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魔王から学ぶ魔王の倒しかた  作者: 唯野bitter
第2章
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第九十九話 デュエル開始の宣言をしろ!

今回は戦闘回です。ホウリが(比較的)真面目に戦います。

後、大臣の名前を変えました。新しい名前はメリゼです。前の名前は別の所で使ってました。てへぺろ☆

 晩飯の後、わしは職務室に籠って書類と格闘していた。やってもやっても減らない書類にうんざりしながら、次の書類へと手を伸ばす。

 それにしても、ホウリとメリゼが戦う事になるとはのう。なんとか2人とも無事で済めばよいが。

 そんな事を考えていると、執務室の扉がノックされた。



「入ってよいぞー」

「邪魔するぜ」



 扉を開けて入ってたのはホウリじゃった。



「なんの用じゃ?」

「明日のメリゼとの戦いについて確認したことがあってな」



 そう言うと、ホウリはソファーに腰かけた。



「聞きたい事?」

「メリゼのスキルと戦闘スタイルを聞きたい」

「いつものように自分で調べればどうじゃ?」

「一晩で情報を集めるのは骨が折れるんでな。一番詳しいフランから教えて貰ったほうが早いって訳だ」

「うーむ……」



 いくら家臣でも勝手に情報を教えるのは気が引ける。というか、メリゼにバレたら大目玉を食らう。

 じゃが、ホウリが負けるのも都合が悪い。どうしたものか。



「スキルの情報があれば確実に勝てるのか?」

「いや、最悪勝てなくてもいいと思ってる」

「どういう事じゃ?」

「喧嘩は負ける事が正しい時もあるって事だ。下手に勝つと恥をかかせられたって逆恨みされる事もあるからな」

「そういうものかのう?」



 メリゼは手合わせしたいだけみたいじゃし、そこまで過敏になる事もないと思うがのう?


「で?教えてくれるのか?」

「わしとしてはお主に勝ってもらわないと困るんじゃがな……」

「なんでだ?……ああなるほど、俺が口出ししにくくなるのか」



 ホウリが納得したように頷く。話が早くて助かるわい。

 魔族は昔から力を重視する。じゃから魔王も魔族で一番強い者が就任する。わしが500年の間、魔王でいられているのも、一番強いからに他ならない。

 そんな強い者が正義の魔族が戦闘で負けたホウリを見てどう思うか。わしが協力するように言っても協力しないじゃろう。

 そうなると、わしの仕事が減ることはなくなってしまう。それだけは阻止せねばならん。



「となると、余計に情報がいるな。だが、フランは勝手に情報を漏らしたくないと」

「どうしたものかのう?」



 わしの言葉にホウリは腕を組む。そして、何かを思いついたように手を叩いた。



「メリゼの戦いの様子を話すっていうのはどうだ?これなら秘密を洩らしたことにはならないだろ?」

「それはよい考えじゃな」



 スキルの情報は多少戦いを見聞きするだけでは分からぬ。じゃが、ホウリならば話を聞くだけでわかる筈じゃ。メリゼがわしを追求しても知らぬ存ぜぬで通せる。まさに妙案じゃな。



「では仕事の息抜きに雑談でもするかのう」

「そうだな、息抜きは必要なだしな」



 わざとらしいやり取りの後、わしはホウリと雑談を始めたのじゃった。



☆   ☆   ☆   ☆



 次の日、決闘の為にホウリとメリゼは戦場に立っていた。戦場の外ではスターダストの3人も見学しておる。



「えー、これよりホウリとメリゼの決闘を始める。気絶するか降参で決着となるから頑張るように」



 審判を頼まれたわしは嫌々審判をする。この試合にはホウリの今後、いやわしの仕事がかかっておる。なんとしてもホウリには勝ってもらわんとな。

 メリゼはいつものきっちりとしたスーツで佇んでおる。仕事の時も戦う時もスーツ、文字通り戦闘服じゃな。

 対するホウリは手に手甲を付けておるが、それ以外は何もつけておらん。素手で戦うみたいじゃな。

 その様子を眺めていたロワがわしに話しかけてきた。



「フランさん、メリゼさんって強いんですか?」

「力が物を言う魔国で大臣しておるんじゃ。弱い訳ないじゃろ」

「ホウリお兄ちゃんよりも?」

「それはやってみんと分からん。じゃが、どっちが勝っても可笑しくないじゃろうな」

「実力は拮抗しているという訳か」



 3人には重要な勝負じゃと分からんのか、のんきに戦場を見ておる。まあ、知る必要も無いとは思うがのう。



「そろそろ始めるぞー、2人とも準備は良いかー」

「私は良いです」

「俺も大丈夫だ」



 2人が異様な雰囲気のままにらみ合う。このままだとどっちかが死にかねん勢いじゃ。万が一危なくなったら止めるとしよう。



「それじゃ、始め!」



 わしが開始の宣言をすると同時に、メリゼの体が黒い霧へと変化する。



「うわ!何ですかあれ!」

「あれは『ブラックミスト』。黒い霧を発生させて対象の視界を制限するスキルじゃ」

「体を霧にするスキルではないのか?」

「あれはバンパイアの特性じゃな。ブラックミストを使うと自身を霧に出来る。霧になれば物理だろうが魔法だろうが効かぬ。おまけに使用者からの攻撃は可能というとんだチートじゃ」

