第百十六話 ぅゎょぅι゛ょっょぃ
今回は家探しです。なぜか戦闘があります。
研究所に行った次の日、俺は全員を薄暗いリビングに集めた。
俺は手を組んで口を隠しながら神妙な面持ちで口を開く。
「今日皆を呼んだのは他でもない」
「家探しだな」
「色々あって後回しになっていたからのう」
「なんだよ、もう少し雰囲気出せよ」
「遊んでないでさっさと本題に入れ」
「ちぇー」
俺は不貞腐れながら明かりを付ける。いつもと変わらない面々を見ながら話を続ける。
「前から言っているが、この家はもうすぐ引き払う。だから新しい家を借りる必要がある」
「どんな所を借りるんだ?」
「皆の意見を聞きながらだな」
「全員の意見を反映できる家があるのか?」
「聞いてみないと分からね。という訳で、皆はどういう家が良い?」
「はい」
「ロワ」
「広いお庭が欲しいです」
「なるほど」
広い庭があれば戦闘の訓練もしやすくなる。それ位、ロワも本気で強くなろうとしているんだろう。
俺が感動していると、フランが不思議そうな顔をする。
「なぜ広い庭が欲しいんじゃ?」
「だって皆でバーベキューとかしたいじゃないですか」
「俺の感動を返せ」
「え?どういうことですか?」
「……他に意見はあるか?」
ロワへの呆れを呑み込んで、次の意見を募集する。
「私は広いキッチンが欲しい」
「なんか嫌な予感がするが分かった」
「わしは周りに色んな建物があると良いのう」
「了解。となると、街の中心がいいか?」
「ノエルは部屋がいっぱいある大きい家が良い!」
「分かった」
「言っておいてなんじゃが、この条件の家が簡単に見つかるのか?」
「結構厳しいかもしれない。もしかしたら、条件のいくつかは諦める必要があるかもな」
☆ ☆ ☆ ☆
「見つかったぞ」
「早くないか?」
皆を招集してから3時間後、俺は再び全員をリビングに集めていた。
「見つかったって……もしかして家がですか?」
「ああ、それも全員の条件にあう家だ」
「周りに色々とあって、部屋が多く、大きなキッチンと庭がある。そんな家、とっくに買い手が付いているのではないか?」
「俺もそう思ったんだが残ってたんだよ。しかも、騎士団に近いから通勤も楽だ」
「かなりの好条件だな。なぜ買い手が付いてない?」
「何か理由があるのかな?」
「お、察しが良いな。俺もノエルと同じことを思って理由を調べた」
「何かあったのか?」
「普通の奴には無理な条件があった」
「詳しく聞かせてください」
皆が注目する中、俺は説明を始める。
その家の持ち主の名前は『キルバス・ガムラム』。有力な貴族の一人で色んな街に様々な家を所有している。売りに出されているのはその内の一つだ。
「キルバスには趣味がある。一つは住みもしない家をコレクションする事。だが、それ以上の趣味がある」
「なんじゃ?」
「戦いを見ることだ」
「特に変わった趣味ではないな」
この世界では戦闘が盛んな影響で、試合形式の戦闘がスポーツ化している。だから、戦いを見るのも一般的な趣味になっている。
「その趣味が何かあるのか?」
「……まさか家を売る代わりに戦えと?」
「そのまさかだ。家を売るには相手と戦って勝たないといけない」
「なんだそんな事ですか」
身構えていたロワが拍子抜けする。
「フランさんかホウリさんが戦えばいいのでは解決するのでは?」
「確かにそうだよ。ホウリお兄ちゃんかフランお姉ちゃんなら絶対勝てるよね?」
「それがそうもいかない。戦いは5人の団体戦。俺とフランで勝てたとしても残り1回は勝たないといけない」
「相手はものすごく強い冒険者を雇っているだろう。そんな中で1勝出来るかだな」
「わしとホウリで1勝確定しておるしな」
「相手も知らない内に勝利が確定しているのも可笑しいけどな」
俺の言葉に全員が『何いってんだこいつ』みたいな目で見てくる。
「今更なんじゃい。わしとお主がここぞという時に負けるはずが無かろう?」
「なんだろうな、褒められてる気がしない」
「安心せい、ちゃんと貶しておる」
「俺への評価どうなってんだ?」
最近頑張ってると思うんだけどな?今までが今までとはいえ、なんだか評価が低い気がする。
「で、5回戦って3回勝てばいいのか。2人程ではないとはいえ、ロワもノエルも弱くない。勝てる可能性は十分にある」
「何言ってる、神級スキルがあるミエルも弱い訳ないだろ」
