?

 不安になったノエルはナマク先生を見る。先生は迷った表情をすると、手を挙げて宣言した。



「ノエルさんの勝……利?」

「やったー!」

「異議ありですわ!」



 ノエルが飛び跳ねて喜んでいると、フロランちゃんから待ったがかかる。



「え?どうしたの?」

「どうしたもこうしたも無いですわ!剣を投げるなんて許される訳ないでしょう!」

「え?ルールに剣を投げちゃダメってなかったよ?」

「確かに先生は言ってません。しかし、それは当たり前の事だから言わなかっただけです」

「そうなの!?」

「投げたら危ないでしょう?フロランさんでしたから良かったものの、他の人だった場合は大怪我をしていたかもしれませんよ?」

「うー、確かに……」



 そう言われればそうだ。ホウリお兄ちゃんからは使える手は全部使えって言われてたから驚きだ。



「もう一度ですわ。今度は投げてはいけませんわよ?」

「はーい」



 ノエルは剣を拾って再び構える。今度は投げないように気を付けないとね。

 


 ノエル達が構えたのを見て、ナマク先生が再び手を振り下ろしながら叫ぶ。



「始め!」

「先手必勝!」



 先生の合図と共に再びノエルはフロランちゃんに向かって走る。フロランちゃんもさっきと同じように迎え撃つ姿勢だ。

 ノエルが振り下ろした剣をフロランちゃんが受け止める。フロランちゃんが剣を押し返し、ノエルに向かって横薙ぎの攻撃を繰り出す。

 ノエルもフロランちゃんの剣を受け止めて、後ろに飛んで距離を取る。



「やりますわね?」

「フロランちゃんもやっぱり凄いね!」



 その後もフロランちゃんと剣をぶつけ合うけど、中々決定打にはならない。剣を受ける事は出来るけど、ノエルの剣も受けられてる。これじゃ、負ける事は無くても勝つことも出来ない。

 どうしたものかと悩みながら、ノエルは繰り出された突きを右に躱す。

 致命的なスキを見つけたと思ったノエルはフロランちゃんの横腹に向かって斬撃を繰り出す。すると、フロランちゃんは弧を描くように斬撃を繰り出してノエルの剣を弾く。やっぱり、決定打がないなあ。

 ノエルは考える時間を稼ぐ為に後ろに飛んで距離を取る。どうしよっかな?

 何かないか記憶を探っていると、ホウリお兄ちゃんの言葉が浮かんできた。



『武器を使う奴の弱点を知っているか?』

『そんなものがあるの?』

『あるぞ。それはな───』



 そうだ!その手があった!

 作戦を組み立てたノエルは早速剣を構える。そして、腰と膝を曲げて体勢を思いっきり低くした。

 ノエルの体勢をみたフロランちゃんが眉を顰める。



「何を企んでますの?」

「ふっふーん、これを企んでるんだよ!」



 ノエルは低い姿勢のままフロランちゃんに突進する。

 困惑しながらもフロランちゃんは剣を切り上げるようにしてノエルを迎撃しようとする。ノエルはそれを右に回避して右手の剣で切り上げる動作をする。

 当然、フロランちゃんは全身全霊で剣を振り下ろしてノエルを迎撃しようとする。それを待っていた!

 ノエルは剣を切り上げずに、全身で時計回りで回転する。勢いが付いたフロランちゃんの剣の後ろを、勢いが付いたノエルの剣が叩きつける。

 瞬間、ノエルの予想通りフロランちゃんの剣が()()()()()()()()



「な!?」



 目を丸くして驚いているフロランちゃんの首に向かって剣を突き出す。



「ふふん、ノエルの勝ち」



 今度も何か言われるかと思ったけど、フロランちゃんの口から異議は出てこなかった。よし!これでノエルの勝ち!



「やったー!」



 嬉しくて飛び跳ねていると、ノエルの肩が優しく叩かれた。

 振り向くと、そこには相変わらず無表情のナマク先生がいた。いつもと違う所があるとしたら、手に折った剣の残骸を持っている事、そして先生の目に殺気が籠っている事だ。



「あの……えっと?」

「ノエルさん、そこに正座してください」

「はい……」



 その後、ノエルは授業が終わるまで剣を折った事を怒られたのだった。

ロワとノエルは決めきれないですね。そういうキャラ達です。


次回はフランとホウリの話です。何を書くかは決めてます。


今回の台風は凄いみたいですね。皆さんもお気を付けください。


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