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第五話 マイ・パーフェクト・ボディー

 ぐへへへへ……

 おっと、イケメンな顔に見合わぬ下品な声をあげてしまった。

 詫びよう。



 おれは今、一人暮らしの女の子の家にいる。

 生前一度も上がる事のなかった、ヒミツの花園。

 玄関を開けた時点で、ふんわりといい匂いが漂う。

 ウチなんて玄関開けたら酒とゴミの臭いしかしないのに!


「ごめんなさい、ちょっと散らかってますけど!」


 先に靴を脱いで家に入った女の子が、ささっと廊下に落ちている服を拾って言った。

 確かにちょっと散らかってる。


「お、おじゃましまーす」

「おじゃましますぅ☆」


 あ、神様もついて来た。

 にょろにょろ這って玄関に入る。


 はあ……

 元は神様もめちゃくちゃ可愛い女の子だったていうのに、今や完全にキモい毒虫だ。

 なんだか可哀想なような気もするが、まあ神様だし自分で何とか出来るだろ。

 ノータッチでいこう。


 おれは履物を脱ぐと女の子の後について行く。


 この子の家は一軒家で、見た感じ築30年くらいといったとことだろうか。

 古いは古いがそこまで古くないって感じだな。

 大きさはそんなに広くはない。

 多分借り家だと思う。

 田舎なのにこの大きさって事は、多分家賃はそこまで高くないだろう。


 二メートルくらいの廊下を抜けると、直ぐにリビングに出た。

 女の子独特のにおいが更に濃くなった気がする。

 ……すぅーすぅー、はぁー

 こりゃまるで麻薬だな。

 逮捕されちゃうぜ。


「あ、えっと、お風呂へどうぞ! 私はお茶を入れてますんで、ごゆっくり」

「あ、はい。」


 なんか至れり尽くせりだな。

 そういえば名前も聞いてないや。


「あの、君の名前は?」

「申し遅れました。わたし、夏川なつかわ ゆうと申します」


 女の子はキッチンに向かう足を止めて、丁寧に振り向いて答えた。

 夏川悠か。

 涼しげな名前だなあ。


「おれは小出平次です」


 相手の名前を聞いた手前、名乗らないわけにはいかず、こっちも自己紹介した。

 せっかくパラレルワールドに来たんだから、違う名前を名乗ってもよかったが、とっさには思いつかなかった。

 まあ良いか。


「平次さん……ポッ」


 赤らむ悠ちゃんのほっぺ。

 こりゃ完全に惚れちまってるな。ドヤッ


「あ、お風呂にどうぞ」

「そうでしたね」


 奨められるままに風呂場に移動する。

 脱衣所には大きな洗濯籠が置いてあって、そこにはさっき着てたみたいな作業着が乱雑に放り込まれていた。

 地味な色の作業着だ。

 もしかして、この世界では女の子は地味な色を好んで着るのか?

 それともただの作業着だから適当に選んでるとかかも知れない。

 まあ、そんなのはどうでも良いか。

 好みなんて十人十色だ。


 おっと、そんな地味な服の中に可愛らしい薄いピンク色の物体を確認。

 いけないとは思うが、好奇心はキャントストップだ。

 手がその物体に伸びる。

 親指と中指でつまむと、ゆっくりとそれを引き上げる。


 まさか……悠ちゃんの……


 はらり



 うおおおお、ブラジャーではないですかやだー!


 罪悪感と興奮がおれを襲う。

 てか、ズボラな子だなあ。

 こういうのはちゃんとしておかないとね。

 とは言いつつも、そんなズボラさ感謝してるおれ。


 さて、どうしたものか。

 自分で引っぱり出したのに、やり場に困る。

 やっぱり籠の中に戻した方がいいだろう。


 しかし!

 童貞男子には抗えない欲求があるのだ。



 ええい!

 ここまできたら嗅いでやる!


 くんかくんか!

 はあああああ!


 こ、これは!

 イケナイにおいだ!

 けしからん!



「……ちら」


 うおっ!

 悠ちゃん覗いてるし!

 目あった!


 ……マズい。

 流石に変態過ぎた。

 こんな場面を見られるとは、なんて気まずい。

 殴り殺されても文句を言えないシチュエーションじゃないか。


「もうっ、平次さんったら!」


 怒られると思ったら、なんか顔を真っ赤にして逃げてった。

 その足取りはどことなく嬉しそうだった。

 マジかよ……おれ、なんでもありなのか?

 最低な変態行動もOKになってしまう補正がついてるのか?

 つーか悠ちゃんも覗いてたよな。

 それともこの世界って元々こんな感じなの?


「それは平次のチートだよ☆」

「うおおお! ビックリした」


 いつの間に這い上がって来たのか、神様は悠ちゃんのブラのカップの中にいた。

 風呂までついて来たのか。

 行動派な虫だな。

 でも、やっぱり毒虫はいつ見ても気持ち悪い。


「神様、その恰好なんとかならないんですか? 正直気持ち悪くてかないません」

「そお? 色とか結構キュートめで攻めてみたんだけど☆」

「いえ、毒々しいですよ」


 そんな神様との会話中、少し離れた場所から悠ちゃんの声が。


「平次さーん! 服脱ぎましたか? 洗濯機回したいんで早く入ってくださーい!」


 そっか。

 服を洗うんだったね。

 それで覗いてたのか。

 もしかしておれの裸が見たいのか? なんて思っていた自分が恥ずかしい。

 そんなわけないよな。

 流石にそんな変態はおれだけか……


「はーい、今すぐ!」


 急いで真っ裸になり、脱衣所から風呂場に移動。


 風呂場の中は真っ白な湯煙に満たされていた。


 ふわあ、いい感じ。

 真っ白で視界は冴えないが、小さすぎず大きすぎずな風呂釜が見える。

 ここにあの子は毎日入ってるんだな、裸で。

 ぐへへへへ……


 おれは体も流さずにソッコー風呂の中に飛んで入る。

 どうせ彼女はおれの残り湯になんて入らないだろうし、まあいいだろう。

 ざばんとお湯がこぼれ、排水溝に飲まれてゆく。

 ああ、いいなコレ。


 良い湯だな♪ アハハ♪


 湯を楽しんだ後は、どんなサービスタイムが待っているのだろうか。

 ドキドキワクワクだ!


 体は念入りに洗っておこう。


 おれは湯船から立ち上がるとシャワーのつまみを捻る。

 シャーっと気持ちの良い音とともに、気持ちのいい温度のお湯がヘッドから吹き出す。

 ボディーソープは……っと、これか。

 見た事の無いメーカーのものだ。

 やっぱり女子だからボディーソープも凝っているのか、それとも異世界ブランドなのかわからないが、まあいい。

 とりあえず女の子の匂いだ。


 スポンジが壁にかけてあるが、おれは手で泡を立てる。

 そしてそいつをマイパーフェクトボディーにぬりぬり。


 ぬりぬり……


 …………





 ………………



 ぬりぬりしてて気づいてしまった。




 まさか、


 こんなにパーフェクトに生まれ変わったのに……


 どうしてこいつが?


 ああ、最悪だ……


 この世界に来てすぐに確認すべきだった。


 でなければ、さっきまでこんなに浮かれてないだろう。





 おれは有頂天モードから一転、絶望モードに転落した。


 だって、だって……






「で、でべそ治ってねぇぇぇぇぁぁぁあああ!!」


 そこには生前長年にわたって悩み続けさせられた立派なデベソがあったのだ。


 おれの叫びは風呂場にこだました。

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