8
疲れたなー。目をしょぼしょぼさせて教室に移動する。爺先生は魔法運用・薬製作・基礎魔法・付加魔法と4種類の授業を受け持っている。疲れないのかな?とは思うがそもそも不人気な授業だったからよかったものの今は私らが突撃しているから大変じゃないのかな?若いパワーを貰って逆に元気になるとかなんて余計なことを考えながら教室に入ると
「美弥さん。あの美形はなんですの!!」
「いい男が沢山いたけど何あの集団!!」などと突撃してきた女子たち。知らない人に名前を呼ばれたりし驚いて固まっていると後ろからグッと持ち上げられ後ろに回された。何が!!とさらに驚いていると兄の相談役である海斗兄が犯人だった。
「もう少し太れ、軽すぎるぞ」余計なコメントは要らないから!!腰に抗議のパンチを繰り出しても護衛系の仕事をしている兄たちには気にならないようで「もうチョイ上。そこそこ。そこがこってんだ」とマッサージマシーン扱い。
「何をじゃれあってんの?」少ししてから突っ込みを女子軍団の後ろから入れてくれる舞子。女子軍団が怖いので海斗兄の後ろから少し出して
「良く分からん。何か用があったんでしょ?」海斗兄に聞いてみる
「いや。喜一が困っているだろうから助けてこいって言われてな。案の定、困ってたから助けただけだ。で、ここで授業だろ?入らなくていいのか?」そういわれて海斗兄を盾にして女子軍団を抜ける。兄が歩きやすいように人が割れていく後ろについている私は歩きやすいんだけど、これはあれか!!芸能人を囲っているファンですか!?驚きつつも離れると大変な事になるということだけは他の兄妹(異母兄弟)たちを見てわかっているので離れないけどね。安全圏である幼馴染集団に完全に近づいてから素早く移動・合流する私を見て呆れつつ殿になってくれる海斗兄。
「で、あの集団はなんね。ちょっと怖いんだけど」未だにビビりつつ海斗兄の服の裾を握り締めながら舞子に聞いてみる。原因はわかっているけど聞いてみる。原因はわかっているんだけどね。集団は先生の1喝でしぶしぶ出て行った。
「わかっているかと思うけど、喜一兄たちが来たからね。婚期間際の女性陣が兄たちの情報を得るために突撃してきたんだよ。あんたが1番近くで接していたからね」うん。予想通りですね
「兄たちはそんなにイケメンではないと思うよ。イケメンというなら鷹継兄とか嗣広兄とかの方がイケメンだよね?」海斗兄に聞いてみると頷きながら
「あそこは別格だと思うぞ。叔父たちの下で働いている奴らはみんな有望株だと思うが」きょとんとしている私を見て頭を撫でつつ
「お前はまだ知らなくてもいい。そのままでも、ちゃんと後ろ盾を用意してやるから心配するな」と言われましてもお父さんの仕事ぐらいは把握してますが、第2夫人の子供なんてそんなに有益ではないと思うんだが・・・
「普通は第2夫人の子供なんてそんなに有益ではないが、お前たち兄妹はそうじゃないだろ。個々の力を最大限に使用して叔父さんたちに有利な物を・情報を提供しているだろ」そんなこと言われても私何もしてませんよ?
