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救われぬ彼女達に救いの手を  作者: アニキ
マッチ売りの少女
2/8

2話

「……雪?」


 気がついたら俺は知らない場所にいた。レンガで出来た家が建ち並び、薄暗い空からは雪が降っている。人通りは少なく、寒そうにコートの襟を立てて足早に過ぎ去っていく人々はどう見ても西洋系の顔立ちをしていて日本人は1人もいない。


「俺、家で寝てたはずなんだけどなぁ……」


 そう、寝てたはずの俺はなぜか学校の制服の学ランを着て知らない道にポツンと立っている。意味がわからないがとりあえず立っていてもしょうがないので適当に歩いてみる事にした。

 外国っぽい所だが全体的に古い感じがして昔テレビで見た中世ヨーロッパの街並みみたいだ。そう思うと歩いている人達の服装もそれっぽい。俺を珍しそうに見てくるが寒さに勝てないのかすぐに前を向いて歩いていく。


 しばらく歩いていると大通りに着いた。さっきの場所と違いこの辺りは明るい光が家々から出ている。

 家の中見ると温かそうに燃える暖炉の周りで子供達が笑いながら遊んでいる。父親であろう男が優しげに子供達を見つめつつテーブルに座っている。テーブルの上には食事が並べられ、そのどれもがご馳走と言っていいほど豪華だ。どの家を覗いても程度の差はあるがご馳走が並んでいてまるでクリスマスみたいだ。


 そうやって歩いていると家と家の間の道で小さな光が見えた。本当に小さくてぼやけた光だが確かに光っている。気になってその道に入ってみた。

 風が吹き抜けるが大通りより多少マシな寒さの道を行くとそこには女の子が座っていた。可愛いらしい顔立ちのその子は自分と同じ位の歳に見え、暗い茶色をした髪は肩まで伸ばしている。この寒空の下なのに薄そうな服はボロボロで所々破れていたりほつれていたりする。そしてその手には火の着いたマッチを持っていた。


「これはリアルマッチ売りの少女すぎるだろ……」


 アホな事を言っている自覚はある。そもそも何をもってリアルなのかが不明過ぎる。だが、そうとしか言いようがなかった。なぜなら……


「ふふふ、お母さんその腐ったネズミの肉はお父さん用だよ……私達のはこの大きな七面鳥。お母さんの分は私が切ってあげる……お父さん、テーブルに座らないで腐ったネズミの肉なんてテーブルにあったら食欲が湧かなくなるから。て、言うかいるだけで不快だから家から出てってむしろ死んでそれでみんな幸せだから、ね?……ふふ、ふふふ、ふふふふふ……」


 確かに俺の見たマッチ売りの少女は父親から酷い扱いを受けている設定だった。父親を恨み嫌っていてもおかしくは無い。だが、これは酷い。

 俺はこのマッチ売りの少女(仮)に対し引きに引いていると強い風が吹いてきた。少女の持っているマッチの火は呆気なく消えてしまった。


「ふふ、最後のマッチ消えちゃった……」


 そう言うと同時に彼女は倒れていった。俺は咄嗟にその子をかばうようにして抱き止める。すると、目の前から強い光が見え、同時に意識が遠のいていくのを感じた。



 ——————————


 気がつくとまた知らない場所だった。最初と違うのは俺一人ではなくあの少女も一緒にいるという事だ。彼女は未だに俺の腕の中で眠っている。童話だと死んでいるパターンだがちゃんと息をしている。


 生きている事にホッとしつつ周りを見渡す。そこそこに広い部屋だが何も無い。いや、正しくは中央に丸いガラス玉みたいなのを乗せた台座がある。

彼女をそっと地面に置くと台座に近づいてみる。丸いガラス玉はバスケットボール位の大きさがあり、その中に更にピンポン球位の大きさの青い玉が入っていた。どう言う力が働いているのか青い玉は中で宙に浮いている。


 部屋にはこれしか無さそうなのでガラス玉を調べる為に意を決して触ってみると、仄かに光を発したが特に何もなかった。不思議に思いながら周りを見てみるとさっきまで何もなかった筈の壁にドアが出来ていた。


ドアに近づくと、そこには流星と書かれたプレートが付いていた。それは俺の部屋のドアとそっくりだった。ドアノブを捻ってみると鍵は掛かっていないようだ。俺はそっとドアを開けるとドアの隙間から見た事のある強い光が見え、また意識が遠のいていくのを感じた。


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