「え?それどうやって勝つんですか?」

「強い風を吹かせたり、光を発生させたりとかが効果的じゃ。どれも簡単には出来んがな」

「ホウリさんは出来そうですか?」

「どうかのう?」



 話しているうちに霧がホウリの体を包み込んだ。これでは全方向から攻撃され放題じゃ。



「うーん、ホウリお兄ちゃんの姿が見えなくなっちゃったね」

「そうだね。フランさん、霧の中を見る方法はないですか?」

「千里眼でも使うか。ほれ、皆で手をつなぐんじゃ」



 皆で手をつないでわしは千里眼を発動する。視界を霧の中へ移動させると、ホウリが全方位からの攻撃を手甲で凌いでいた。

 背後から爪での攻撃を前方へ受け流し、攻撃が来た方向へ蹴りを入れる。じゃが、すぐに霧になったメリゼにはダメージが与えられない。



「不味いですよ!このままだと、ホウリさんが負けてしまいます!」

「お主はいつもいいリアクションするのう」

「フランさんは心配じゃないんですか?」

「ホウリが何の策もなく戦う訳ないじゃろ。想定の範囲内の筈じゃ」

「ですが、この状況を打破できるとは思えません」

「ロワのいう事も分かるがのう。まあ見ておれ」



 確かにホウリからは攻撃が出来ず、メリゼからは攻撃し放題の状況は一方的に見える。普通の相手であれば試合終了じゃろう。

 じゃが、今回の相手はキムラ・ホウリじゃ。このままで終わる訳ない。

 わしの思った通り、今まで防御を続けていたホウリは懐から何かを取り出した。



「あれは……箱か?」

「箱なんて何に使うのかな?」



 取り出したのは手の平よりも少し大きい直方体の箱じゃった。見た所、少し攻撃しただけでは壊れぬ程に頑丈そうじゃ。鍵も付いていて、本来は大事なものを入れる箱なんじゃろう。

 何を使うのか皆が首を傾げているとホウリは箱を開けて構えた。そして、爪が消えた空間の霧を箱の中に閉じ込めると鍵を掛けた。

 ホウリは細かく震える箱を霧が届かない程に遠くまで蹴り飛ばし、再び同じ箱を構える。



「あーなるほど、これは上手いのう」

「何が起こった?」

「ホウリお兄ちゃんが霧を箱に閉じ込めた様に見えたけど?」

「その通りじゃ。あの霧はメリゼが変化したものと言ったな」

「そうですね」

「つまり、箱の中に入っているのはメリゼの一部なんじゃよ」

「つまりメリゼが実体化した時に、体の一部が箱の中に切り離されてしまうと?」

「そういう事じゃ」



 ホウリは爪を狙って箱に閉じ込めた。このまま爪を全部箱に閉じ込められるとメリゼが攻撃する手段がなくなる。そうなればほぼ確実にホウリの勝ちじゃ。

 霧の中でホウリは箱を構えているが、メリゼの攻撃頻度が今までよりも少なっている。明らかに箱の存在を警戒しておるな。じゃが、霧化もMPを消費する以上、どこかで仕掛けねばならぬ。



「次の攻撃が勝負だな」

「箱を破壊出来ればメリゼの勝ち、箱に爪を閉じ込められた場合はホウリの勝ちじゃな」

「そういえば、ホウリさんが見えてないにも関わらず攻撃を捌いている事に対するコメントは無いんですか?」

「ホウリならば不思議はだろう?」

「僕もそう思いますけど、慣れって怖いですね」



 そういえばホウリは見えて無いんじゃったな。あまりにも自然に避けとるから忘れとったわい。

 ホウリが箱を構えてから1分、そろそろメリゼのMPが尽きるころじゃな。メリゼはここで仕掛けんと勝つことが出来んがどうするかのう?

 硬直状態の中、最初に動いたのはメリゼじゃった。

 箱を目掛けて爪が振り下ろされる。ホウリもそれに気が付いて咄嗟に箱を後方へと逃がす。

 すると、メリゼも読んでいたのか爪の軌道を変えて箱を打ち上げる。ホウリも素早く反応して箱を取ろうとするが、箱はメリゼの爪によって粉々に破壊された。



「ああ!箱が!」

「慌てるでない。ホウリが箱の破壊を想定しておらん訳ないじゃろ」



 わしの言葉通り、ホウリはいつの間にか持っていた箱を使って箱を破壊した爪を閉じ込めた。

 さっきと同じように箱を遠くまで蹴り飛ばして、完全に封じ込める。

 箱をわざと破壊させてそのスキを突いたか。これは勝負あったか?

