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「そうと決まれば昼でも食べよう」そういうも立ち上がらずにいるので疑問に思っていると喜一兄の幼馴染で補佐役をしている裕也さんがお盆を持ってこっちへやってくる。
「おはよう。勝手にもらってきちゃったけど、食べれるかい?」聞きながらお盆の中を見せてくれる。たぶん兄たちの昼ごはんだろう焼肉定食と私用に持ってきてくれた野菜粥。お粥は食べれるけど量が少ないような気がするんだけど・・
「どうせこの後、胃薬とか飲ませるからちょうどいい。助かった」私の代わりに答えている喜一兄はどこからかテーブルと椅子を出してきたようだ。どこから?疑問に思っている私を見て。腰につけているポシェットをたたいて見せる。
「いやいや。ポシェットには明らかに入らないからね。私を馬鹿にしている?それとも、爺から就職祝いでもらったのがそれとか?」爺は父さん側の祖父の愛称。魔道具職人なので、お祝いなどにはリクエストに応じその子に見合ったものを作ってくれる。喜一兄の就職祝いは、見た目より四倍の容量が入るバックだったように記憶している。
「そ。就職祝いに貰ったバックを改善してもらってテーブルセットが1つ入るようにしてもらったんだ。何があるかわからないからな」いい顔で言っているが、これは野戦の時に戦略会議とかに使おうと思って改造したのではないかと疑ってしまうが、便利だからでいいか。と思い直す。
「兄妹でじゃれあってないで、ごはんにするぞ」あきれつつ裕也さんが声をかけてくれたのでこの問題は終了。三人でテーブルを囲みながら昼食をとることにしたが、何やら食べ始めてから徐々に顔色が悪くなる兄たち。
「前より味が落ちている」完食するも納得していない顔の兄たち。食べれるものはまずくても食べろというのが父さんの仕事を手伝っている兄妹の共通認識らしく本当に食べれないもの以外は完食している。
「前って学生時代の時?出身校ってここだっけ?」兄たちと私の学力は違うのでここではないはずだ。しかし、交換留学とかいろいろな行事があるので訪れたことがあるかも知れない。
「出身校はここではないが、長期休みにこちらの学校に滞在して経験を稼いだことがあってな。その時に学生寮の食堂にお世話になったが・・・」喜一兄。
「女子寮だから男子寮と味付けが違うのかもよ?それとも、喜一兄が来た時よりも腕がまたは、食材の質が落ちているとか?ありえないとは言い切れないけどね。今の現状では」ごちそう様と食材に対しての感謝の念を持ちつつ手を合わせる。
「そうかもしれないな。これは一応調べてもらったほうがいいか」携帯でどこかに調査依頼をしている裕也さん。以前、兄妹が調査会社に勤めていて格安で依頼を受けてもらえるから便利だと言っていたのでそこの会社に連絡しているのだろう。国の基準で、精神的・身体的に健全な状態でスキル・技術を取得できるようにすると決まっているので、現在の状況はほぼアウトの状態だ。これを外に漏らすと監査が入り改善ができるまで、役人が入ることになるので学校としては外に漏れることはできる限る避けたいところなのであろう。一部教員のやり方がアウトであって他の教員は仕事をきちんとしているからそこまでひどくないと思われるが・・・・・
「さて、面倒な事案がたくさん出てきたようだがこれは、大人の仕事だからお前は気にするな。まずは、これを飲んでしまえ」そういって出してきたのは、お母さん特性の胃薬である。体・精神に負担がかかると胃炎になりやすいので常備薬として持たされた薬の1つである。
「薬ならあるよ。それに薬を飲むほどひどくないから」かなり苦味が強い味の薬なので究極の状態でじゃないと飲みたくない薬ではある。
「そうか。それなら」珍しく薬を引っ込めたな。と思っていたら別のものを出してきた。テーブルの上にあるのは見合い写真・・・・
