Blood Valentine ~僕は知らない世界で闇医者として働くことを決意した~
【作者より】
作者は『医療もの』には疎いので、ご了承ください。
――2月14日――。
その日はバレンタインデーではあるが、医師として働く僕にはそのような行事は関係なかったような気がする。
その当時は仕事が忙しく、恋愛に時間が割けなかったのだ。
そうでなくても、現在は医師不足であり、看護師も不足している医療現場。
いつの間に「彼女ができた」と言われると、よくそのような余裕があるなと僕は思ったり――。
もともと僕は精神科医である。
本来は外科医か内科医になりたく、必死に勉強したが、夢は儚く散った。
この話は僕が研修医期間を終えたあとの話である。
†
今から何年くらい前の話だろうか?
僕が研修医を終え、精神科医として新たなスタートを切った時だった。
僕は病院の屋上にあるベンチに腰かけていたある日のことである。
「あれ、君は外科か内科志望だったよな?」
外科の研修の時にお世話になった先輩医師に話しかけられた。
「ハイ。正式には精神科医ですが……」
僕は苦笑しながら答える。
「まぁ、おまえみたいにいろんな科の知識とかがあるからな……。もし、俺のところの手術で人手が足りなかったら、フォローに入ってくれよ。それと、精神科が嫌になったら上とよく相談してから外科にこいよ」
「分かりました」
彼の最後の言葉は念を押したようだ。
確かに、僕は精神科はもちろんのこと、他の科の知識とかはある程度は頭に入っている。
最初はいずれは役に立つだろうと思っていたが、そうでもなかった。
精神科は他の科に比べ、いい意味で神経を使う。
精神障害や知的障害などはもちろんのこと、アルコール依存症、さらにはアルツハイマー型認知症の患者を相手にしているため、凄く気を遣うし、ある意味疲れる。
おまけに夜勤明けや休みでも、人手不足のため、急遽出勤したりするため、最終的にオフがない状態なのだ。
†
そんな状態が続き、あれから3年くらい経った。
僕は外科に異動となり、ようやく憧れていた外科医として活躍することができる。
「ジャスパーくん、今日からよろしくな!」
「ハイ! こちらこそよろしくお願いします!」
今までしまい込んでいた知識や技術が活かせる。
そう思っていたいたやさきだった――。
†
僕が精神科から外科に異動してから10ヶ月経ち、それがバレンタインデーである今日――。
患者は男性で脳腫瘍で自宅で倒れ、緊急搬送された。
腫瘍が大きくなりかけていたので、すぐに手術をする必要があると、僕は判断した。
「今から、緊急手術を行います! 手術室を確保してください!」
「「ハイ!」」
僕は周りの医師や看護師に指示を出した。
「ジャスパー先生、手術室の空きがありました」
「そこで手術を行いましょう」
看護師は担架に横たわっている患者を手術室へ誘導。
僕を含めた何人かの医師は手術の準備に取りかかった。
†
僕が手術室に入ると、その患者はすでに担架から手術台に移動されていた。
「では、手術を始めます」
「「お願いします」」
「メス」
「ハイ」
僕は看護師からメスを受け取り、しっかり握る。
スッとメスが頭部に入っていく。
そして、淡々と進めていた途端、大量出血を起こした。
その時、僕の額から一筋の冷や汗が流れる。
「急いで輸血を!」
僕は手早く指示を出したが、血圧低下のアラームがピーピー鳴り響く。
もう……手遅れだ。
僕の頭の中には「医療ミス」という4文字がよぎっている。
その男性は僕の「医療ミス」によって亡くなった……。
†
あれから、すべてを失った僕は自傷行為に走ったが、いろいろな意味でズタズタになったが、働かなければ生活は破綻する。
それならば、知らない土地で働いた方がいいと考えた。
その世界で僕は闇医者として働くことを決意した。
本編である『いじめられて自殺した私が闇医者によって悪役令嬢に転生され、過去の自分を客観的に見る』も合わせて読んでみてくださいね。
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