異界の魔獣使い27
色々設定考えてたら、間があいてしまいました。
27
セルファことスーズは、索敵探索の魔法を使い魔物らしきものが居ないことを確認して地下通路らしきそこへと飛び降りた。
降りてみてからわかったのだが、この通路は、形状強化の術が施されているようで、壁を見れば術の影響かわずかな光が瞬いているのが確認できる。
「かなり古い術式のようだ…」
通路に堆積した埃から考えると、かなり長い間この通路には誰も入っていないようである。
ライトの魔法を維持しながら、通路内の見える範囲を見渡す。
ムルヴァーラの地下にこのような通路があると言ったことは、聞いたこともない。
かなり昔の遺跡を利用して作られた街とだけ伝わっていたせいか、外壁に使われた岩がその名残程度としか認識していなかったが、意図的に隠されたのか、今では誰も知ることがないのだろう。
「忘れられた地下通路か…」
史実では、ムルヴァーラが興ったのは確か600年~700年ほど前のことと言われている。
今の状態までになるのに数百年はかかったと思うが、歴史でこの地下通路の話は聞いたこともない。
となるとそれ以前の名残りなのだろう。
「おい!下はどうなってる」
考え事をしていると、頭上から声がかかる。
どうやら準備が出来たのか、ライズが戻ってきたようだ。
「特に危険はないようだな。索敵したが、魔物はこの通路にはいないようだ。ここに来ても今の所は危険はない」
誰も入ることがなかった密封された場所だから当然なのかもしれない。
「わかった。降りるから脇によってくれ」
その声とともに降りてきたのは、4体の魔獣だった。
大型の黒彪、狼、犬型2種である。
降りてきた魔獣は通路の左右に移動して警戒にあたる。無駄な動きは一切なく、普段からの連係ができているのだろう。
「待たせたなホレ…」
魔獣のあとからライズが降りてきて、取り上げられていた刀を投げ渡される。
それに続くように4人の警備兵も降りてきた。
「3人ずつ組んで地下の探索することにした。俺以外は、魔獣使いだ。右からグルグ、レイダーク、バルゼクト、ダイ」
名前の順に黒彪、狼、犬2種の飼い主のようだ。
「グルグは俺と、スーズで組んでもらう。行き止まりであれば、引き返し後から合流。この地下通路のマッピング作業と、危険と判断した時点でここへ戻ること」
はぐれた時の為にお互いの通信手段に魔道具を各々渡され。耳に装着する。
「そして念のため、ここに結界石をおく。探索は一定の距離ごとに光石を通路に置いていくが、光石は60ほどしか用意できなかった。この光石が無くなった時点でここまで戻ることと、遭遇した魔物が手におえなければ無理せず引き返すこと」
お互いに軽い自己紹介をし、通路の左右に分かれて探索が開始された。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「この仔の名は?グルグさん?」
スーズは先を行く黒彪の名を聞く。
「ラーガです。」
マッピングしながらグルグはスーズの質問に答える。
「黒いのは初めてみました。」
スーズは一定の距離ごと置くように渡された光石をおく。これで3つ目を置いたところだ。
「この辺では珍しいかもしれませんね。黒彪は、南の火山地帯に生息する種ですから」
グルグが言うには、彪の毛皮の色により大体の生息する地域がわかるらしい。
普通の地彪は、ほぼすべての地域に生息するから一番多く見る彪であり、色が違う彪ほど別地域と考えて良いらしい。
ただアルビノと呼ばれる種は別らしく、個体が弱いと認識されているせいかどの地域に属するかは特にないとのことだ。
「お前ら仲良くするのはいいが、周りに注意しろ」
ライズは、かなりピリピリしているようだ。
「索敵してる限りでは、この通路には敵はいませんよ。風の流れはあるようだから、どこかに通風孔は通っているようですが魔獣が通る大きさでないか、元から魔獣避けがされているかですね。この壁見ればわかるかと思いますが、なんだかの古い術式が組み込まれていますしね」
軽く叩いてみれば、わずかに瞬くように光る壁。このような光り方をするのはなんだかの術式が組み込まれているからだ。
「しかしこんな地下通路があるとは、思いもしませんでしたね」
グルグは、ライトの魔法に照らされている範囲の壁を見ながら言う。自分たちが住む街の下に、このような通路があるとは考えもしなかったからだ。
「確かにな。どこかの遺跡から持ってきた岩を使って、ムルヴァーラの外壁にしたと言う話は違っていたようだ」
なんだかの古い遺跡の跡をそのまま利用していたと考えられた。
『コノサキ、ヒロイヘヤ』
先行して進んでいたラーガが戻ってくるとカタコトでそう告げる。
「敵はいなさそうですね」
『テキハ、イナイ。タダ、タクサンナニカアル…』
タクサン?
広い部屋の中に、タクサンの何か?
それは何なのだと、3人はラーガの後をついていく。
「…なんだありゃ」
ライズが、予想もつかなかったものに驚き呟いた。
「確かに、タクサンですね…」
スーズがそこで見た物は、部屋中に倒れ付している人型の塊だった…