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救われぬ彼女達に救いの手を  作者: アニキ
fallen angel
6/8

6話

 気がつくと俺はまた知らない場所にいた。2度目となると案外落ち着いていられるものだ。


 俺がいる場所は最初、暗くてよくわからなかったが目が慣れて来るとそこはどこかの倉庫のようで、乾パンや水など防災用の物が大量に置いてあった。足元に気を付けながらドアまで行きドアを開けて外に出ると、どこかのビルのようだった。

 廊下も電気が点いておらず、左右を見渡しても真っ暗だった。俺は1度倉庫に戻り懐中電灯が無いか探してみた。探し始めて数分するとへッドライトと懐中電灯を見つけた。念のため両方とも持って行く事にした。

 2つのライトの明かりを頼りに廊下を歩く。幾つかドアを見つけたが全て鍵が掛かっていた。進んでいくと階段を見つけた。上に上がる階段しか無く、踊り場の所に地下1階と書かれていた。


 俺は階段を登り1階に出ると光が見えたのでその場所まで行ってみる事にした。

 電気は点いていないが、どうやら玄関ホールのようで外の光が中に入って来ていたようだ。外を見ると荒れ果てた建物が目に入って来た。折れた電柱が車を押し潰し、建物の一部は崩れて割れてない窓ガラスは1枚も無かった。

 外に出るとどこも同じで時々瓦礫が落ちて来る場所もあった。鉛色の空を見るとこの世界は終わってしまったんじゃないかと想像してしまう。また何処かで瓦礫が落ちたのかドンっと言う音と何かが壊れる音が聞こえた。


 外にいるのは危険なのでビルの中に戻る事にした。ビルの中にもしかしたら人がまだ残っているかもしれないので、1階から順に調べる事にした。

 1階から3階は特に何も無く、ただ荒らされていたと言う感じだった。4階には誰かの日記らしき物が落ちていたので読んでみた。支離滅裂でわかったのは最後の文章の「もうダメだ、おしまいだ。俺もあっちの世界に行くしかない。だが、あっちの世界には彼女が」という所だけだった。あっちの世界とはもしかして俺のいる世界の事なのか? ここを調べれば俺に起こっている不思議な現象のことがわかるかもしれない。

 4階を調べ終えて5階に着くと微かに音が聞こえて来るので音の鳴るほうに行ってみると、そこにはパソコンらしきものがあった。こんな形のパソコンを俺は見たことが無い。うちの学校のパソコンが最新式のに変わって興味が出たので最近のパソコンについて調べたことがあるが、そのどれとも形が違っていた。画面を見るとデスクトップにいろんなフォルダらしきものがあり、そのどれもが文字化けしていた。


「これで何かわかればいいんだけどな……」


 このパソコンにはキーボードもマウスも無く、モニターだけしか無かった。もし画面がタッチパネル式なら最低限フォルダの中身は見られると思い、画面に指をつけると急に意識が飛んだ。


 ——————————


 意識はすぐに戻ったが俺はまたもや知らない場所にいた。ここを一言で表すとしたら、それは海と答えるのが適切だと思う。海の中で漂っているような浮遊感があり、魚のような物が流れていく。そして、下を見ると底が見えず、どこまでも続いている。海と違う所は上を見ても天井知らずだということだ。


 俺はバタ足をしながらこの海のような場所を泳いでいく。泳いでいくにつれて、魚のような物が何なのかわかるようになった。これは情報だ。実際には0と1の羅列なのだが、俺はこれが何なのか読み取れた。10日前の株価の変動や料理のレシピ、どこかの国の国防費の内訳など様々だ。いろんな文字が読めるようになったのと関係があるのかもしれない。便利な能力を手に入れたものだ。

 流れていく情報を見ていると、どうも同じ所に向かって行っているようだった。情報が向かっているその先に何があるかわからないが、情報が集まっているなら俺が知りたい情報もあるかもしれない。俺は集まっていく情報を追うことにした。


 情報を追ってかなりの時間が経った頃、変化があった。深く潜って行くように真っ直ぐな経路を辿る情報ばかりだったが、左右からも情報が向かってくるのだ。真っ直ぐ進む情報と左右から来る情報が向かう先を見ると何かあるのが見えた。まだ遠く、情報もあり見えづらいので更に近づくとそれが何かわかった。女の子だった。

 彼女は眠っているようだが、情報はどんどん彼女の中に入り込んでいた。その度に彼女の体が沈みかけるが、腕に何か引っ掛かっているようでその場に留まっていた。触れられる距離まで来ると彼女の姿がよく見えるようになった。

 たぶん、日本人であろうその顔は目を瞑っていてもわかるほど綺麗で腰までありそうなほどのロングヘアーは濡れたようにしっとりとした黒髪をしていた。何より気になったのは背中にある真っ白な翼だ。情報が彼女の体に入るたびに翼がどんどん大きくなっていき、彼女の体に不釣り合いな程の大きさの翼は彼女を沈めるための重りにしか見えなかった。


 俺は彼女を起こそうと体に触れると、アンの時と同じように目の前から強い光が見え、同時に意識が遠のいていくのを感じた。

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