EPISODE13/戦争は人を変える PART4
全パイロットに撤退命令が出ていた。ただでさえかなりのパイロットがパニックに陥っていたのに加え、内側にいた裏切り者の仕業かパイロットたちが次から次へと強制リンクアウトしていくのだ。高戦力が次々に減って行っては戦闘どころではない。いったん引いて体勢を立て直した方が得策だ。
幸い501に裏切り者はいなかったらしい。全機がカレンの指揮の物チャリオットに帰還し、正常なプロセスを経てリンクアウトする。
しかしチャックによれば、フルスピードで飛ばしながら追いかけてくる敵機と交戦していたせいで、全機がスラスターが焼き付いているか推進剤を切らしてしまい、再び飛行できるようになるまでには最低1時間かかるという。TBは走行速度も決して低くはないが、空中から追いすがってくる敵を走りながら迎撃するのはかなりきつい。つまり、チャリオットをめいっぱい飛ばして逃げるしかない、という事だ。
「ったく、どうなってんだよ!」
「私が知るか!」
「とにかく合流ポイントに急いで!」
運転席に皆が鮨詰めになってめいめいに声を飛ばす。
と、その時。
「ん?おいアンナ、少し止めてくれ。」
「え?あ、了解。」
カレンの指示で運転席のアンナがチャリオットを停める。カレンが指さした方向を見てみると、小さい光がチカチカッと点滅していた。
「…アレは…光信号ですね。」
言われてみれば、その通りだ。
ケ・カ・ニ・ン・カ・イ・ル・カ・ノ・シ・ヨ・タ・ケ・テ・モ・ノ・セ・テ・ク・レ
怪我人がいる。彼女だけでも乗せてくれ。
「アンナ!」
「分かってる!」
チャリオットを発進させ、その光の発信源のすぐ横に停まると、カレンは運転席のすぐ近くのハッチを開けてそこにマグライトの光を当てた。用心のために武器ロッカーから引っ張り出したカービン銃を右手に握り、その方向を注意深く見る。
そこにいたのは咲魔だった。 正確には彼女だけではない。投光機付きのハンドガンを握っているところをみると光通信をしてきたのは夜哉らしいし、穹は横から朝儀に支えられている。そして、もう一人。かなり長めの赤毛に、額のバンダナ。あれは…
「ルーク・アブルホールだと…?どうして…いやそれよりも咲魔!怪我人はだれだ!」
「穹よ!強制リンクアウトしたと思ったらハルヤとレイナに人質に取られてて、腕を折られたの。」
「何だと!?とにかく全員乗れ!それくらいの余裕はある!ルーク!おまえもだ!」
「あ、いいのか?ワリ!」
カレンの先導のもと、その場にいた面々を乗せて、チャリオットが再発進。
とりあえず、運転手のアンナ以外は全員スペースのあるブリーフィングルームにいた。
「しかしなんでルークさんがあんなところに?」
「どうもこうもねえよ!スパルタ級の中でリンクアウトしたかと思ったらいきなり銃向けられてよ。隙見て逃げ出してきて茂みに隠れながら移動してたらこの殺戮人形姫の部隊に発見されて今に至るってわけ!敵がTCS装備だったら今頃この場にはいなかったぜ絶対。」
ルークも裏切り者の手によって強制リンクアウトされたらしいのであろうことはとりあえず皆了解した。
「…しかし、本当なのか…?あの二人が裏切ったなど…」
「認めたくねえけどマジだ。自分の意思で裏切ったとしか思えねえよ…畜生、あのクソッタレ共が!」
「特にハルヤ…アイツはもう別人だったわ…殺したり傷つけたりするのが楽しくてしょうがない、って風にしか思えなかった…」
「…全部私のせい…私が不注意だったせいなんだよ…」
「お前は悪くない!悪いのはあのクソ野郎どもだ!」
その場に沈痛な雰囲気が流れる。仲間だと思っていた者の裏切りにあったのだ。226の面々のショックは大きい。
と、その時。
『全員気を付けてください!後方…ちょうどグリパヘリルのあたりに強い敵反応をキャッチしました!…でも…何これ…大きすぎる…』
「どう言うことだアンナ!説明しろ!」
『今まで確認されていない強力なものです!おそらく…戦艦クラスだと推測されます!』
皆が凍りついた時だった。ずぅぅぅん、と遠い音がアンナの差した方から聞こえ、わずかな衝撃がそれに続いた。
とりあえず、今予定しているメインキャラのほとんどは集結いたしました。新キャラも予定しておりますが。