残念なナイショ話
次の日の昼休み隼斗に誘われて互いに机をくっ付け合い一緒に弁当を食べていると、隼斗は桐ヶ谷の席の方見てから喋りだした。
「桐ヶ谷さん、どこに行ったんだ?休み時間の時も誰とも話そうとしないし、どうしてだ?」
「本人曰く、それがかっこいいかららしい」
「じゃあ、自己紹介の時のあれも?」
「あぁ、そうらしい」
「本当に面白い人だな」
そんな会話を交わしていると隼斗は突然、弁当箱を片付け始めた。
そんな隼斗に俺は疑問を跳ばした。
「突然、どうした?もう食べないのか?」
「ちげぇよ、桐ヶ谷さんを探しに行くんだよ」
「ふーん、ご苦労なこったな」
「なに言ってんだ?お前も行くに決まってるだろ」
「は?何で俺が、てっ...おい!引っ張るんじやねぇよ!」
俺は隼斗に引っ張れるままに弁当を持って桐ヶ谷を探すはめになった。
(何で俺がこんなはめに...)
桐ヶ谷は思ったよりすぐに見つかった。
3階から4階に続く階段に1人座りながら弁当を開き食べていた。
「あ、桐ヶ谷さん。こんな所に居たんだ!一緒にお弁当、食べない?」
「あ、黒沢くんに小暮くん。えぇ、いいわよ!一緒に食べましょ!」
桐ヶ谷はこっちに気づくなり嬉しそうに笑顔を返してきた。
そんなに寂しいなら教室で一緒に食べればいいのに...
「お前、何でこんな所で食べてんだ?」
「私、あの席嫌いなのよ」
「何でだ?」
「だって、授業中に窓の外を見て黄昏るってことができないじゃない!」
「さいですか...」
とてつもなく、どうでもいい理由だった。
だから前にあんな席から窓の外を見ようとしてたのか.....。
「あそこの席に座れるように言われた時は思わず先生を睨んでしまったわ」
内田先生、そんな理由で睨まれたのか、かわいそうに.....。
俺達は桐ヶ谷の横に腰を下ろして一緒に食べ始めた。
「桐ヶ谷さんそのお弁当、美味しそうだね!お母さんに作ってもらってるの?」
「えぇ、そうよ。お母さんの料理は世界一、美味しいんだから!食べてみる?」
「いいの?じゃあ、遠慮なく」
そう言われ隼斗は桐ヶ谷の弁当から卵焼きを1つ取ると口に放り込んだ。
「ん!本当に旨いぞ!」
「でしょ!お母さんが作るものは何でも美味しいのよ!」
「翔も1つ貰ってみろよ!旨いぞ!」
「俺はいいよ」
「遠慮しなくてもいいわよ?」
桐ヶ谷はそう言って俺の方に弁当箱を向けてくる
「じゃあ、1つだけ...」
俺は桐ヶ谷の弁当箱から隼斗と同じように卵焼きを1つ貰って口に入れる。
ん!?本当に旨いぞこれ!卵焼きが口の中で溶けてるみたいにやらかい、それに甘さが丁度いい
これは確かに美味しい
「旨いな、この卵焼き!こんな旨い卵焼き初めてだ」
「ありがとう。黒沢くんのお弁当も美味しそうね!お母さんに作ってもらったの?」
「ん?いや、これは自分で作ってるんだ」
「翔、お前自分で作ってたのか?1つ食べさせてくれよ!」
そう言って隼斗は俺の弁当からだし巻き卵を持っていく
「旨いなこれ!翔にこんな特技があるなんて、桐ヶ谷さんも食べてみろよ」
桐ヶ谷は聞こえてないのか、ショックをうけた顔をしていた。
「ん?どうした桐ヶ谷?遠慮しなくてもいいぞ?俺もさっきもらったし」
俺は桐ヶ谷の方に弁当箱を向ける。
「え... えぇ、じゃあ1つ」
桐ヶ谷はそれを食べると、またしてもショックをうけた顔をしてうつ向いてぶつぶつと喋りだしていまった。
口に合わなかったのだろうか?
「わ、私の作る料理より美味しい...」
「どうしたんだ桐ヶ谷は?」
「女のプライドを壊されたんだよ。お前によってな」
「何、言ってんだ?お前?」
そんな会話を10分ぐらい続けてると午後の予令が鳴り、俺達は弁当を片付けて教室へと戻った。
放課後、俺はいつも通り教室から人がいなくなるまで探検しようと廊下に出ると、そこで隼斗に止められる。
「お前どこに行くんだ?今日は帰るのか?」
「いや、ちょっとな...」
「言わないなら翔は本当はロリコンってクラス中に嘘を流すぞ?」
(なんて恐ろしいことを考えるんだ!)
