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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
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第百五十話 ブルータス、お前もか

連続投稿3日目です。今回はフランとロワとラビです。

 帰って来た次の日の朝、家の扉がノックされた。


「誰でしょうか?」

「俺が行こう」



 俺が玄関の扉を開けると、ラビが立っていた。腕には見覚えのない腕輪が付いてる。これは、ステータス半減の腕輪だな。



「ラビじゃねえか」

「おはようございます、ホウリさん」

「おはよう。今日はどうした?裁判の相談か?」

「いえ、今日は別でホウリさんに相談したい事がありまして」

「そうか。とりあえず上がれよ」

「はい、お邪魔します」



 ラビを家に上げ、リビングに通す。リビングにはロワとフランがコーヒーを飲んで寛いでいた。



「ラビではないか」

「おはようございます。今日はどうしましたか?」

「今日はこれで来ました」



 ラビが腕輪を見せて小さく笑う。その様子を見たロワとフランが納得したように頷く。

 俺はコーヒーを淹れてラビの前に出す。



「角砂糖は1つ、ミルクは無しだったか?」

「そうですね。ありがとうございます」



 ラビはコーヒーを一口飲むとホッと息を吐く。しかし、コーヒーを持つ手が少し震えているのが気になる。

 何が起きたか気になっているし、そろそろ話を切り出してもいいか。



「要件を聞いていいか?」

「実はこの前の襲撃で困った事にありまして……」

「その腕輪に関係する事か?」



 俺の言葉にラビは頷く。ステータス半減の腕輪とか嫌な予感しかしないんだよな。



「前の襲撃で私とフランさんがリューレを追っていたんですが、追跡中に襲撃に会ったんです」

「あいつらのやりそうな事だな」

「その時にフランさんにバフを掛けて貰ったんですが、そのバフがまだ消えてないんです」

「……どのくらいのバフだ?」

「全ステータスに1000追加です」

「やり過ぎだろ」



 気まずそうにコーヒーを飲んでいるフランを睨みつける。



「わ、わしだってこんな事になるとは思わなかったんじゃ」

「確かにフランの想定には無かっただろうな」



 わざとではないとはいえ、ラビが大変な目に会っている事は変わりない。少し責任は感じて欲しい物だ。



「今は腕輪で力を抑えているのか」

「そうですね。2つ使ってやっと抑えてます」



 1000は日常生活に支障があるレベルだ。腕輪を付けているとはいえコーヒーを飲むのも大変だろう。



「病院には行ったか?」

「行きましたけど、原因は分からないって言われました」

「それで、俺にどうにか出来ないか相談しに来た訳か」

「そう言う事です。心当たりはありませんか?」

「まずは症状の確認からだ。腕を出せ」



 ラビが出してきた腕を掴んでMPの流れを確認してみる。



「どうですか?」

「MPの流れは正常だ。とりあえず、何かの病気とかじゃないな」

「そうでしたか」



 ラビがホッと胸を撫でおろす。

 しかし、俺の言葉を聞いたロワは首を傾げた。



「病気じゃないんだったら、なんでバフが消えないんでしょうか?」

「考えられる原因は一つ。体質だな」

「そんな体質があるんですか?」

「人国の歴史の中で、前例が数件しかない稀な体質だ」

「通りで聞いた事が無い訳ですね」

「具体的にはどういう体質なんですか?」

「俺も詳しい事は分からないんだがな。なにせ、前例が少ししか無い」



 ラビの体質とはスキルの影響を受けやすいという物だ。全てのスキルだけでなく、普通のヒールで大怪我が治ったり、受けた強撃の威力が10倍になったりと、特定のスキルだけに影響を受ける。

