EPISODE4/戦友は絶対必須
今回から咲魔@底辺ドンだーさんの『INSANITY』とのコラボで、『宇都宮咲魔』、『秋吉夜哉』、『秋吉朝儀』、『水無穹』の4人が出演します。
ちなみに、人類軍制服はIS学園男子制服とガンダムOOのユニオン軍服を足して2で割った感じを想像してくだちい。色は白基調に青が入った感じです。
501は現在、ニューヨークに立ち寄っていた。食料品等の補給を行うためだ。短時間ですませるため、品ぞろえの多いハイパーマーケットに来ている。ただ、人類軍の制服を着ているせいかメンバーはヤケに視線を感じたが。
そして、買い出しも大体終わり、案外早く済んだということで、そこからそう遠く離れていないバーガー店で食事をとっていた。メンバーたちはそれなりに色々話していたが、ジストは自分の食事を終えるやいなや、買ったばかりの週刊誌をめくっていた。表紙には、大物政治家のスキャンダルやら、何とかというタレントの熱愛報道やらと言った見出しと一緒に、現在のギルガメシュのパイロット、ルーク・アブルホールと、エンキドゥのカインズ・アルカート、イシュタルのアリーサ・ケイオス3人のロングインタビューと書いてある。
「ジスト、お前、この3人のファンなのか?」
「…ファンというほどでもないが、パイロットとして多少の興味はある。』
カレンの問いにそっけなく答えると、ジストはインタビュー記事を読み始めた。記事の前の数ページには3人のグラビア写真―女性であるためかアリーサが一番多い―があったが、それらをすっ飛ばしてインタビュー記事に直行した所を見ると本当にインタビューだけが目当ての様だ。
此処で説明を入れておく。ファースト・スリーのみならず、著名なパイロットは時々雑誌やテレビ番組なんかでインタビューや講演などをすることがある。有名だという事は、それ相応の高い戦闘能力を持っている、ということだ。有名パイロットの間ではベースの存在しない完全ワンオフ機に乗っている人間など珍しくもなんともない―有名パイロットの絶対数自体はあまり多くはないが―し、それが起因してアイドルの様な態度になっている者も少なくはない。しかし、トップたるファースト・スリーのリーダー格であるルークは自分の軍人としての使命を第一に行動しており、マスコミに自分の活躍をアピールするためにUMSを市街地近くまで引きつけて撃破、等という事は絶対にしない。人気にあまり興味はないが、その態度から皮肉にも一番人気となっているのだ。
話を戻そう。とにかく、ジストはインタビュー記事を読みふけり、他のメンバーも食事を楽しむなり話すなりしていた。すると。
「うげ…カレン…アンタここにいたんだ…」
何とも嫌そうな声の主は、黒い髪の左右にリボンを二つ付けた少女だった。人類軍制服を着ているが、どちらかと言えばゴスロリ服なんかが似合いそうな感じだ。
「咲魔…それはこっちのセリフだ。」
咲魔と呼ばれた少女とカレンのやり取りを見ていれば分かる。どうやら、二人は仲がよろしくないらしい。
「オイ咲魔、こんなところで喧嘩すんなって。みっともねーっつの。」
隣で、同じく人類軍制服を着た少年が咎めるように声をかけた。さらっとした黒い長髪と童顔気味の顔が何となく中性的な印象だ。
「この人類軍一のトゲっちぃ女、視界に入っただけで何か言いたくもなるわよ!」
「そりゃお前がトゲっちく接するから相手の態度もトゲっちくなるんだろうが。」
「私はトゲっちくないわよ!」
「いいやトゲっちぃね!カレンへの接し方は尋常じゃなくトゲっちぃね!」
「何よ、あんた…この女に気がある訳?」
「ハァ?いきなり何言ってんだお前!」
みっともないとか言っときながら、結局少年は咲魔に食ってかかる。例えるなら、他人に突っ込んで早々ボケに回るマンガのキャラ並みに見ていてイライラする。
すると、ジストがカレンに声をかけた。
「…カレン、知り合いか?」
「ん?あぁ、お前は501に加入したばかりだから知らないのか。女が宇都宮咲魔、男が秋吉夜哉。第226独立遊撃隊所属で、咲魔が隊長だ。」