俺は諦めて隼斗を連れて廊下を歩いた。
「お前いつも早く帰ると思ったら、こんな事してたんだな」
「変な脅しをしてきやがって、別にいいだろ俺が何をしようが」
「何で帰るわけでもなく、学校の探検なんてしてたんだ?」
「あんまり人と合いたくないんだよ。この時間は帰る人が多いし教室に居ても人が残ってるからな、暇潰しにはこれぐらいが丁度いいんだよ」
「ふーん」
「お前、本当に部活本当に辞めるのか?」
「あぁ、もう退部届けは出してきた。特に面白くもなかったしな」
「はぁ...もったいないことを...お前1年でレギュラーになれそうだったんだろ?いいのかよ?」
「いいんだよ別に」
俺達はそんな会話をしながら廊下を歩き日が沈み人が居なくなったごろを見計らって教室に戻った。
そこでは桐ヶ谷が1人、席について待っていた。
「二人とも何をしてたのよ?帰っちゃったかと思ったじゃない」
「あぁ、ちょっとな」
俺がそうデタラメに返すと桐ヶ谷は気にくわなそうにこっちを見てくる。
そこで隼斗が桐ヶ谷に話しかける。
「桐ヶ谷さん、ちょっと相談があるんだがいいか?」
そう言って隼斗は桐ヶ谷を教室の後ろの方へ連れていき、何かこそこそと話し出した。
少し話をすると2人は話が終わったらしく「わかった!私に任しといて!」を言い、こちらに戻ってきた。
「何を話してたんだ?」
「ちょっとな。まぁ、後のお楽しみってことで」
俺には内緒らしい、まぁ、特に興味があるわけでもないし別に構わない。
べ、別に寂しいなんて思ってないんだからね!
.....自分でやってて、バカらしくなってきた。
桐ヶ谷は「じゃあ、早速!」と話し始めた。
「昨日の続きを話始めましょ!私の友達の作り方について」
「また、それかよ!俺の方の能力はどうした!」
「そんなの後よ、まずはこっちが先」
「あぁ、そうかよ...」
こんな話し、早急に終わらせて俺の話の方に行かなくてはいけない。
じゃ、なきゃ、このお話が終らない。
えっ?メタじゃないよ?冗談だよ?
しょうがない話に乗ってやるか。
「で、お前に友達ができるように話し合うつっても何を話すんだ?」
「それをこれから考えるんじゃない!」
「考えなしにも程があるだろ...」
「小暮くんは何か良い考えとかない?」
その問に隼斗は少し考えてから答える。
「んー、友達を作るなら単純にクラスの人気者になるってどうだ?」
「人気者?どうやってなるの?」
隼斗はまた少し考えてから話し出した。
「そうだな...。喋ってて面白い人って人気者になるよね」
「喋り上手ってことね!」
「じゃあ、ちょっと練習してみようか」
「練習ぅ?どうやって?」
「簡単にシュミレートしてみるんだよ、桐ヶ谷さんがクラスの友達と喋ってる場面を」
「わかったわ!」
「じゃあ、俺が友達役をやるから桐ヶ谷は何でもいいから話しかけてみてくれ」
「任せといて!」
これ昨日もやった気がするが大丈夫か?
「ねぇねぇ、昨日のテレビ見た?」
あれ?思ったより普通だな。
なんだやればできるじゃないか。
「昨日のアニマルプ〇ネット!」
「何でだよ!」
いかん!おもわず突っ込んでしまった。
何でアニマル〇ラネットが誰でも見てる世界共通みたいになってるんだ...。
「うん、面白かったよね!昨日のアニマルプラ〇ット」
話に乗りやがった!?
絶対見てないだろお前!
「私、あそこが良かったなぁ!あのシマウマがライオンに追いかけられて食べられるところ!」
グロイわ!
どんな女子高生だよ!シマウマがライオンに食べられて面白いとか言うとか恐いわ!
責めてかわいい動物の話とかにしろよ!
「そうだね!けど俺は桐ヶ谷に食べられたいかな!むしろ食べたい!」
会話のキャッチボールになってねぇ!
これじゃ、ただのセクハラじゃねぇか!
「止めろ止めろ!そんなんで友達ができるか!もっと誰でも話してそうな普通の話をしろ!」
「何よ、偉そうにして!あんたも友達いないでしょ!」
「ぐっ!俺のことはいいんだよ!」
「わかったわよ。じゃあ、普通に」
桐ヶ谷は少し間を空けてから話し出す。
「好きな世界名作〇場はなんですか?」
「何でそれが普通だと思ったんだよ!」
「別に可笑しくはないでしょ!」
確かにそうかもしれないが、いきなりその話をするのは可笑しいだろ。
「私は母をた〇ねて三千里が好きです。マル〇のマザコンぶりとか凄く笑えます!」
さらに見る視点が腐ってる!?
9歳の子供になんて酷いこと言うんだ!
いくらなんでも、この質問には隼斗だって突っ込むだろう。
そう願いながら隼斗の問を待つと。
「自分はあらいぐま〇スカルが好きです。」
だからお前は話に乗るなよ!
「ス〇ーが『ラスカ〇、餌だよ』と、言ってラ〇カル太らせて、後で食べようと考えてるんじゃないと思うと笑えてきます」
だがらどう考えても可笑しいだろ!そのコメントは!
だんな見方をすればそう見えるんだよ!
てか、アライグマはいくらなんでも食えないだろ!
「趣味が合いますね。友達になりませんか?」
「はい。よろこんで」
「そんなわけあるかぁぁぁぁぁ!!!」
「何よ、今の完璧なやりとりに文句があるの?」
「そうだぞ翔?どこが悪いって言うんだ?」
「強いて言うなら全部だよ!最初から最後までだよ!」
「何、キレてるのよ?」
「最近の若者はキレやすくて困るよ」
「ふんがぁぁぁ!!!」
ダメだこいつら!何で俺が間違ってるみたいになってんだ!
「まぁまぁ、落ち着けよ翔?」
落ち着けるか!
俺が隼人に怒鳴っていると
そこで桐ヶ谷は窓の外を見てから言った。
「今日はもう遅いし続きは明日にしましょう」
「そうだな。じゃあ、帰るぞ翔?」
「あぁ...もういいよ.....」
何か疲れたは.....
これが明日も続くのか.....
「はぁ...」
俺はため息をついてから教室を出た。