そういいながらゴリゴリと普通に薬草である針葉を潰し、次に王葉を潰す。それを混ぜて・煮て・魔力を込めるとポーションをができるが、他の人と違って私のはキラキラが少ない。あれ?っと思って同じ手順で魔力を多めに混ぜてみる。と言っても魔力操作がうまくいかない私は納得いく魔力を込められるのに5個ほど作る。普通・少し大目でもそんなにキラキラ言わない。あれ?っと思い手順が悪いのか?と見直してみるが特に間違ったことはなかった。
そうだ!!と本に書いてあったように手順通りに潰しつつ少し魔力を込める。素早く・きれいに潰せた薬草を煮て・魔力を込めると少しキラキラしている。ふむ、工夫をするとキラキラが増えるんだ。面白い!!潰した後に煮る水を採取した場所から持ってきた水でやってみたらどうなるんだろ?と実験してみる
王葉の方の水と針葉の方の水を対比で9対1から始める。対比を針葉の方を徐々に多くしていく事にする。作ったポーションは10個。どれがどんな効果があるのかな?と先生に聞いてみようと顔を上げるとすぐ近くに居たのでびっくりする。
「えーっと。対比ポーションを作ってみたんですけど。効果のほどを確認してほしくて」作ったポーションを目の前に押し出すとすぐに何やら器具を出して効果を確かめてくれる。他の人たちは他のことをしているところを見ると夢中になりすぎたようです。反省していると頭を慰める様に撫でてくれる海斗兄
「やりすぎたようです。ちょっと楽しかったの」しょんぼり言っている私を見て仕方ないな。という顔をしながらとこかにメールしている。
「で、どうでしたか?」なんでもないように聞いている海斗兄の声に効果を確かめていた先生が顔を上げて答えてくれる。
「この対比に気づくとは良い目をしている。ベストは5対5だが、これを見る限り少しの傷をという声には3:7。なんちゃって中レベルなら9:1だな。同じような効果が得られるが少し安いならこっちの方が売れるだろうな。あと、潰す時に魔力を込めると効果にプラスがつく。普通のより回復率が上がるから人気ではある」と真ん中と端っこに置いてあるビンをとんとんと叩いて教えてくれる。なるほどーっと納得してノートに記述しておく。実験用に使った材料と作成品をバックに詰めて次の授業に移ろうとすると爺先生がキラキラした顔で材料が入った袋を見ているので、目次を渡してから
「これに載っている物なら採取可能ですが、欲しいもんでもありましたか?ただとは言えませんが、採取してきますよ?」訪ねてみると目次をみている目が本気になっている。海斗兄を見ると頷いてくれるので先生を任せて魔力運営に移行する。運営というかいかに魔力を省コストで使おうという考え方だ。体にめぐる魔力を道具や武器にめぐらせて威力を増やすのだが、魔法を使うときに純粋な魔力から元素に変化させて使用する。生産ならそれをしなくてもいいのだがそれでも魔力を使うときに上手に道具にめぐらせれないとロスになる。それを防ぐために運営を学ぶのだが・・・
自分の魔力はわかる。それを巡らせることも何とかできるが、道具に巡らせるのが上手にいかない。結構ロスが出る。使い慣れている道具がいいのかな?それとも伝導率がいい道具が・・・それよりまずはじめに普通の道具で省コストで出来なければ意味がないしなーっと体の巡る魔力に集中する。ゆっくり巡る魔力それを活性化させると疲れるが、練って魔力の質を上げれば・・・
「はい。そこまで。やりすぎると体に悪いからなー」魔力の工夫をしようとしていると海斗兄が頭をがっしっと掴んで中断させる。抗議の声を上げようと意識を海斗兄に移動させると視界が揺れる。やばいっと感じると同時に倒れるのを阻止される。
「だからやめろといっただろ。魔力を急に動かすとそうなるんだよ。徐々にしないとまた寝込むぞー」とポーションを飲まされる。体が、軽くなりめまいも収まる。
「ポーションじゃなくてエーテルだがね。よく持っていたなー」と感心している爺ちゃん先生。
