EPISODE10/すべては始まった
作戦開始まで残り3時間。
ヴァルハラ中央棟で、作戦開始直前のブリーフィングが行われていた。集まったのは、パイロットだけでもおよそ10万、支援担当なども含めればもっといる。完全志願制の人類軍の、それも北米エリアだけでよくもまあこれだけの人数が集まったものだと、ジストは冷めた頭で考える。
『諸君、招聘に応じてくれたことに、まずは感謝しよう。私は作戦指揮をまかされた、バウム少将だ。グリパヘニルは確認されている中で最大級のUMS要塞だ。これの攻略に成功すれば、UMSに大打撃を与える事が出来る。他のエリアの同志たちの励ましにもなろう…』
兵士たちの顔を見てみると、様々な表情がそこにある。来るべき作戦に向けた決意。絶対の自信。緊張。不安。そして恐怖も。
『…作戦内容を説明する。まず、グリパヘニルより20キロ南西には、バイエア級陸上戦艦を一隻と、スパルタ級陸上巡洋艦5隻を配置。此処を作戦司令部兼補給基地とする。パイロットは第一世代機パイロット各1名ずつが束ねる、3つの陽動チームと、8名からなる別胴体に分かれてもらう。グリパヘニルは対空設備が充実しているため、まず、ケイオス中佐率いるイエローチームが空中から接近し、ユニットを破壊。続いてそこにアブルホール少佐のレッドチームが切り込み、後続が戦いやすいよう、敵陣を撹乱してくれ。そこに、アルカート大佐のブルーチームが続く。この攻撃で、敵の主力はこちらに向くはずだ。その隙に、工作員と護衛からなる別動隊が裏から侵入。メインコンピュータールームに侵入し、作戦司令コンピュータを破壊する。UMSは駆動自体は独立して行われるが、指揮を行うコンピュータを破壊すれば敵の指揮系統は混乱するため、此処で艦艇も突入し、……総攻撃をかけて一機残らずせん滅する!…』
単純なようだが、これが最も効果的かつ確実な作戦だ。それゆえに失敗は許されない。とくに、工作員のチームは、だ。
『…諸君らの働きに、全人類の命運は掛かっている。…作戦開始は3時間後だ。諸君らの健闘を期待する!』
作戦開始まで残り1時間。
集まってきたチャリオットは基地からグリパヘニルの方角に2キロの地点に待機し、全TBの発進準備も完了している。
501のスタンバイも完了していた。ガウェインはいつもの装備にタイプEシールドを加えたフル装備となり、カラミティ・ジェーンも重火器を満載したパンツァーユニット『フェンリル』―具体的に説明すれば、両腕に装甲を兼ねた2連装ビームカノンが1丁ずつ、両肩にビームガトリング計2門、腰部と脚部に小型ミサイルを装填したミサイルポッド4基と、バックパックには必要に応じて腰に展開できるロングビームライフル2丁だ―を装備しての出撃となる。
カレンは、隊長として、出撃前に皆に言葉をかけていた。
「皆、さっきも聞いたと思うが、この作戦は極めて重要な物だ。失敗は許されない。…だが、私は皆が無事に作戦を成し遂げてくれるものと信じている。…さあ、皆行こう。
作戦開始まで残り10分
全機リンク完了。
作戦開始まで残り5分。
ジストはガウェインとなり、カタパルトの上に立っている。
不安や緊張は不思議となかった。
作戦開始まで残り10秒。
バイエア級戦艦『テルタイン』のブリッジで砲撃命令が出され、主砲から高出力のビーム弾が発射される。ビームは伸びてゆき…そして、グリパヘニル最外縁の砲台に直撃、粉々に吹っ飛ばした。
グリパヘニル攻略作戦…開始。