第二話 レッツ転生
「ハロー♪神様だよ☆」
ものすごい可愛らしくスタイル抜群の女の子が、真っ白な服を着てニコッと笑った。
その顔は幼さを残しながらも、大人な雰囲気を持ち、可愛さとか美しさを超越した次元にいるような外見だ。
服は神聖な雰囲気を醸し出しつつも、胸元は広がっていて露出もあり、扇情的でもあった。
……
おれは激しく動揺した。
なぜなら、これはまさにラノベの王道の展開だからな。
元々ラノベはたまに読む程度だったが、おれの読む作品はどれも主人公最強ハーレムものだった。
いわゆるチーレムってやつだ。
神様が出て来たってことは、これはまさかありきたりな展開か?
まあ、この世に未練なんてないし。
ゆるい感じでチート貰って異世界でバカンスも悪くない。
冒険者ギルドに行って、いきなり最強クラスの力を持ってて、ケモノ耳の美少女達に囲まれる。
まさにチーレム!
ああ、おれのハードモードの人生は、この為にあったのか!
楽あれば苦あり、苦あれば楽あり。
ありがとう、神様。
「なんかニヤけたり泣いたり凄い表情の変わりようだけど、変なこと考えてる?」
「いえ、あなたに感謝しているだけです」
「そっか。まあ神様も人に感謝されるのは気持ちいいからね☆
どういたしまして♪」
そう言うと神様は屈託の無い笑顔で答えた。
かわえぇぇぇぇぇぇ!!
「ところで、平次君。今回の人生はどうだった? 一応アンケート配ってるんだけど」
「はあ、アンケートですか?」
神様は頷きながら一枚のA4紙をヒラリと懐から出した。
懐から……いや、胸元から……
ちらりと豊満な谷間が見える。
なんということだろう、神聖なるポッチまでコンニチハしてしまいそうじゃないか!
うおっと!
コンニチハしてしまった!
神様は全く意に関していない。
ポッチも堂々とこちらをガン見してる。
「ブー!」
「え!? 大丈夫?」
鼻血吹いた。
紙は血まみれになってしまった。
いや、本当にこんな状況になると鼻血吹き出すんだな。
「あ、そっか☆ 今回の人生は女っ気が無かったもんねー」
神様は自分の胸元をちらりと見ると、佇まいを正す。
ああ……ポッチが……さようなら
「そ、そうなんですよ。イケてると思っていた時期もあったんですが、気づきましたよ。自分が不細工だってね」
おれは自分の鼻をつまみ上げ、血を拭う。
「そうそう☆ 今回の人生はそういう人生だったのー」
そう言うと神様は胸を張っておれを見る。
浮かぶポッチに目がいくのを必死に堪え、神様の目を見る。
「だから、次の人生はイージ設定で生きれるよ☆」
「待ってましたっ! チートですね!?」
鼻血が出ているにも関わらず、両手で馬鹿みたいに拍手する。
体に血がかかる。
「え? ああ、チート欲しいの? まあそしたらあげてもいっかー」
予想外の単語が出て来たかのような神様の反応。
「あれ? 異世界転生ってチート初期装備じゃないんすか?」
おれの質問に、神様は目を大きく開けてパチパチしだした。
「ちょっと勘違いしてるみたいだけど、君が考えてるような魔法と剣のファンタジー世界には行けないよ?
もっともそういう世界はあるけど、君の魂はまだそこにたどり着けないの。 まあそっちに転生させる事も出来るけど、しても雑魚モンスターとかそんな感じね……そしたらまたハードモードの人生よ?」
え? そうなの?
なんてことだ、おれのカルマではファンタジーの世界に行けないらしい。がっかり。
くそっ! チーレムはどうなるんだ!
まあ欲をかきすぎてはいけない。
おれの人生はダメダメだったから、少しでも良くなるなら良しとしよう。
「じゃあどこなら行けるんですか?」
「イージーモードで行くならパラレルワールドがオススメよ☆」
「パラレルワールドか……」
説明しよう!
パラレルワールドとは、ある世界(時空)から分岐し、それに並行して存在する別の世界(時空)を指す。並行世界、並行宇宙、並行時空ともいう。
「異世界(異界)」、「魔界」、「四次元世界」などとは違い、パラレルワールドは我々の宇宙と同一の次元を持つ。
ウィキペディアより
「まあ価値観とかそう言うのは若干違うんだけど、大体が元の世界と似たようなモノね☆」
「じゃ、おれのこの顔とかデベソとかは?」
価値観が違うと言っても、こういう部分で同じような辛さは味わいたくない。
「世界に補正をかけとくから安心していいよ♪ あなた自身にも補正かけとくね」
神様は本当に人を安心させるような笑顔を作った。
よかった!
これなら本当にイージーモードでいけそうだ。
ありがとう神様。
「ふふふ、あなた可愛いのね☆ おへそ気にするなんて」
心無しか神様の雰囲気が変わった。
なんだかとてもいやらしい感じになった。
さっきまでぱちくりしてた目も若干薄目になってる。
こっちにぬらりと歩み寄る。
「大丈夫よ、あなたは次の人生では神の加護を得るわ……わたし、あなたの事気にいっちゃったン☆」
セクシーな感じで言葉を並べると、あろうことかおれの前に屈んだ。
うおおおおおおお。
これは、これはマズい!
明らかに18禁だ!
おれのアレをナニするのかと思ったが、神様はなんとおれのヘソをペロリと舐めた。
ひゃん!
まあこれでも十分エロいんだが……
「おっけー♪ これで神の加護はついたよ☆」
ああ、これ一種の儀式だったわけか。
納得!
神様が変なフェチじゃなくてよかった。
神様は立ち上がるとポンと手を叩く。
「よーし! それじゃあ出来るだけあなたの希望に応えられるようにするから、次の人生も頑張ってねー☆」
「え? ちょっとまっ……」
まだ十分に話してないし、おれの希望も伝えてない。
口を開いた時にはおれの体は光に包まれていた。
体が軽い。
「じゃ次また死んだ時に会おうねー☆」
死んだときとは対照的に、目の前は真っ白に染まり、意識がふわりと消えて行った。
こうしておれはパラレルワールドに転生する事になった。
平次はどうなるでしょう