「ええ。こいつの母親から無茶するからと持たされましてね。エーテルは、魔力専用の回復剤だ。よく奥様と作ったことがあるだろ?お前の採取リストの中に材料もあるだろうし。自分用に少しストックしておいたらどうだ?」と聞かれたが、エーテルの作り方って教えてもらったっけー?と記憶を探りながら体調が回復するのを待つ
「そんなことを教わっていたのか?」驚きの声を出している爺先生にうなずいている海斗兄を無視してどうだったけ?とノートをめくる。このノートはネタ帳とお母さんと実験について書いてあるもの。ペラペラと見ていると簡単!!回復剤その2の作り方。と書いてある。よくよく見てみると”知らない人に教えただめだよ”と書いてあるからお母さんの秘密レシピかこれは確認しなくてはと手順を軽く書いてあるのを見て思い出す。ああそうだ。果物を使用して作ったんだよね。採取した場所の水と果物2種類を混ぜませしてポーションを混ぜて回復剤その2を作った。ついでに果物を使った美味しいジャムの作り方も教えてもらったんだよねーと回想していると
「奥様が必要なら作ってもいいよ。だそうだ」確認が取れたので作成した方がいいようだ。
「先生にも教えますから。レシピは内密にしてもらってもいいでしょうか。それとこいつの実験も内密にお願いしたいのですが」とレシピ公開を条件にお願いしている。公開してはいけない内容なのか?と思っていると
「レシピを発見したのが学生だと面倒だからな。それにお前だと余計にややこしくなる。それに奥様曰くこのレシピはお前の呟きをもとに出来たのだからお前のものだ。だそうだ」先ほど一緒に確認していたらしい海斗兄。仕事ができる男はかっこいい
「学生がポーションを工夫してプラスになる工程に気づくなんて煩そうだな確かに。追加で、これとこれお願いできるかの」薬草を指差している爺先生。この薬草はそれほど珍しくないのだが、フィールドが分かれているから時間があれば採取できるものだけ
「時間をくれたら採取できます。この薬草の森はまだ入ってないから今すぐに提供できませんがそれでいいならいいですよ」聞いてみると
「それなら森に入ってからでいいから採取してきてほしい。中級レベルのポーションが作れるからな」笑っている。採取は楽しいから問題ないし薬を作るのはかなり楽しいから別段気にしない。
「注意しろ。お前はうっかりさんだからな」がしがしと頭を撫でている海斗兄。それを呆れつつ見ている幼馴染たち。
「本当にあんたの家族は甘い」舞子がつぶやいてますけど、工程を見ていたのだからあんたたちも作れるでしょうが!!突っ込むと、だよねー!!詳しく教えて!!と突撃してくる友達。邪魔せず・突っ込みが上手な友達は大切です。
友達と楽しいポーション作成講座?を行った後に楽しかったねーでも細工までいかなかったーなどとちょっと煩くテント村に戻る。
テント前に出したテーブルに座りながら書類整理している喜一兄と裕也さん。こちらをちらっと見てから書類に視線を戻す。そろそろ薄暗くなる時刻。ランタンが必要では?と思い予備のランタンを貸し出すと感謝される。さて、荷物を置いてご飯食べにいこ。キャキャッと友達と戯れていると低い声で名を呼ばれた。
「どないした?」振り返りつつ聞くと渋い顔の喜一兄。質問に答えたのが裕也さん
「なんか寮のお風呂が盗撮されているみたいなんだよね。個室なのか大浴場なのかはわからないけど・・・」なるほど。渋い顔になるわなそれは。
「それはいつの話。現在進行形チック?どこからの情報?」一応聞いておく。銭湯は近くにあるから、なんでかなとは思っていたんだよね。
「進行形だ。大のところで流通させているデータの中に紛れ込んでいたと報告があった」大とはお母さん側の従妹。私は認識はないが、映像関係の仕事についているのでたまに面白い情報を流してくれるらしい。
「やばいね。ここの上はどうしたいのやら。連絡した方がいいのでは?」さて、今日は銭湯だね。温泉セットを用意しなきゃとみんなで違う意味で騒ぎ始める私たちをため息とともに見ている喜一兄。
「連絡してもトカゲのしっぽ。やるなら徹底的にしろと親父からの連絡だ。それに、こう大胆に俺ら男を招き入れる寮もすでにアウトだと思うぞ。俺は・・・海斗。こいつらの護衛を頼む」と呆れつつお風呂に行く私たちを送り出してくれる