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異界の魔獣使い24

24



貴族院と呼ばれる建物は、王都を意識してか外見は白亜な建物である。

扉の両脇には警備兵がおり、通行証を呈示して本日の用件を告げ中へと案内された。


先を行く警備兵に付いて行きながら、無駄に広い回廊とそこかしこに掲げられている美術品を見るとここは一般とは切り離されている世界なのだと実感する。


時折すれ違う貴族?なのか分からないが、こちらを嘲るような視線と何を言っているのか分からないがヒソヒソと小馬鹿にしたような感じが悪い相手の態度には、ここはそう言うことと言い聞かせて我慢する。


「こちらに、主管事務官の方がおります」


案内していた警備兵が、目的の場所へ着いたことで退出していく。


「ここは?」


「糞貴族の巣窟だな…」


忌々しそうに呟くと、軽くノックをして中に入る。



「…誰かと思えば。ここに何の用だ?」


「用があるから来た。ここで調べ物をしなきゃならん。先にお前に話を通しておかないと、ここの連中はすぐ難癖つけてくるからな」


両脇に秘書なのか、綺麗な女性二人が書類を持って控えている。

ここの主だと言うややでっぷりとした年配の男性が、悪趣味な指輪を両手につけ嫌らしい笑みをみせている。

この男は会う都度人を不愉快にさせ、いやみなことを言い、相手を不愉快にさせる。


「好きにしろ。そう言えばお前の弟分だった小僧が死んだらしいな…死体も残さず水棲の魔獣に食い尽くされたそうじゃないか」


それが誰であったかなど、この男はどうでもいいのだろう。

目の前にいる気に入らない存在が、へこんでいるのを喜んで見ているような男だ。


「だからなんだ…」


この男に言われるまでもないことだ。


「ふん、反応がなくつまらんな。もう良い。さっさと下がれ」


脇に立っていた、秘書の一人を引き寄せると強引に自分を上に座らせ第三者が居るにもかかわらず、嫌らしい手つきで女性の胸をもみだす。


「…ッ!」


用件はそれだけだと、リックを連れ慌しく部屋を後にした。


「なんだよあのおっさん、真昼間からさかっていてみっともねぇ」


控えていた秘書の女性も嫌そうな素振りも見せず、されるがままだった。


「あの男の両脇にいたのは、奴隷だ。逆らえば死ぬことがわかっているからされるがままなのさ」


聖王をはじめとした上位貴族の品性はよいのだが、下へ行けば行くほど貴族の品性は落ちる。

あの男のように、奴隷をはべらし人前を気にせず手を出す。


いくら聖王や英雄たちが魔族との功績があっても、この国の貴族連中は腐っている者が多い。

すべて品性良くすることなど出来はしないのだ。

表向き奴隷の所持を禁止していようが、裏では奴隷とわからぬようにして所持している貴族も多いのだ。


「うぇっ…あんなのが、うじゃうじゃいんのかよ…」


「その通りだ」


チラッとリックを見る。


「そういやお前も気をつけたほうがいいぞ。俺から離れると、男もOKな奴がひっかかるかもな」


男娼の真似事されるかもしれないぞと、からかう。


「マジ勘弁…俺にはリファがいる!」


ここを出るまでラスティルの側から離れないようにしようと考えるのだった。



◆◆◆◆



次に向かった先は、資料室のようで部屋のなかは貴族関連の書籍や書類の束がおかれている。


受付をしているのは、下級とはいえ貴族らしく態度をみていても見下している感じがまる分かりで気分が悪くなる。


ラスティルはそんな受付の様子を一切無視して、必要書類を持ってこさせる。


その量は、机に乗り切らない量である。


「……ありえないだろうこれ。今日中に出来んのかよ」


絶対無理!だとリックが頭をかかえている。


「必要な所だけ探せば良いだけだ。ほれ、まずは魔獣改良関係は省け」


ほとんどがそれ関連をしめているはずなので、それを省き納税関連の物を探せと告げる。

リックが仕分けしている間に、チュリム伯爵家の系図を確認することにした。


こっちは1冊の本の状態にされているからか、直ぐに手に取ることができた。


「…確かに結婚はしてないようだな。養子の届出もない」


系図から確認をすれば、家族縁が薄いのか生存しているのはチュリム伯爵だけのようだ。

このまま跡継ぎかいない状態では、断絶するのは間違いなしだろう。


複製を作るために転写魔法を起動する。

詳しい検証は、戻ってからすれば良いだけなので、必要と思われることは転写をすれば良いだけだ。


「てかさ…ほとんど魔獣改良の書類ばっかだぜこれはさ」


言われるまま、より分けてみれば多すぎると感じていた書類の山のほとんどが魔獣改良の物ばかりだ。


「口動かすより、手を動かせ。さっさとここ出たければとっとと動け」


ここでこうして書類をあさっていることも、受付に居た者から報告が言っていることだろう。

貴族でもない冒険者風情が、ここでしていることを詮索する貴族はいるはずだ。


リックたちが言うことが、事実らしいと言うことは冒険者ギルドでも多少は確認できていた。

あのいけすかなスーズと言う青年は、思っている以上に優秀らしい。


冒険者ギルドで調べたチュリム伯爵領での冒険者依頼のいくつかで、冒険者の行方不明で終わっている物があったからだ。


それだけならば依頼をこなせなかった冒険者の死亡と予測もできるのだが、よくよく調べてみればチュリム伯爵が出した依頼での行方不明者である。


それに誰も気づかなかったのは、繁盛期とよばれる季節だけの依頼にあったようだ。

ぞの時期は、多くの人や物が動くためちょっとした冒険者の行方知れずなど、いつものことで済まされていたのだろう。


しかしそれに気づいたのは、3年ほど前の依頼からである。


冒険者ギルドでも、依頼の記録を取っているようだが、3年ごとに廃棄していたせいでそれ以前の記録が分からない状態であった。


「なんにせよ、何かが起きているのは確かみたいだからな」


それが何なのか、今の時点では分からないのがもどかしい。







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