「……このパーティーに入ってからの私の戦績、あまり高くないんだ」
そう言われて、俺はミエルの戦績を思い出す。
最初は俺と戦って、半ば反則じみた行為で俺が勝った。次が海での最終決戦で時間切れで敗北。次が闘技大会でロットに敗北。最後がペイトととの戦いで勝利。
「4戦1勝か」
「……なぜ勝てない?」
「み、ミエルさんは強いですよ。きっと対戦相手との相性が悪かったんですよ」
「戦ったうちの半分は俺だがな」
「ホウリさん相手なら仕方ないですよ」
「わしもミエルが勝っているイメージは無いがのう」
「うぐっ!」
「ミエルさん!?」
フランの言葉がトドメとなり、ミエルがテーブルに突っ伏す。
「まあ、相手がロット並みの攻撃力が無ければ完封も可能だろうよ」
「現にペイトさん相手にはダメージ受けてませんでしたもんね」
「ミエルお姉ちゃんカッコいいよ?」
「本気で強くなりたいなら俺が色々と考えよう」
「……皆ありがとう」
俺たちの励ましでミエルが顔を上げる。とりあえず、機嫌は直ったみたいだな。
「それで、家についてはどうする?」
「勿論やるぞ」
「僕もやります」
「ノエルも!」
「私も頑張ろう」
「決まりだな」
「戦闘はいつじゃ?」
「1週間後だ。全員準備しとけよ」
「「「「はーい」」」」
☆ ☆ ☆ ☆
1週間後、俺達は買取予定の貴族の家までやって来た。
ロワの希望通りの広い庭で俺達は売り手の貴族を待っていた。
ロワが家を見上げながら感嘆を漏らす。
「おー、ここが僕たちが住む家ですか。結構大きいですね」
「ここまで大きいと掃除も大変そうじゃな」
「ノエル、自分の部屋欲しい!」
「まだ住めると決まったわけじゃないからな?」
皆でワイワイ話していると、売り手であるキルバスがやって来た。後ろには5人の強そうな男たちが付いてきている。
俺はキルバスと握手を交わす。
「ようこそホウリ様。本日はようこそおいでくださいました」
「こちらこそ、このような機会を設けていただき、ありがとうございます」
営業スマイルでキルバスに笑いかける。
「今年の闘技大会の優勝者の戦いを間近で見られるなんて、楽しみですよ」
「ありがとうございます。そちらの方々は?」
事前の調査で知っているが、悟られない為にもあえて質問する。
俺の質問にキルバスは上機嫌で話し始める。
「この方々は私が雇った傭兵です。A級冒険者にも引けを取らない程の実力者ですよ」
「そうですか。お手柔らかにお願いします」
「試合はどちらかが戦闘不能になるか降参で決着。3回先取した方が勝ち。これで良いですか?」
「問題ないです」
「よろしい、それでは始めましょう」
そう言って俺とキルバスは庭の両端に移動する。
庭は戦える程の広さがあり、両端にいればお互いの声は届かない。作戦会議にはピッタリだ。
俺達は庭の隅にしゃがみ込んで、コソコソと作戦会議をする。
「さて、最初に誰が行くかだが……、フラン」
「うむ、待っておれ」
フランの言葉の後に、頭に反対側の声が聞こえてくる。相手の作戦を聞くなんて卑怯?今更だろ?
『……最初はだれが行く?』
『ここは俺が行こう』
『シルド、お前なら様子見に丁度いいな』
……なるほど、初戦はシルドか。だったら
「最初はノエルがいいな。いけるか?」
「うん!」
「相手の情報は頭に入っているか?」
「うん!!」
「よし、行ってこい」
「分かった!行ってきます!」
ノエルがやる気満々の表情で庭の中心へと歩みを進める。
ノエルの相手はシルド、堅固な鎧を付けて鋼鉄の盾を持った騎士だ。ガタイも良く、ノエルは2倍以上の身長差がある。
「おお、おじさんおっきいね!ミエルお姉ちゃんと同じくらい……ううん、ミエルお姉ちゃんよりも大きい!」
「……君が私の対戦相手か?」
「うん!ノエルって言います!よろしくお願いします!」
礼儀正しくお辞儀するノエルを見て、シルドが困ったように頬を掻く。
「お嬢ちゃん、これはおままごとじゃないんだよ?怪我しない内に、お兄さん達の内の誰かと変わってきなさい?」
「大丈夫!ノエル強いから!」
「うーん……」
シルドが困ったように仲間達へ視線を向ける。
仲間達は苦笑いしながらシルドに向かって叫ぶ。
「軽くいなして終わらせてやれ!」
「……子供をいじめる趣味は無いんだがな」
シルドは溜息を吐いて盾と剣を仕舞って、ノエルに手を広げる。
「さあ、来たまえ」
「はーい!」
