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学校の方針も解ったことだし、授業を受けることに。授業は選択制度で自分でカリキュラムを組むことが出来る。そして教員によっても授業の方針が違う。適性がある生徒のみを対象とそうでない生徒も受け入れている所。適性があるものだけだと進みも早く拘束時間が少ないのが旨味なのだろう。しかしながら、出来ると言う考えの授業は解らない者にはきつい。それが例え適性があるものだとしても。と言うことで、私は後者を選んで受けることにしている。解らない者にも分かりやすく教えてくれる授業は有難い。理解力が他の人より遅い私としては。
初めての授業は他の授業より拘束時間が長い採取と決めて指定されている"東の森"に移動するために校内地図を見ていると
「採取を受けるんだ。じゃ、皆で行こうか」と舞子が他の友達にも声をかけて一緒に移動する事になった
適性を持っていない舞子曰く
「あんたに着いていけば、採取は間違い無い」だそうた。よく海に遊びに行ったり山に遊びにいって果物やら魔石やらを採取してきた私の行動を身近に見ていた人の言葉なので、説得力があるらしく、護衛系の適性がある友達も着いてきた。
「最初の依頼は採取系が多いから」だそうだ。私としては森は危険だから異存はないと言うか、寧ろウエルカムだから良いけど。
校内地図を見ながら"東の森"につくと1人の女性が立っていた。黒い髪を乱れなく結い上げ、茶色を基調とした服を着ている。1点だけ目立つ色のものを身に付けている。
あ、先生だと思い女性のもとに行き
「採取の授業にを受けたいのですが」と申告すると。にっこり笑ってから
「私が教員だと何でわかった?」と聞かれる
「大地の加護を受けやすい茶色の服に周囲に特に他の採取をしている人や狩りをしている人に分かり易く自分の居場所を示す物ですよね?」大きめの赤いリボンを指差すと頷き
「合格だよ。森は危険がいたくさん有る。1番危ないのは人間同士の事故だ。黒い服を着ていたから獣だと思って攻撃される事もある。加護を得やすい茶色・オレンジ・黄色等を身に付けておくと周囲に場所を報せるのも容易だ。覚えておくといい」説明後、懐から1冊の図鑑を出して配ると
「それを見て紅ダケと針草を採取しておいで。この2つは、採取の依頼が多いから小遣い稼ぎにはちょうどいい薬草だよ」そう指示を出す
紅ダケは名前のとうり笠が赤い茸。針草も細い葉が特徴の薬草。但し、針草は樹木の葉であり紅ダケはその根元にしか生えない。それは図鑑に載ってない情報だから知らない人は多い。
「じゃ、正午の鐘が鳴るまで頑張りな」の号令で私たちが居ることで教員を見つけれた参加者達は下を見ながらバラけていく。基本的な事を確認するために図鑑に目を通すとどちらも"東側では一般的な薬草"としか載ってない。
ここは東の森。主に東で取れる薬草を植えてあるか環境を管理して生息させているのだろう。だとしたら月熊も生息しているはず。月熊は東の一般的な熊で温厚な性格で驚かさない限り襲ってこない。バックから熊避けの鈴を取り出す。ジャラジャラ鳴る鈴は、こっちに人間いるぞー!と言う具合に熊に居場所を報せるものとして便利。熊も解っていれば近づいてこない。
「さて、少し奥にいって探しますか」皆に声をかけて移動し始める。移動中に見つけた真っ赤なジャムの実を取り近くに有った祠に供えるとピカッとなってから少し数を減らして現れる。
「森にある祠は、神様に直通してるから採取した物を供えると認定してくれる。持ち主になれば森から出るときに妨害されない」そう伝えると
「そういえば、採取しに行って森をでたら収穫物がなくなってたとか聞いたことがある」と言っている友たち。
「認定されてないと持ち出しはできないよ。無理に持ちだすと後で大変なことになる時もあるから。まとめて認定してもらうなら森の奥にある大きな祠に供えればいいと思うけど。そこまで行く予定が無いなら近くにある小さなものでもいいんだよ」そう説明してから道すがら見つけた果物や薬草の説明もしつつ目標である紅だけと針葉を探して奥に進む。
目の前に大樹がありその木の下に赤いキノコが見える。大樹の葉は、細い針のような形をしている。
「見つけた。これが針葉でキノコが紅だけだよ」と手に取って見せる。群生地の様なので取りすぎないように1つの枝から1つだけ採取することにした。
「これだけの人数だだから。取りすぎたら大変だよね」皆同意してくれて散らばっていく。全員採取したら近くにある祠に1人ずつ採取したキノコと葉を備えて認定してもらっている。ピカっと光ったら次の人と言った風になっているので見てて面白い。
「全員採取したし。図鑑に載っている物もある程度どこに生えているかわかったから今後問題ないよね?」そう舞子に聞くと
