17話 武闘大会
街へ戻り、俺はある話しを耳にした。
近々武闘大会が開かれるらしい。出場者が多く街で一番盛り上がる祭りのようだ。
俺はその武闘大会にでようか悩んでいた。
正直これの優勝賞金がとても魅力的なんだが、それでも少し迷っている。
どうしようか悩んでいる内に俺はギルドに着いた。
「あれ?シンさんどうかしたんですか?」
ギルドに入ってくる俺を見て、サラさんが聞いてきた。
「いえ、もう終わったので報告しに来ました」
「え!?もう終わったんですか!?」
サラさんが驚くのも無理はない何故なら俺がクエストに出掛けてまだ1時間も経ってないんだから。
「はい、これが討伐部位です」
俺は無限収納ボックスからオーガの討伐部位をだした。
「た、確かにオーガの討伐部位です。まさかこんなに早くクエストを終わらせるなんて.....。あれ?シンさん、あの洞窟にオーガキングは居なかったんですか?」
オーガキングの討伐部位が無いことがわかりサラさんが俺に聞いてきた。
「え、あー、そんな奴いませんでしたよ」
「そうだったんですか。珍しい事もあるんですね」
サラさんはすんなり俺の言葉を信用した。いやチョロすぎない?
「そういえばシンさん、武闘大会のこと聞きましたか?」
サラさん唐突に言ってきた。
「はい、近々あるらしいんですね」
「そうなんですよ。毎年多くの出場者がきてとても賑やかなお祭りなんですよ。シンさんも出るんですか?」
「いや、まだ決めていないんだすよ」
「そんなんですか。シンさんなら軽く優勝出来ると思いますので、検討してみてください」
サラさんは確信しているかのように言った。まぁ確かに楽勝だろうな。
「はい、それじゃまた」
俺はそう言ってサラさんと別れた。
家の前に着くとそこにはミリーがいた。
「やあ、ミリー」
「あ!!シン様!!」
俺がミリーに声を掛けるとミリーは嬉しそうにしながらこちらに近寄ってきた。
「ミリー、今日はどうしたんだ?」
「実は、少しご相談がありまして」
そう言ってミリーは少し顔を曇らせた。
「取り敢えず家に入ろうか」
俺はミリーを家に招いた。
「それで、どうかしたのか?」
「シン様は近々開かれる武闘大会はご存知ですか?」
「あー、知ってる」
「実は今回の大会の優勝賞品で、賞金のほかに別の賞品があるんです」
「別の賞品?」
俺がそう言うと、ミリーは段々顔を暗くしながら
「もうひとつの賞品はわたくしの婚約者になることです」
俺はそう聞いて、驚きを隠せなかった。
「婚約者?何で武闘大会で婚約者を決めるんだ?」
「それはわたくしにも分かりません。今朝急にお父様から聞いたので」
そう言うと、ミリーは段々不安そうな顔をした。
「このままじゃわたくし、何処の誰かも知らない殿方と婚約しなければなりません。シン様わたくしどうすればいいでしょうか....」
ミリーは不安な顔から段々泣きそうな顔になってきた。
このままじゃミリーが好きでもない男と婚約することになってしまう。どうすればいいだろうか。嫌な男が来ないことを祈る訳にもいかないし、かといって確実に優勝出来るような人なんて..........いるじゃないか!!
「そうだよミリー!!」
俺は唐突に叫んだ。そのせいでミリーは驚いたような顔をしている。
「俺が優勝すればいいんだよ。そしてその婚約を断れば全部解決じゃないか」
俺の提案にミリーは少し申し訳なさそうにしながら
「シン様がですか?しかし、シン様のご迷惑をかけるわけには」
「気にするな。困った時はお互い様だ」
俺はそういってミリーの目を見て言った。
「安心しろ、俺が絶対優勝してやるから」
「シン様......よろしくお願いいたします」
ミリーは次第に明るい顔になりいった。
「あ、でも、シン様が優勝するのであれば、婚約のことは別に断ってくれなくてもいいんですよ。そうすればわたくしとシン様は正式に夫婦として認められてーーーーーーーーー」
明るくなった途端にミリーはまた妄想の世界に入っていった。
いつものミリーだな、と俺は染々思った。