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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
201/460

外伝 至急取調室

そういえば、解決してない問題あったなって思って書きました。

今回のタイトルですが、有名な某ドラマとは関係ないです。本当ですよ?

 王都襲撃事件が終結してしばらく経ったある日、私は取調室に呼び出されていた。私は検察官だから基本的には取り調べはしない。取り調べの経験もリューレの時しかないし、あれも取り調べと言っていいのか分からない。

 けど、今回は私じゃないといけない理由があるみたいだ。



「はぁ……行きたくないなぁ……」



 取調室に行く足取りは重い。理由は取り調べをする相手にある。

 そういえば、襲撃が起こる前も取り調べをやった事があったっけ。……もう思い出したくない思い出だ。もう一つ行きたくない理由が出来てしまい、足取りが体感3㎏くらい重くなる。



「行きたくないなぁ」



 何度口にしたか分からない言葉を吐く。そうこうしている内に取調室というプレートが見えた。どれだけゆっくりと歩いても、取調室にはついてしまう。これが諸行無常というものか。

 諦めて取調室の扉を開けると、取調室にいた憲兵の人が挨拶してきた。



「ラビさんですか?」

「はいそうです」

「なんだか聞いていた人と違いますね?」

「どういう人と聞いていたんですか?」

「今日と取り調べる人をボコボコにしたって聞いていたので、もっと筋骨隆々の人が来ると思ってました」



 不思議そうなその人に私は苦笑いを浮かべる。確かに私のやった事を聞いたらそう思うのも無理はないか。私だってフランさんからバフを貰うまでは普通の人だった訳だしね。



「例の人はどうしてます?」

「だんまりですよ。名前すら聞けてません。こちらも身元を調べているんですが、全く情報が集まらないです」

「なるほど」



 マジックミラーから取調室を覗いてみると、そこには椅子に腕を組んでそっぽを向いている男が座っていた。そいつは私がボコボコにした王都襲撃事件の主犯、白ローブだった。もっとも、今は白ローブではなく囚人が着るような服を着ている。私がここに来た理由はこれだ。