 黒い霧はホウリから離れると、徐々にメリゼの形を取り戻していった。メリゼは案の上、指の先が無くなっており、鮮血を流していた。これでは得意な爪での攻撃が行えんじゃろう。

 そんな状況でも顔色を崩さないメリゼに向かってホウリが話しかける。



「まだやるか?」

「私は気絶もしてませんし、負けも認めません」

「そんなに俺が嫌いなのかよ」

「当然です。私は長年魔王様に仕えてきたのです。最近であったばかりのあなたよりも私の方が優れているに決まってます」



 メリゼの口調はいつも通りじゃが心なしか熱を感じる。あやつそんな事を思っておったのか。



「……もう少しメリゼと話しておけばよかったかのう?」

「今からでも遅くはないのでは?」

「ロワの言う通りだ。そう思ったのならば話せば良い。恥ずかしがって手遅れになる前にな」

「……そうするか」



 いつも一緒におると面と向かって話をするのが照れくさくなってしまう。そのツケがホウリへいったのならば、わしに責任があるじゃろう。

 この勝負が終わったらメリゼと話すとしよう。

 メリゼの言葉を聞いたホウリは困ったように頭を掻く。



「予想はしていたが、やっぱり降参してくれないか」

「言っておきますが、私は降参しません。また、あなたの降参を認める気もありません。この勝負はどちらかが倒れるまで続くのです」

「和解は無理そうだな。後はフランに任せるとしよう」



 そう言うと、ホウリは拳を構えた。どうやら、とことんまでやるみたいじゃな。



「ここからは殴り合いだ。手加減しないぜ?」

「望むところです」



 メリゼも拳を構えてホウリとにらみ合う。両者は睨みあったまま徐々に距離を縮めて、お互いを攻撃範囲内に入れる。



「………………」

「………………」



 攻撃可能な位置まで近付いた両社は動かず相手の隙を探る。

 数秒とも数分とも感じれるような時が流れ、最初に動いたのはホウリじゃった。

 ホウリがメリゼの顔面に拳を振るい、それを見たメリゼも同様にホウリに拳を振るう。

 お互いに拳を顔面で受けて、そのまま殴り合いを続ける。



「はあああ!」

「うりゃああ!」



 あんな形相のメリゼは初めて見たわい。余程、思う所があるんじゃな。

 お互いが何の駆け引きもせずに殴りあう事数分、ホウリの拳を受けたメリゼが膝をついた。

 それを見たホウリはチャンスとばかりに飛び上がる。そして、闘技大会で見せた様に靴底から炎を出し、数mの高さまで飛び上がる。そして、後方に爆弾を投げると爆発させた勢いでメリゼに蹴りの姿勢を取りながら迫る。



「セイヤー!」



 この勢いの蹴りを食らえばひとたまりもないじゃろう。しかし、迫りくるホウリを見たメリゼはニヤリと笑った。そして、立ち上がると()()()()()()()()



「な!?まだそんなMPが残ってたんですか!?」

「ホウリはメリゼの事を調べていたようじゃが、メリゼもホウリの事を調べていたようじゃな。わざと爆破キックを誘い出しおったわい」



 このまま行くとホウリは地面に激突してしまう。そうなればいくらホウリでも気絶は免れんじゃろう。

 無情にもホウリは霧化したメリゼを通り抜け地面へと迫る。

 地面に激突すると思った瞬間、ホウリが()()()()()()()()()()()()()()()()()()



「一体何が起こったんだ!?」

「ホウリの腕をよく見てみい」

「腕?」



 ホウリの腕を注視すると天井に向かって透明な糸が伸びているのが見える。天井に糸を発射し振り子の要領で再度飛び上がったんじゃろう。

 先ほどよりも高く飛んだホウリは霧化できなくなったメリゼに向かって糸を発射する。



「くっ!」



 ホウリは再び後方で爆発を起こし、糸で身動きできなくなったメリゼに蹴りの姿勢のまま接近する。



「セイヤー!」

「ぐあっ!」



 メリゼも今度は避けきれず、胸にまともに蹴りを食らって吹っ飛ぶ。そして、壁に激突すると、力なく地面に倒れ込んだ。



「勝者、ホウリ!」

「よっしゃあああああ!」



 ホウリは拳を高く上げて勝鬨をあげたのだった。

という訳で、茶番で宣言していた回でした。箱への封じ込めは簡単そうに見えるかもしれませんが、箱の用意、目が見えない中で相手の攻撃を避ける必要がある、箱を全部壊されたら勝ち目なし、と言ったように難易度が高かったりします。


次回はメリゼとフランの話です。真面目回です。


Over Quartzerを母に見せました。ノリダーと平成キックで爆笑してました。

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