 良い効果も悪い効果もあるから、一概に害とも言えないし。そもそも特定のスキルを受けないと分からない体質だし、生きている内に気が付いていない人もいるだろう。



「つまり、私はバフを受けやすい体質っていう事ですか?」

「話を聞く限りはそうだな」

「治す事は出来るのか?」

「これは体質だから治すとかじゃない。爪が伸びやすいとか、食べ物にアレルギーがあるとかの類だ」

「……という事は、ずっとこのまま?」

「かもな」



 時間を掛ければ少しずつ効果が抜けていくかもしれない。しかし、症例が少ないから確実にそうなるとは言えない。



「これから一体どうすれば……」

「対処方は一つだ」

「あるんですか?」



 キラキラと期待を込めた目でラビは俺を見て来た。俺は指を一本立てて説明する。



「腕輪付けないで生活できるように特訓するしかないな」

「……思ったよりも物理的ですね?」

「それしかないだろ。最終的には豆腐を素手でつかめて、人並みの速度で走れるくらいには上達してもらうからな?」

「が、頑張ります」

「そうと決まれば特訓だ。庭に行くぞ」



 俺はラビを連れて庭に出る。こうして、俺の日常にラビとの特訓も加わったのだった。



☆   ☆   ☆   ☆



「ホウリさん、相談したい事があります」

「お前もか」



 ラビとの特訓が終わって家に戻ると、ロワがそう切り出してきた。ロワの相談事なんて珍しくもない。話を聞いて早めに終わらせるか。



「なんだ?」 

「勉強を教えて欲しいんです」

「頭でも打ったか?」

「失礼ですね。僕も勉強くらいしますよ」



 俺の言葉にロワが頬を膨らませる。



「悪かったよ。で、何を教えて欲しいんだ?」

「騎士団の試験に出そうな事です!」

「試験っていつだ?」

「1ヶ月後です」

「試験の勉強がはかどっていないから、俺に泣きついていた訳か?」

「はい!」



 拳骨してやろうか。



「騎士団に入る事にしたのか?」

「はい。なんだか、試験があるって言われたので勉強してるんですが、中々進まなくて……」



 試験まで1ヶ月か。かなり厳しいが何とかならない事もない。



「ダメですか?」

「本来はダメって言う所だが、パーティーメンバーの頼みだし聞いてやるよ」

「ありがとうございます!」

「その代わり、覚悟しろよ?」

「……へ?」



 にこやかな俺の異様な雰囲気を纏っている事を感じ取ったのか、ロワは額に汗を滲ませている。



「あの、やっぱり自分で頑張るので……」

「一度言った言葉は撤回出来ると思うなよ?」



 1ヶ月で合格するとなると、ロワだけで勉強しても間に合わない。合格するには俺が面倒を見る必要があるだろう。というか、1ヶ月なんて短すぎる。



「1ヶ月って長官が言ったのか?」

「いえ、僕が言いました」

「もっと時間を貰って欲しかったな。これだと詰め込んでいってギリギリだな」

「そ、そうなんですか?」



 やっぱり現実が分かっていなかったみたいだ。



「とりあえず、今の実力を見たいから、ロワの部屋でテストだな」

「うええ、テストは嫌いなんですよ」

「文句言うな。ほら、行くぞ」



 嫌そうなロワを引きずって、2階のロワの部屋に向かう。こうして、俺の日課にロワの勉強も加わったのだった。



☆   ☆   ☆   ☆



「ふぅー、知り合いからこんなに頼みごとをされるとは思わなかったぜ」



 ロワの学力に軽く絶望した俺は、ロワに課題を出してリビングに戻って来たのだ。



「お疲れ様じゃ。コーヒーでも淹れるか?」

「そうだな。あと、高級チョコでも食おう。フランも食うか?」

「わしはいらん」



 フランが仏頂面でコーヒーを淹れる。おかしい、いつもだったら言わなくてもスイーツを寄越せと言ってくるはずだ。

 なんだか嫌な予感がするが、俺は理由を聞いてみることにした。



「どうした?スイーツを食べないなんてらしくないじゃないか?」

「…………」



 フランは無言で自分の分のコーヒーを淹れると俺の正面に座った。俺はチョコを頬張りながら話を切り出す。



「で、何があったんだ?」

「……お主に相談したい事がある」



