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一人称を普段書かないのと女主人公をやったことがなかったので、勉強のために書いてみました。
ジャンルとかキーワードが本当良く分からないです。
これは何に区分けされるんだろう……?
その町は、どこからどう見てもおかしかった。
うん。ちょっと『変わり者』といわれる私が断言するんだから、かなりというか、すごくおかしいんだと思う。
改札口を切符を使って抜けて、目の前が開けたと思ったら、そこはもう町の心臓部みたいな交差点だ。
心臓っていうのは、四つの部屋に別れていて、そこを血液が勢い良く流れこんだり、流れ出したりしているんだけど、交差点の人の波は多分、それと同じぐらい激しいんじゃないかな。
私はぶかぶかのハンチング帽を深めに被り、師匠から貰ったボロボロの旅行鞄を片手に、そのおかしな光景を見つめていた。
あ、おかしいって言っても、別に人の流れがおかしいってわけじゃないよ?
おかしいのは、道行く人々の頭。
…………。うーん、そう言うと語弊があるなぁ。
正確にいうと、頭が悪いとか、頭がおかしいとかじゃなくて、待ち行く人々の頭の上に乗っているんだよね。
なにって?
……うん、赤ちゃんが良く遊んだりする積み木が、ぐらぐらしながら頭の上に乗っているんだ。
落ちないのかなぁ……。
でも、多分、落ちないんだろうね。
あんなにぐらぐらしてるのに、落ちているところを一度も見てないもん。
多分、落ちない仕様なんだろうね。そういう『歪曲』なんだね。きっと。
「うーん、それにしても、今日はちょっとお日様が仕事し過ぎだよ~。カーディガン要らなかったかも……」
パタパタとカーディガンで胸元を仰いで、中に風を注ぎ込む。
少し涼しいけど、腕を動かしているせいで、すぐに暑くなってくるんだよね。
我慢して、もう行こっと。
少しだけ歩いて、私は出てきた駅舎を振り返る。
そこには、大きな文字で『つみき駅』と書いてある看板が掲げられていた。
「うわぁ……」
うん。そんな駅はないから、完全に『歪曲』の仕業だ。
そして、待ち行く人々は、それにもう違和感を覚えていないように思える。
これは、完全に末期症状だね。はぁ……。
何で、こういう状態になってから、いつも私の所に仕事が入ってくるのだろう?
日頃の行いのせいなのかな? そうなのかな?
それとも、あれかな? シュークリームを一日ひとつだけ食べると決めていたのに、昨日、二つも食べちゃったのがいけなかったのかな?
体重だけじゃなくて、お仕事にまで影響を及ぼしてくるなんて……。
――恐るべし! シュークリーム!
「馬鹿なこと考えてないで急ごう……。えぇっと、予約したホテルは……」
機械音痴の私は、古き好き時代の皮の手帳を開いて、予約したホテルの位置を確かめる。
今の人たちは携帯でピッピッとやって、そういった情報をすぐ調べちゃうんだけど、私はそういうのは苦手だ。
でも、別に私はオバサンとか、お婆ちゃんとか言われる歳でもない。
まだ、すべすべお肌の十七歳だ。
中卒で社会に出て、師匠にワザを仕込まれて、頑張って社会の荒波で溺れてる、か弱い乙女のひとりだ。
ちょっと田舎の出で、機械全般には弱いけど、私だって一生懸命頑張っているのだ。
だから、携帯電話を持っていなくても変なものを見るような目で見るのはやめて欲しい!
そういうのが使えない人だっているんだからね! ……クスン。
…………。うん、話が逸れた。
どこから話したら良いのか分からないけど、私の名前は仲木戸景っていう。
景っていうと男の子みたいに聞こえるかもしれないけど、れっきとした女の子だ。
出るトコあんまり出てないかもしれないけど、れっきとした女の子だ。
うん。きっと二十歳の頃には出るトコ出まくっているはずの女の子だ。
……なんか虚しい。
それで、何で私がこの町にやってきたかというと、お仕事の関係だ。
「ん~と、此処だよね? 駅から割と近くてラッキーだよ。うん、ロビーはエアコン効いてるねぇ~。涼しい~」
涼しさに笑顔満面になりながら、私はチェックインする。
ちょっと割高にはなるのだけれど、良い所を取っておいて良かったと心底思う。
生活環境は地味に大切だもんね、うん。
私が受け取った部屋の鍵は、五〇一号室。
多分、角部屋だ。……角部屋だよね? 窓からの景色が綺麗だと嬉しいなぁ。
私は、そんなちっぽけなことを楽しみにしながらエレベーターに乗る。
そう。こういった小さな気付きみたいなのが、私の職業には大切なのだ。
第一種陸上特殊事変捜査員――。それが、私の職業の正式名称。
でも、皆、そんな長ったらしい名前では呼ばない。
だって、舌噛んじゃいそうじゃない? 実際、なりたての頃の私は噛んでたし……。
だから、私を含めて、関係者は大体こう言うんだ。
終焉者――って。