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EPISODE17/追われる恐怖

新ヒロイン登場です。

 彼女はは走っていた。無人の街を逃げ回っていた。

 疲労で視界がかすむ。今自分がどっちの足をどう出しているのかさえもはっきり分からない。ただ走っていた。走って、逃げていた。

 足を止める訳にはいかない。捕まればどうなるか分からない。一生監禁されるか、薬漬けになってもてあそばれるのか、それとも…殺されるか。

 街の地図は頭に入っていた。そこに従って、彼女は一番複雑な道を必死に逃げる。

 それでも、追手は諦めなかった。

 丁字路がすぐ目の前に見える。此処を越えて下水管に飛び込んで、外に逃げよう…そう思った。

 しかし、そんな考えなど追手にはお見通しだった。

 白と青の軍服に身を包み、アサルトライフルを持った2人組が、行く手に立ちふさがる。

 ならば反対から路地に行って…そう思った瞬間、そこにも銃を持った男が。

 来た方向からやってきた追手が道をふさぎ、彼女は逃げ場を失う。

「拘束しろ。」

「隊長殿。その前に、少し『ボディチェック』をした方がよいのでは?」

「好きにしろ。俺は何も知らん。」

「は。」

 総勢4人の銃を持った男たちがにじり寄って来る。彼女は懐にコルトのダブルイーグル自動拳銃を隠し持っていたが、最新装備で武装したプロの兵士たちと戦うには、もはや実用価値などあって無い様な役立たずの骨董品だ。

「嫌…止め…」

「そうはいかん。武器でも持っているなら没収せねばな。」

 涙が出てくる。

 諦めた訳ではない。でもどうしようもない。

 どうすれば…





 その時だった。

「グアァッ!」

 鼻にかかったような音と共に、男たちのうち一人が倒れる。そして、その後ろから、一人の人間が現れた。

 少年だ。歳は17か18と言ったところか。たぶん自分とそんなに変わらない。ゆるくウェーブのかかった黒髪に、考えを読ませない無表情な顔。腕章と胸のバッジが違ったが彼女を囲む男と同じ青と白の軍服姿で、手にはカービン銃。撃たれた男が出血していないところを見ると、おそらくエネルギータイプか。

 助けてくれた。誰だか知らないが。しかし、同時に少年はある事もしていた。

 殺したのだ。無警告で射殺した。

 少年は隊長と呼ばれた男と何やら話していた。すると、いきなり少年の拳が『隊長』の横っ面にめり込み、容赦のない光弾が叩き込まれる。続いて横からライフルの銃床で殴りかかってきた別の男の攻撃を紙一重でかわして股に同性の所業とは思えない蹴りを叩きこむとその男にもトリガーを引く。残った3人が銃を構えたが、その時には少年がカービンを捨てて拳銃を抜き、無駄のない素早い動作で光弾を見舞った。

 彼女を追っていた5人の兵士たちは、全員が地面に倒れ伏した。

 彼女は震えて、いつの間にか腰を抜かしていた。無実の人間を連行し、自分の純潔も汚そうとした男たちだが、それでも人間なのだ。少年はそれを簡単に殺した。

 少年が歩み寄ってきた。

 彼女は後ずさりながら少年を拒絶しようとした。

 少年は立ち止まった。そして、拳銃を持ち上げ…

 いきなり脇に投げ捨てた。

 そして彼は言った。



「…これでも俺がお前を殺そうとしているように見えるか?」












 グリパヘリル攻略作戦失敗から5ヶ月後、ジストが彼女を目撃したのは偶然だった。

 事の発端は、彼がルークと車で最寄りの小さな町に買い出しに行った事だ。彼がほとんど何も話さない事についてルークが長々と愚痴を垂れるのを聞きながら車を運転していたジストだったが、街についた途端、異変を感じ取った。

 人がいないのだ。表に出ている屋台には売り物と思しき果物や衣服類などが並んでいたが、長期間にわたって誰も触れていないのか砂埃をかぶっている。誰かいないかと呼び掛けてみても、返事がない。

 何かがおかしいと思った時、横の路地の向こうで、誰かが走って行くのが見えた、そして、それを人類軍の制服を着た、武装した男たちが追いかけて行った。

 ジストはトランクを開けるとギターケースに偽装したライフルケースを掴みだし、もしかしたら必要になるかもしれないからあの兵士がやっている事を録画しろと伝えて後を追った。

 ジストが彼らに追いついた時、兵士たちは銃を持って、どう見ても民間人の少女を取り囲んでいた。おびえる少女の周りで、ボディチェックがどうこうと話している。全てを悟った彼は、ケースの中のカービン銃を掴みだして即座に構え、一番近くにいた兵士を後ろから撃った。そして、彼らに向かってゆっくり進み出た。


「お前、どういうつもりだ?見た所お前も人類軍の様だが、何故同士を撃つ?」

 隊長と思しき男がジストに詰問する。ジストは相変わらずの無表情で、ただ言った。

「俺には、お前たちが民間人を取り囲んで暴行しようとしたようにしか見えないが。」

「おあいにくだがな、この娘にはスパイの容疑がかかってるんだよ。腐れプリベンターと通じてるんだ。」

「証拠はあるのか。」

「あるが、そうホイホイ他人には見せられないな。」

「不当な拘束か。人類軍は敵の撃滅よりも民間人を守る事が最優先される。お前たちがやっている事は明確な軍紀違反だ。」

「証拠はあるって言ってるだろう?それによく言うだろうが。銃を向けられて逃げる奴はスパイ…」

「逃げない物は訓練されたスパイ、か。いつの時代の話だ。」

「ハア。とりあえず、邪魔しないでくれるか?」

「では交渉決裂だ。」

 ジストはその男に左フックをお見舞いし、容赦なく光弾を叩きこんでやった。部下と思しき兵士が向かってきたが、敵ではなかった。さらに1人ノックアウトしてビームを撃ちこみ、残った3人も同じようにしてやる。

 少女を見やった。彼女は明らかにおびえていた。なぜ、と考えるがすぐに分かった。自分を暴行しようとしていた物たちとは言え、いきなり無警告で発砲し、残ったものも残らず叩きのめしたのだ。おびえられて当然だ。ジストは少女を少しでも安心させてやろうと、持っていた拳銃を投げ捨てて、言った。

「…これでも俺がお前を殺そうとしているように見えるか?」

 少女はなおも後ずさりながら、絞り出すように言った。

「…殺すなんて…いくらなんでも殺さなくても…」

「安心しろ。殺していない。」

「…え?」

「スタンビームで眠らせただけだ。3時間もすれば目を覚ます。」

 そう言ってから、ジストは倒れた兵士の一人に歩み寄って、首に手をかざす。

「何してるんですか?」

「スタンビームにやられると脈が異常に早くなる事がたまにある。そうなったら命にかかわる。」

 幸い、そうなっていた兵士はいなかった。

 ジストは立ち上がり、少女に向き直った。

「教えてくれ。なぜこんなことになっているのか。」

 彼女は少し逡巡したようだったが、やがて、言った。

「…はい。」

 ヒロインの名前は次回公開となります。

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