そう言うとノエルは拳を構える。ちなみに、ノエルにはナイフと銃は装備しないように言っている。理由は後で。
2人が構えたのを見てキルバスが微笑みながら叫ぶ。
「第一回戦、開始!」
「やあ!」
開始の合図と同時に魔装を使ったノエルがシルドに突進する。
シルドから見たら急にノエルが消えたように見えただろう。シルドは目を見開いてノエルがいた方向を見つめる。
ノエルはシルドの懐に潜り込み、腹に向かって思いっきり拳を叩き込んだ。
ノエルの拳は鎧を砕き、そのままシルドの腹にめり込んだ。
「ぐはっ!」
シルドの口から空気がもれる音が聞こえる。シルドが驚愕の表情で懐にいるノエルを見る。
シルドに見つめられたノエルはニヤリと笑う。
「まだまだいくよ!」
「くっ!」
ノエルは更にシルドに向かって拳を放つ。シルドは驚愕しながらもノエルの拳を捌く。
ノエルとシルドの攻防を見ながら俺は事前の作戦を思い出す。
『いいか、ノエルにはシルドと戦ってもらう』
『シルドはどういう奴じゃ?』
『盾と鎧で攻撃を防ぎ、大剣で大ダメージを与えてくる騎士だ。ミエル程じゃないが一流の騎士だ』
『なんでノエルちゃんがシルドさんと戦うんですか?』
『簡単に言えば相性がいいからだ』
『なぜだ?』
『ノエルは(フランを除いて)俺達の中で一番安定して高い攻撃力が出せる。鎧をぶち破るには都合がいい。それに……』
『それに?』
『相手はかなり優しい心の持ち主だ。ノエル相手だと絶対に油断する。そこを突くんだ』
『分かった!ノエル頑張る!』
『……いつも思っておるがお主って外道じゃよな?』
『それも最大級にな』
『誉めるなよ』
『誉め取らんわい』
そんな訳で、相手に最大限に油断してもらうためにノエルには武器を装備させなかった。
狙い通り、相手は子供だと油断した。しかも、盾と大剣まで仕舞った。これはチャンスだ。
「やあああ!」
「くそっ……」
ノエルの猛攻をなんとかしのぐシルド。だが、最初のダメージが大きく動きはかなり遅い。盾や大剣を構える暇もないみたいだ。
ノエルの拳がシルドの足に迫る。足にダメージを負っては機動力が削がれる。そう思ったシルドはその拳を受け止めようと手を突き出した。
それを見たノエルの目がキラリと光る。
「貰った!」
ノエルは拳を開いて突き出された手を掴む。ノエルの行動が予想外だったのか、シルドが再び目を見開く。
「せい!」
ノエルは掴んだ手を捻ってそのまま巨体を投げ飛ばす。
「な!?シルドがあんな子供に投げ飛ばされた!?」
シルドの仲間達からも驚愕の声が聞こえる。
俺がノエルに教えた体術だ。小型のノエルでも大型の相手を投げ飛ばせる、そんな俺オリジナルの体術だ。
シルドは投げ飛ばされて背中から叩きつけられる。だが、流石は一流といったところか、シルドは叩きつけられる前に受け身を取る。
「痛つつ……何がどうなっているんだ?」
訳が分からないといた様子でシルドが起き上がる。
すると、遠くに離れたノエルが目に入る。
「……何をする気だ?」
「いっくよー!」
ノエルはそう言うと足に魔装を集中させてシルドに向かって走る。
シルドは何か嫌な予感がしたのか、盾をアイテムボックスから取り出す。
「させないよ!」
それをみたノエルはいつの間にか持っていた銃をシルドに向かって発砲する。
弾は的確に手に命中し、シルドは盾を落とす。
「しま───」
「ウェエエエイ!」
盾を落として隙が生じたシルドにノエルの飛び蹴りが炸裂する。
勢いが付き、魔装で強化したノエルの蹴りがシルドの胸に刺さる。シルドが後ろに吹き飛ばされ、庭に生えていた木に激突する。
「必殺、ホウリお兄ちゃんの爆破キック(爆破無しバージョン)」
「それ普通のキックじゃね?」
「シルド!?」
シルドの仲間の一人はツッコみ、一人はシルドに向かって走る。
白目を向いているシルドの様子を見た仲間は、立ち上がると頭上で大きな×を作った。
しばらく呆けていたキルバスだったが、×を見て気を取り直して叫ぶ。
「勝者、スターダスト!」
「やったー!」
ノエルが満面の笑みでピースをする。
まずは1勝だな。
という訳で、次回に続きます。諸事情により、今週中にもう一回投稿予定です。出来ないかもしれません。
次回は戦闘の続きです。活躍してない人達を活躍させる意図があります。
ボーボボのグラブルコラボを見返してたのですが、頭が割れそうでした。