 白ローブは捕まった後、留置所に入れられた。取り調べはやっていたが、何を話すこともなく苦労しているみたいだ。

 それならボコボコにした私が取り調べをしたら、何か話すのではないかという事になり、呼ばれた訳だ。



「お願いできますか?」

「分かりました」



 私は取調室の扉を開ける。すると、私の顔を見た白ローブはびっくりしたように目を見開いた。



「お、お前は……」



 体が細かく震えており、私に恐怖しているのだと思う。振り返ってみても相当な事をしたと思ってるし当たり前か。

 白ローブの正面に座り、私は背筋を正す。初めてのまともな取り調べだ。

 しかも、今日はホウリさんやスイトさんが傍にいない。気を引き締めて行こう。



「お久しぶりですね」

「…………」



 白ローブは相変わらず何も喋らないが、さっきとは違い言葉を失っているという様子だった。

 確かビタルさんは世間話をして、話しやすい雰囲気を作ってたっけ。何を話そうか。



「前はすみませんでした。私も寝不足で頭に血が上ってまして……」



 私は白ローブに頭を下げる。

 頭を上げると、白ローブは気まずそうに顔を反らせていた。だけど、体の震えは止まっている。効果はあるみたいだ。

 白ローブは仏頂面で口を開いた。



「いや、俺も悪かったし」

「でも、私もあなたに……名前が分からないと不便ですね」

「……アスカだ」

「アスカさんに酷い事しました。仕方がない事とは言え、申し訳ないです」



 初めて白ローブの名前を聞けた。これは大きな前進だ。この調子でいこう。



「それにしても、あんなに大それた事を出来ましたね?」

「俺は特別だからな」

「多数の魔物を召喚してましたもんね。しかも、その魔物が倒されると自分に経験値が入るんでしたよね?確かに今まで聞いた事が無いような特別なスキルですよね」

「そうだろ?」



 アスカが得意そうに笑う。このまま情報を聞き出そう。



「あんな特別なスキルがあるんだったら、優秀な冒険者や騎士団の団員になれるんじゃないですか?」

「だって王都を襲う事が力を得る条件だったし」

「力を得る条件?」



 話が見えない。あんな強力なスキルは後天的には獲得できない筈だ。



「特別なスキルを誰かに貰ったんですか?」

「神って奴がくれてな」

「神様に会ったんですか!?」



 そんなの普通の人が出来る訳がない!思わず立ち上がりになりそうになるのを堪えて、必死に頭を回す。

 確かに強力なスキルを後天的に得るには神様でもないと無理だ。他の方法なんて考えられない。

 私は冷静を装いながら話しを続ける。



「それは確かに特別ですね。神様なんて国王様でも会えませんよ。アスカさんって本当に凄いんですね」

「そうだろう?」



 アスカが得意げに胸を張る。ホウリさんに褒めると話す人がいる事は聞いていたが、やけに簡単だ。こんなに簡単だと何かの罠ではないかと疑ってしまう。

 胸の中にある疑念を抱えながら、私は口を開く。



「どうやって神様にあったんですか?」

「俺が会おうとした訳じゃない。学校の帰りに急に視界が白くなったと思ったら、神を名乗る奴が現れてな。別の世界で勇者をしてほしいって言われたんだ」

「他の世界?」

「そう!俺は別の世界から召喚された勇者だったんだよ!」



 アスカが興奮した様子で叫ぶ。

 別世界からの召喚なんて、最初の人の逸話みたいだ。そういえば最初の人も特別なスキルを持っている人がいるって話だっけ。これは真実味が強くなってきたかも。



「おいおい、驚き過ぎて口が開きっぱなしだぜ?」



 アスカに笑いながら指摘される。

 指摘されて驚き過ぎて口が開いているのに気が付く。私は誤魔化すように身なりを正して咳ばらいを一つする。

 これからは何が起こっても取り乱したりしないぞ。



「勇者なのに街を魔物に襲わせたんですか?」

「そう言われたからな。だって、偽物の神が作り上げた偽物の世界だろ?そんなの壊しても問題ないじゃないか」

「……へ?」



 再び私は口をポカンと開けてしまう。



「どういう事ですか?」

「この世界は偽物の悪い神が作り上げた世界だろ?それで、正しい神が作った数少ない人を弾圧してるんだろ?だったら、そんな世界壊した方が世界のためじゃないか」

「………………」



 あまりの言葉に言葉を失う。

 その間にも、気を良くしたのかアスカが聞いてもいない事を話し始めた。



「俺だってよ、元の世界では優秀だったんだぜ?そんな俺に周りは嫉妬してたけどな。あいつら俺を馬鹿にしやがって……」



 アスカが顔を真っ赤にして拳を握りしめる。



「俺は誰よりも優れているんだ。それを周りのバカどもが分からないだけなんだよ。俺の言う事には素直に従えばいいんだ。俺が告白すれば断らずに感謝するべきなんだ」

「…………」



 ここまで話し、怒りの表情を浮かべていたアスカが急に穏やかになる。



「だがな、この世界なら俺の力を示せる。そう思ったんだ。なにせ、俺は正義だ。正義は勝つ、そう決まっているだろ?」

「……今スキルはどうなりました?」



 私の質問にアスカが穏やかだった表情を引っ込めて、再び不機嫌になる。



「あんたに負けてから、消え去った。何をした?」



 その言葉を聞いて私は確信する。フランさんが何かしたんだ。

 この世界に強制的にスキルを消去する手段はない。しかし、フランさんならば出来そうな気がする。



「あんたが俺の力を奪ったんだろ?そんなに俺に嫉妬してるのか?」

「私は何も知りません」

「は!都合が悪くなったら『分かりません』か。やっぱりどこの世界でも警察ってクソなんだな」



 吐き捨てるように言ってアスカが私を睨んでくる。これは私がスキルを奪ったと勘違いしているのかな?



「あの力は俺の物だ。あんたが持ってるべきじゃないんだよ」

「ですから知りません」

「あ、もしかして俺の気を惹きたいのか?」

「……へ?」



 何を言ってるのか分からない。今はスキルの所在についての話じゃなかったのだろうか?

