30話 三人目の婚約者
こうして俺とリンは人族の大陸に戻った。
俺が人族だということにリンは驚いたが特にどうも思わないらしい。シン君はシン君だかららしい。たくましいな。
それから王都に戻り、ザックにこれまでのことを報告するためにギルドに向かった。
途中リンの角を見られるわけにもいかないので俺の変化魔法で角を隠した。
「何だシン、忘れ物か?」
ギルドに入るとザックが早すぎる俺の帰りに不思議そうに言った。
「いや、偵察を終えてきた。多分二度と魔人族は攻撃を仕掛けてこないだろう」
「は?どういうことだ?ていうかそこの嬢ちゃんは誰だ?」
「ここだと少し不味いから奥で話さないか」
そう言って俺達は奥の部屋に行った。
「それで、どうしたんだ」
「あー、実はなーーーーー」
俺はこれまで起こったことを話した。
話の途中リンの事を話す為、リンの変化魔法を解いたらザックが慌ててたが何とか事情を説明して納得してもらった。
「成る程、そんなことがあったのか」
「だからこっちから攻撃をしない限り魔人族は手を出してこない」
「そうか、それなら安心だ。ところでシン。その娘はどうするんだ?」
ザックがリンを見ながら言った。
「そうだな、リン、これからどうしたい?」
「シン君と一緒にいちゃ駄目?」
リンが上目遣いで聞いてきた。
くっ!!可愛い。これじゃ断れない。まあ断る気なんてないけど。
「いいぞ、一緒に住むか」
「うん!!」
リンが嬉しそうに言った。
「しかしいいのかシン」
俺達の会話を聞いてザックが言った。
「既に婚約者がいるのに他の女と一緒に住んで」
ザックの言葉に俺は思い出した。
そうだった!!俺は既にミリーとサラさんと婚約しているんだった。
何で今まで忘れていたんだ。
「婚約者?」
ザックの言葉にリンは目が虚ろになった。
その瞬間俺の背中に寒気が走った。
「ねー、シン君。婚約者ってどういうこと?」
目が虚ろになりながらリンは俺の方に詰め寄ってきた。
「いや、これは、その」
俺が必死に言い訳を考えていると
「「シン(さん、様)」」
ミリーとサラさんが部屋の中に入ってきた。
やばい!!最悪のタイミングだ!!
「デーモ大陸から帰ってきたと聞きましたが大丈夫でしたか?」
「こんなに早く帰ってきて何かあったんですか?」
ミリーとサラさんが俺を心配しながら言ってきた。
俺の心配より、自分の心配をしてくれ!!てか逃げてくれ!!
俺はミリー達の後ろで呆然と立っているリンに恐怖しながら思った。
「ねー、シン君。その娘達、誰?」
声のトーンが低くなりながらリンは言った。
あまりの怖さに俺は少し震えていた。
「貴方こそ誰ですか」
リンの声を聞いてミリーが少し強気に言った。
やめて!!それ以上刺激しないで!!
「私はシン君の幼・馴・染・みのリンです。シン君を愛する人です」
リンは幼馴染みの所を強く強調していった。
「私達だってシンさんの婚・約・者です」
今度はサラさんが婚約者の所を強く強調しながら言った。
「へ~、そうなんだ~」
リンが不適な笑みを浮かべながら言った。
「ねー、シン君」
「は、はい」
急にリンに話し掛けられ俺は思わずビクッとしてしまった。
「この人達が婚約者っていうのは本当?」
「そ、そうです」
「そうなんだ~」
そう言ってリンから黒い煙が出てきた。
「....殺す」
リンが前に出ようとしたその時
「待って下さい!!」
ミリーがストップをかけた。
「私達は共にシン様を愛する人です。少し話し合いましょう」
「話し合い?」
「そうです。ここでは何なので部屋を変えましょう」
「....まあ、いいや」
そう言うとリンから黒い煙が消え、ミリー達は部屋を出ていった。
助かったのだろうか。
しばらくしてミリー達が部屋から戻ってきた。
「ねえ、シン君」
部屋から戻ってきて早々リンが話し掛けてきた。よくみると元に戻っている。
「少し話があるんだけど...いいかな?」
リンは少し恥ずかしそうに言った。
「あー、いいよ」
そう言って俺とリンは部屋をでた。
違う部屋に入り俺の前にいたリンが俺の方に向き直り俺の顔を見ながら
「シン君、私シン君が好き。ずっと一緒にいたいと思ってる。だから私と結婚してください」
リンは顔を少し赤くしながら言った。
リンが勇気をだして言ったんだ。俺もそれに応えないとな、そう思い俺は
「リン」
少しリンの方に歩み寄り
「俺だってリンの事が好きだ。ずっと昔からな」
そう言って俺はリンを抱き締めた。
「....シン君」
リンも俺を強く抱き締めてきた。
「でもいいのか?俺にはもう婚約者がいるんだぞ」
「いいの、さっきミリー達と話してきたの。一緒に幸せになろうって」
どうやらミリー達が説得してくれたらしい。どうやって説得したんだろうか。
しばらく俺達は抱き締め合い、部屋に戻った。二人とも快く迎えてくれた。
その後にリンが魔人族だと教えた後は事情を説明するのに少し大変だったけど。
その時に俺が異世界人だとばれたけど二人からしたらあまり驚きはしなかった。
むしろそっちの方がその強さに納得がいくと言われた。
ほんと、逞しくなったな。
ブグマ評価よろしくお願いいたします。




