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異界の魔獣使い4


『ちょっとセルファ、そんな言い方な…』


怒ったシラユキがガシガシと、セルファの腕に噛み付いてくる。

シラユキに噛み付かれるのは痛いが、生きた毛皮の手触りは格別なものだと思う。


「泣かないで、今はと言っただけです。痛いですよシラユキ!

こっちの理由も聞いてからにしてください」


こんなシラユキはかわいいなぁと、のんきに思いつつも、現在の自分の状況を話すことにした。


「見て分かると思いますが、私は人族で本来なら精霊魔法を使用していました。精霊魔法は誰でも使えるようになるわけでないのはわかりますか?」


『わかる…私たち捕まえた人間は使えなかった。雇われた冒険者が使っていたのは見た』

ミルが泣くのをなんとか堪えつつ呟く。


「人族では、冒険者になるのはだいたいが精霊魔法が使える者や魔獣使いだけです。私も冒険者ですが、コレを見てもらえますか?」


道具袋から取り出したのは、冒険者ギルドのランクカードだ。


セルファ・??????


AGE:112

SEX:???

JOB:?????

HP:???

MP:??????

INT:8064

DEX:216

VIT:537

STR:142

AGI:467

LUK:723


称号:???

契約精霊:????


冒険者ギルドランク: ????


『…年齢112!って人族じゃ。他も人族じゃありえない!』


カードを覗き込んで見るカイがありえないと叫ぶ。


「ええ、カードがバグっています。本来ならこんな数値はありえないですが、

私のこの体の年齢は19です…」


普通ならギルドカードがこのようになることはありえないのだ。


「今は無理と言った理由がコレです。困ったことに今の私では精霊魔法も使えません」


さてどうしたものかと思う。

カードを見た限り表示されている数値はめちゃくちゃだし、

自分のギルドランクさえ分からない状態になってしまっているのだ。


『死に戻り……ですか?』

エルがそう呟いた。


「知ってましたか。多分としか言えないのですが、こうなる前に私は複数の精霊と

契約してました。着替えた時にすべて確認しましたが、契約していた精霊の紋様は

すべて消えています。今の私では、貴方たちの言うエライザの森へ辿り着くことは

非常に難しい。なので今は出来ないと告げただけです」


依頼されてエライザの森まで向かうのはかまわないのだが、精霊無しでは無理としか言いようがないのだ。


エライザの森は最低でもBランクの魔獣が出没するし、個人で行くのは難しくどうしてもチームを組まないと無理なのである。


「可能なのは、ふたたび契約してくれる精霊を探してからとなります。それが何年かかるかわからないので直ぐは無理ですし、早く帰りたいと思うのであれば、私など無視してランクの高い他の冒険者に依頼するしかないですね」


「死に戻り」も困ったものだと思う。今までしてきたことがすべてパァになるのだから。

ただ「死に戻り」にも1つだけ幸運が付けられる。精霊契約を廃棄される代わりに、あることが戻るのだ。


それを今は、セルファも話すつもりはない。


『ねぇねぇ…セルファ契約って他のとは出来ないの?』


シラユキがふと魔獣である自分の今を考えて思う。

自分はかなり珍しい魔獣と言うのをセルファから聞き知った。

今の状態では、また誰かに連れ去られる可能性もあるんじゃないだろうか…

どこから連れ去られたのか、両親の居る場所さえ分からないし、これから何かをすると言うことも思いつかない。



「精霊以外でも出来ますよ。魔獣使いと言うのもありますし……契約ですか」


シラユキを見て思うこのままでは、シラユキも危険に晒されるだろう。その希少性さゆえにだ。


『はーい…ならアタシ、シラユキは契約する!セルファとなら契約!珍しい魔獣は誰もが欲しがるならセルファがいい!』


狙った獲物を離すまいと、爛爛と目を輝かせたシラユキが言う。

魔獣らしくないのは、生後まもなく連れ去られ人間と過ごしてきたからだろうか?

いや小人族の3人が、世話していたからだろうか?

こうも魔獣らしくない話し方をするのは魔獣は始めてみる。


「シラユキ契約は一生ものですよ。魔獣としての自覚はないのですか」


本来、このように棚からボタモチ的な幸運などありえないのだ。

まだ幼生体だが、SSランクの魔獣だ。

これが成長しきった時の成体の姿を思うと、どれだけの人族が欲しがるだろうか。

SSランクの魔獣を所持する魔獣使いとなると、片手分もいないだろう。


「契約すれば、死ぬまで私に使役されることになります。まだ幼生体である貴方に、その意味が分かると思わないのですが、かと言ってこのままでは貴方を連れて歩くのは危険だろうし…」


セルファは考えこんでもどうも出来ないことに、シラユキと契約するしかないとわかっていた。


『なぁ兄ちゃん。こいつも契約できないか?』


話をずっと聞いていた小人族のカイが、樽からだした。謎の卵を転がしながら聞いてきた。

「カイくんそれは、非常食とかじゃなかったのですか?」


てっきり大きめ卵を、非常食として持ち込んでいたのかと思っていたのだが違ったようだ。


『違うよ。俺たちを捕まえた人族のおっさんがさ。こいつも世話しろって渡されたんだぞ。逃げるときに大河に沈んだら可哀相かと思って一緒に連れてきたんだ』


かなり重くて苦労したらしいが、なんとか転がしてここまで運んだと言うのが卵の真相らしい。


『この子まだ卵だけど、私たちとは会話できた…』


ミルが卵をなでてあげている。

小人族が世話をしていたのは、卵に話しかけたり時折卵を動かしたりくらいだと言う。


「これ何の卵なんですか?卵生の生物となると、孵化すれば出てくるのは鳥類か爬虫類か両性類?」


卵の殻の色はやや薄くブルーが入っており、水の属性の卵だろうと予想がつくくらいで、何の卵なのかも

サッパリ分からない。


「孵化するとしても、いつか分からない上に、どのような状態にしておけばいいのか…」

何の卵かも、わからないのでは対処が難しいではないか。


『この子、自然の気を吸って育つ珍しい生物としか言われなかった。卵の殻が割れる時は孵化する時で、それまではどんなに高い場所から落としても絶対に割れないって』


エルたちは、この卵を人族のおっさんが実際に割ってみせる感じで硬い石畳とかに落としたりしたのを見たのだと言う。

孵化する時に最初に見た相手に懐くらしいので、余程のことがない限り危険はないらしいとのことだ。


「そうですか。孵化しなければ契約もなにもありませんので、これは孵化するまで様子みるしかないですね」


生きている卵を道具袋へと入れるわけにもいかないだろうし、セルファは卵入れでも作って運ぶかと考えた。









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