「胃薬を飲むか。婚約者を決めるかどちらかにしろ。懸案事項のトップがお前の婚約者決めだ。お前を野放しにしてられる期間は学生までだ。卒業したら婚約者がいればある程度自由にできるが、何もない状態だと危険すぎる。詠唱の技術・採取の技術を現時点だけで見ても利益があると考えられているんだからな。悪用される前に保護先を見つけておかないと大変なのは後々の自分だぞ」心配そうに話している喜一兄。そこまで過大評価してもらわなくてもいいとは思うが、人によっては父と強いパイプを得るために結婚を。と言っているところもあるし。学生だからと言って今まで見たいに完全に守られるような学校ではないので、無理やりということも考えられる。その危険を回避するためには、ある程度の力を持つ婚約者という後ろ盾が必要になるといっているのだろう。
「それならお母さんの娘である玲奈だってそうじゃない」同じように婚約について逃げている異母兄弟をやり玉に挙げる。ちなみに玲奈とは認識をしているが会話をしたことはない。
「玲奈は大叔父の息子の道彦と婚約が決まった。本人の意見は無視してだが」喜一兄が少し困ったような顔をしている。何かやらかしたみたいだな。
「情報が流れてきてないから内々で処理したんだと思うけど、何かやらかしたんだ。昔らかそんなところあったみたいだし。私が知らないということは、前回の倒れた時にやらかしたんだ」1月の親族会議というなのパーティーが開催されたときに、体調を崩して入院中だったので参加できなかった。それでも、お母さんや母さんたちが時間を見つけては見舞いに来てくれたので寂しくなかったが。そういえば、あの時あわただしくしていた人が一部いたな。
「ああ。あのときに問題が発覚してな。あと残っているのはお前だけだ今のところ。で、どっちにする?」問題を先延ばしにしたのがバレバレである。ついでに一緒に食べていた裕也さんは、すでに食器をを下げに行ってくれている。
「う~。どっちも嫌だとは、言えないのはわかる。まずは、薬を飲む。あと、婚約者決めでよくわからない人ばかりだから、喜一兄の印象でもいいから聞かせて」本当は午後の授業まで細工の勉強をしようと思っていたが、懸案事項を先に済ませてからのほうが余裕ができるであろう。婚約者といっても、今の段階では候補を決めてそれから、会ってみてどうかといった感じだから。ダメでも選び直せるはず。
「そうだな。今から候補を決めて会ってみて駄目だったら選び直せばいいしな」やり直しができると聞いて安心しつつ美味しくない胃薬をすべて飲み干す。口直しに少し甘いお茶をもらってから陽気な日差しを浴びながら候補者選びをする。
「なんか。みんな同じ顔に見える。というか、派手すぎて一緒にいると疲れそうな人たちが多すぎない?」と写真を見て聞いてみる。そもそも私の趣味ではない人たちである。派手な人は玲奈の好みだと聞いたことがある。これを用意した人間違ったのか?と思っていると
「だろうな。これまで見せたのは全て玲奈の婚約者候補に手を挙げていたものの中で、お前の能力を有益だと判断して鞍替えしてきたやつだからな。ここら辺は全て切り捨てていいぞ。俺も、こいつらと一緒に仕事はしたくない」鞍替えか。どれだけひっ迫しているのか、人望がないのか・・・ま、趣味ではないので退場してもらうが。キラキラした人たちの書類を不要書類と書いてあるトレイにドカッと置くと同憂仕組みなのか転送されてしまった。
「母さんのところに返却しただけだ。もうすぐ、追加が来るから待ってろ」喜一兄がそういいながら何杯目かのお茶を入れて飲んでいる。
「お母さんが、見合いを仕切っているの?外に出ないのによくできるよね」本妻であるお母さんは、交渉などの仕事はノータッチである。子供の育成をベースにたまに薬作成していたはず。
「これも子供育成に関すること。らしい。お前が選んだ人間の中で邪なことを考えている人間が混ざっていると母さんが排除してくれるから気にしないでインスピレーションで選べ」インスピレーションね。いいなーとかそんな感じで選べばいいのかしら?と待っていると追加書類が届いたようだ。
「さて。頑張って見ていけ。この中にいなくてもそれはそれでいいのだがら」と変なエールをもらい授業が始まるまで、婚約者候補選びをしてしまった。結局、いい人なんていなくてすべて没にしたが、それはそれでいいらしく
兄曰く「篩にかけている状況だからいいんだ」とのことでした。なんか疲れたわ。
生産というのはどこに行ったのやら・・・