 そう思っていると、アスカがにんまりとした気色悪い笑顔を浮かべる。



「そう言う事だったのか。俺の気を惹きたい為に力を奪ったんだな?」

「だから知りませんって」

「そう言う事なら分かった。力を返してくれたら俺の彼女にしてやるよ」



 ダメだ、全く話が通じる気配がない。こういう人とどう話をしたらいいかが全く分からない。



「……ちなみに、力が戻ったらどうするんですか?」

「またこの偽りの世界を破壊するに決まってるだろ?そうだ、あんたも手伝ってくれよ。そうすれば正妻にしてやってもいいぜ?」



 その言葉を聞いた瞬間、私の中の何かがプツリと切れた音がした。



(バン!)

「ひい!」



 私は感情のままに目の前にあるテーブルをたたき割る。そして、冷ややかな目をアスカに向ける。



「あなたはこの街に住んでいる人を見たことがありますか?」

「い、偽りの世界の住人なんか見るまでもないね」

「私は毎朝みてます」



 毎朝街で見かけるパン屋のおばさん、八百屋のおじさん、学校に向かう子供や職場に向かう大人。皆、笑顔で楽しそうにしている。その光景を見ながら私はこの街を守ると心に決めているのだ。



「それをあなたは神と名乗った者の言葉だけを信じ、悪だと決めつけ破壊する。そんな人は私が裁く!」

「やってみろよ。俺には神様がついているんだぞ?」

「本当にそうでしょうか?」



 私の言葉にアスカが首を傾げる。



「どういう意味だ?」

「神様があなたを大切に思っているのならば、襲撃の実行日と言う大切な日にいない筈がありません。しかし、あなたが私に負けた時に神様は何もしなかった。なぜでしょうか?」

「何が言いたいんだよ」



 私の言葉の意味が分からないのか、貧乏ゆすりを始めるアスカ。



「あなた、神様に見捨てられたんじゃない?」

「!?」



 私の言った事がようやく理解出来たのか、アスカの顔色が変わる。



「そ、そんな事は無い!神は必ず俺を助けてくれる!」

「そうですか。だったら刑が執行されるまで、助けを待ってください」

「け、刑ってなんだよ!俺はどうなるんだよ!」

「過去に王都の襲撃未遂があった時は、首謀者は死刑になりました」

「死刑だと!?」



 ようやく自分の立場が分かって来たのか、アスカの血の気が引いていく。そして、椅子から立ち上がると、私の足にしがみついてきた。



「た、頼む!助けてくれ!まだ死にたくない!」

「諦めてください」

「簡単に人の命を奪うって言うのか!?この人殺し!」



 私は縋って来るアスカの手を振り払う。



「アスカさん、この世界で年に何回死刑が執行されてると思いますか?」

「そんなの、1回あるかどうかじゃないか?」

「1000回です」

「……へ?」



 この世界では犯罪者を刑務所に入れるのも多大なリスクを伴う。なぜなら、その人がスキルという凶器で脱獄する可能性があるからだ。こちらもスキルを封じる手段はいくつも持っているが、完ぺきではない。

 犯人が脱走し大量に殺人が起きる可能性が高い訳だ。なので、今の社会では少しでも社会に害を及ぼそうとする者には死刑が執行される。



「あなたの世界でどうだったか知りませんが、それがこの世界です」

「そんな……なんで俺だけこんな目に会わないといけないんだよ……」



 アスカは呆然とした様子で項垂れる。

 私はアスカの言葉に答えずに部屋を出た。口を開くとアスカへの罵詈雑言が出てきそうだったからだ。



「おつかれさま」

「お、お疲れ様です」



 様子を見ていた憲兵の人に挨拶すると、引きつった顔で挨拶を返してきた。テーブルを叩き割ったら当たり前か。

 私は心で溜息を吐きながら、取調室を後にしたのだった。

ラビはホウリが転移者とは知りません。また、神を繋がりがある事も知りません。


次回は未定です。ロワの話ですかね?……前も同じ事書きませんでしたっけ?


リバイスの映画見てきました。アクションが多かったですが、子供見て大丈夫?っていうシーンも結構ありました。見終わった後に面白かったーという声が聞こえて来たので杞憂でしたが。

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