名字から先に言ったのは、二人は日本人だからだ。日本をはじめとする東アジアは、現在東南アジアの一部と一緒にUMSに制圧されてしまっている。世界中に散ったそれらの国々の人間の中には現地の国籍を取得する者もいるが、たいていはその国の国籍と元の名前を使い続けている。彼らもその一部なのだ。
「カレンと咲魔さん、昔イシュタルの2代目パイロット候補にペアで立候補したんだけど、一次試験で運悪く落ちたから、お前のせいだお前のせいだって責任をなすりつけ合いになって以来仲が相当険悪なんだよ。」
説明を入れておくと、ファースト・スリーのパイロット選定試験は、一次試験はペアで行い、上位1チームが2次試験として一騎打ちを行い勝った方が就任する、というシステムで行われた。
「…そうか。」
目当ての情報を引き出すことに成功したためか、ジストはカイルの説明も半分聞かず、インタビュー記事に戻っていった。
「興味なしですか…ハァ…」
カイルは自分の説明を聞き流されたことに少し落胆しているようだ。
「咲魔、あまり私達に向かって影を作らないでくれるか?太陽もきっとお前を照らしているほど暇ではないだろうしな。」
「それはこっちのセリフよ!何やら新メンバーを入れたみたいだけど、私と夜哉のコンビに敵う奴なんていないのよ!」
「俺、お前とだけ組んだ覚えはねえぞ。一応隊のみんなと一緒に戦ってるんだから…」
「黙らっしゃい!というか空気を読みなさい!」
また口論が始まる。その場にいたほとんどの人間は仲裁に入ったが、ジストだけはそんな喧騒に構わずインタビュー記事を読んでいた。
突然、カレンのポケットの端末が高い電子音を立てて鳴り響いた。ディスプレイには、『アンナ・オールト』と表示されている。何かあった時のためにチャリオット内で待機になっているのだ。
「アンナ、どうした?」
『カレン、ニューヨークから南方およそ60キロの地点にUMS反応!』
咲魔も、自分の対のメンバーから同じ報告をされたらしく、少し慌てて対応している。
「数は?」
『軽量歩兵型が20機、中量戦車型が8機、中量航空輸送艇型が2機と、輸送艇の随伴と思しき軽量飛行型が12機いるわ。』
「輸送艇型は1機につき歩兵を5機収容できるから、多くても全部で…52機か。随分少ないなオイ。」
ジョナサンがけげんそうな声を漏らす。52機というのは、UMSの数としてはかなり少ない。普通は、一つの部隊で100機前後がいるはずなのだ。前回の戦闘で90機近くいたのもまだ少ない方なのだ。
「とにかく、今すぐ戻るぞ!今からなら急げば間に合う!226に撃破スコアを抜かれるな!」
「夜哉、朝儀とハルヤとレイナにも連絡して!501より1機でも多く落とすわよ!」
隊長二人は最後まで対抗意識をむき出しにして、それぞれのチャリオットに向かっていき、隊員たちも後を追った。
226のチャリオット内。所属するTBパイロットの、咲魔、夜哉、秋吉朝儀、ハルヤ・ムラカミ、レイナ・ノーラッドの5人が、内部のコネクターに接続を完了させる。
『パイロット5名の搭乗を確認、ダイレクトリンクを開始するよ!』
オペレーターの水無穹の操作でコネクターが起動、パイロット5名の意識がTBとリンクし、センサー保護バイザーの奥のデュアルアイがスカイブルーの輝きを放つ。
501のチャリオット内部でも5機のTBが起動。素体にギアユニットが装着され、第1陣の3機がカタパルトに誘導されて足を固定する。
『カタパルト、射出角ツーコンマ・ファイブ・オクロックハイで固定。セット完了。射出タイミングを各パイロットに譲渡します。』
そして、501と226、計10機のTBが、順次カタパルトから放たれた。
「カレン・ヴァータム、『トモエゴゼン』、FIRE!」
「宇都宮咲魔、『メアリー』、FIRE!」
「カイル・アカーシャ、『ビリー・ザ・キッド』、FIRE!」
「秋吉夜哉、『ヨシツネ』、FIRE!」
「ジョナサン・アークガルド、『アーサー』、FIRE!」
「秋吉朝儀、『ジャンヌ=ダルク』、FIRE!」
「マリア・オールト、『カラミティ・ジェーン』、FIRE!」
「ハルヤ・ムラカミ、『ジャック・ザ・リッパー』、FIRE!」
「ジスト・エレディア、『ガウェイン』、FIRE!」
「レイナ・ノーラッド、『ヴラドⅣ』、FIRE!」
またもや戦闘シーンは持ち越しです。