「大体は大丈夫だけど。わからなくなったら図鑑をみたりして情報収集したら問題ないか。それでもわからないい場合は聞けばいいか」少し考えてからうなずいている。戦闘系の子も最初は簡単であまり危険が無いところから始める。採取で日銭を得ることだって多いだろうし。欲しい材料を取って来てもらうことだってあるからそこら辺は別にいいよ。と答えておく。
「じゃ。皆先生のところに戻ろうっか」とほぼピクニック感覚で森を歩く。
「そうそう。そこに生えているギザギザの葉っぱは、痛み止めの薬にもなるけどね。種は撒きビシの代用品になるから秋になったらとりに来ればいいよ。それとあそこのなっている赤い実あるでしょ?あれは、染料につかうけどね。樹液は痺れる効果があるから森で囲まれた時に武器につけておくと時間稼ぎになるよ。痺れを抑えるのは隣に生えている黄色い実の液が有効だから取っておいた方が良いかも」とサバイバル知識を披露していると
「ほんとなんでも知っているね。しかも、戦闘系に傾いているところがあんたらしい」と笑われた。よく出来る姉に間違われて攻撃を仕掛けられるので無手で攻撃する方法や時間稼ぎの方法。出来る限り自分が無傷で帰宅できるように工夫していたせいか。無手である程度の技量がついている。
「できれば、魔法がベストなんだけどね。暗器とかだと接近戦がメインでしょ?持久力が無いから出来るならバトルとか最小限にしてほしいんだよね。銃とかだと見つかりやすいし、魔法は適性が無いなら出来ても火をともすとかでしょ?それじゃ何もならないからさ」困った困ったと言いつつ笑っていると
「あんたに武器を持たせたら怖いから。カッターとかだけでも詠唱しつつ使うから普通のカッターだと思って対応すると痛い目を見るからな。やりずらいと思うけど」と突っ込みを居れる戦闘系。
「知らんがな。そもそも無手の相手に攻撃を仕掛けてくる方が悪いんだよ。そのせいで、気配を消すのは得意になってしまいました。後、靴下に石とか詰めて紐をつけてぶん殴ってしまう方法も有効に使えるよ?」身近なもので作れる武器を教えると嫌な顔をされる。
「そんなあんたは、体術とるの?」
「護身術は取る。主体は蹴りだから合気か少林寺かな?棒術となぎがた。和弓も良いよね。弦を外せばなぎがたに変更できるバージョンでも作ってもらうかな。ああ。警棒も捨てがたいよね」キラキラしながらそんなことを言っていると
「本当に生産系か?」全員に突っ込まれた。
「適性がどんなに生産系だとしても、生産系に偏るところは無いと思うよ。製薬なんか初歩のハイポーションなら適性が無くても作成できるし。この講座の先生みたいに適性がない人もウエルカムの講座もある。出来て当たり前な世界なんて気持ち悪いじゃない?出来るならある程度は自分で出来るなら出費も抑えれるしね。初歩の戦闘系なんて薬代で赤字だと聞いたことがあるからね」ニッコリ笑っておくと
「そういわれるとそうだよね。器用貧乏にならない程度に出来る事があれば有利か。じゃ私たちもいろいろ考えてみるかなー」そう言っているのは双子の未唯と理沙だ。
「そうそう。適性だってそうじゃなくたって自分のなりたいものになれればいいんだよ。少し努力が必要な方が楽しいじゃん」
「だね」キャハーっと皆と笑いながら移動する。
皆と採取した果物を食べながら集合場所に行くと私たちの姿を見て疲れたような顔をしている先生。
「どうしました?」舞子が皆の代わりに聞いてくれると
「その手に持っている果物たちはどこでどう採取したんだ?採取時期だが熟練度が高くないと採取できないものだらけだ」そう聞かれた皆は私の方を見ている
「え?採取してはだめなんですか?取れごろだったんで、皆と研修がてら採取してきました。しかも、ちゃんと認定もしてもらったので、転売問題もないですよ」問題ないはずですよね?恐る恐る聞いてみると
「採取のレベルはどんな感じなんだ?ってかバックの中身を確認させてもらっても?」聞かれたので全員でうなずく。バックから出てきた物は、小リンゴ・紅だけ・針葉・マダラみかん・みかん・イチジク・芭蕉の葉っぱ・痺れ樹液・痒い樹液・湖の水・鉄鉱石・銅鉱石・水の原石・風の原石が皆と共通の採取物。それに私だけが、緑の原石・風霊の玉・水霊の玉・銀のリンゴだ。それを見てプルプルと震えている先生を見てやりすぎたか?っと思ったが、このくらいなら家でも取ってたし。リンゴたちは混ぜることで傷薬の味がおいしくなるから見つけたら採取する習慣になっていたからほぼ無意識の仕事だし。
「凄く沢山採取してくれているようだ。今日で、どれだけ採取のレベルが上がったかわかるか?」質問されたのでみんなで首をかしげる。
「君らだけ中級になっている。森で何をしていたのかな?」そう聞かれてもねと皆と顔を見合わせながら
「採取ですけど?」と答えるしかない。
「それだけなのに、レベルが上がるなんて・・・・」絶句しているけどなー。と思いながら一応先生に合格をもらう。