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EPISODE18/歪む正義

更新久々ですね!

パソコン使う暇がなかなか無かったので…

 ジストとルークは、少女によって近くの山の中腹辺りにある小屋に案内された。元々は猟師小屋で、今は少女が暮らしているのだという。

 少女からの話の内容によっては何かしら対応もいるかもしれないと思い、隊の責任者のカレンと咲魔も呼び出してきた。

「じゃあ、まずは名前から聞かせてくれ。」

「あ、私、サーシャです。サーシャ・ライリー。」

 サーシャと名乗った少女は、そう言ってから頭を軽く下げた。ちなみに、ジストらの自己紹介は既に済んでいる。

「ご察しの通り、私はもともとあの町の人間でした…」

 サーシャは語り始めた。



 サーシャの故郷『ノルン』は山間の小さな町だ。アットホームな気風で、住民も皆顔見知りといった具合だった。近隣にエリミネーターが出現する事もたまにあったが、それもすぐ近くに居を構える人類軍が撃退してくれる。皆笑顔で暮らしていたという。

 しかし、3ヶ月前のことだった。いきなり、武装した兵士が街に踏み込んできたのだ。BRAIN軍の侵攻かと思ったが、それは人類軍だった。彼らは住民に銃を突きつけ、こう言ったのだ。


『この街の人間にはスパイの容疑がかかっている。基地まで来てもらう。』


 サーシャは父親によって家の地下にかくまわれ助かったが、騒動がひと段落したところを察して外の様子をうかがってみると、街は変わり果てていた。

 綺麗だった住宅の壁には無数の弾痕が刻まれ、商店に陳列された者も蹴散らされて見る陰も無い。そして、人々は一人残らず連れ去られていた。

 サーシャは巡回する兵の目を何とかかいくぐって食料を調達し、ついでに街にいた武器コレクターの家から銃器をいくつか持ちだして、街を逃げ出した。そして今日まで、山の中の猟師小屋に身を隠し、持ちだした銃で狩った動物を食べて食いつないできたのだという。しかし手持ちの弾薬が底をつき、それを調達しようと街に忍び込み、後は前回の通りだ。


 周りを見てみると、確かに何丁か銃が転がっている。あるのはM16A1やH&KMP7など。どれもかつては名銃と呼ばれたものだが、今となっては実用価値のほとんどない骨董品だ。これでは確かに狩猟くらいにしか使えない。

「…理由に心当たりはないのか?」

「ノルン出身の兵士が5人いるらしいんですけど、その全員が、今はプリベンターの所属してるらしいんです。その人たち、休暇を使ってよくここに来ていて…たぶん、そのためだと思います…」

「…ンだよそれ…無茶苦茶じゃねえか…」

 ルークがうめき、ジストも無言でうなずく。

「…むしろ、こういう事が無かった今までは本当に幸せだったのかもしれない。そうして道を踏み外す兵士はいる。」

「だからって!私達の使命は人を守ることじゃないの!?本末転倒もいい所じゃない!」

 サーシャはこの会話を黙って聞いていた。懸命にこらえてはいるが、今にも泣きそうな表情にしか見えない。

「…安心しろ。街の人々を見殺しにすると言った訳じゃない。」

 不意に、ジストがサーシャに声をかけた。

「…え?」

「俺達は、敵の殲滅よりも民間人を守る事の方が優先されている。そいつらのやっている事は明確な軍紀違反だ。なら、俺達で教訓を与えても文句をつけられる筋合いなど無い。」

「そうだ、ジストの言うとおりだ、サーシャ。彼らは私達が救いだす。そして、その肥溜の糞にも劣る害虫どももまとめてふんじばって、調子づいた行動を後悔させてやるさ。」

 カレンも彼女に向かってやさしく言った。後半にかなり汚い言葉が混じっているが、気にするのは野暮だろう。

「そうときまれば、その是非を上に掛けあってみる。流石に相談なしで出来る様な事じゃないからな。」

「じゃあ、もしゴーサインが出なかったらどうするよ?」

 ルークがさらっと問いかけたのに対し、カレンは自信ありげな軽い笑みを浮かべて答えた。

「その時は、その下種共と違う罪状で軍紀違反になってやるまでさ。」




 そしてそれから二日後。カレンが皆を集めて発表した。

「やけにあっさりと許可が出た。」

「「「マジで!?」」」

 その場のほとんどの人間が声をそろえて行った。唯一加わらなかったジストもそれなりに驚いてはいる様子だ。

「作戦部のお偉いさんも元々そういう過激派連中には頭を悩ませていたらしい。かといって、大規模な討伐隊など送り込んでは余計な風評も立ちかねんから、今までアクションが起こせずにいたという事だ。だが、単独行動が容認された我々独立部隊が動けば…」

「あくまで独走として片付けられる、ってわけね。」

「咲魔、他人のセリフをとるな。」

「何よ、私にも喋らせなさいよ!」

「この隊の責任者は私だ!クソ女!」

「誰がクソ女よ!このファッキン・ビッチ!」

「私がいつ淫行等に及んだ!体ばかり成長して脳は中二のままの『ピーー』女が!」

「ハァ!?もっぺん言ってみなさいよ、この『ピーー』の『ピーー』の『ピーー』!」

「誰が『ピーー』だ!あまりふざけた事を言っているとこの場で首を落として『ピーー』を流し込むぞ!この『ピーー』持ちのヨゴレ『ピーー』女!」

「それはあんたでしょうが!戦闘中でもいっつもいっつもババアの『ピーー』みたいに動いといてそれはないんじゃない!?」

 カレンと咲魔がまたしても喧嘩を始める。ちなみに、人類軍の訓練校の中でも特に厳しいところ出身の彼女たちはこの手の語彙がかなり豊富だったりする。

「…お前ら、TPO考えようや。」

 夜哉の鶴の一声で、二人とも我に返る。その場にいた全員が内心で夜哉に笑顔のサムズアップを贈呈した。

「…ん゛っん゛ー。とにかくだ、この作戦が成功すれば、各地の過激派に対する抑止力にもなるだろうし、人類軍が皆そのようなゲス野郎ばかりではないとはっきりさせる事も出来る。つまり、これはきわめて重要な任務だ。あと、助っ人としてα・シャドーから1ユニットを派遣する、という旨の通知もあった。」

 何人かが露骨に嫌そうな顔をする。

 ちなみにα・シャドーというのは、人類軍の擁する、精鋭ぞろいの特殊部隊の事だ。最新鋭の装備などが一般の隊よりも優先的に配備されることでも知られている。最新装備をちらつかせた鼻持ちならないエリートども、と言って敬遠する者もいる。

「…気持ちは分かるが、我慢しろ。」

 カレンも頭が痛そうだ。

「ということで、彼らを待ってから作戦を開始することになる。それまで、可能な限り情報収集をする。いいな?」

「「「イエス・マム!」」」

「よし、解散だ、これより、各自、最善を尽くせ。」

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