 本日3回目の言葉を聞き、俺の予感が正しかった事を悟る。



「なんだ?」

「……太ってしまったんじゃ」

「だろうな」



 フランは普段から人一倍食べる。しかも、仕事はデスクワークが基本だし体重が増えても不思議じゃない。



「何㎏増えた?」

「5㎏じゃ」

「俺に嘘が通じるとでも?」

「……8㎏じゃ」



 この期に及んで嘘を吐くとはな。



「あんだけ食べてたらそうなるよな」

「何とかならんか?」

「フラン以外なら色々と手はあるんだがな」



 普通の人であれば運動とか食事制限とかで痩せられる。しかし、フランの場合は走ろうにも効果が100㎞くらいは知らないと効果でない。食事制限しようにもスキルで消費カロリーが減るから、かなり苦労する。

 サバイバルするには便利だが、ダイエットになると都合が悪すぎる。



「効果がない訳じゃないから、地道に運動して食事制限して運動するしかないな」

「……何か即効性がある方法は無いのか?」

「俺くらい頭を使えばすぐに痩せるぞ?」

「実現可能な方法を提案せんかい」

「じゃあ、食事制限と運動だな」



 俺の言葉にフランが嫌そうに顔をしかめる。



「……MPを使いまくれば痩せると聞いた事がある」

「効果があるくらい使うとなると、街を滅ぼす位には使わないといけない。街の真ん中でそんな事が出来ると思うか?」

「……他に方法は?」

「無い」



 フランの言葉を切って捨てると、フランが頭を抱える。



「なぜわしがこんな目に会わねばならん?」

「不摂生が原因だ。自業自得って奴だな」

「人国には正論で傷つけた場合に罪に問われたりしないのか?」

「魔国でも出来ないだろうが」



 無茶苦茶な理論を一蹴して、俺はフランのダイエット計画を頭の中でまとめる。こうして、俺の日課にフランのダイエットが加わったのだった。



☆   ☆   ☆   ☆



 その日の夕食、いつも通りスターダストのメンバーに加えてラビが食卓に加わっていた。



「……ホウリさん、ナイフを壊しそうなのですが」

「壊しても替えがあるから気にするな」



 ラビは手を震わせながらステーキを切っている。本当は箸を使わせたかったが、まだ慣れていないし使いやすいナイフとフォークを使わせている。



「この魔物の弱点は胸、でも色が青だと頭になって自動回復が……」



 ラビの横ではロワが参考書を持って、ぶつぶつと呟きながら食事を口に運んでいる。

 その様子をミエルが心配そうに眺めている。



「ロワ、ご飯の時くらいは勉強は止めたほうがいいのではないか?」

「今は全く時間が無いので少しでも勉強しないと……」



 そう言ってロワは再び参考書を見ながら呟き始めた。

 やったテストの成績が思った以上に悪く、ロワの中にも焦りが出て来たんだろう。



「ねぇねぇ、フランお姉ちゃんそれだけしか食べないの?」



 フランの前には鳥のささ身とグリーンサラダしかない。普通のメニューに見えるが、サラダには脂肪を燃焼する効果がある薬草を、ささ身はフレイムバードというカロリーを消費しやすくする鳥肉を使用している。

 フランにとっては微量だが、塵も積もれば山となるって奴だ。



「……わしとてこんなの食いたくないわい。しかし、健康の為は仕方ないのじゃ」

「どこか痛いの?」



 心配そうなノエルの頭をフランは優しく頭を撫でる。



「そこまで深刻ではない。必ず健康になるからノエルも応援してくれ」

「うん、わかった!」



 ノエルがフランに笑いかけ、フランが意を決したようにサラダを口にする。

 今日だけで食卓の様子が様変わりしたな。



「あ!ナイフが折れた!」

「この魔物に効果的な属性は……」

「うう……炭水化物が食べたい……」



 結構、カオスになって来たな。

 帰ってきて早々騒がしくなった食卓を見ながら、俺はどこか安堵していた。

というわけで、ホウリの仕事が増えました。


次回は決まってないです。


ゴールデンカムイ全部見ました。面白かったです。

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